インターネット字書きマンの落書き帳
ワンナイトする野村と山ガス(野ガス……?/BL・ネタバレ)
ゲイバーでワンナイト・ラブの出会いをしているタイプの野村と山ガスの話をします。
一行ですべての説明が終わっちまったな。
松田のこと好きだけど、告白するなんてできない野村と、黒沢のこと好きだけど同じように憧れるだけでいる山ガスがワンナイトするだけの話です。
おぉん?
おお~ん!
おおん!
OK!
一行ですべての説明が終わっちまったな。
松田のこと好きだけど、告白するなんてできない野村と、黒沢のこと好きだけど同じように憧れるだけでいる山ガスがワンナイトするだけの話です。
おぉん?
おお~ん!
おおん!
OK!
『一夜だけの恋人』
「好きな人がいるんです――」 」
隣に座った男は、ウイスキーのグラスをじっと見つめたまま、か細い声でつぶやいた。
山田はグラスを傾けながら、男の横顔を眺める。
いかにも物静かな、文系のインテリ。
場末のバーなんかではなく、美術館巡りなどをしているほうがよっぽど似合いに見える。
「ちょっとさぁ、ここどういう所だかわかってて言ってる?」
山田はわざとおどけて笑う。
一夜だけの快楽を求め、男が男と出会う場所。
この地域一帯にある店は、スナックだろうとバーだろうとショーパブだろうと、おおむねそのような意図を秘めていた。
「好きな人がいる、とか言われたら萎える奴の方が多いと思うんだよね」
山田はウイスキーを飲み下す。
喉が焼ける感覚のあと、スモーキーな香りだけが鼻腔をくすぐった。
「そ、そうですよね。すいません。でも……」
男は少し慌てて何かを言おうとするが、口のなかでもごもごと言葉をかみつぶした後。
「……すいません」
所在なさげに視線を落とし、ただ謝るだけだった。
きっと、彼にとって男を愛するということそのものが、引け目なのだろう。
あるいはもっと自己嫌悪が強く、生きているだけで誰かに迷惑をかけている。そんな勘違いを、しているのかもしれない。
生きているだけで迷惑だ。
そう思うほど自分を信じていないくせに、自分の一挙手一投足が誰かの迷惑になっていると疑っていない。
「……なんて、僕だって似たようなもんだけど」
山田は自嘲する。
自分だってそうだ。自分のことは大嫌いだが、この嫌悪は肥大した自尊心のためだ。
僕はこんな場所でくすぶっているような人間ではない。
もっとすごいことができる。派手な人間になれる。
だからもっと、完璧な人間にならなくてはいけない。
そうしなければ、5Sのお荷物となって、きっと簡単に捨てられる。
黒沢に見捨てられる――。
空になったグラスの縁を指でなぞりながら、山田は見知らぬ男の顔をのぞき込んだ。
「ね、お兄さんさぁ。僕で良かったら、相手しよっか?」
男は、きょとんとした顔を山田に向ける。
「い、いいんですか? あ、あの……」
「いいよ。僕も、好きな人いるし。その人、ノンケだから抱いてもらえないのもわかってるんだよね。お兄さんも、そうでしょ」
はい。と、消え入りそうな声でつぶやいて、微かにこくりと頷く。
頬だけでなく、耳まで赤くなっていた。
きっと、こういう場所初めてなのだろう。
本当に、一夜の相手を探していたというより、誰かに話を聞いてほしかっただけかもしれない。
「じゃ、それ飲んだら行こっか」
「えっ? あ、どこへ……?」
「ホテル。まさか外でするわけにもいかないし。僕はお兄さんを家に入れるつもりないし。お兄さんだって、僕を部屋に上げたくないでしょ」
「あ……そ、そうですね……」
「なら、決まりね。はい、さっさと会計しちゃって。行こうか」
男は慌ててウイスキーを飲むが、慌てすぎたのかひどくむせる。
「あー、もう。そんな飲み方して……僕より年上だよね? もっと落ち着いてって」
「す、す、すいません! 慣れ……慣れて、なくて。その……こういう場所も、お酒も……」
「だろうね。だってゲイバーなんて、お兄さんに全然似合わないもん」
ハンドタオルを差し出せば、むせ込んだ口元を押さえて男は小さく頭を下げる。
