インターネット字書きマンの落書き帳
両手でジョッキをもつ山ガス(黒ガス風味)
付き合っているのか、付き合っていないのか。
微妙なラインで揺らいでいそうな黒沢と山ガスの話をします。
山ガスってイラストでは両手でジョッキやマグカップをもっていることが多いよね。
これ、あざとい萌え狙いではなく、わりとガチ目に大きな怪我をしているからとかの可能性も、あるよね。
そう思ってかきました。
両手ジョッキごくごく山ガスですぞい。
微妙なラインで揺らいでいそうな黒沢と山ガスの話をします。
山ガスってイラストでは両手でジョッキやマグカップをもっていることが多いよね。
これ、あざとい萌え狙いではなく、わりとガチ目に大きな怪我をしているからとかの可能性も、あるよね。
そう思ってかきました。
両手ジョッキごくごく山ガスですぞい。
『後悔』
ビールジョッキでもマグカップでも、山田はいつも両手を添える。
袖を引っ張って指先だけを出して両手で飲む姿はいかにもあざとく、皮肉屋でいつでも斜に構えた山田をより小悪魔的に見せた。
「何だよおまえ、片手で飲めよ。女々しい奴だな」
誰かに茶化され馬鹿にされても、山田はヘラヘラ笑うだけ。
「そんな事いって、本当は僕のこと可愛いと思ってるんでしょ? 可愛いから気にしちゃうんだよねー。わかってるって、このほうが可愛いからこっち見たんでしょ?」
逆にそうして相手をからかい
「僕のこと素直にかわいい、って認めてくれるんなら、相手してあげてもいいけど。どうする?」
そうやって距離を詰め、色っぽくしなだれかかったりするから、茶化した方が真っ赤になる。
その姿を見て
「あ、照れてる。かわいいとこあるね。ね、本気にした?」
そんな事を言いながら口元を隠して笑うと、山田はまた両手を添えてジョッキを持つのだ。
あぁ、ただ自分を可愛く見せたいだけなんだな。
あざといと思ったら、やはりそういう奴だ。
自分をプロデュースするのが上手いのは、配信者として見せ方を知っているからだろう。
山田の周囲にいる人間は、そう思うだけだろう。
それだけ山田の態度は自然で普段と変わりなく、いかにも配信者の山田ガスマスクがいいそうな言葉を言い、やりそうな態度で笑うからだ。
――その笑顔を見ると、胸が痛む。
「おい、山田。車出すけど、乗っていくか?」
飲み会が終わり、各々解散する最中、黒沢は山田に声をかける。
普段こんな居酒屋には来ないのだが、山田が顔を出す時は黒沢もなるべく出るようにしていた。
「あ、黒沢サン。乗ってく乗ってく。ってかさ、黒沢サンは飲んでないの?」
「こういう所の酒はあんまりな……」
「だよねぇ、居酒屋のサワーもウイスキーも、薄かったり濃かったりするし。いかにも安酒ってニオイがするもん」
黒沢に呼ばれ、山田は嬉しそうに隣を歩く。
駐車場の合間から目敏く黒沢の車を見つけると、鍵が開くのと同時に助手席に滑り込んだ。
シートベルトを閉めるためバックルをカチャカチャ鳴らす山田の手を、黒沢は黙って握る。
「ど、どうしたの黒沢さん……」
驚く山田の頬を、黒沢は静かに撫でた。
「……悪かったな」
「えっ、えっ? な、何で急に謝るのさ。僕、何もしてない……よね?」
「いや……おまえの、腕。痛むんだろ? まだ……」
黒沢に言われ、山田は「あぁ」と小さく息を吐く。
山田がまだ5Sに入ったばかりの頃、彼は一人で率先して危険なエリアの突撃取材をしていた。
呪われた廃墟や心霊スポットというオカルト系の突撃取材だけではなく、撮影禁止の繁華街や裏取引が頻繁に行われていると噂の路地裏まで、自分のような目立たない人間のほうが適任だからと様々な場所に入り、突撃取材をしていたのだ。
人気企画であり、数字も撮れるからと、黒沢も無理に止めなかった。
