インターネット字書きマンの落書き帳
罪悪感で身動きが取れなくなる山ガス概念
罪悪感共鳴二次創作!(挨拶)
というわけで、山田ガスマスクが罪悪感で鬱屈した思いを抱える話を書きました。
ただただ、漠然とした不安を抱く山田ガスマスクが読みたい人向けコンテンツです。
モラトリアム罪悪感。
皮膜のように身体にまとわりつき、身動きが億劫になる息苦しさ……。
これが、今日お出しできる料理です♥
気軽に嫌な気分になってくれよな♥
というわけで、山田ガスマスクが罪悪感で鬱屈した思いを抱える話を書きました。
ただただ、漠然とした不安を抱く山田ガスマスクが読みたい人向けコンテンツです。
モラトリアム罪悪感。
皮膜のように身体にまとわりつき、身動きが億劫になる息苦しさ……。
これが、今日お出しできる料理です♥
気軽に嫌な気分になってくれよな♥
『羊膜』
目の前に、薄い皮膜が張り付いているような異物感がある。
コンタクトは入れていない。
つまりこれは、これは物質的な違和感ではなく、精神的からくるものだろう。
アナログ時計がカチカチと秒針を刻む。
その音がやけに遠く、くぐもって聞こえる。
頭の奥底で、チリチリと何かが焼け焦げている気がした。
――おい、山田。おまえ、鍋を火にかけっぱなしにしてただろ。
見知った誰かがそう言う。
あぁ、そういえばそうかもしれない。だが、どうして湯を沸かしていたのだろう。
空腹だったからか。
それとも、何か温かいものを飲みたかったからか。
どちらかだった気がするが、どちらだったかは覚えていない。
――火をつけ忘れるような奴が、料理すんじゃねぇよ。
だが、それは最もだ。
これから、料理でも湯を沸かすにしても、コンロを使うのはなるべく避けよう。
今日は気付いてくれる誰かがいたが、これが家だったら火事になっていた。
それで死ぬのは構わないが、もらい火で他人に迷惑をかければ後々面倒くさい。
死ぬなら後腐れがないほうがいい。
料理は、やめよう。
今は何でも宅配できる。小腹が減ったらコンビニで買えばいい。必要なら電子レンジを使えば、一人分なら困らない。
――山田、おまえこれ、レンジに入れっぱなしにしてんじゃねぇよ。暖めたの忘れてんのか?
……どうやら、電子レンジを使うのすらおぼつかなくなったらしい。
まったく、自分は一体いつからこんな能なしになってしまったのだろう。
やることなすこと、全てにおいて鈍重だ。
頭がうまく働かず、ぼぅっとして過ごす時間が増えた。
虚ろな心が憂鬱に満たされ、あふれ出た鬱屈が身体と思考の自由を奪う。
以前はもっと深く考え、思い悩み、あらゆるものを疑って、誰も信じず、誰も認めずに生きていたような気がする。
それなのに、今はもう、考えるのも億劫だ。
頭の中にモヤがかかったような気がする。全身に張り付いた皮膜が、世界の全てを歪ませている。
――おい、聞いてんのか山田? お前、相変わらずだな。
相変わらず……。
いや、違う。自分は変わった。あの日、あの瞬間からもう、以前と同じ自分はいないのだ。
人を殺した罪を背負わず、逃げ出してしまったあの時から。
「僕は……」
違う、変わったのだ。あの日から、もう別人になった。
自分の世界はもう、自分のものではない。
背後に罪が息をひそめニヤニヤ笑いながら常に耳元で囀る。
おまえが普通に生きられるものか。
罪を償うこともせず、うまく逃げおおせようとするおまえを、一体誰が許してくれる。
頭の奥底で、チリチリと見えない何かが焼けていく。
窓から零れる光は、眩しいはずなのにやけに遠い。
気が晴れることなど、二度とはないのだろう。
同じ年頃の青年たちのようにヘラヘラと笑って太陽の下を歩く事は、もう許される身ではないのだから。
――おまえは、何も変わってねぇよ。
目の前に座る、男が笑う。
整った顔で、だが歪んだ笑みで。
――おまえは、最初からそういう奴だろうが。
あぁ……そうか。そうかもしれない。
下らないことを考え、悩み、誰も信じる事ができず、誰も認めることが出来ず、自分すら認められないまま。
ただ、この場所は心地よく、ここにいれば安心できると思い、この場所に縋り付いていた。
ほんの小さな世界の歪んだ価値観に正義を見いだし、自分たちがごく普通だと思い込み、そうすることで世界を守っていたのだ。
赤子のように包まれて、鎖のような何かに繋がれて……。
「そうだね……そうかも」
煙草が吸いたい。
肺いっぱいに煙を満たし、空虚な身体を濁った灰色に染める事ができたのなら、きっと心地よいだろう。
手を伸ばし、目の前にいる男に問う。
一本もらえる?
