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インターネット字書きマンの落書き帳

   
デートをドタキャンされた黒沢に付き合わされる山ガスの話(ややBL)
都市伝説解体センターのネタバレがある二次創作をしますよ!(挨拶)

金持ちのボンボンすぎて庶民と金銭感覚が違いすぎる黒沢と、その黒沢に付き合わされるガスマスク山田の話を……します。

あんまり紹介でネタバレしたくないのでこう……。
ふんわりと、山ガスが黒沢にガチ恋しそうになるし、黒沢のことガチ恋させそうになる話だと思ってください。

デートをドタキャンされて、勿体ないから山ガスを誘う黒沢みたいな話ですよ。

な、なんとかなれー!


『ナイト・クルージング』

 黒沢が裕福な家庭で育ち、何不自由なく生活をしているのは山田もよく知っていた。
 小遣いなどの概念ももたず、必要なものがあれば好きなだけ買える身分なのも、それ故に金銭感覚が庶民の自分とかけ離れているということもだ。

 だがまさか、

「ドタキャンされたからちょっと付き合ってくれないか」

 なんて軽い一言でヘリポートに連れてこられるとは流石に思っていなかった。

 ドタキャンされた、普段着でいいからついてこい。
 この程度の言葉なら、ちょっとしたレストランの予約か何かだろうと思うのが庶民の感覚だったし、普段着でいいと言われたからいつも通りのパーカーで来たのだが、そこで待っていたのは上等なスーツを身にまとった黒沢だった。

「いやぁ、助かったよ山田。もうキャンセルするのも勿体ないし、一人でいるのも味気ないもんな」

 黒沢が着ているスーツが、完全オーダーメイドの品だというのはブランドものに疎い山田でもわかる。
 身体のラインに無駄がなく袖や肩までピッタリと寸法があっているのだから間違い無い。その上、時計も靴も一流のブランド品だ。
 こんなところに、量販店で買えるような服でも大丈夫みたいな顔をするのだから、本当に黒沢は人が悪い。
 庶民が庶民らしい服を着て、見たこともない場所に連れてこられ狼狽えるのを見て楽しんでいるのだろうか。

 そう思うが、すぐに違うのだろうと察する。
 黒沢の金銭感覚だと、ヘリをチャーターして夜景を見るデートなんてはした金なんだろう。

 ゲームセンターで熱くなり、景品をとるのに多めの金を使ってしまった。その位の感覚でヘリをチャーターしているのだ。
 上等なスーツを着てきたのも、山田の生活環境に置き換えて言うのなら、外に出るのに寝間着のジャージ姿はみっともないだろうと、安っぽいサンダルをスポーツシューズに履き替える程度の差なのだ。

 まったく、これだから金持ちは。
 内心舌打ちしながら、山田は当然のようにヘリコプターへ乗る黒沢の背を見る。

 黒沢は山田がまだ来てないのに気付いたのか、わずかに振り返ると山田に向けて手を伸ばし

「ほら、来いよ。おまえ、別に高所恐怖症とかじゃないよな」

 なんて涼しい顔で言うものだから、また腹立たしい。
 腹立たしいが、ここまで来て帰るのは勿体ないというのも本音だ。
 他人の金でチャーターしたヘリに乗り東京を見下ろすなんて出来るのは幸運だ。せっかくの機会は逃したくない。

「うん、まぁ……まさかヘリポートにつれてこられるとは思わなくて、ちょっとビックリしただけかな」

 山田は素直にそう告げると、黒沢の手を借りてヘリコプターに乗り込む。
 ビルの屋上にあるヘリポートはパーカー一枚では防げぬほど風が強く、一刻も早くこの強風から逃れたい思いでヘリコプターに乗ったものの、窓からは相変わらず強い風が吹き付ける。
 こんな風が吹き付ける中、デートでロマンチックな気持ちになるんだろうか。
 そう思った矢先にドアが閉まり、今度は激しモーター音が鳴りはじめた。
 ヘリコプターはガタガタと揺れながらゆっくり浮上する。