男前というより、童顔で中性的な顔だ。
――ノンケにだったら受けそうな顔だけどな。
山田はそんなことを思いながら、男の手をとり外に出た。
「ホテル、僕の知ってるところでいいよね? あ、ホテル代は出してもらっていい? 今月、ちょっと金欠でさ」
「え? えぇ、もちろんです……」
「あと、僕どっちかというとボトムだけど、大丈夫? ま、そこまでできなくても良くしてあげるけど」
「は、はい。あの……一つ、お願いがあるんですけど……」
「へぇ、気弱そうな感じなのに、初めての相手にお願いできちゃうんだ。いいよ、一応聞いてあげる。でも、あんまり過激なプレイできないからね?」
「ぷ、プレイとか、ではなく……」
男はうつむき、しばらくもじもじしていたが、覚悟を決めたように顔をあげると
「あ、あの……す、好きな人の名前を、呼びながら……でも、いいですか」
そんなことを言うものだから、山田はなんだかおかしくなる。
「そんなの、どうだっていいって。お互い、名前を教える理由もないんだから……あ、それなら、僕も。僕の好きな人の名前で、呼んでもいい? ……僕もさ、好きな人には、抱いてもらえないのわかってるから。疑似恋愛、ってやつ?」
「わ、わかりました……あの。よろしくおねがいします……」
オドオドと山田の手を握る態度とは裏腹に、その夜は十分すぎるほど楽しめた。
体の相性というより、お互いに好きな相手に思いを告げられない燻りが高まっていたからだろう。
唇を、肌を重ねて絡み合い、互いの欲望を貪り尽くす最中。
「松田さん……松田さん、松田さ……」
知らない男が呼ぶ、知らない男の名前。
必死になって求めるその姿は健気なくらいで、愛らしくて……。
――その顔で頼めば、その人、振り向いてくれるんじゃないかな。
つい、そんなことを思うのだ。
夜明けがきて、お互い最後まで名も告げぬまま去る。
もう二度と会うこともない。 山田もそれほど特徴のある顔ではないし、相手もそう。一晩寝て起きたのなら忘れられてるような顔だから、もう会っても気付かないだろうけど。
「あーあ、松田ってひとめちゃくちゃ損してるよね。あの人だったら、ワンチャンありそうだけど」
誰に聞かせるわけでもなくつぶやくと、朝日の昇る町に消える。
二人が再会するのは、それから3年ほどたった後になる。
「好きな人がいるんです――」 」
隣に座った男は、ウイスキーのグラスをじっと見つめたまま、か細い声でつぶやいた。
山田はグラスを傾けながら、男の横顔を眺める。
いかにも物静かな、文系のインテリ。
場末のバーなんかではなく、美術館巡りなどをしているほうがよっぽど似合いに見える。
「ちょっとさぁ、ここどういう所だかわかってて言ってる?」
山田はわざとおどけて笑う。
一夜だけの快楽を求め、男が男と出会う場所。
この地域一帯にある店は、スナックだろうとバーだろうとショーパブだろうと、おおむねそのような意図を秘めていた。
「好きな人がいる、とか言われたら萎える奴の方が多いと思うんだよね」
山田はウイスキーを飲み下す。
喉が焼ける感覚のあと、スモーキーな香りだけが鼻腔をくすぐった。
「そ、そうですよね。すいません。でも……」
男は少し慌てて何かを言おうとするが、口のなかでもごもごと言葉をかみつぶした後。
「……すいません」
所在なさげに視線を落とし、ただ謝るだけだった。
きっと、彼にとって男を愛するということそのものが、引け目なのだろう。
あるいはもっと自己嫌悪が強く、生きているだけで誰かに迷惑をかけている。そんな勘違いを、しているのかもしれない。
生きているだけで迷惑だ。
そう思うほど自分を信じていないくせに、自分の一挙手一投足が誰かの迷惑になっていると疑っていない。
「……なんて、僕だって似たようなもんだけど」
山田は自嘲する。
自分だってそうだ。自分のことは大嫌いだが、この嫌悪は肥大した自尊心のためだ。
僕はこんな場所でくすぶっているような人間ではない。
もっとすごいことができる。派手な人間になれる。
