忍者ブログ

インターネット字書きマンの落書き帳

   
焦燥の中にゆらめく享受(眉ガス/BL)
罪悪感共鳴二次創作!(挨拶)
こうして最初に「強い罪悪感を皆さんで共鳴させて攻撃力を上げていきましょうね」と宣言することで罪悪感を揺るがしてもいい、というライフハックです。

それはそれとして。
今回は「大学生時代の眉崎×山ガス」の話を、暴力と蛮行にみちみちて書きましたよ。

暴力と蛮行をた~っぷり楽しんでください♥
大丈夫、創作の暴力はセーフ!



『蝶の焦燥』

 俺の人生は焦燥に支配されている。そういっても、過言ではないのだろう。
 仲間と話している時も、賑やかな街並みにいる時も、俺の内側にはいつも腐った流木が積み上げられている。
 腐臭漂う流木は燻るような音をたて、日に日に蓄積されている。

 ――あぁ、何も思い通りにならない。

 大学に行けばもう少し頭がよくなるだろう。
 商売女の子供だから。夜の蝶々の息子なんてこんなもんだろう。
 そうして俺を軽んじる連中を少しでも見返したくて、名のある大学に合格した。

 頭が悪いのはその通り。だから日々の課題さえ悲鳴をあげながら何とかこなす有り様だが、落第はしていない。

 それなのに、俺は焦り燻っている。
 本当にそれが、俺の求めているものなのか。どれだけ利口になったとして、俺はやはり水商売の女から生まれた子供に過ぎないんじゃないか。
 父親もハッキリしないような、宙ぶらりんの人間なのではないか。

 孤独に身を置けば妙な考えばかりが浮かぶ。
 俺が母と同じ歓楽街に身を置き、そこでホスト稼業なんていかにも水商売あがりの女から生まれた息子の選びそうな仕事をはじめたのは必然だったのだろう。

 賑やかな声。薄っぺらな褒め言葉。アルコールの匂い。
 夜を途切れさせぬためのライトの下、俺の孤独は薄まるが、焦燥は募るばかりだ。

 ――やはり母と同じだ。
 甘い汁を吸い、上辺だけの感情で羽をやすめるのが似合いの蝶だ。
 いつまでも羽を輝かせて生きていけるほど美しくもない癖に、いつまでそうして鱗粉を周囲に振りまき落とすことで自分に価値があるよう見せかけるつもりなのだ。

 やはり父と同じだ。
 甘い汁を吸い付くし、またどこかに飛び去っていく。安寧な巣をもたず、光の下に飛び交う影にしかなり得ない。
 巣をもたず飛び続けるには、その大きな羽は無駄だろう。濡れてはすぐに飛べなくなり、また決して遠くまで飛ぶこともない。
 安寧を知らぬまま大地に伏し、ばらばらに散った輝かぬ羽を踏みにじられて嘲られるのが似合いなのではないか。

 ロクデナシの血はどう足掻いても拭う方法はない。
 俺は父と母にと同じように、羽を散らして死ぬのだ。

 頭の奥底から、常に誰かが囀る。

 バカ言うな。俺がそんな簡単に死ぬものか。
 俺の母は愚かだ。愚鈍だ。自分の境遇を他人のせいにして、怒鳴り散らすことでしか自分を正当化できない、弱い女だ。
 父なんて知らない。
 母が俺を産むといった時、それを直視すらできなかった意気地無しの男と俺は違う。

 違う。違うのだと思うのに、輝きは影を深くする。
 果たしてそうだろうか。

 お前は今日も酒で口を湿らせ、滑らかな舌で有り体のおべっかを使い、女たちから金を巻き上げただけだろう。  
そんなこと、おまえじゃなくても誰だってできる。
 少しの軽率さと、口の上手さ。それにちょっと小奇麗な身なりがあれば、代替品はいくらでもあるのだ。

 おまえはまだ、何者にもなれてない。
 そして何者にもなれないまま、大衆に埋もれ価値のない蝶の死骸となるのだ。

 頬杖をつき、琥珀色の液体を見つめる。

 ――機嫌悪いの、ジュン。

 隣に座った女が、心配そうにこちらを見る。

 ――そんなことないよ。最高に楽しいから、夢でも見ているのかと思ってた。

 心にもない言葉が口から出る。
 装飾華美の言葉を前に、女は嬉しそうに笑っていた。

 ※※※

 焦燥は苛立ちとなり、そして衝動となる。
 治まらない怒りははけ口をもとめ、自然と強く拳を握っていた。

 怒鳴れ、殴れ、理由は後付けでいい。感情あるがままに、相手を責め立てろ。
 そうしなければ、俺は俺ではいられない。

「山田ァ! ……寝てんのか。起きろ!」

 俺は部屋に戻るなり大声を張り上げる。
 時刻は夜明から間もなく、世間一般は早朝と呼ばれる頃だ。

「どうしたのさ、眉崎サン。帰ってきたの? うわ、まだこんな時間……」

 俺の大声に驚いたのか、山田は欠伸を噛み殺しながらスマホを見ると寝床代わりにしているソファーに座る。

 山田は、数ヶ月前から俺の家に住み着いている。
 ちょっとした好奇心で俺が引っかけたのだが、何とはなしに手元に置いておきたくなり、それから家に帰らないよう半ば閉じ込めるような生活を強要しているからだ。
 とはいっても、別に本気で監禁してる訳じゃない。
 俺のいるアパートのほうが大学に近いし、ボロい部屋だがエアコンもある。トイレ共同でエアコンもない山田のアパートと比べてもプライバシーもある。山田は俺の部屋にいるほうがよっぽど楽だと思い、俺の部屋に住み着いてるのだ。

