インターネット字書きマンの落書き帳
責任逃れをするタイプの山ガスとダーマツ、時々野村
罪悪感共鳴二次創作!(挨拶)
罪悪感共鳴二次創作の専門家です。
今日も皆さんの心に存在しない罪悪感を植え付け、皆さんには山田ガスマスクの共犯者になっていただきます。
覚悟と敬意をもって、松田の優しさを受け入れ、野村の罵倒に責め立てられてください。
明確に刃物を研いだコメント残してるじゃねぇか……。
へっへっへ……これが因業ですぜ。
罪悪感共鳴二次創作の専門家です。
今日も皆さんの心に存在しない罪悪感を植え付け、皆さんには山田ガスマスクの共犯者になっていただきます。
覚悟と敬意をもって、松田の優しさを受け入れ、野村の罵倒に責め立てられてください。
明確に刃物を研いだコメント残してるじゃねぇか……。
へっへっへ……これが因業ですぜ。
『子羊の残響』
目覚めれば、テーブルの上にはラップのかかった食事が並んでいる。
焼き鮭におひたし、漬物――あっさりした献立だ。
松田さんが自分のお弁当をつめるついでにと、僕の分もいつもつくってくれる。
『おまえ、えらく細っそいなぁ。ほんまにちゃんと飯喰うてるんか?』
僕の身体を見るたび、松田さんはどこか呆れた声を出す。
それでいつも、たっぷりの食事を作っておいてくれのだ。残したら怒られるし、捨てる訳にもいかないから、いつも全部平らげる。おかげですっかり健康的になった。
松田さんももうオジサンだ。弁当もアッサリした和食が多い。こってりじゃないから、僕でも無理なく食べられる。
「……少しは太ったかな? 松田さん、あれで料理けっこう上手だから、つい食べ過ぎちゃうんだよね」
食べ終わった食器をシンクに置き、大きな鏡に身体を映す。
少し、太ったとは思う。でも、塀の中にいた時はもっと痩せていたから、やっと元に戻ったくらいだろう。
……そう、僕は罪を犯した。
そして、ずっと逃げていた。
捕まって罪は暴かれ、裁判の後、刑務所行き。
刑期を終えた僕を引き取ってくれたのが、松田さんだった。
松田さんとは、僕が罪を隠していたころから知り合いだ。
僕から声をかけて、知り合って、少しは話もするような間柄だったけど、僕を引き取る筋合いなど松田さんにはない。
だから、僕を迎えにきた時は正直いって驚いた。
付き合いが浅いというのもある。
だけどそれ以上に、僕が。僕たちが殺してしまった「野村」さんは、松田さんの同僚で、とても大事な存在だったからだ。
僕が野村さんを殺してしまったから、松田さんには大きな疑いがかかったと聞いている。それで松田さんの人生はそれでメチャクチャになったとも。
松田さんは、けっこういい年齢で、思ったよりきちんとした大人で、経済的にも安定してる。顔だって悪くない。
それでも独り身なのは、きっとあの事件のせいだろう。
だから、僕は恨まれてるはずだと思っていた。
僕を引き取るふりをして、僕を監禁して、乱暴して、憂さ晴らしするんじゃないか――そんな覚悟もしていた。実際そうされても仕方ないからだ。
それなのに、松田さんは僕に普通の生活をくれた。
新しい服を買ってくれて、自分の部屋に置いてくれて、毎日食事を食べさせてくれている。おかげで僕は、細々とだが仕事もできるようになった。 昔の名前はつかってない。名前を出さない仕事がほとんどだけど、それでもぽつぽつ続いてている。僕は以前の生活を取り戻そうとしていた。これもすべて、松田さんのおかげだ。
『美味しいでしょう、松田さんの料理』
食器を洗おうとする僕に、誰かが囁きかける。振り返らなくても、わかる。
野村さん……野村さんだ。
『松田さんは、料理が上手いんですよ。僕がパンばかり食べていたら、たまにはおかずも食べろって卵焼きだったり、ウィンナーだったり。いろいろわけてくれて、どれもとてもおいしかったんです』
やめて、やめてよ。やめてくれ。どうして今、そんなことを言うのさ。
『……僕はもう食べられないのに』
僕は、思わず耳を塞ぐ。 だが、それでも確かに気配あった。
わかっている。気のせいなのだ。野村さんは、もう死んでいる。僕のせいなんだ。
実は、野村さんのことを何も知らなかった。 殺したその時、すぐに逃げ出し、顔すらろくに見ていなかった。 翌日、ニュースでやっと名前と顔を知った。
その後、松田さんの話から断片的に野村さんの人となりを知る。温厚で、どこかオドオドした雰囲気なのに、研究面では頑なで自分の意見を容易に引っ込めない。松田さんとは――ライバルというより、頻繁に言い争う競争相手だったらしい。
「可愛げのない奴」――それが松田さんの評価だ。だけど優しく、ほわほわした雰囲気で同僚には人気あったようだ。松田さんはいつも「俺様」って感じで、見るからに怖そうだし、話し掛けづらいタイプだから、人気がないのは仕方がない。
だけど――。
『嫌いじゃなかったんですよ』
僕が座り込むと、野村さんは優しく微笑む。これは幻影だ。幽霊ではなく、僕の脳が作る罪の残響。
『僕は、松田さんが嫌いじゃなかったんです。松田さんだって僕のこと、別に嫌いじゃなかった……それなのに、どうして……』
どうして、あなたがそこにいるんですか?