 その後におこった空の旅について、山田はほとんど憶えていない。
 記憶に残るのはひたすらうるさいモーター音と、やたらと揺れる座席に対する恐怖感だけだ。
 高所恐怖症ではないと思っていたが、大きく揺れるたび、ヘリコプターの墜落率は決して低くないという事実が脳裏にかすめて落ち着かない。
 高い場所で見る夜景は確かに美しいと思ったが、綺麗な夜景を見るなら高層ビルのレストランのほうがよっぽど適しているとも思った。

 それに、ヘリコプターはお互い喋るのにはあまりにうるさすぎるし、景色に集中するには恐怖心が勝る。

 気を遣っているのかそれとも性分なのか、黒沢は始終話していたようだが彼が何を話しているのか全く聞こえなかった。

 終盤は、ヘリコプターが派手に揺れ、吹き付ける風の強さにすっかり参ってしまい、黒沢の腕を背もたれにして少し引き気味に景色を見ていた有り様である。
 だから、やっとヘリコプターが地上につき、ヘリポートに降り立った時は、そこがビルの最上階だというのにやっと陸に立てたという気持ちのほうが強いくらいだった。

「大丈夫か山田。悪いな、今日は風が強かったから思ったより揺れたみたいだ。酔ったりしてないよな」

 酔ってはいないが、長らく揺れていたせいか身体に浮遊感が残っている。
 普段しない経験のせいか、脳が熱を帯びている気さえした。

 それなのに、黒沢はいつものように笑っている。
 きっと黒沢にとってこの程度の空の旅、普通にあるデートコースの一つにすぎないのだろう。

 まったく、お坊ちゃんめ。
 涼しい顔をしてこちらの様子を気づかう黒沢の姿に苛立った山田は、何とかこの男の表情を変えてやりたいという意地の悪い気持ちが湧き出てきた。

「大丈夫だよ、黒沢サン。正直いうと、急にヘリに乗せられて驚いたし思った以上に揺れて怖かったんだけどさ。隣に黒沢サンがいてくれたから、大丈夫だったかな。やっぱ、黒沢サンの隣ってすごく安心するよね」

 山田は皮肉たっぷりのつもりで、まっすぐに黒沢を見る。

 こんなの、庶民の娯楽じゃない。
 もっと一般人の感覚に寄り添う事を考えろ。

 山田のひねくれた性格も承知している黒沢になら充分伝わるだろうと思って放った言葉だったが、それを聞いた黒沢の反応は思いも寄らぬものだった。

「あ、あぁ……そ、そうか? いや、その……それなら、いいんだ」

 照れたように顔を赤くし、山田から視線を背ける。

 何だ、そんな顔をしないでくれ。
 皮肉のつもりでいったのに、そんな顔を見せられたら……。

「……ま、いい経験になったよ。それじゃ、何か食べに行こうか黒沢サン。どうせこの後、ディナーとかも予約してるんでしょ? そっちもドタキャンされたなら、僕が処分してあげるよ。勿体ないもんね」

 山田は黒沢の腕を掴むと、半ば強引に引きずるよう歩き出す。

 そんな顔を見せられたら、好きになってしまう。
 黒沢はいつも平然とし、帝王のような振る舞いを見せていてほしいのだ。
 人前で狼狽えたり頬を赤らめたりする特別な顔は、自分のためにはないのだから。

 だが、今日は偽物でも、キャンセルした恋人の代わりを演じよう。
 黒沢をあんな顔にさせたのだから、自分にはその責務があるはずだ。

「わ、わかった! 引っ張るな、わかったから……」

 黒沢はいつものように笑うと、山田と並んで歩く。
 ビルの上にあるヘリポートは、普段より強い風が吹いていた。

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東吾
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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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