そんな矢先、本当にまずいエリアに入った時に、撮影がバレたのだ。
カメラを取り上げられ、散々と殴りつけられて、命からがら逃げ出して戻ってきた山田は、ひどい有様だった。
命こそ助かったがしばらく入院になった上、手首が粉砕骨折していた――。
一生、元に戻らないだろう。
そう言われていたが、幸い、見た目だけはまともになった
表だって目立った傷もないのだが――。
「あはは、もう平気だって」
それでも、雨の日は傷が疼くのだろう。渋い顔をして手首を撫でる姿は何度も見ている。
力が入らないから、重いグラスは片手では持てない。
自分がやりたかったから、したことだから。
山田はいつもそういって笑っていたが……。
「……巻き込んで、済まなかった」
山田をスカウトしたのは、黒沢だった。
動画編集の担当が谷原だけで忙しく、助っ人で来ていた山田はいかにも内向的で、目立つのが好きじゃないタイプだった。
本当なら、大学で少ないが深い友情を育み、単位に追われながらもそれなりの成績を残し、普通の企業に就職して、過不足ない仕事をする。
そんな生活が似合いだったのだろう。
ただ何となく、磨けば光るような気がした。
自分や眉崎と違い、アングラやサブカルに造形の深そうな見た目は受けがいいのも知っていた。
ない属性を増やして幅広いファンを得るための駒。そのつもりだったのに、山田は必要以上に5Sに献身し、5Sのために壊れてくれたのだ。
まるで世界でここだけが、自分の居場所であるように。
「もう、謝らないでよ黒沢さん。僕は好きでやったことだし。怪我だって自業自得。別に黒沢さんのせいじゃないでしょ」
「だが……」
「それに……僕がこの手で持てないものは、黒沢さんが持ってくれるんでしょ? それだけで、僕は最高に嬉しいから」
あぁ、そうだ。
山田なら、そう言うのだろう。
黒沢に誘われたことを心底感謝して、5Sという場を何よりも大事にしているのが山田なのだから。
黒沢は黙って山田の手を握れば、山田はくすぐったそうに笑ってその手を握り返す。
巻き込んでしまった自分がこんなことを願うのは、傲慢だとわかっている。
だが、それでも――。
許されるのなら、本当にこの手のかわりをして、自分の隣に彼を置いてくれないだろうか。
そう、願わずにはいられなかった。
ビールジョッキでもマグカップでも、山田はいつも両手を添える。
袖を引っ張って指先だけを出して両手で飲む姿はいかにもあざとく、皮肉屋でいつでも斜に構えた山田をより小悪魔的に見せた。
「何だよおまえ、片手で飲めよ。女々しい奴だな」
誰かに茶化され馬鹿にされても、山田はヘラヘラ笑うだけ。
「そんな事いって、本当は僕のこと可愛いと思ってるんでしょ? 可愛いから気にしちゃうんだよねー。わかってるって、このほうが可愛いからこっち見たんでしょ?」
逆にそうして相手をからかい
「僕のこと素直にかわいい、って認めてくれるんなら、相手してあげてもいいけど。どうする?」
そうやって距離を詰め、色っぽくしなだれかかったりするから、茶化した方が真っ赤になる。
その姿を見て
「あ、照れてる。かわいいとこあるね。ね、本気にした?」
そんな事を言いながら口元を隠して笑うと、山田はまた両手を添えてジョッキを持つのだ。
あぁ、ただ自分を可愛く見せたいだけなんだな。
あざといと思ったら、やはりそういう奴だ。
自分をプロデュースするのが上手いのは、配信者として見せ方を知っているからだろう。
山田の周囲にいる人間は、そう思うだけだろう。
それだけ山田の態度は自然で普段と変わりなく、いかにも配信者の山田ガスマスクがいいそうな言葉を言い、やりそうな態度で笑うからだ。
――その笑顔を見ると、胸が痛む。
「おい、山田。車出すけど、乗っていくか?」
飲み会が終わり、各々解散する最中、黒沢は山田に声をかける。