凍えるような笑顔。唇だけがうごく。
あぁ、わかってる。僕はふさわしくない。松田さんの隣にいては、いけないんだ。 ここは本来、野村さんの場所だった。野村さんの話をする時、松田さんはいつだって苦笑いをするが、嫌がる様子は一つも見せない。
少なくても、僕よりずっと愛されていた。
突き上げる衝動で、僕は咄嗟にポケットへ手を入れる。いつでも終わらせられるよう携帯している、冷たい金属が指先に触れた。世界が明滅し、全てが灰色に染まる。鋭い刃の輝きが僕の身体を貫き、世界を赤く染め、綺麗に閉じていく幻想。
だけど、力が入らない。
僕が生きていて、いいはずがない。幸せになる資格など、あるはずがない。すべてわかっているはずなのに、指先の冷たい刃物に触れるだけ。身体を裂く空想が脳裏に浮かぶだけ。
実行できず身動きもとれない僕は、自分に憤る。臆病者。意気地無し。
『死ぬ覚悟なんてないくせに』
野村さんが笑っている。優しい顔で、穏やかな顔で、クスクスと。愛されていた人の笑顔だ。
僕の喉から、声にならない何かが通り過ぎて行く。
そのまま、灰色の濁流が僕の身体のみこみ、僕はその感覚に抗うことはく溺れていくだけだった。
※※※
気付いたとき、僕の前に松田さんの顔がある。
「山田! ……やっと起きたんか」
呆れと安心とが交じった表情で僕を見て、松田さんはすぐに腕を掴んだ。
「これ、自分でやったんか?」
手首にはいくつもの傷が残っている。どれも深くはない。野村さんの言う通りだ。臆病な僕は、死ぬほどの勇気もない。そんな勇気があれば、僕は逃げ出してなかっただろう。救急車を呼んで、助けることもできたはずだ。
僕は無言で俯き、小さく頷くだけだった。
「アホが!」
厳しい声が胸を刺す。乱暴に手を引かれたあと、そばに置かれた救急箱を取り出し慣れた手つきで包帯を巻く。
そう、慣れている。僕が何度も、こんなことをするから。
「えぇか、簡単に死のうと思うたらアカン。お前には、ちゃんと生きてもらわな」
わかってる、僕は……。
「お前はクズや。すぐに死に逃げようとするクセに、それもできないクズにはな、ちゃんと人間になってもらわなあかん。それで後悔してもらわんと――アイツに、顔向けできへんからな」
包帯を巻き続ける松田さんの手つきは優しい。でもその目は柔らかくはない。暖かくはあっても、愛を感じるほどの熱はない。責任感と、義務感と、懺悔のための手当て――それが松田さんの内にある全てなのだと、痛感する。
わかっている、でも。
『あなたは、僕の代わりにはなれませんよ』
「ほら、終わったで」
松田さんはぽん、と優しく包帯に手を置く。
手当てされたばかりの手首を見て、僕は改めて思うのだ。
生きていることが罰なのだと。
生き延びるという懲罰が、僕に与えられた唯一の贖罪なのだ。
目覚めれば、テーブルの上にはラップのかかった食事が並んでいる。
焼き鮭におひたし、漬物――あっさりした献立だ。
松田さんが自分のお弁当をつめるついでにと、僕の分もいつもつくってくれる。
『おまえ、えらく細っそいなぁ。ほんまにちゃんと飯喰うてるんか?』
僕の身体を見るたび、松田さんはどこか呆れた声を出す。
それでいつも、たっぷりの食事を作っておいてくれのだ。残したら怒られるし、捨てる訳にもいかないから、いつも全部平らげる。おかげですっかり健康的になった。
松田さんももうオジサンだ。弁当もアッサリした和食が多い。こってりじゃないから、僕でも無理なく食べられる。
