インターネット字書きマンの落書き帳
仮面の瑕(クジンシーとスービエのはなし)
ロマサガ2R面白いですね!
七英雄まわりは、ロマサガ2(原作)が出て意図、LORD of VERMILIONのフレーバーテキストやミュージカル、ロマサガRSやらリユニやら派生作品で継ぎ足した秘伝のタレをうまく混ぜ合わせてこうやって捏ねて~
うまい! テーテッテレー!
みたいな味付けになっていて、良かったと思います。
という訳で、リメイク版の七英雄まわりの設定にあわせて、クジンシーとスービエの話を書きました。
仮面の下に生まれつき爛れた顔を隠している、という俺の脳内にだけ存在する公式設定のクジンシーが、傷を隠すために仮面をしているような話です。
リメイクされても、クジンシーの虐待設定がやめられない!
そういう奴なんですよ、俺って人間はね……。
七英雄まわりは、ロマサガ2(原作)が出て意図、LORD of VERMILIONのフレーバーテキストやミュージカル、ロマサガRSやらリユニやら派生作品で継ぎ足した秘伝のタレをうまく混ぜ合わせてこうやって捏ねて~
うまい! テーテッテレー!
みたいな味付けになっていて、良かったと思います。
という訳で、リメイク版の七英雄まわりの設定にあわせて、クジンシーとスービエの話を書きました。
仮面の下に生まれつき爛れた顔を隠している、という俺の脳内にだけ存在する公式設定のクジンシーが、傷を隠すために仮面をしているような話です。
リメイクされても、クジンシーの虐待設定がやめられない!
そういう奴なんですよ、俺って人間はね……。
「瑕疵物件」
細い体には不釣り合いな大ぶりの弓を手にしたクジンシーは、後に七英雄と呼ばれる面々の最後尾を歩いていた。
勇敢だからしんがりを務めている訳ではない。単純に、他のメンバーと比べて体力に劣るため置いて行かれてしまうのだ。
他の面々からは「帰った方が身のためだ」と思われている程だ。彼のために歩みを緩めてくれる者は一人もいない。 今は迅速な行動を求められているのだから尚更待ってはくれないだろう。
あぁ、だけど情けないなぁ。自分とさして年も変わらないロックブーケだって、ノエルやワグナスと変わらぬ速度で歩いているっていうのに。
兵士としては体力が少なすぎるんだ。
そもそも痛いのも辛いのも苦手だし、敵と戦うのが恐ろしいから、尻込みする気持ちが歩みを遅くしているのではないか。
そんな考えが、クジンシーの脳裏によぎる。
違う、自分はもう負け犬とか、邪魔者と呼ばれないためにここに来たんだ。
ワグナスやノエルは、自分の居場所として末席を空けてくれた。
ここで立ち止まり逃げ出せば、自分はまた居場所を失ってしまう。
それに、逃げ帰っても故郷に最初から自分の居場所なんてないじゃないか。
じくじくと痛む胸に手を当てれば、自然と両親の冷たい眼光が脳裏に浮かぶ。
『どうしてマトモに生まれてきてくれなかったんだ。せめてその顔がマトモだったら……』
生まれた時から、クジンシーの顔は歪んでいた。皮膚の一部が爛れたようにめくれ、どう治療しても傷痕として、あるいは痣として浮かび上がってきたのだ。
左目の周囲だけ赤く爛れた顔をしたクジンシーを、両親はまるで化け物のように扱った。
『あんな恥ずかしい顔を、外に見せる訳にはいかないじゃない……』
両親はクジンシーを外に出そうとしなかった。
いつも部屋に閉じ込め、窓から外の様子をのぞいただけで激しく叱りつけ、暴力をふるった。
爛れた顔の他にも傷や痣が絶えない日々が続いた。
『でも、勉強くらいはできて貰わないと困るだろう。あんなに醜いのに、知恵も回らないんだったらどうしようもない』
自由に外へ出られるようになったのは、学校に通うようになってからだ。
それまで窓から時々見るだけだった外の世界に希望を抱いたのは一瞬、希望はすぐに絶望に変わった。
『うわ、気持ち悪い顔』
『気持ち悪い。どうしてそんな顔なの?』
『近づくなよ、変な顔が移ったらどうするんだよ』
クジンシーの顔を見た時、同年代の少年少女たちは口々にそうはやし立てた。
誰もクジンシーを遊びの輪に入れようとしなかったし、時々遊びに誘う時も掃除や荷物持ちを押し付けられる時だけだった。
それでも、クジンシーに少しでも秀でた才能があれば、下に見られ馬鹿にされるのが当然のような立場に長く甘んじることもなかっただろう。
