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インターネット字書きマンの落書き帳

   
たとえか欠片であっても必ず見つけるベリト様。『死を招く邪本ギギガガス:ネタバレ』
ベリト様のシナリオ、復刻おめでとうございま~す。

……。
…………いや、結構前に復刻したといえばそうなんだけどね。

それでも初登場から2年の歳月をもってしての復刻。
実質、ベリト様のキャラスト完結編のような存在なので……。

ベリト様ファンは情緒をぐちゃぐちゃにしてほしいですね。
ぼくは情緒ぐちゃぐちゃになりました!

今回のお話は、そんなベリト様復刻の「もしもあったら」後日談みたいな話です。

もしも。
どんなに時が過ぎても。
どんな姿でも。

ベリト様ならあるいは……って思っちゃうよね!

タイトル通り、常設イベント「死を招く邪本ギギガガス」のネタバレが入っております。
プレイする前に読まないでね!
ベリト様のキャラスト、ネタバレもあるからベリト様をもってないならそこも注意してね!




『必ず見つけて見せるといった』

 遠きに連なる山々の中でも一等に高い山の中腹に、その花は咲いていた。
 ラッパのような形の黄色い花弁を重たそうに下に向ける、手のひら程度の小さな花だ。
 高山植物というやつで、標高が2000mを超えない場所では咲くことがないのが特徴の一つであり、その花はさらに上、標高2500m地点に生えていた。
 周囲は同じ高山植物が一斉に咲き乱れ、まだ雪が残る山肌がそこだけ黄色に染まっている。
 時たま冷たい風が吹くが、その花にとってその風こそが何よりも心地よく、風でこすれあった時に花々はまるで鈴のような優美な音をたてる。
 その特徴からその花は地元のヴィータたちからよく「風鈴草」と呼ばれていた。
 雪解け水が出る頃にこの花はムクムクと雪を割り育って、初夏頃までは薄黄色の花を咲かせる事から、周辺の集落では春つげ花と呼ばれ楽しまれていた。

 その花の一つは、重い花弁をもたげながらぼんやりと何かを考えていた。
 ここはずいぶんと、高い山なのだろうか。
 自分はどれだけ長く咲いていられるのだろうか。
 長生きにはなぜだか自身があったから、この周囲の花たちがみんなしおれて枯れてしまっても自分だけは最後までしぶとく咲いているような気はしたのだが。

(それで、間に合うんだろうか)

 なぜか、そんな事が不安になる。
 ここは高地で人の気配がなく、誰にも手折られることもない平和な場所だ。 この集落に住む土地のものにとって見慣れた花だから摘み取って花瓶に活けようなんて物好きはいないが、外から来たヴィータたちは美しい花とみれば時に手折り、時には株ごと抜いて持ち帰ってしまう貪欲さがある。
 高山の一部に咲く花など珍しがって商品にでもされれば、この一体にある黄色い絨毯など二度と見られなくなるだろう。

 そう、ヴィータなどに見つからない方がいい。
 誰にも知られずただひっそりと、頭を垂れるようにして咲き誇りやがて散る。
 それが今の「自分」なのだから。

 ……自分。
 それにしても「自分」とはおかしなものだ。

 ほかの花たちはそのような自我など持ち合わせていないように、風になびいて揺れるだけ。
 花と花との間に言葉はない。きっと、花というのは一個で完結している個体だから言葉など必要ないのだろう。
 それなのに「私」は自分を一個の「花」と認識している。
 なぜ私は花でありながらそのような自我をもち、こうして咲いているのだろう。
 ほかの花たちも自我をもっているが、個として完結している故に言葉を発しないだけなのだろうか。
 あるいは私は特殊なのだろうか……。

 ……フォトンはこの大地に巡る。
 草木も花々も、鳥も獣も、そしてヴィータも。
 死すればフォトンとなり大地に還り、やがてフォトンは大地を巡り新しい命となる……。

 いつか聞いたような言葉が蘇る。
 たかが一輪の花でしかない自分が、どうしてそのような言葉を思い出したりするのだろう。
 花であれば何ら必要のない知識であり言葉であるはずなのに。

(あぁ、そうだ。きっと私はヴィータだったに違いない)

 花はすぐに思い当たる。それであればすべて合点がいった。
 野に咲く花にしてはやけに自我が強いのも、ヴィータについて詳しいのも、フォトンが巡る事を知っているのも、すべてヴィータだった頃の残渣だろう。
 花となり、考える脳をもたない今ではある種の夢のような記憶だ。今は一時的にこうして夢に浸っていられるが、目覚めたら自分はただの花としてほかの花たちと同じように野に揺れるばかりの姿に戻るのだろう。

