インターネット字書きマンの落書き帳
ビリー・カーンの夢モブおじさんという概念。
推しキャラの傍に原作には存在しない架空のオリジナルキャラを実装させ、キャラと恋をする。
そういうような二次創作を「夢創作」と呼ぶらしいですね。
ぼくも詳しい事はよく知らないのでアレなんですが、キャラと恋愛関係になる作品も多いようです。
わかるよ!
推しキャラを一番幸せにできるのは……俺! みたいな気持ち……わかる! ヒッジョーにわかる!
でもここであえて恋愛関係にならず。
推しの部下とか、同僚とか……そういう立場で見守っている、「推しの後方彼氏おじさん」になりたい人もいるんじゃないかな!?
そう思って、俺は「モブ夢おじさん」として生きることにしました。
今回は、ビリー・カーンの夢部下おじさんになります。
ビリーさんと親子くらい歳が離れているので「若造が無理してるんじゃない……」と思いつつ見守る配下の俺モブおじさんですよ!
そういうような二次創作を「夢創作」と呼ぶらしいですね。
ぼくも詳しい事はよく知らないのでアレなんですが、キャラと恋愛関係になる作品も多いようです。
わかるよ!
推しキャラを一番幸せにできるのは……俺! みたいな気持ち……わかる! ヒッジョーにわかる!
でもここであえて恋愛関係にならず。
推しの部下とか、同僚とか……そういう立場で見守っている、「推しの後方彼氏おじさん」になりたい人もいるんじゃないかな!?
そう思って、俺は「モブ夢おじさん」として生きることにしました。
今回は、ビリー・カーンの夢部下おじさんになります。
ビリーさんと親子くらい歳が離れているので「若造が無理してるんじゃない……」と思いつつ見守る配下の俺モブおじさんですよ!
『親愛なる貴方と苦い一杯を』
故郷の極東でしくじってから何とか逃れた地で死に体の俺を拾ったのがギース・ハワードだった。 あのままだったらなぶり殺されているか野垂れ死にしていただろうから今生きているのは奇跡のようなものだし、文字通り拾われた命と言ってもいいだろう。周囲からはいつ死んでもおかしくない老骨だとか捨て駒にもってこいの噛ませ犬だとか言われ続けていた俺だからもとより自分の命に未練などない。残してきた家族もなく親もとうに死んでいる。 残った命をギース・ハワードという悪のカリスマとも呼ばれた男に使い潰されるのなら上等なくらいだろう。そもそもひろわれた時点で俺に拒めるような権利はないのだ。
なし崩し的にギースの配下へと加えられた俺に求められたのは、ギースの片腕ともいえる男の秘書兼用心棒のようなものだった。有り体にいうと雑用係だ。用心棒というのも名ばかりで、実際に求められるのは「大事な幹部に何かあったら俺が代わりに迷わず死ね」という意味なのだろう。非道にも思えるが死に場所を求めて逃げ続けた身としては上等な境遇だろう。
だが驚いたのは俺の上司である幹部の男が俺より一回り以上若い男だったことだ。中年すぎたオッサンの俺と並べば親子ほどの年の差はあるだろう。一等に下っ端である上異邦人の俺が文句を言えた筋合いはないがまだケツの青いひよっこのお守りをするハメになるとは思っていなかった。
俺のような老骨が若い命を守るために使われるのは道理にかなっている風に思えるが、下っ端だから軽んじられているのだろうと感じなかったといえば嘘になる。
ろくでもない命だからこそ若造の尻拭いなんて誰にでも出来る役を与えられたのだ。この若造もきっと死のにおいとは縁遠いどこぞのボンボンか何かが伝手目当てだけに飼われているに違いない。
最初こそはそう思ったし、捨ててもいい命だと覚悟をしたがこうも軽んじられるとはと自分の境遇を哀れみさえ憶えた。だが実際にその男と対面したとき自分の考えが全て間違いだったのに気付かされる。
「なぁオッサン、あんた俺より年上だろ? だったら別に俺に敬語なんて使わなくていいぜ。あんたの方が年上なんだからよ」
彼は初対面の俺を「新入りの部下」ではなく「一人の人間」として敬意を払ってくれたのだ。何処の誰かという肩書きよりいま、何が出来るかという事とこれまで何をしてきたのかという事。そういった俺の生きた道筋を知ろうとしてくれたし、そこにきちんと敬意をもって接してくれた。 俺自身が捨て駒程度にしか思っていなかった命を、男はきちんと尊重してくれたのだ。
