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インターネット字書きマンの落書き帳

   
#ネトゲ異常案件の二次創作です【ネタバレあり】
しばらく、「ARGについてもっと知りたい!」と思い、いろいろなARGを遊んでいました。

少し分かってきたかも!
……全然わかってないかも!

そんな曖昧な気持ちのまま、今日もARGに向き合うのです。
おっさんの自分語りはさてさておき。

SIM3様が現在、無料公開している作品の一つ。
#ネトゲ異常案件」が面白かったので、二次創作をしました。

こちら、前作「#Vtuber失踪案件」も遊んでいると楽しい作品なので、ARGに興味がある方はセットで遊んでみてください。

メチャクチャ難しいですが!
壁を乗り越えた先にある見える風景もいいものです。

作品は、「#Vtuber失踪案件」「#ネトゲ異常案件」、両方をクリアしている人が書いたので、どちらのネタバレにもなるから遊ぶ前に見ちゃだめだぞ♥

それじゃ、よーろしーくねー。

『思い出のなかの彼女はいつも何回でも死ぬ』

 あっ、と思った時にはすでにすべてが終わっていた。

 どちゃりという、鈍く水っぽい音。
 奇妙な形に折れ曲がる首。
 あたりに広がる血。
 むき出しの筋肉。
 その隙間からのぞく象牙色の骨。

 すべてが一瞬だったのに、映像だけはやけにスローで、悲鳴はひどく遠くに聞こえる。

 事故だ。上から何か降ってきて、前を歩いている彼女に当たった。
 誰だろう、彼女は。同じ学校の生徒だ。顔も知っている気がする。でもクラスが違う。同じクラスなら名前を覚えているはずだ。
 何が落ちてきた。上から。鉄骨? 工事でもしていたか? そんな様子はどこにもない。
 床、こっちまで血が広がって、スニーカーが赤く濡れてる。
 誰だ。二人倒れてる。知らないオッサン。ちょっと太めに見える。これが降ってきたのか?
 降ってきた。違う、落ちてきたんだ。オッサンが?
 どこから。このビルから? だとすると、自殺?
 自殺に巻き込まれた事故で彼女が?
 あ、顔、生ぬるい。こっちも怪我してるのか。
 違うか。飛び散った血が、ついただけだ。痛くはない。返り血ってやつかな。

 めまぐるしい早さで思考が通り抜けていく。
 考えなど何もまとまってないのに、自然とスマホを手にしていた。

「救急です。あと、警察も必要かも。俺の目の前で、人が死にました」

 自分でも驚くほど冷静だったのは、目の前の光景があまりに非現実すぎたからだろう。
 今、思い出しても目の前に死に際の人間がいたのだという感慨はわかない。
 これも、正常バイアスというものか。
 いや、そんなご大層な名前がつくような話ではない。
 目の前に転がった死を理解し、認め、受け入れる。
 それをすればたちまちに頭の中のネジというネジがすべて吹き飛んで、みっともなくおびえてうろたえて震えていたはずだ。
 そんな矮小さを世間にさらけ出し、周囲の人間にみっともないと笑われ、馬鹿にされて茶化される。
 それが怖かったから、自制するよう暗示をかけたのだ。

 ――まったく、目の前で人が死にそうだというのに、そんなに自分の体裁が大事だったのか。

 当然だ。
 あいつらは、今死ぬ。だけど俺はこれからも生きなきゃいけない。
 ここでおびえて泣き出して小便でも漏らしたら、一生の笑いものだ。
 冷血だとか、非常識だと罵られるかもしれないが、現場を目撃し、すぐさま救急車を呼んだ冷静な青年だったというアチーブメントは得ておきたい。

 こんな言い訳を今でもぐずぐずと考えているのだから、どれだけ平静を装っていたところで、自分は騙しきれない。

 俺の心に残った傷は、俺が思ったよりもずっと大きかったのだろう。

 傷。
 いや、これは錨(アンカー)だ。

 今となってはこの記憶が、俺にとって最も印象に残った風景。
 そして、俺のよすがでもあるのだから。

「あぁ、そう――そうだ、今日。今日が命日だ――」

 カレンダーの日付を見て、気付く。
 毎日朝起きて、とにかくすることは時間と日付の確認。そしてカレンダーへの印付けだ。
 これをしないと、今日が何日なのかわからない。
 スマホを何度も確認し、昨日の日付に×印をつける。