男は呆れたようにため息をつく。
――俺は煙草なんて吸わねぇよ。健康に悪いモンを身体に入れるつもりはねぇからな。
あぁ、そうだ。そうだった。
自分も、この男も、何もかわらない。
人を一人殺したところで、自分たちの人生は何ら変わりはしない。
「……結局」
結局のところ。
自分の周りにある薄い皮膜は、最初からずっと存在していて、自分は人の命を奪っても何とも思わない冷酷で残忍な人間なのだ。
ただそれを認めたくないだけ。
だからこの、曖昧な罪悪感に酔うよう空虚な時間を過ごしている。
結局のところ、認められないのだ。
自分の罪も、この罪を軽んじている自分自身のことも。
どこかから、ノックの音が聞こえる。
来客か、それとも――。
脳の奥底が、じりじりと焼ける。
時計の秒針はくぐもった音をたて、窓の光へ伸ばそうとした指先は鉛のように重かった。
目の前に、薄い皮膜が張り付いているような異物感がある。
コンタクトは入れていない。
つまりこれは、これは物質的な違和感ではなく、精神的からくるものだろう。
アナログ時計がカチカチと秒針を刻む。
その音がやけに遠く、くぐもって聞こえる。
頭の奥底で、チリチリと何かが焼け焦げている気がした。
――おい、山田。おまえ、鍋を火にかけっぱなしにしてただろ。
見知った誰かがそう言う。
あぁ、そういえばそうかもしれない。だが、どうして湯を沸かしていたのだろう。
空腹だったからか。
それとも、何か温かいものを飲みたかったからか。
どちらかだった気がするが、どちらだったかは覚えていない。
――火をつけ忘れるような奴が、料理すんじゃねぇよ。
だが、それは最もだ。
これから、料理でも湯を沸かすにしても、コンロを使うのはなるべく避けよう。
今日は気付いてくれる誰かがいたが、これが家だったら火事になっていた。
それで死ぬのは構わないが、もらい火で他人に迷惑をかければ後々面倒くさい。
死ぬなら後腐れがないほうがいい。
料理は、やめよう。
今は何でも宅配できる。小腹が減ったらコンビニで買えばいい。必要なら電子レンジを使えば、一人分なら困らない。
――山田、おまえこれ、レンジに入れっぱなしにしてんじゃねぇよ。暖めたの忘れてんのか?
……どうやら、電子レンジを使うのすらおぼつかなくなったらしい。
まったく、自分は一体いつからこんな能なしになってしまったのだろう。
やることなすこと、全てにおいて鈍重だ。
頭がうまく働かず、ぼぅっとして過ごす時間が増えた。
虚ろな心が憂鬱に満たされ、あふれ出た鬱屈が身体と思考の自由を奪う。
以前はもっと深く考え、思い悩み、あらゆるものを疑って、誰も信じず、誰も認めずに生きていたような気がする。
それなのに、今はもう、考えるのも億劫だ。
頭の中にモヤがかかったような気がする。全身に張り付いた皮膜が、世界の全てを歪ませている。
――おい、聞いてんのか山田? お前、相変わらずだな。
相変わらず……。
いや、違う。自分は変わった。あの日、あの瞬間からもう、以前と同じ自分はいないのだ。
人を殺した罪を背負わず、逃げ出してしまったあの時から。
「僕は……」
違う、変わったのだ。あの日から、もう別人になった。
自分の世界はもう、自分のものではない。
背後に罪が息をひそめニヤニヤ笑いながら常に耳元で囀る。
おまえが普通に生きられるものか。
罪を償うこともせず、うまく逃げおおせようとするおまえを、一体誰が許してくれる。
頭の奥底で、チリチリと見えない何かが焼けていく。
窓から零れる光は、眩しいはずなのにやけに遠い。
気が晴れることなど、二度とはないのだろう。
同じ年頃の青年たちのようにヘラヘラと笑って太陽の下を歩く事は、もう許される身ではないのだから。
――おまえは、何も変わってねぇよ。
目の前に座る、男が笑う。
整った顔で、だが歪んだ笑みで。
――おまえは、最初からそういう奴だろうが。
あぁ……そうか。そうかもしれない。
下らないことを考え、悩み、誰も信じる事ができず、誰も認めることが出来ず、自分すら認められないまま。
ただ、この場所は心地よく、ここにいれば安心できると思い、この場所に縋り付いていた。
ほんの小さな世界の歪んだ価値観に正義を見いだし、自分たちがごく普通だと思い込み、そうすることで世界を守っていたのだ。
赤子のように包まれて、鎖のような何かに繋がれて……。
「そうだね……そうかも」
煙草が吸いたい。
肺いっぱいに煙を満たし、空虚な身体を濁った灰色に染める事ができたのなら、きっと心地よいだろう。
手を伸ばし、目の前にいる男に問う。
一本もらえる?
男は呆れたようにため息をつく。
――俺は煙草なんて吸わねぇよ。健康に悪いモンを身体に入れるつもりはねぇからな。
あぁ、そうだ。そうだった。
自分も、この男も、何もかわらない。
人を一人殺したところで、自分たちの人生は何ら変わりはしない。
「……結局」
結局のところ。
自分の周りにある薄い皮膜は、最初からずっと存在していて、自分は人の命を奪っても何とも思わない冷酷で残忍な人間なのだ。
ただそれを認めたくないだけ。
だからこの、曖昧な罪悪感に酔うよう空虚な時間を過ごしている。
結局のところ、認められないのだ。
自分の罪も、この罪を軽んじている自分自身のことも。
どこかから、ノックの音が聞こえる。
来客か、それとも――。
脳の奥底が、じりじりと焼ける。
時計の秒針はくぐもった音をたて、窓の光へ伸ばそうとした指先は鉛のように重かった。
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