 だがそれにしても自分は、ずいぶんと「覚えている」ものだ。
 ヴィータだった記憶こそは曖昧だが、いつも誰かがそばにいた。その人は決して善人ではなかったが、悪人というには素直で純真だったろう。
 欲しいと思ったものを前にすれば、いかなる危険でも率先して飛び込んでいった。
 そうして手に入れたものがガラクタでも、その人は笑っていた。
 その姿は、永遠に変わる事のない青年の姿そのままだったのだ。

 老いゆくヴィータたちの姿に、青年は涼しい視線を送っていた。
 青年は純粋な「ヴィータ」ではない。
 どこかよその世界からやってきた「混ざり物」であり、それ故に長命を得てしまったのだと、 そんな事を話していた気がする。

 最初は世迷い言かと思った。
 もとより彼は嘘偽りこそ言いはしないが大言がすぎるところがあったからだ。
 だが、30歳、40歳と年を重ねても全く容姿が変わらないその事実を前に否定しきる事などできなかった。

 そう、彼は永遠の青年だったのだ。

(とはいえ、不死という訳ではない……)

 外見こそ若いままではあったが、彼も病にかかり寝込む事もある。誰かの悪意で殺される事もあれば、事故で死ぬ事もあるだろう。
 それでなくともヴィータは異端の存在を嫌う。年をとらない姿のまま、人の中で生活するのは容易ではないだろうし彼の性格もまた他人と交わるには少々気難しすぎた。
 今でも生きている可能性は、限りなく乏しいだろう。

(……あれから何年。何十年。何百年経っているだろう)

 花は青年の中に永遠を見た。
 彼が自分の事を覚えて生きていたとしたら、自分もまた永遠なのだ。

 そう思うと、来るべき死も恐れるものではなくなっていた。実際に死に至るとき、まぶたに浮かんだのは青年と過ごした賑やかで楽しい時間ばかりだった。
 今は、青年の名も。自分の名さえも思い出せそうにないが……。

『おまえがどんな姿をしていても、俺様は必ず見つけ出してやるから覚悟しておけよ』

 ただ、彼がそう告げたのは何とはなしに覚えている。
 記憶はひどく曖昧だ、本当に言ったかどうかも定かではないが何となく「言っただろう」という確信のようなものはあった。
 その台詞はいかにも不遜で高慢で不躾な、彼らしくも憎らしい物言いだったからだ。
 性根は素直なのだがその物言いと態度の大きさで何度も喧嘩になった事があり、それを何度仲裁したか……苦労した思い出のはずなのに、思い返すと妙に楽しい気持ちが勝るのはなぜだろう。

 しかし、彼も諦めが悪い人だ。
 世界がどれだけ広いか知らない訳ではないだろう。それだというのに、次に自分がどのような姿になるかもわからない状態で「必ず見つけてみせる」なんて大口たたいてみるなんて、相変わらず態度だけは一人前だ。
 だが、あるいは……とも思うのだ。
 あるいは、本当に見つけ出してくれたのなら、とも。

 今の姿で言葉を交わす事はできないだろう。
 何より今の自分は、自分が何者であるかさえ思い出せないのだ。

 だがそれでも、もし見つけ出してくれたとしたら……。
 ……思い出せるのかもしれない。

 自分が賭した「永遠」の存在を。

「……よう、小さくなっちまったな。おまえにしちゃ、ずいぶんと慎ましい格好してるじゃねぇか」

 それからどれくらいの時を、そよ風になでられていただろう。
 それは突然現れた。黒い影を伸ばして、顔や容姿はわからない。

 だがその声は、ひどく懐かしかった。

 そうだ、あの人は大口をたたくがそれだけの実力もある。
 執念深く、やけに強運でもある。

 もうその名を呼ぶ口すらもなければ、彼の姿を捉える目も、その声を聞く耳もなかったが、たしかに「いる」のがわかる。感じる。

「見つけるのが遅いですぞ。いやはや、衰えましたかな」

 そよ風に逆らうよう、精一杯に体を震わす。
 すると男はまるでその言葉が伝わったかのように声を荒げてみせた。

「はぁっ、言ってくれるぜ。俺様も忙しかったんだっつうの……おまえがグーグー寝てるうちに世界はめまぐるしく変わっていくってのに、らしくもねぇ、かわいい体になりやがって……」

 何も見えなくても、確かに感じた。
 わずかなフォトンの動きで彼の言葉も性格もおそらく容姿も、何も変わっていないのだろうという事が。

「……お久しぶりです、ベリト様」

 あぁ、そうだ、これがこの人の名前だ。
 フォトンの奥底からそう確信する。

 花は風に揺れ、あたりは鈴のような音が響き渡る。
 そんな黄色い花畑を前に、ベリトは一人立っていた。

「久しぶりだな、ジル」

 小さな花一輪を前にかすかな笑みをこぼしながら。

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東吾
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インターネット駄文書き
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紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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