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インターネット字書きマンの落書き帳

   
ホワイトデーの新堂×荒井(BL)
平和な世界線で付き合ってる新堂×荒井の話をします。(恒例の挨拶)

ホワイトデーですので!
今回は、バレンタインのお返しをわざわざ学校に持ってきてくれる新堂に感謝する荒井の話ですよ。

3月14日は一般的な高校三年生は卒業してますが、在校生は学校に通っていると思うので卒業したけど新堂、鳴神学園のこと大好きそうだからきっと学校に来てくれると思ってます。
新堂さんは男たらしなのでバレンタインデーに男からチョコレートを沢山もらっているとも思ってます。

二次創作!
基本的にいつも自分の都合にいい話!



『お礼参りホワイトデー』

 今、学校に来てるから。
 新堂からメッセージが届いているのに気付いたのは、放課後のホームルームが始まる少し前だった。
 今日がホワイトデーだからとわざわざ学校までお返しに来たのだろう。来るなら自宅でも良いとは思うのだが、鳴神学園で渡されたものは鳴神学園で返したいと思うのは新堂らしいとは思うが、今は久しぶりに新堂と顔を合わせる事が出来るのが何より嬉しかった。
 というのも、卒業してからの新堂は新生活の準備で細々と時間をとられ中々会う機会がなかったからだ。忙しいのは仕方ないが、つい最近まで学校で当たり前のように会えていたのだが新堂が急に遠くへ行ってしまったような気持ちになり一抹の寂しさを感じていた。
 そんな風に思うなんて、いつからこんな感傷的になったのだろう。
 荒井は弱気な思いを振りほどこうと首を振るが、新堂が大学へ通うようになったら今のように月に何度か顔を合わせる事しか出来なくなるのではないか、言葉を交わす事が減れば新堂への興味が薄れてしまうのではないかと不安が広がっていく。
 新堂はあまり器用な性格ではないから四月から新しい環境に身を置き、慣れない講義やレポートに新しい人付き合いになれるまできっと時間がかかるだろう。スポーツ推薦でボクシングを続ける事になっているのだから尚更だ。しばらくは自分の事に手一杯で荒井に構う時間が減るというのは想像に難くない。
 新堂が大学生活に慣れてきた頃は、今度は荒井が受験シーズンに入る事になるだろう。荒井の成績と勉強のペースなら試験前だからと過度に根を詰める必用はないが、それでも遊んでばかりはいられない。勉強に集中する必用が出来れば、会える時間はもっと少なくなるのだろう。
 その間にすれ違いも生まれるのではないか。寂しさを抱えて孤独に思う時間が増えれば、新堂は大学で出来た新しい人間関係を深め交友もそちらに向いてしまうのではないか。大学生になった新堂からすれば、まだ高校生の自分は随分と子供に見えるだろう。付き合いで出かける事も出来ない。そうなると、自然と切り捨てられ関係性が消滅してしまうのではないか。
 心変わりするのは新堂のほうだと決まった訳でもない。好奇心と知識欲の塊のような荒井は、新堂と同じ学校に通っていた頃、毎日新堂を見ていても飽きなかった。新堂は自分と違うタイプの人間で交友も性格も見えている世界も違うから、自分の想像していなかった反応や感想を漏らす事が多く、それは荒井に興味深い刺激を与えていたからだ。離れてしまった今、新堂という観察対象がいなくなった事で自分の興味関心が急激に薄れ、以前のように執着も独占もしたいと思わなくなるのではないか。荒井は自分を冷淡で情に絆される人間ではないと思っていたから、そんな理由で新堂に飽きてしまうような気がしていた。

「よぉ、荒井。なんか久しぶりだな」

 取り留めの無い事を考えているうちにホームルームが終わっていた。席を立たずぼんやりしていた時間が随分とあったのだろう。新堂が声をかけるまで、彼がそばに来ている事にも気付いていなかった。卒業したから私服で学校に来ているのもあって、その姿はやたらと目立つ。
 それでなくとも新堂は下級生にとって悪い噂の絶えない人物だった。他の生徒たちは荒井が新堂に絡まれているのだと思い、自分たちは関わり合いたくないと言わんばかりにいそいそと外へ出て行く。賑わっていた教室はたちまち静かになっていた。