その態度は裏社会に生きるにはあまりに潔癖すぎるくらい正しかっただろう。だが、だからこそ俺は即座に彼こそ敬意をもって接するべき「上司」なのだということを理解した。
元より汚い道で生きてきたドブ臭い命だ。彼の為に捨てるのなら惜しくない。いや、このような男にこそ命を預けるに値すると。
「いいえ、私は貴方の部下ですから。どうぞこの命、存分に使い潰してください」
俺は当然のように彼の前で膝をついていた。自分より若い上司の花道を飾るためひろった命を血で飾るのは悪くない。 いとも容易くそのように思ってすしまったのは、俺が古い人間で義理や人情任侠を重んじる気質だったからだろう。
そしてこの若い男にはその古い気質を重んじ大切にしていると思ったのだ。それは合理化された現代には甘ったれた考えだろうし幻想の一つとも言えるだろう。足を引っ張る事だってあるはずだが、それでも理想を追いかけずにはいられない。そんな影を男に感じたのだ。
男の名は、ビリー・カーンといった。
俺はその傍らで仕事の段取りに必要な車の手配から事後処理に至るまで大概の雑務を請け負うようになったが、すぐにこの感傷的な若造が金やコネクションを目的に幹部として祭り上げられたような存在ではなく、きっちり現場で仕事をしたたき上げでここまでやってきた男だという事に気付いた。
彼はどの場にあっても冷静で着実に仕事をこなせる頭の転が速い男であり目を見張るほどに強かったのだ。
体格はさして恵まれている方ではなかったろう。決して小柄ではないが裏社会には見上げる程に大柄なものや鋼のような筋肉を身につけてる岩のような肉体を持つ者も少なくない。そんな中でビリーの体格は軽量級に入る程度だった。だがその体格差を感じさせない程、ビリーは腕が立つのだ。銃撃戦でも何でもそつなくこなすが、特に棒術にかけては他者を寄せ付けない程の実力がある。特に棒術に関しては驚くほどの手練れであり一人でも4,5人の大男を簡単にのしてしまうほどであった。
よく、棒術は素手の相手をするのが得意だとは言われるがそれを差し引いてもすさまじい鍛錬を積んだ闘士であるのは間違いないだろう。その技は猛々しく勢いがあり、同時に優美でもあったのだ。
それだけの強さをもつ上でビリーはギースに対して信仰にも近い忠誠心を抱いていた。それは盲信や心酔に近い危うさ感じる程だったがギースにとってはその方が都合が良かったのだろう。きっとビリーはギースが「死ね」と言えば喜んで死に、「殺せ」といえばためらいなく殺す。死後にギースが地獄に落ちる事になったらビリーもまた喜んで死地へ赴くのだろう。それほどの信頼をビリーから感じ取れた。
もしビリーが今の強さを得たことに理由があるのだとしたら、それはギースに早く出会えたからだろうと俺は思っている。ギースとの出会いによりビリーの目標は「ギースの望む事」となった。そして自分の未来にある希望も絶望も全てギースを道しるべにするかわりに、考える時間の全てを鍛錬に費やしたのだとしたら今の強さも頷けるといえよう。
ギース・ハワードは人の心をそれだけ捉えるほどのカリスマを持つ帝王の名に恥じぬ男だ。救われた俺もその強さと偉大さはわかるし、悪として生きる中でギースの導きがかなり「マトモ」であるのも理解している。
だがそれでも少なからず『そんなにまで尽くさなくとも』と思ってしまうのは、俺が一人の人間としてビリーにも幸せになってほしいと思うようになったからだろう。
ビリ-はギースに心酔し、ギースもそんなビリーを大切な片腕として扱っていた。与えられる仕事や期待は時にまだ年若いビリーが負うには膨大すぎる責任がある事もしばしば存在していたが、粗野にみえるビリーは存外に人を見る力に長けておりそつなく仕事をこなしていた。
もちろん、他人に求めるだけではなくビリー本人が良く働き、部下を労っていたのも彼が他の連中と比べ頭一つ抜けて信頼されるに至った理由だろう。同時にビリーの補佐をするという俺の仕事は老骨には骨の折れるものが多かったが捨てられた命にはもったいない程の待遇だと言っても良かったろう。
仕事が忙しいのは事実だったが、ビリーは悪党らしからぬ気っ風の良い男だったのだ。