「……少しは太ったかな? 松田さん、あれで料理けっこう上手だから、つい食べ過ぎちゃうんだよね」
食べ終わった食器をシンクに置き、大きな鏡に身体を映す。
少し、太ったとは思う。でも、塀の中にいた時はもっと痩せていたから、やっと元に戻ったくらいだろう。
……そう、僕は罪を犯した。
そして、ずっと逃げていた。
捕まって罪は暴かれ、裁判の後、刑務所行き。
刑期を終えた僕を引き取ってくれたのが、松田さんだった。
松田さんとは、僕が罪を隠していたころから知り合いだ。
僕から声をかけて、知り合って、少しは話もするような間柄だったけど、僕を引き取る筋合いなど松田さんにはない。
だから、僕を迎えにきた時は正直いって驚いた。
付き合いが浅いというのもある。
だけどそれ以上に、僕が。僕たちが殺してしまった「野村」さんは、松田さんの同僚で、とても大事な存在だったからだ。
僕が野村さんを殺してしまったから、松田さんには大きな疑いがかかったと聞いている。それで松田さんの人生はそれでメチャクチャになったとも。
松田さんは、けっこういい年齢で、思ったよりきちんとした大人で、経済的にも安定してる。顔だって悪くない。
それでも独り身なのは、きっとあの事件のせいだろう。
だから、僕は恨まれてるはずだと思っていた。
僕を引き取るふりをして、僕を監禁して、乱暴して、憂さ晴らしするんじゃないか――そんな覚悟もしていた。実際そうされても仕方ないからだ。
それなのに、松田さんは僕に普通の生活をくれた。
新しい服を買ってくれて、自分の部屋に置いてくれて、毎日食事を食べさせてくれている。おかげで僕は、細々とだが仕事もできるようになった。 昔の名前はつかってない。名前を出さない仕事がほとんどだけど、それでもぽつぽつ続いてている。僕は以前の生活を取り戻そうとしていた。これもすべて、松田さんのおかげだ。
『美味しいでしょう、松田さんの料理』
食器を洗おうとする僕に、誰かが囁きかける。振り返らなくても、わかる。
野村さん……野村さんだ。
『松田さんは、料理が上手いんですよ。僕がパンばかり食べていたら、たまにはおかずも食べろって卵焼きだったり、ウィンナーだったり。いろいろわけてくれて、どれもとてもおいしかったんです』
やめて、やめてよ。やめてくれ。どうして今、そんなことを言うのさ。
『……僕はもう食べられないのに』
僕は、思わず耳を塞ぐ。 だが、それでも確かに気配あった。
わかっている。気のせいなのだ。野村さんは、もう死んでいる。僕のせいなんだ。
実は、野村さんのことを何も知らなかった。 殺したその時、すぐに逃げ出し、顔すらろくに見ていなかった。 翌日、ニュースでやっと名前と顔を知った。
その後、松田さんの話から断片的に野村さんの人となりを知る。温厚で、どこかオドオドした雰囲気なのに、研究面では頑なで自分の意見を容易に引っ込めない。松田さんとは――ライバルというより、頻繁に言い争う競争相手だったらしい。
「可愛げのない奴」――それが松田さんの評価だ。だけど優しく、ほわほわした雰囲気で同僚には人気あったようだ。松田さんはいつも「俺様」って感じで、見るからに怖そうだし、話し掛けづらいタイプだから、人気がないのは仕方がない。
だけど――。
『嫌いじゃなかったんですよ』
僕が座り込むと、野村さんは優しく微笑む。これは幻影だ。幽霊ではなく、僕の脳が作る罪の残響。
『僕は、松田さんが嫌いじゃなかったんです。松田さんだって僕のこと、別に嫌いじゃなかった……それなのに、どうして……』
どうして、あなたがそこにいるんですか?