「新堂さん、わざわざ校内にまで来たんですか。外で待っていてくれてもよかったんですよ」
「俺がそんなじっと待っているのを耐えられる奴だと思ったか?」
「……いえ、思ってません。そうですね、新堂さんは信号待ちをするくらいなら横道を入ってでも進んでいる方がいいタイプでした」

 荒井が笑うのを見ると、新堂もどこか安心したような顔をし彼の前にある開いた椅子へと腰掛けた。

「ほら、これ。バレンタインにお前からもらったからお返し。流石に三倍返しってのは無理だけど、俺が食って美味いと思った店の奴な」

 そう言いながら鞄に入ったプレゼントを荒井へと差し出す。ラッピングの色から、地元でも有名な洋菓子店の品だというのはわかった。パフェが好きで後輩と食べ歩きなどをしているのは知っていたが、パフェの他にも甘いものなら全般的に好きなのだろう。食べてみて美味しいと思った店を覚えておくあたり、思ったよりまめな性格なのがうかがえる。

「ありがとうございます……三倍返しなんていいんですよ。わざわざ、僕に会いに来てくれただけで三倍以上ですから」

 つい口から零れた言葉に、思わず赤面する。会えた喜びが無意識に出てしまい恥ずかしくなったからだ。視線をそらす荒井へ手を伸ばすと新堂はその頭をくしゃくしゃになで回した。

「ありがとな、俺もお前に会えて最高に幸せだぜ」

 そして臆面無くそんな事を言うから、照れているのは自分だけかと思うとますます恥ずかしい気持ちが募るのだ。それが嫌なのかといわれると、くすぐったさが勝るのが苛立たしさも心地よい。人を愛する気持ちは、自分でも制御出来ないのが荒井にとって屈辱でもあるし、興味深くもある。
 だからこそ、募る思いがいずれ薄れて消えてしまうのが恐ろしく、そして悲しい事のように思えた。

「それじゃ、帰りましょうか」

 焦れる気持ちを抑え、荒井は立ち上がる。いずれ忘れてしまうのかもしれないが、今はこの思いをゆっくりと味わいたい。そう思っていたのだが、新堂はばつが悪そうに笑うと紙袋を軽く掲げて見せた。

「あ、帰るのちょっと待ってくれよ。他にもお返し渡さないといけない奴がいるからな」
「……は? 貰ったんですか、バレンタインに僕以外のチョコレートを」
「お、おう……仕方ねぇだろ、偶然見かけたら義理ですとか、日頃のお礼ですとかで……福沢とか、栗原とか星野が何か渡してくれたんだよ」
「半分以上男の人じゃないですか!? ……新堂さん、無意識に男をたらし込む癖なんとかしてくれませんか?」
「誤解だっての、そんなんじゃ無ェよ。星野も栗原も可愛い後輩だろ」
「新堂さんは自覚ないかもしれませんけど、他の人に対して距離が近すぎること結構ありますからね。僕がいるってこと、忘れないでください」

 荒井は新堂の手を引いて立ち上がらせる。
 嫉妬の炎が燃え上がり狂いそうになる。まったく、新堂は軽率だ。自分が他人から見てどれだけ魅力的なのか一切気付いていないのだ。この調子では大学に入ってからも先輩や友人などに距離感ナシで近づいて誤解される事もあるだろう。

「お返し、僕も一緒に行きますから」
「は? いや、いいって。すぐ用事済ませてくるからよ……」
「ダメです、僕が一緒に行って本当に、何でもないのを確認させてもらいます。わかってますよね? 貴方の恋人は、とても嫉妬深いんですよ」

 そして意地の悪い笑顔を浮かべると、新堂の手を引いて歩き出す。
 離れてしまえばそれで終わりなのではないか。それを怖れていた。だがどうだろう、自分はこんなにも嫉妬深く、独占欲が強く、執念深いのだ。呆れる程束縛して、諦めも悪い性格だ。こんな男がどうして飽きたり興味が薄らいだりするものか。新堂が飽きたと距離を取ろうとしても、絶対に自分は許さないしそうなった時は殺してでも手に入れる。
 自分は、そういう人間なのだ。それは記憶が薄れ飽きていく事より熾烈で恐ろしい考えだろうと思うが、荒井はその方が安心だった。
 思い通りにならない感情より、思い通りになる運命のほうがずっと安心だ。
 新堂は荒井の真意に気付いているのだろうか、困惑しながらもどこか楽しそうに笑って彼の手を強く握り返していた。

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インターネット駄文書き
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