「無駄な事はしない主義なんだよ俺は。面倒だろ、いろいろとよ」
特に俺が好感を抱いたのは、仕事のスマートさだった。
暴力を生業にするような裏家業の人間は己の力を誇示するため派手な仕事をすることも多い。そして俺たちの仕事でする「派手な仕事」は大半が残忍な報復のことであった。
メンツを保つという理由であえて死体を解体(バラ)して部屋にまき散らしたり、敵対組織に指やら耳やらを送り届けたりといった趣味の悪いプレゼントは概ね力を誇示する事とそれにより相手に恐怖を植え付ける事で戦意を削ぐとう思考のもとに行われる、裏家業の人間にとって常套手段だった。(最も、逆にそれで相手の怒りを買い派手な抗争になることも少なくない訳だ)
だがビリーはそのように力を誇示するのを好まず、そういった意味では穏やかな男だと言えよう。汚れ仕事があっても死体を解体(バラ)すようなことを嬉々としてやる事はなかった。
むしろ誰かを殺すような仕事がある時は見ているこっちが痛々しいほど悲しそうな顔をして、死体に花を手向けたりするのだ。
おおよそ悪党らしからぬビリーの行動を見るたびに俺はふと思うのだ。
この男は本来争いや暴力などに無縁な人物だったのではないか、と。本当なら片隅で貧乏暮らしでもささやかに店を開いて家族と暮らす。そんな姿のほうがよっぽど似合っているのではないかと。たいした稼ぎにもならないが小さな幸せがあればいい。そんな生活のほうがよほどビリーには似合っているように思えた。
あるいはただ俺自身がとうに手放して二度と掴めなくなった平穏な生活に未練があり、まだ年若いビリーならまだ戻れるのではないかなんて淡い期待を抱いているだけなのかもしれないが。
そうだ、俺は知らぬ間にこの裏社会で生きるにはあまりに純朴な感性をもつビリーという男に入れ込んでいた。何とかして支えてやろうと思ったし、この男一人に全てを背負わすような真似はしたくなかった。ビリーにかわり、率先して汚れ仕事を引き受けるようになったのもその頃だろう。
彼はまだ若いのだから必要以上に血を浴びて余計な恨みなど買う必要はないと思っていた。いらない恨みや妬みを買うのは明日に死んでもいいような俺みたいな老木がすることだ。これまで散々と無茶をして命を散々と食い散らかし生きてきたのだから今更一つや二つの怨嗟を背負うのは屁でも無い。
だがビリーはまだ若いのだから手を血に濡らすのも影をより深くするのももっともっと後でもいいはずだ。 彼の手も魂も汚したくはない。汚れる必要はないくらい高潔だ。
そんな俺の思いに反して、ビリーは「頭に立つものの役目」とし人の命を奪っていた。
「俺が任されたんだ、部下の手を患わせてたらいけねェだろ?」
そう語りトリガーを引くビリーは命の灯火を吹き消した後、いつもどこか悲しそうな顔で天を仰いでいた。
『ガキの頃は神を信じていたが、今はもう信じていない。大事なときにそっぽ向いている神様より、実際に導いてくれるギース様のほうがよっぽど信じられる』
いつか、ビリーがそう言っていたのを何とはなしに憶えている。
その言葉通り、誰かを始末した後にギースはまた新しい仕事を与え、新しい道筋を示していた。 ギースの描いた青写真は俺からすると荒唐無稽にすら思えたがビリーにとっては紛れもない唯一の航路であり希望でもあったろう。 本当に信じているからこそ手を汚すのも厭わない。その本心に寸分の偽りもないのは痛い程理解できた。
だがたとえ覚悟をしていても全くの無感情で相手を屠る事ができるのだろうかといえば、そんなはずはないのである。 覚悟したからといって思いに対して眼前の死に悼みを憶えないのかといえばそれは違うのだ。理屈と感情は別なのだから。
俺がビリーに手を汚してほしくないと願うように、ビリーもまた部下たちに手を汚させたくないのだろう。 自分が受けた仕事なのだから自分が率先して手を汚すのが当然だとも思っているのかもしれない。 そうして自ずから汚れ仕事を済ませそして壊れそうなほどに痛みを露わにする横顔を眺めるたびに俺は思うのだ。
ビリー・カーンという男は他人の痛みに敏感でとても繊細な男なのだろうと。
そして、おおよそ裏家業には向かない優しい人間なのだろうとも。