 19歳の頃、俺は事故にあった。らしい。
 らしい、というのは俺自身にその実感がないからだ。
 だが、俺のものらしいスマホを手に取れば、ロック画面にでかでかと書かれている。

「おまえは19歳のころ事故にあってから、記憶が15分しか持たない」

 指紋認証でロックを解除すれば、さらに詳しいメモ書きが残っている。

「17歳の頃、士道光が死んだ日の光景が、おまえにとって最後の記憶だ」
「そこからおまえは、今日までの記憶がない」
「すべての記憶が15分しか持たないまま日々を生きているからだ」
「財布に入っている金だけを使って生活すれば、生活には困らない」
「日付を確認し、過ぎていた日に×をつけること」
「特に重要だと思った出来事に接したら、ベッド脇のノートに記述すること」

 俺はすぐに古びたノートを手にする。表紙にはNO.18と書かれているが、これもきっと本当に18冊目なのか、あやしいものだろう。
 最後に書かれていたのは「駅前、パン屋」だったが、意味がわからない。駅前とはどこの駅だ。パン屋で何か買いたかったのか。
 15分後の俺が混乱しないよう、俺はその文字を消した。

 それより、今は士道光だ。
 俺の記憶が確かなら、彼女が死んだのは今日なのだから。

 士道光とは、直接面識があったわけではない。
 俺の前を歩いていて、降ってきた大男のせいで死に至った。
 俺は驚いて救急車を呼んだ。それだけだ。
 それだけの関係だ。

 それでも士道光の死は、俺の最後の記憶として何回も。何十回も。何百回も。あるいは何千回も、回想されているに違いない。
 そのおかげで、俺は自分が臆病で矮小な人間であることを忘れず、生きていけるのだ。

 今の俺があるのは、士道光の死があるから。
 知り合いではないが、花を手向けるくらいはするのが道理だろう。

「士道光、士道光、士道光……」

 同じ言葉を繰り返し、外に出る。
 知らない町ではない。俺が生まれ育った町の風景だ。

 よかった。
 引っ越しをしていたら、全く知らない町で途方に暮れるところだった。
 あるいは、知らない町で途方にくれた回数があまりに多かったから、誰かがこの町へ引き戻したのかもしれないが。

 とにかく、これなら移動には困らない。
 いや、だが俺は士道光の家も知らなければ、墓の場所だって知らないのだ。
 葬式には行ったのかもしれないが、何せ彼女の死から先の記憶はぷっつりと途絶えているのだ。
 この有様で、どうやって花を手向ければいい?

 ――家も墓もわからないが、事故現場なら覚えている。
 そこで花を手向ければいいか。
 俺にとっても、あの場所は意味のある場所だ。

 ゴミだと思われるかもしれないが、それはそれだ。
 誰かに文句を言われたら持ち帰ればいい。

 最後の記憶を頼りに、俺は士道光の死んだビルを目指して歩き始めた。

 ※※※

 ■■■■の儀についての考察。

 魂が別の場所へ放たれたとしても、この世界にあったという事実は不可逆である。
 つまり――いくら「いた」痕跡が消えようとしても、この世界に「いた」事実まで完全に排除することはできず、世界には必ずかすかな痕跡が。あるいは残骸が残るようにできている。

 微量な残骸まで消し去ることは、途方もないエネルギーを消費する。
 それならば、見えない程度にまで存在を希薄にしたほうが簡単だからだ。

 残骸は、すぐに霧散し、記憶の底に残らぬほど曖昧になるのだが――。

 時に、本来はわずかな残渣でしかない記憶、あるいは記録をよすがにして生きるような人間が現れる。

 希薄で消えゆく記憶を留め続けるそれは――。
 ――魂なきものに肉体を与える依代になり得るのではないか。

 ※※※

 士道光が死んだ場所は、今でもはっきりと覚えている。
 17歳までの記憶は正常のようだし、俺にとって最も印象深い出来事だったのは間違いないからだ。

 花屋で仏花を買い、目的地のビル前につく。
 自殺に巻き込まれ人が死んでいるのに、ビルは取り壊される様子もない。
 貸しビルなのだろうか。テナントに入っている会社はそのままなのか。縁起が悪いと思わないのか。そもそも、飛び降りた男はどうなったのか。死んでいるのか、生きているのか……。