普段こんな居酒屋には来ないのだが、山田が顔を出す時は黒沢もなるべく出るようにしていた。
「あ、黒沢サン。乗ってく乗ってく。ってかさ、黒沢サンは飲んでないの?」
「こういう所の酒はあんまりな……」
「だよねぇ、居酒屋のサワーもウイスキーも、薄かったり濃かったりするし。いかにも安酒ってニオイがするもん」
黒沢に呼ばれ、山田は嬉しそうに隣を歩く。
駐車場の合間から目敏く黒沢の車を見つけると、鍵が開くのと同時に助手席に滑り込んだ。
シートベルトを閉めるためバックルをカチャカチャ鳴らす山田の手を、黒沢は黙って握る。
「ど、どうしたの黒沢さん……」
驚く山田の頬を、黒沢は静かに撫でた。
「……悪かったな」
「えっ、えっ? な、何で急に謝るのさ。僕、何もしてない……よね?」
「いや……おまえの、腕。痛むんだろ? まだ……」
黒沢に言われ、山田は「あぁ」と小さく息を吐く。
山田がまだ5Sに入ったばかりの頃、彼は一人で率先して危険なエリアの突撃取材をしていた。
呪われた廃墟や心霊スポットというオカルト系の突撃取材だけではなく、撮影禁止の繁華街や裏取引が頻繁に行われていると噂の路地裏まで、自分のような目立たない人間のほうが適任だからと様々な場所に入り、突撃取材をしていたのだ。
人気企画であり、数字も撮れるからと、黒沢も無理に止めなかった。
そんな矢先、本当にまずいエリアに入った時に、撮影がバレたのだ。
カメラを取り上げられ、散々と殴りつけられて、命からがら逃げ出して戻ってきた山田は、ひどい有様だった。
命こそ助かったがしばらく入院になった上、手首が粉砕骨折していた――。
一生、元に戻らないだろう。
そう言われていたが、幸い、見た目だけはまともになった
表だって目立った傷もないのだが――。
「あはは、もう平気だって」
それでも、雨の日は傷が疼くのだろう。渋い顔をして手首を撫でる姿は何度も見ている。
力が入らないから、重いグラスは片手では持てない。
自分がやりたかったから、したことだから。
山田はいつもそういって笑っていたが……。
「……巻き込んで、済まなかった」
山田をスカウトしたのは、黒沢だった。
動画編集の担当が谷原だけで忙しく、助っ人で来ていた山田はいかにも内向的で、目立つのが好きじゃないタイプだった。
本当なら、大学で少ないが深い友情を育み、単位に追われながらもそれなりの成績を残し、普通の企業に就職して、過不足ない仕事をする。
そんな生活が似合いだったのだろう。
ただ何となく、磨けば光るような気がした。
自分や眉崎と違い、アングラやサブカルに造形の深そうな見た目は受けがいいのも知っていた。
ない属性を増やして幅広いファンを得るための駒。そのつもりだったのに、山田は必要以上に5Sに献身し、5Sのために壊れてくれたのだ。
まるで世界でここだけが、自分の居場所であるように。
「もう、謝らないでよ黒沢さん。僕は好きでやったことだし。怪我だって自業自得。別に黒沢さんのせいじゃないでしょ」
「だが……」
「それに……僕がこの手で持てないものは、黒沢さんが持ってくれるんでしょ? それだけで、僕は最高に嬉しいから」
あぁ、そうだ。
山田なら、そう言うのだろう。
黒沢に誘われたことを心底感謝して、5Sという場を何よりも大事にしているのが山田なのだから。
黒沢は黙って山田の手を握れば、山田はくすぐったそうに笑ってその手を握り返す。
巻き込んでしまった自分がこんなことを願うのは、傲慢だとわかっている。
だが、それでも――。
許されるのなら、本当にこの手のかわりをして、自分の隣に彼を置いてくれないだろうか。
そう、願わずにはいられなかった。
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