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インターネット字書きマンの落書き帳

   
石動のこと故郷だと思っているアントニオ概念の話
石動とアントニオを書きました。
ちまちまと石動とアントニオの日常を書くことで……石動とアントニオの薄い本とかを出せたらいいよね!

俺はアントニオがクソデカ感情を抱いている話が好きなので、アントニオが勝手に石動にクソデカ感情を抱いています。
石動は、「またしても何も知らない石動戯作」をやってます。

石動はまぁまぁ「またしても何もしらない石動」だから原作遵守ですね!
(また適当なことをいっている)



『故郷』

 息をするのも億劫なほど、身体全体が痛む。
 全力を出したのは久しぶりだったのもあるが、以前に増して代償が大きくなっている。
 この能力を使い続ければ、きっと長くはないのだろう。

 それでも――。

「ひどくやられたみたいですねぇ」

 見知った顔が、こちらをのぞき込む。
 何でこんなところにいる。どこから嗅ぎつけた。
 不信感は募るが、今は助かった。

「そう思うんでしたら、手くらい貸しちゃぁくれませんか?」

 アントニオが男を睨み付ければ、やれやれと嘆息をつき、ゆっくりと手が差し伸べられる。
 自分一人だったらもっと立つのに時間がかかっていただろう。
 男の肩を借りれば、何とか立てるしまだ動ける。

 一人だと弱気になってしまうが、誰かがいれば強がれるものだ。

「強がってもだめですよ。アバラにヒビくらい入っているんじゃないですか?」

 そんなアントニオの内心を見透かすように男は告げる。
 やはり厭な奴だ。優しい風体をして、腹の底が見えない。

「大丈夫ですよ、これくらい……」

 アントニオはゆっくり呼吸を整え、自分の痛みを観察した。
 息を吐くだけでも痛みはあるが、血反吐をまき散らすほどの怪我はない。歩いて響く痛みだが、致命傷にはほど遠いだろう。
 それに、仮に肋骨が折れていたとしても治療方法は安静だけだ。それなら病院に行く意味もない。
 治療費がかかるのも嫌だったし、何より――。

「そんなに石動さんには心配をかけたくないんですか」

 笑顔のまま男は言う。
 本当に、憎たらしいくらいに、触れられたくない領域にずかずか入ってくる奴だ。
 元気な時だったら、そのすました顔を引っ叩いていただろう。

「話してもいいと思いますよ。今回の件も、石動さん絡みですよね? あの人を守るために力を使っているのなら、あの人にそれを告げるのが道理だと思いますけど。石動さんはあんな風ですが、知性は本物ですよ。彼の知性を借りることができるのなら、貴方がここまで傷つく必要は……」

 わかってる、そんなことは。
 だけど――。

「大将を、巻き込む訳にはいきませんって」

 それだけは、嫌だ。
 それが嫌だから隠れて立ち回っているというのに、どうして石動に相談なんてできるのだろうか。

 迷いない言葉を聞き、男は目を細めて笑いながらハンカチを取り出すと、アントニオの顔を拭う。

「そう思うのでしたら、帰る前にしっかり鏡を見ておいてください。そんな傷だらけの顔を見たら、いくら貴方に頓着しない石動さんでも心配くらいはしますから」
「ははっ……そうだといいんですけどねぇ」

 顔はさほど打たれてなかったと思ったが、傷になっていたようだ。
 肋の痛みばかりに気を取られていて、他のところがおろそかになっていた。
 帰る前に、駅のトイレで顔くらいは洗っておこう。
 傷はごまかせないだろうから、言い訳を考えておかないと……。

「ハンカチは、別に返さなくていいですよ」

 人が賑わう路地にさしかかった時、男は自然と離れる。

「そういう訳にはいきませんって」

 言いながら振り返ると、男はすでに人混みに紛れて消えていた。
 追いかけようにもこの傷では、どうしようもない。
 仕方なくポケットにハンカチをつめ、駅への道を歩き出す。

 夜半過ぎだというのに都心は人で賑わっている。
 人の声や車のクラクションだけではない。輝くネオンの眩しさも今はやけに騒々しい。
 それなのに、世界にどこにも居場所がないような気がする。

 ――こんな力をもって、暴力と蛮行を強要されて、それでもまだ生きているなんてそれだけで図々しいのだろう。
 だけど、それでも――。

「遅い! どこいってたんだアントニオ」

 雑然としている、というより汚れているといったほうが適切な事務所のソファーに座ったまま、石動は頬を膨らます。
 どこからカレーのいい匂いがしているが、湯をわかせれば十分な火力しかないあの質素なコンロでカレーを作ったのだろうか。

「ちょっと野暮用で。大将、カレーの匂いがしますけど」
「あぁ、あまりに暇だったから、スパイスからカレーを作ってみたんだ。なじみの中華屋がスパイスを融通してくれたからな」
「人の好意にただ乗りじゃないですか、相変わらずですね……で、味はどうでした?」
「そんなの、まだ食べてないからわかるわけないだろ。おまえを待ってたんだからな」

 あぁ、そうだ。石動は、こういう人だ。

「一人で食べてもつまらないだろ、こういうのは。ほら、皿をもってこい、おまえにもご馳走してやるからな」

 当たり前のように手を差し出し、当たり前のように受け入れて、唯一の居場所になってくれている。
 自分のような人間でも、帰る場所があるのなら――。

「それはいいですけど、大将。ご飯、炊きました?」
「ん……わ、忘れてた! い、今から米をとぐから、あと一時間待て! いいな?」

 ――帰ろう。
 自分の命があるかぎり、この人の隣に。

「はいはい、わかりましたよっと」

 アントニオはなれた様子で、部屋につるしたハンモックに上る。

「それじゃ、炊けたら呼んでくださいよ」
「なんだよおまえ、ぐうたらな奴だな……うう、腹減った……」

 そうしてハンモックの上から、物欲しげに炊飯器とにらみ合う石動を見て、笑う。

 命を賭けるなんて、当然だ。
 石動が笑って、怒って、失敗して。ただそれを隣で眺めながら、一緒に食事をして、銭湯に出かけて。何でもない日常を、当たり前のように過ごす。

 この場所だけが、あればいい。

 アントニオにとって石動こそが、生まれ育った場所よりもずっと暖かくずっと心地よい、故郷なのだから。

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