 今の俺にはそれを知るすべはない。
 仮に知ったとしても、すぐさま忘れてしまうのだ。

 士道光の死から、どれくらいたっているのだろう。
 事故現場には花もなければ供え物一つもない。

 直接面識はないが、明るく花のある生徒だったと。
 悼む人間も一人や二人いそうなものだが……。

「家族や知り合いなら、墓参りをしているか……」

 俺は墓を知らないんだから、仕方がない。
 目立たないところに花を供え、黙祷をする俺に

「どうして」

 誰かが、驚いたように声をあげた。
 振り返れば男が一人、不思議そうにこちらを眺めている。

「どうして、あなたはここで祈りを捧げているのですか」

 見知らぬ男、だと思う。すくなくても17歳の俺が知っている顔ではない。
 きっちりとしたスーツ姿をしているが、どこかクサい男だ。

 体臭がきついという意味ではない。
 雰囲気が――おかしい。

「どうして、って……ここ、事故現場だから。士道光が、死んで……もう何年経っているかはわからないけれども……」

 俺の言葉に、男は驚いたように目を見開く。
 驚いているが、喜んでもいる。

 ――いやな感じだ。

「あなたは、覚えているのですか? その……女性が、いたことを。その名前も」

 何だ。それがそんなに、妙なことなのか?
 覚えている。忘れられる訳がない。俺にとって最後の記憶は、俺が目覚める時、いつも重なる記憶なのだから。

「詳しいことを教えてくれませんか? 彼女のことを。あぁ、失礼。私はテミス建設の――」

 男が名乗る前に、俺は走りだす。

 あいつは、おかしい。
 理由はわからないが、ひどく危険な気がする。

 関わってはいけない。  関わったら――。

 振り返っても、男は追ってこなかった。
 最初から追うつもりがないのか、それとも今追わなくとも、必ず俺を見つける自信があるのか……。

「記憶を、失う前に。書かないと……」

 スマホを取り出し、真っ先に見るメモ帳の下に言葉を追加する。
 あいつは何者だ? 何といった、確か――。

「――テミス建設」

 それから俺は、記憶が解けるまで走り続けた。

 ※※※

 血と死の匂いがする記憶から目覚め、曖昧なまま周囲を見る。

 ここ、俺の部屋か?
 というか、今何時だ?

 スマホを取り出せば、ロック画面にでかでかと文字が見える。

「おまえは19歳のころ事故にあってから、記憶が15分しか持たない」

 何だ、映画にでもありそうな設定が書いてある。
 冗談か?
 だったらくだらない。

 生体認証でスマホのロックを解除すると「最初に読む」とメモがある。

「17歳の頃、士道光が死んだ日の光景が、おまえにとって最後の記憶だ」
「そこからおまえは、今日までの記憶がない」
「すべての記憶が15分しか持たないまま日々を生きているからだ」
「財布に入っている金だけを使って生活すれば、生活には困らない」
「日付を確認し、過ぎていた日に×をつけること」
「特に重要だと思った出来事に接したら、ベッド脇のノートに記述すること」
「テミス建設」

 ――なんだ、最後のは?
 知らない企業だ。建築会社か? 面接の約束でもあるのか?
 ノートに詳しく書いてあるだろうか。

 ベッド脇にあるというノートを探そうとすれば、誰かが呼び鈴を鳴らす。
 インターフォンを確認すれば、知らないスーツ姿の男が立っていた。

 誰だ? 知り合いか?

「すいません、今日約束をしていたものですが……」

 どうやら俺は、誰かと約束をしていたらしい。
 それなら反故にする訳にはいくまい。

 ドアを開けた時――。

「よかった、これで洗浄できそうです」

 曖昧に笑う男の顔が、蛇のように見えて――。
 俺の意識は、そこで途絶えた。

 ※※※

 本来ここにないものを記憶しているものがいたのなら、それを「依代」にすることで異界へ送った存在を呼び戻せるだろう。
 ■■■■の儀は、記憶にあり存在していた時の姿で、この世界にたぐり寄せることができるのだ。
 さながらその場を錨(アンカー)にして、船がとどまるように――船を引き寄せるように――。

 ――それが可能であるのなら。
 神となり力を得た「士道光」がこの世界に現人神となり降り立つのか、あるいは――。

「実験する、価値はある」

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東吾
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インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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