だが、クジンシーは他の子供たちと比べても、明らかに劣っていた。
人一倍努力してやっと人並みかそれより少し足りないだけの知識を理解した。
必死に走っても他の子供たちに追いつくことはできず、剣をもっても槍をもってもまともに立ち回ることすらできなかった。
あるいはそれは、幼少期に閉じ込められて生活し人並みの体力を得る機会がなかったのも理由の一つだったろう。
だが幼いクジンシーは自分の環境がいかに特殊であり、そして残酷であったのかは知らず、今でもそれを理解してはいない。
『勉強もできない、剣を持てばその重さに振り回される、手先が器用ではない上に、そんな醜い外見で、お前は一体何だったらできるんだ』
『せめて人付き合いくらい上手くなればいいのに、その顔じゃ誰だって相手にしないだろうが。まったく、細切れにして海に巻いた方がまだマシだね』
苦渋に満ちた日々に、一人悩みあぐねるクジンシーを両親は突き放した。
彼が人との会話を不得手にすることもまた、幼い頃から自分は醜いから嫌われて当然だとすり込まれた意識よりつい卑屈になる悪癖が身についたのが理由の一つだったが、それをクジンシーが知る由もない。
虐げられるのが当然のようになり、周囲から見下しても良い相手だと思われ手酷い扱いを受けるようになっても、クジンシーはその立場に甘んじる事ができなかった。
偉くなりたいと思うようになった。
王のように家臣へ傅かれ、下にも置かれぬような存在として周囲に、繊細な飴細工のように大切にされたいと思った。
誰かの愛を渇望した。
自分の顔を見にくいと罵倒せず、包み込むように優しく抱きしめて、ここにいてもいいのだと言われたかった。
もっと気楽に、もっと楽しく生きることができたらと願っていた。
明日、何を食べるのか。生きるために幾らの金貨がいるのか。そんな心配ばかり募らせ神経をすり減らす日々から決別したいと切に願っていた。
いや、王のようになれなくてもいい。
ただ日々の食事に困ることもなく、罵声や暴力が当たり前ではなく、温かなベッドで眠る時、今日はいい日だったと思える。そんな毎日を過ごすことができれば、それだけでよかったのだ。
だが、それは叶わなかった。
クジンシーの両親は彼の醜い顔を受け入れることはなく、学友たちは皆、彼を見下して茶化し笑いものにしていい玩具程度にしか思わなかったのだから。
逃げるように故郷を去った時、クジンシーは自然と仮面をつけるようになっていた。
派手で奇抜な仮面は馬鹿にされることが多かったが、その下にある爛れた顔を見られるよりよほど良い。
誰も自分のことを知らない土地で生きるのは孤独ではあったが、解放された気持ちの方が大きかった。
誰も知らないから、傷のことを馬鹿にされることはない。
人の多い街は、クジンシーの故郷のように傷を茶化す人間は少なかった。
孤独ではあったが、他人から嘲笑され玩具にされる生活より随分と気持ちは楽だったろう。
失敗が多いながら働き、生活に困らないだけの日銭を得るようになると、気持ちにも余裕が生まれた。そして、思うようになったのだ。
せめて、人間らしく扱われたい。
だがそれこそが、クジンシーにとって最も難しい望みだった。
彼は人間らしい尊厳が存在する生活というものと、おおよそ無縁に育っていたのだから。
タームが現れ世界を脅かす脅威として討伐対象になったのは、その頃だった。
さして能力が高い訳でもなければ、どちらかといえば脆弱な体ながら若い男であり独身であるという理由から、クジンシーも当然討伐隊の一員として組み込まれた。
勇敢というより臆病で、物音一つにでも過敏に反応するほど繊細な性格は、生き残ることだけには長けていた。
家族や恋人。守るべき存在や、帰りを待つ人物こそ早く倒れていき、誰にも待たれず誰にも望まれないクジンシーは戦場で生き延びた。
運が良かったのもあるだろう。
だが、土壇場で生きるための判断を下せる冷静さと冷徹さが、クジンシーの才能だったのだ。
『うちの息子が死んだのに、お前なんかがまだ生きているのか』
故郷からそんな手紙が届いたが、破って暖炉に捨てて燃やした。
ターム討伐のため、あちこちで兵を募っていた。その中に、故郷では神童とはやし立てられた顔見知りもいたのだろう。 ターム討伐では生き残って戻れる兵の方がよほど少なかった。
生きているだけで、恨めしく思われるなんて、自分は本当に嫌われ者だ。