 滅多に部屋から出ないのも、山田が出不精の引きこもりってだけ。俺が出るなと命令は……少ししか、していない。

 もちろん、山田の奴が俺のことを愛しているというのも多少はあるのだろう。

「なはっ……怖い顔してるね。どうしたの? 変な客にでも捕まった? それとも……」

 見るからに俺が苛立っているのに気付いても、山田はいつも笑っている。
 そこに恐怖はなく、ただ俺が怒っている事実だけしか見ていない。
 山田はいつだってそうだ。俺の怒りも憤りもあるがまま受け止め、決して否定はしない。そして、俺の気分にあわせて慌てたり不安になったりもしない。
 それを証明するかのよう、山田は寝ぼけた目でスマホをいじっていた

 その態度が、俺の中にある壁を決壊させる。

「山田……テメェ……!」

 それから、どれだけ理不尽な言葉をはなったかはわからない。
 怒鳴り声から罵声を浴びせる中、山田が一切関係ない事例もすべて山田の責務として思い切り投げつける。
 言葉だけじゃない。苛立ちは簡単に暴力となり、山田の身体を打ち据えた。
 殴れば俺の腕から軋む音がして、やけに熱を帯びたがそれすら今は無意味だ。俺は衝動に支配されるまま、散々に山田を殴りつける。

 それでも山田は怒りも悲しみもせず、茶化すように笑って反論するだけだった。
 しかもその反論は、二つも年下の山田のくせにいつも冷静で正しく、それがかえって惨めになる。

 ふざけるな、年下の癖に。
 わかったような口を効くな。

 怒りはますます強い暴力となり、山田の言葉を押さえ込む。

 ――あぁ、本当に最低だ。
 俺は山田に対して、ひどいことをしている。

 山田を部屋に置いているのは、愛しているからだ。
 山田を他の誰かにとられたいとは思っていない。他の奴が山田に無体を強いるのは許せない。
 こいつは俺のものだ。俺の支配下にあり、俺の隣にあるべき存在だ。

 強くそう思い、そう願っている。
 それにもかかわらず、俺は粗雑に山田を扱う。暴力というより蛮行で。怒りは罵倒となり、山田の尊厳を食い潰す。

 それだというのに山田は――。

「ははっ……ほんと、眉崎サンってサイテーだね」

 そういうが、決して逃げようとはしなかった。
 最低だとわかっている俺の隣で、いつもどこか、俺がそうであることを望むように笑うのだ。
 俺の人生を、行動を、言葉を、全て最低と決めつけて。その上でまだ、そばにいるのだ。

 気付いた時、俺の前にはボロボロになった山田が横たわっていた。
 息はしている。だがそれだけだ。

「……悪かったよ」

 身体中に痣が浮んでいる。
 身動きさえ億劫なのだろう。山田は倒れたまま、動こうとはしない。
 その姿を目の当たりにし、ようやく俺は正気に戻った。

 5Sの活動があるから、顔は殴らないよう意識はしていたが、顔以外がメチャクチャだ。
 これでは立って歩くのさえやっとだろう。

 また黒沢にドヤされる。そう思うと面倒なのに、安心している自分もいる。
 これだけ痛め付けておけば、俺の手元から容易に逃げる事はないだろう。

 いや、今はそれよりも怪我を治してやらないと。
 こんなにひどい有り様にしたのは、俺自身なのだから。

 ぼんやりと立ち上がる俺に

「まって、眉崎サン」

 山田は、ボロボロになった身体を引きずって、必死になって縋り付く。

 何だよ、やめてくれ。どうしたんだ。俺に呆れて離れたいのか。
 別れたいとか言わないでくれ。俺はお前を手放したくない。俺のそばにいてほしい。
 どうかこんな俺でも、見捨てないでいてくれ。

 思いが巡り、言葉が出ない俺を前に、山田は柔らかに笑ってみせた。

「……行かないでよ、眉崎サン。僕、みて。ほら、ボロボロで動けないから。責任とって、ベッドまで運んで」

 そのまま愛して。
 傷の痛みを忘れるほど、強く深く。
 そうしたら、ゆるしてあげるから。

 山田の言葉は、いつだって耳障りがよく心地よい。
 だからその存在も言葉も、全て幻想ではないかと思う事すらある。

 俺は黙って頷くと、動けない山田を抱きかかえ望み通りにベッドへ運ぶ。
 腕には見た目よりずっと軽い山田の体重と、やけに温かい体温とだけが伝わった。

 ベッドに寝かせ、濡れたタオルで顔を拭く。
 俺の手に頬ずりするとくすぐったそうに笑うと、山田は温かな眼差しを向けた。

「何も心配しなくていいから。好き。好きだよ眉崎サン――愛してる」

 俺の身体に奉仕し、ただひたすら献身する、年下で綺麗な顔をした男。
 山田は俺の一切を否定せず、俺が俺であることその全てを受け入れる。

 生まれついた性格も、治しようのない口の悪さも、理不尽な怒りと暴力も、身体に疼く性欲も――。

「……愛している」

 眠りに落ちる前、いつも山田はそういって笑う。
 そうして目を閉じ、静かに寝息をたてる顔はいつだって慈悲深く、そして温かく……。

 だからこそ、俺はこの日だまりにいる自分に戸惑うのだ。

拍手

PR
  
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
カレンダー
09 2025/10 11
S M T W T F S
1 4
6 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
東吾
性別:
非公開
職業:
インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
Copyright ©  -- くれちきぶろぐ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]