「俺の仕事だ、ケジメつけるのは俺だって当たり前のことだろ。下の奴にばっかり汚れ仕事やらせる訳にはいかねぇもんな」
血を浴びた後、ビリーは俺によくそう告げていた。それは俺がビリーにかわって特に率先し汚れ仕事を片付けていた俺を気遣っての言葉だったろうが、ビリーが自分自身に言い聞かせるために声にだしているような素振りも確かに感じていた。
この男は図太いようにみえて繊細なのだ。痛みや悲しみを強く感じることが出来るから他の誰かに背負わせまいと自分から灰を被ろうとする。俺の上司はそんな男だった。
俺はだからこそビリーについていこうと思ったし、彼の手足となることを望んだ。
ビリーがギースの手足になるのを望んでいるのなら、さらにその手足になるのを望む奴がいたって別にいいだろう。
俺の上司は人に心を開くようなタイプではないし素直に何かを言えるタイプでも託せるタイプでもない。だから俺は彼に寄り添い、必要な言葉を与え必要な重荷を勝手に背負う。そうやって仕える事にした。
せめて少しでも、彼の心が軽くなれば僥倖だと神ではない何かに祈りながら。
さて、きっと今日はひどく塞ぎ込んでいるはずだ。
敬愛するギース直々の命令とはいえ後味の悪い仕事になってしまった。
部下の前では冷静を装いさも動じてないような所作でのりきってはいたが、きっと今頃は悔しや憤り、己の無力さなどといった数多の感情を煮詰めて泣き叫びそうなほど荒れているに違いない。
俺はそんな風にしか生きられないビリーを前に洒落た言葉をかけてやれる事すらできない役立たずの老いぼれだ。だが老いぼれは老いぼれなりの処世術を心得ている。
たとえビリーが語らなくとも背負う苦しみや悲しみ、悔悟の念を少しくらいは背負ってやることくらいは出来るはずだ。
俺はとびっきり上等のウイスキーを片手に、すっかり塞ぎ込んでいるビリーの部屋へと向かう。
「なんだ、あんたか……どうした?」
やはり落ち込んでいたのだろう。出迎えたビリーは浮かぬ顔のまま電気もつけずに過ごしていたようだ。部屋の空気が動いている様子はなく、お気に入りのブリテン・ロックも流していないあたり何もする気になれずただじっと寝転んでいたのは想像に難くない。
俺はビリーの鼻先にそのとびっきりのウイスキーを差し出すと淡く笑って見せた。
「飲みましょう。俺は何の役にも立たない老木にすぎないが、この歳になるとひどく感傷的でね。今日みたいな仕事の後は孤独になるのが辛いし泣き叫びそうになる……老人の介護だと思ってどうか、付き合ってくれませんかね?」
ビリーは困惑したような表情を向けるが、準備した酒はとびっきりの上物だ。イギリス人である限り、特上のウイスキーを飲まない選択はないだろう。
もちろんビリーは聡い男だから部下である俺が心配して様子を見に来たことくらいは気付いているだろう。そして普通ならトップである自分が弱い姿を見せるのは「あってはならない」という理想から部下たちを追い返すのがビリーという男だ。素直に「大丈夫か」なんて声をかけたら「大丈夫だから酒だけおいて帰れ」なんて言われるのがオチだ。
だが部下である俺が狂いそうなほど泣き叫びたいと訴えれば、邪険にすることはないだろう。これがロートルなりの処世術である。
「まったく、仕方ねぇな……付き合ってやるよ。俺も一人で飲みたい気分じゃなかったからな」
ビリーの部屋に通された俺は、二つのグラスにウイスキーを注ぐ。
そして二人でグラスを掲げ、一気にそれを飲み干した。
喉に焼けるようひりつくアルコールの痛みすら、今この心によどむ気持ちは晴れない。だがそれでも俺は構わずビリーのグラスに酒を注ぎ、自分でも酒をあおった。
いくら強さを得てもどうにもならない運命がある。
手を伸ばしても救えない命もある。
あるいは手を振り払ってでも生きなければいけない時もある。
そんな摂理という名の大理不尽を前に苦しみ悶えながらも前に進む覚悟をして。
ビリーはギースのためにその覚悟を飲み下し、俺はビリーのために同じ覚悟を飲み下すのだ。
願わくばいずれこの青年が、おおよそ暴力と無縁な世界で笑ってすごせる日が来るように。
そんな叶いそうもない願いを密かに胸に秘めながら。
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