灰になる手紙を眺めながら、クジンシーはぼんやりとそんな事を考えていた。
ノエルたち数人の少数精鋭が女王討伐のため動き出したのを知ったのは偶然だった。
何とか自分もその数の一つに入れないかと願ったのは、今のままではいつまでたっても嫌われ者のレッテルが剥がせぬまま、生きることの苦渋だけを貪り続けていなければいけないと思ったからだ。
死ぬのは、当然怖かった。
だが、生きているのは鉛のように重苦しく、水を吸った真綿のように彼の心を締め付ける。
すがるようなクジンシーを、他の面々は邪魔だと蔑んだが、それでもノエルは拒まなかった。
温情だったのだろうと思うし、断る時間も惜しかったのだろうと思う。それでも、ここにいていいのだという喜びは大きかった。
それだというのにお前は何だクジンシー、やはりここでも役立たずだ。
お前は、ずっと嫌われ者なのだから。
その爛れた顔があるだけで、誰もお前を愛さないのだ。
心に響く声のせいで、足取りはますます重くなる。
「どうした、クジンシー。疲れたのか?」
そんな中、不意に名前を呼ばれ、驚いて声をあげた。
スービエが隣を並んで歩いている。遅れているから心配になり、自分を待っているのだろう。
「い、いや。そんなことはないんだ。ちょっと、その。色々考えちゃって……」
「そうか、気をつけろよ。おまえは仮面を付けているぶん、左の視野が狭まるからな」
仮面を付けていれば視野が狭まる。同じことを、ダンターグにも言われたことがある。
確かにその通りだと思っていたし、これを外せば役立たずの自分でももう少しはマシな立ち回りができるのだろう。
「あ、あぁ。そう……だね。うん……あ、あの、スービエもこの仮面、外せるもんなら外した方がいいと思うか?」
「何だ急に。外したいと思っているのか?」
「そういう訳じゃないんだけど、ダンターグにも視野が狭まると危ないって言われたことがあるから……外した方が、役立たずの俺でも少しはマシになるのかと思って……」
自分の仮面に触れ、必死になって話すクジンシーをしばらく見つめた後、スービエは事もなげに告げた。
「別にいいだろう。おまえだって理由があってつけているんだよな。格好付けるためだろうが、ゲン担ぎのためだろうが、おまえにその仮面を付けさせるだけの理由があるのなら、俺たちに遠慮なんてする必要はないさ。事情があるなら、俺たちの都合を押し付けてまでお前が他にあわせる必要なんてないんだからな」
それは、スービエにとって当たり前の価値観だったのだろう。
誰に対してもそのように思っているし、同じ質問を他の誰かがしても、きっと同じように答えていたはずだ。
だが、そうだとしてもその言葉は、クジンシーには特別に温かいものだった。
「あ、あぁ。そうだな。そう……だよ。うん、ありがとうな、スービエ」
クジンシーは顔を浮かべると、スービエの後を歩く。
その足取りは、さっきまでと違い軽やかなものになっていた。
細い体には不釣り合いな大ぶりの弓を手にしたクジンシーは、後に七英雄と呼ばれる面々の最後尾を歩いていた。
勇敢だからしんがりを務めている訳ではない。単純に、他のメンバーと比べて体力に劣るため置いて行かれてしまうのだ。
他の面々からは「帰った方が身のためだ」と思われている程だ。彼のために歩みを緩めてくれる者は一人もいない。 今は迅速な行動を求められているのだから尚更待ってはくれないだろう。
あぁ、だけど情けないなぁ。自分とさして年も変わらないロックブーケだって、ノエルやワグナスと変わらぬ速度で歩いているっていうのに。
兵士としては体力が少なすぎるんだ。
そもそも痛いのも辛いのも苦手だし、敵と戦うのが恐ろしいから、尻込みする気持ちが歩みを遅くしているのではないか。
そんな考えが、クジンシーの脳裏によぎる。
違う、自分はもう負け犬とか、邪魔者と呼ばれないためにここに来たんだ。
ワグナスやノエルは、自分の居場所として末席を空けてくれた。
ここで立ち止まり逃げ出せば、自分はまた居場所を失ってしまう。
それに、逃げ帰っても故郷に最初から自分の居場所なんてないじゃないか。
じくじくと痛む胸に手を当てれば、自然と両親の冷たい眼光が脳裏に浮かぶ。
『どうしてマトモに生まれてきてくれなかったんだ。せめてその顔がマトモだったら……』
生まれた時から、クジンシーの顔は歪んでいた。皮膚の一部が爛れたようにめくれ、どう治療しても傷痕として、あるいは痣として浮かび上がってきたのだ。
