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インターネット字書きマンの落書き帳

   
黄昏時を、歩いて行こう。(ベリト様与太話)
ベリト様のリジェネシナリオ、常設おめでとう記念です。
ベリト様、メインストーリーにはそこまで大々的に出てくるキャラではないんですがね。
こう……。

個人のキャラストが他のメギドと比べて明らかに多い、脅威の20越え!
(※メギドのキャストの中で「面白さ」と「巨大感情」面では他の追随を許さないと思います)

その上で、リジェネのシナリオがこう……。
綺麗に、キャラストを畳んでくる感じでこう……恵まれてんだよなァっ!

実装当時、遺書を書いた僕ですがみごとに死にました。
今、死体が書いてます。

この話は、ベリト様の常設シナリオを終った後、アムちゃんの独り言。
みたいな視点で描きましたよ。

ベリト様もっとかきたい……もっとかきたいね……。




『トワイライト・ストーリー』

 大好きな本を読んでいる時、残りのページが僅かになると何とも言えず寂しい気持ちになる。
 こんなに楽しくて、美しくて、面白い物語がもう終ってしまうのだと思うと。
 強かったり、優しかったり、ちょっとスれていたり。
 そんな魅力的な登場人物たちの物語は終るのに、私は彼らの物語を見届ける事が出来ても一緒に行く事は出来ない。
 彼らに、置いていかれてしまったような気がするから、物語の終わりはいつも楽しくて、少し寂しいと思っていた。

 時々、読み終わりそうな本に栞を挟んで考える事もある。
 読むのを辞めてしまおうかと。
 そうすれば、私は誰にも置いて行かれない。
 彼らの冒険は終らないまま、栞の挟んだページから時を留めればあとは私が夢想するだけ。

 彼らはあれからきっと、あんな事をしたんだろう。こんな風に語ったのだろう。
 そうしてあれこれ考える間は、彼らの冒険は終る事などなくて。私もまた、彼らにおいて行かれるような寂しい思いをしなくても済むのだ。

 それでも、私は本を読む。
 挟んだ栞のページをすすめて、旅の終わりを見届ける。
 それは私が物語りから離れてしまうということ。物語から置いて行かれてしまうのを意味していたけど、私はそれでも見届けたい。
 いや、見届けるべきだと、そう思って本のページを捲るのだ。

 ページを捲れば物語が終る。
 物語の中にいる人物は、それぞれの旅路に戻りそれぞれの生活へとかえって行く。
 私はその背中を眺めて、いつだってひとりぼっち。
 ヴァイガルドにいる私は、物語の中にいる彼や彼女を追いかける事など出来ないのだから、いつだって裏表紙を見つめることしか出来ないのだ。

 だけどページを捲り、物語を終らせるのは、見届けなければいけないと、そう思ったから。
 自由奔放な冒険者である彼が。世間知らずな遊牧民の彼女が。どのような選択をし、そしてどのような命運を辿るのか。
 それまで本の中でみんなと接してきた私は、それを最後まで見届けてあげないと彼や彼女の旅はずっと終らないまま、宙ぶらりんのままでいる。

 もし私が物語りの登場人物だとしたら。
 そして、傍でいつも私の冒険を見てくれている人がいたのだとしたら。
 その人が最後まで見届けてくれないまま冒険を終らせるのは、きっと悲しいだろうなんて、そんな事を思うからだ。

 だから私は、物語が終ってひとりぼっちになっても本を読み進める。
 そして、彼らの運命を見届けるのだ。

 物語も、優しい世界ばかりではないから、 時にはこんな真実を知らなければ良かったと思う事もあるけれど、それでも私は見届ける。
 物語が終って、置いて行かれてしまったような気分になるのはやっぱり寂しいものだけど、それでも私がページを捲るのは「見届けたい」から。

 この物語の結末を私が見て、そして登場人物の思いを私が届けてあげたいと、そう思うから。
 物語の中で産まれた登場人物は架空の存在で実在はしないけど、そこに生きる彼らには確かに抱いた思いがある。
 私はそう思っているから、だから本を閉じるのだ。