だからもっと、完璧な人間にならなくてはいけない。
そうしなければ、5Sのお荷物となって、きっと簡単に捨てられる。
黒沢に見捨てられる――。
空になったグラスの縁を指でなぞりながら、山田は見知らぬ男の顔をのぞき込んだ。
「ね、お兄さんさぁ。僕で良かったら、相手しよっか?」
男は、きょとんとした顔を山田に向ける。
「い、いいんですか? あ、あの……」
「いいよ。僕も、好きな人いるし。その人、ノンケだから抱いてもらえないのもわかってるんだよね。お兄さんも、そうでしょ」
はい。と、消え入りそうな声でつぶやいて、微かにこくりと頷く。
頬だけでなく、耳まで赤くなっていた。
きっと、こういう場所初めてなのだろう。
本当に、一夜の相手を探していたというより、誰かに話を聞いてほしかっただけかもしれない。
「じゃ、それ飲んだら行こっか」
「えっ? あ、どこへ……?」
「ホテル。まさか外でするわけにもいかないし。僕はお兄さんを家に入れるつもりないし。お兄さんだって、僕を部屋に上げたくないでしょ」
「あ……そ、そうですね……」
「なら、決まりね。はい、さっさと会計しちゃって。行こうか」
男は慌ててウイスキーを飲むが、慌てすぎたのかひどくむせる。
「あー、もう。そんな飲み方して……僕より年上だよね? もっと落ち着いてって」
「す、す、すいません! 慣れ……慣れて、なくて。その……こういう場所も、お酒も……」
「だろうね。だってゲイバーなんて、お兄さんに全然似合わないもん」
ハンドタオルを差し出せば、むせ込んだ口元を押さえて男は小さく頭を下げる。
男前というより、童顔で中性的な顔だ。
――ノンケにだったら受けそうな顔だけどな。
山田はそんなことを思いながら、男の手をとり外に出た。
「ホテル、僕の知ってるところでいいよね? あ、ホテル代は出してもらっていい? 今月、ちょっと金欠でさ」
「え? えぇ、もちろんです……」
「あと、僕どっちかというとボトムだけど、大丈夫? ま、そこまでできなくても良くしてあげるけど」
「は、はい。あの……一つ、お願いがあるんですけど……」
「へぇ、気弱そうな感じなのに、初めての相手にお願いできちゃうんだ。いいよ、一応聞いてあげる。でも、あんまり過激なプレイできないからね?」
「ぷ、プレイとか、ではなく……」
男はうつむき、しばらくもじもじしていたが、覚悟を決めたように顔をあげると
「あ、あの……す、好きな人の名前を、呼びながら……でも、いいですか」
そんなことを言うものだから、山田はなんだかおかしくなる。
「そんなの、どうだっていいって。お互い、名前を教える理由もないんだから……あ、それなら、僕も。僕の好きな人の名前で、呼んでもいい? ……僕もさ、好きな人には、抱いてもらえないのわかってるから。疑似恋愛、ってやつ?」
「わ、わかりました……あの。よろしくおねがいします……」
オドオドと山田の手を握る態度とは裏腹に、その夜は十分すぎるほど楽しめた。
体の相性というより、お互いに好きな相手に思いを告げられない燻りが高まっていたからだろう。
唇を、肌を重ねて絡み合い、互いの欲望を貪り尽くす最中。
「松田さん……松田さん、松田さ……」
知らない男が呼ぶ、知らない男の名前。
必死になって求めるその姿は健気なくらいで、愛らしくて……。
――その顔で頼めば、その人、振り向いてくれるんじゃないかな。
つい、そんなことを思うのだ。
夜明けがきて、お互い最後まで名も告げぬまま去る。
もう二度と会うこともない。 山田もそれほど特徴のある顔ではないし、相手もそう。一晩寝て起きたのなら忘れられてるような顔だから、もう会っても気付かないだろうけど。
「あーあ、松田ってひとめちゃくちゃ損してるよね。あの人だったら、ワンチャンありそうだけど」
誰に聞かせるわけでもなくつぶやくと、朝日の昇る町に消える。
二人が再会するのは、それから3年ほどたった後になる。
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