左目の周囲だけ赤く爛れた顔をしたクジンシーを、両親はまるで化け物のように扱った。
『あんな恥ずかしい顔を、外に見せる訳にはいかないじゃない……』
両親はクジンシーを外に出そうとしなかった。
いつも部屋に閉じ込め、窓から外の様子をのぞいただけで激しく叱りつけ、暴力をふるった。
爛れた顔の他にも傷や痣が絶えない日々が続いた。
『でも、勉強くらいはできて貰わないと困るだろう。あんなに醜いのに、知恵も回らないんだったらどうしようもない』
自由に外へ出られるようになったのは、学校に通うようになってからだ。
それまで窓から時々見るだけだった外の世界に希望を抱いたのは一瞬、希望はすぐに絶望に変わった。
『うわ、気持ち悪い顔』
『気持ち悪い。どうしてそんな顔なの?』
『近づくなよ、変な顔が移ったらどうするんだよ』
クジンシーの顔を見た時、同年代の少年少女たちは口々にそうはやし立てた。
誰もクジンシーを遊びの輪に入れようとしなかったし、時々遊びに誘う時も掃除や荷物持ちを押し付けられる時だけだった。
それでも、クジンシーに少しでも秀でた才能があれば、下に見られ馬鹿にされるのが当然のような立場に長く甘んじることもなかっただろう。
だが、クジンシーは他の子供たちと比べても、明らかに劣っていた。
人一倍努力してやっと人並みかそれより少し足りないだけの知識を理解した。
必死に走っても他の子供たちに追いつくことはできず、剣をもっても槍をもってもまともに立ち回ることすらできなかった。
あるいはそれは、幼少期に閉じ込められて生活し人並みの体力を得る機会がなかったのも理由の一つだったろう。
だが幼いクジンシーは自分の環境がいかに特殊であり、そして残酷であったのかは知らず、今でもそれを理解してはいない。
『勉強もできない、剣を持てばその重さに振り回される、手先が器用ではない上に、そんな醜い外見で、お前は一体何だったらできるんだ』
『せめて人付き合いくらい上手くなればいいのに、その顔じゃ誰だって相手にしないだろうが。まったく、細切れにして海に巻いた方がまだマシだね』
苦渋に満ちた日々に、一人悩みあぐねるクジンシーを両親は突き放した。
彼が人との会話を不得手にすることもまた、幼い頃から自分は醜いから嫌われて当然だとすり込まれた意識よりつい卑屈になる悪癖が身についたのが理由の一つだったが、それをクジンシーが知る由もない。
虐げられるのが当然のようになり、周囲から見下しても良い相手だと思われ手酷い扱いを受けるようになっても、クジンシーはその立場に甘んじる事ができなかった。
偉くなりたいと思うようになった。
王のように家臣へ傅かれ、下にも置かれぬような存在として周囲に、繊細な飴細工のように大切にされたいと思った。
誰かの愛を渇望した。
自分の顔を見にくいと罵倒せず、包み込むように優しく抱きしめて、ここにいてもいいのだと言われたかった。
もっと気楽に、もっと楽しく生きることができたらと願っていた。
明日、何を食べるのか。生きるために幾らの金貨がいるのか。そんな心配ばかり募らせ神経をすり減らす日々から決別したいと切に願っていた。
いや、王のようになれなくてもいい。
ただ日々の食事に困ることもなく、罵声や暴力が当たり前ではなく、温かなベッドで眠る時、今日はいい日だったと思える。そんな毎日を過ごすことができれば、それだけでよかったのだ。
だが、それは叶わなかった。
クジンシーの両親は彼の醜い顔を受け入れることはなく、学友たちは皆、彼を見下して茶化し笑いものにしていい玩具程度にしか思わなかったのだから。
逃げるように故郷を去った時、クジンシーは自然と仮面をつけるようになっていた。
派手で奇抜な仮面は馬鹿にされることが多かったが、その下にある爛れた顔を見られるよりよほど良い。
誰も自分のことを知らない土地で生きるのは孤独ではあったが、解放された気持ちの方が大きかった。
誰も知らないから、傷のことを馬鹿にされることはない。
人の多い街は、クジンシーの故郷のように傷を茶化す人間は少なかった。
孤独ではあったが、他人から嘲笑され玩具にされる生活より随分と気持ちは楽だったろう。
失敗が多いながら働き、生活に困らないだけの日銭を得るようになると、気持ちにも余裕が生まれた。そして、思うようになったのだ。