 彼や、彼女の行く末を見つめ私がその思いを届ける。
 彼らの思いと、生きていくために。

 私が、ベリトさんの背中を押したのはそんな思いからだった。
 物語を終らせないでいることも、一つの選択だと思う。
 だけどあの人の物語は、私の読んでいる本とは違う。いつか、気が向いた時に本を開けば続きが読める。そんな物語ではないのだから。

 終わりは、確実に近づいている。
 そしてその時が訪れてしまったら、ベリトさんは永遠に「物語の結末」にたどり着けないのだから。

 あるいは、その方がベリトさんにとっては幸せなのかもと、思わなかった訳ではない。
 終わりと見届けてしまうことで、ベリトさんはひとりぼっちになってしまうから。
 今までのベリトさんを知っている人たち全てがいなくなってしまうという事は、例え今、私たちが傍にいたとしてもきっと寂しい事だと思うから……。

 以前、本でこんな人の話を読んだ事がある。
 その人は、母を看取った直後に父もまた後を追うように倒れ、たった一週間で両親を喪ってしまったという。
 その時、世界で私のことを知ってる人は、もう誰もいないんじゃないか……。
 そのような孤独に苛まれ、抜け殻みたいになってしまったのだと、その本には書いてありました。

 実際は、その人にも家族がいて友達がいて……その人の事を知ってる人は、沢山いて。
 ひとりぼっちになってしまったというワケではなかったのですが、それでも 自分の「過去」を構築する人物が……自分の昔を知る人物。同じ時をともにした相手がいなくなってしまうという事は、自分を支える柱のようなものを喪ってしまったような。
 そんな、いい知れない悲しみがあると、その本では語られていたのです。

 あるいは、ベリトさんもそのようになってしまうのではないのか……。
 結末を見てしまう事で、あの人の中にある思い出という物語を全て壊してしまうのではないか。
 もしそうなってしまったら、私はとんでもない事をあの人に告げてしまったのではないか。 もしそうだとしたら、私はどう償ったらいいのだろう。
 そんな風にも、思ったのですが。

「……お前みたいなガキがそんな心配してンじゃねぇよ」

 私の頭を撫でてくれたあの人は、いつもと同じ笑顔で。

「じゃ、行くか。オレ様と愉快な仲間たちの珍道中だ」

 私の前を歩くのは、いつもと同じ背中だったけど、黄昏時の西日を浴びていたからいつもより、ずっとずっと長い影を伸ばしていて。
 振り返ってこちらを見る表情は逆光のせいでどんな顔だったのかはよく見えなかったけど、きっと笑っているのだろうと……私は、そんな気がしたから。

 あぁ、良かったと。
 心から、そう思ったのだ。

 いつか、アジトで誰かが言っていた。
 長命者は、黄昏をおっかなびっくり歩いて生きているようなものだと。

 不死者のようにメギドの力を使えるワケではない。
 ヴィータと同じような生活をしなければ生きていく事も難しい……。  

 だけどその外見はずっと変わらないのだから、同じ所に留まっていればいつかは自分が【化け物】だと暴かれてしまう。
 だから、昼に生きるヴィータと夜に生きる化け物と。その間にある黄昏をいつでも歩いているのが、長命者の存在なのだと。

 黄昏時、茜色の光はどこかか細く頼りない。
 だけどそれを背に受けた、ベリトさんの姿はとても美しかったから……。

 黄昏時をおっかなびっくり歩きながら、それでも思いを背負い、その思いとともに生きて行く。

「長命者も、悪いもんじゃ無ぇさ。ずっと、永遠に若いままでいられるってのも、得した気分だろう」

 ワイングラスを傾けて、ベリトさんは言う。
 また、軽口を叩いてと誰かは呆れたように語るが私はその言葉を聞けて、少しだけ嬉しかった。

 きっとベリトさんの物語は、これからも続いていくのだろう。
 出会った人の思いをそのフォトンに刻んで。
 そしてこれからも、黄昏時に届けていくのだ。

 たとえ一瞬でも、自分の傍らにあった誰かや何かのもつ美しさや誇り、物語を、遙か未来にいる誰かのため。
 あるいは、同じフォトンをもつ遠く未来に産まれなおした、誰かにその思いを届けるために。

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