凍えるような笑顔。唇だけがうごく。
あぁ、わかってる。僕はふさわしくない。松田さんの隣にいては、いけないんだ。 ここは本来、野村さんの場所だった。野村さんの話をする時、松田さんはいつだって苦笑いをするが、嫌がる様子は一つも見せない。
少なくても、僕よりずっと愛されていた。
突き上げる衝動で、僕は咄嗟にポケットへ手を入れる。いつでも終わらせられるよう携帯している、冷たい金属が指先に触れた。世界が明滅し、全てが灰色に染まる。鋭い刃の輝きが僕の身体を貫き、世界を赤く染め、綺麗に閉じていく幻想。
だけど、力が入らない。
僕が生きていて、いいはずがない。幸せになる資格など、あるはずがない。すべてわかっているはずなのに、指先の冷たい刃物に触れるだけ。身体を裂く空想が脳裏に浮かぶだけ。
実行できず身動きもとれない僕は、自分に憤る。臆病者。意気地無し。
『死ぬ覚悟なんてないくせに』
野村さんが笑っている。優しい顔で、穏やかな顔で、クスクスと。愛されていた人の笑顔だ。
僕の喉から、声にならない何かが通り過ぎて行く。
そのまま、灰色の濁流が僕の身体のみこみ、僕はその感覚に抗うことはく溺れていくだけだった。
※※※
気付いたとき、僕の前に松田さんの顔がある。
「山田! ……やっと起きたんか」
呆れと安心とが交じった表情で僕を見て、松田さんはすぐに腕を掴んだ。
「これ、自分でやったんか?」
手首にはいくつもの傷が残っている。どれも深くはない。野村さんの言う通りだ。臆病な僕は、死ぬほどの勇気もない。そんな勇気があれば、僕は逃げ出してなかっただろう。救急車を呼んで、助けることもできたはずだ。
僕は無言で俯き、小さく頷くだけだった。
「アホが!」
厳しい声が胸を刺す。乱暴に手を引かれたあと、そばに置かれた救急箱を取り出し慣れた手つきで包帯を巻く。
そう、慣れている。僕が何度も、こんなことをするから。
「えぇか、簡単に死のうと思うたらアカン。お前には、ちゃんと生きてもらわな」
わかってる、僕は……。
「お前はクズや。すぐに死に逃げようとするクセに、それもできないクズにはな、ちゃんと人間になってもらわなあかん。それで後悔してもらわんと――アイツに、顔向けできへんからな」
包帯を巻き続ける松田さんの手つきは優しい。でもその目は柔らかくはない。暖かくはあっても、愛を感じるほどの熱はない。責任感と、義務感と、懺悔のための手当て――それが松田さんの内にある全てなのだと、痛感する。
わかっている、でも。
『あなたは、僕の代わりにはなれませんよ』
隣に立つ野村さんが静かに囁く。
その言葉は刃物となり、僕の首筋を切り裂いていく。
松田さんの隣にいられるという事実と、実際の距離感の断裂を頭と心で理解する。
松田さんの優しさは僕を癒してくれたけど、それは決して愛ではない。
今でもわかる。松田さんは僕に手を差し伸べているのではない——野村さんのために手を尽くしているのだ。
松田さんの隣にいられるという事実と、実際の距離感の断裂を頭と心で理解する。
松田さんの優しさは僕を癒してくれたけど、それは決して愛ではない。
今でもわかる。松田さんは僕に手を差し伸べているのではない——野村さんのために手を尽くしているのだ。
「ほら、終わったで」
松田さんはぽん、と優しく包帯に手を置く。
手当てされたばかりの手首を見て、僕は改めて思うのだ。
生きていることが罰なのだと。
生き延びるという懲罰が、僕に与えられた唯一の贖罪なのだ。
僕は、何でも与えられるが、本当の望みは届かない。今の僕は、誰かのための空席を罰で埋める代替品、あるいは生贄でしかないのだ。
野村さんの姿はすでに消えている。
『僕の代わりにはなれませんよ』
だけどその言葉だけは、残響のように震えていた。
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