せめて、人間らしく扱われたい。
だがそれこそが、クジンシーにとって最も難しい望みだった。
彼は人間らしい尊厳が存在する生活というものと、おおよそ無縁に育っていたのだから。
タームが現れ世界を脅かす脅威として討伐対象になったのは、その頃だった。
さして能力が高い訳でもなければ、どちらかといえば脆弱な体ながら若い男であり独身であるという理由から、クジンシーも当然討伐隊の一員として組み込まれた。
勇敢というより臆病で、物音一つにでも過敏に反応するほど繊細な性格は、生き残ることだけには長けていた。
家族や恋人。守るべき存在や、帰りを待つ人物こそ早く倒れていき、誰にも待たれず誰にも望まれないクジンシーは戦場で生き延びた。
運が良かったのもあるだろう。
だが、土壇場で生きるための判断を下せる冷静さと冷徹さが、クジンシーの才能だったのだ。
『うちの息子が死んだのに、お前なんかがまだ生きているのか』
故郷からそんな手紙が届いたが、破って暖炉に捨てて燃やした。
ターム討伐のため、あちこちで兵を募っていた。その中に、故郷では神童とはやし立てられた顔見知りもいたのだろう。 ターム討伐では生き残って戻れる兵の方がよほど少なかった。
生きているだけで、恨めしく思われるなんて、自分は本当に嫌われ者だ。
灰になる手紙を眺めながら、クジンシーはぼんやりとそんな事を考えていた。
ノエルたち数人の少数精鋭が女王討伐のため動き出したのを知ったのは偶然だった。
何とか自分もその数の一つに入れないかと願ったのは、今のままではいつまでたっても嫌われ者のレッテルが剥がせぬまま、生きることの苦渋だけを貪り続けていなければいけないと思ったからだ。
死ぬのは、当然怖かった。
だが、生きているのは鉛のように重苦しく、水を吸った真綿のように彼の心を締め付ける。
すがるようなクジンシーを、他の面々は邪魔だと蔑んだが、それでもノエルは拒まなかった。
温情だったのだろうと思うし、断る時間も惜しかったのだろうと思う。それでも、ここにいていいのだという喜びは大きかった。
それだというのにお前は何だクジンシー、やはりここでも役立たずだ。
お前は、ずっと嫌われ者なのだから。
その爛れた顔があるだけで、誰もお前を愛さないのだ。
心に響く声のせいで、足取りはますます重くなる。
「どうした、クジンシー。疲れたのか?」
そんな中、不意に名前を呼ばれ、驚いて声をあげた。
スービエが隣を並んで歩いている。遅れているから心配になり、自分を待っているのだろう。
「い、いや。そんなことはないんだ。ちょっと、その。色々考えちゃって……」
「そうか、気をつけろよ。おまえは仮面を付けているぶん、左の視野が狭まるからな」
仮面を付けていれば視野が狭まる。同じことを、ダンターグにも言われたことがある。
確かにその通りだと思っていたし、これを外せば役立たずの自分でももう少しはマシな立ち回りができるのだろう。
「あ、あぁ。そう……だね。うん……あ、あの、スービエもこの仮面、外せるもんなら外した方がいいと思うか?」
「何だ急に。外したいと思っているのか?」
「そういう訳じゃないんだけど、ダンターグにも視野が狭まると危ないって言われたことがあるから……外した方が、役立たずの俺でも少しはマシになるのかと思って……」
自分の仮面に触れ、必死になって話すクジンシーをしばらく見つめた後、スービエは事もなげに告げた。
「別にいいだろう。おまえだって理由があってつけているんだよな。格好付けるためだろうが、ゲン担ぎのためだろうが、おまえにその仮面を付けさせるだけの理由があるのなら、俺たちに遠慮なんてする必要はないさ。事情があるなら、俺たちの都合を押し付けてまでお前が他にあわせる必要なんてないんだからな」
それは、スービエにとって当たり前の価値観だったのだろう。
誰に対してもそのように思っているし、同じ質問を他の誰かがしても、きっと同じように答えていたはずだ。
だが、そうだとしてもその言葉は、クジンシーには特別に温かいものだった。
「あ、あぁ。そうだな。そう……だよ。うん、ありがとうな、スービエ」
クジンシーは顔を浮かべると、スービエの後を歩く。
その足取りは、さっきまでと違い軽やかなものになっていた。
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