インターネット字書きマンの落書き帳
坂上くんの嫉妬する荒井の話(新堂×荒井/BL)
平和な世界線で普通に付き合ってる新堂×荒井の話をします。
ここまで挨拶を含めた幻覚の説明だぜ!
今回は、坂上くんのこと「かわいいかわいい」ってしていたら荒井くんが何か嫉妬する。
みたいな話をしますよ。
坂上くんと荒井くん。
双方、何となく「自分に似ているタイプかな」と思っていそうな感じあると思います。
何かちいさくて可愛いやつら。
ここまで挨拶を含めた幻覚の説明だぜ!
今回は、坂上くんのこと「かわいいかわいい」ってしていたら荒井くんが何か嫉妬する。
みたいな話をしますよ。
坂上くんと荒井くん。
双方、何となく「自分に似ているタイプかな」と思っていそうな感じあると思います。
何かちいさくて可愛いやつら。
『かわいくないから可愛い』
新堂が新聞部から出てしばらく歩いていると、不意に背後から荒井が声をかけてきた。
「新堂さん、今から帰りですか?」
「おぅ、荒井か……」
新堂は荒井の声色が僅かに普段と違い、声が震えているのに気付く。こんな声を出す時の荒井はひどく苛立っているか、あるいは腹を立てている時だ。
荒井を怒らせているのは大抵新堂の振る舞いが原因である事が多いのだが、さて、今回は一体何をしただろう。考えるうち、荒井は新堂の隣に並んで歩き出した。
しばらく無言のまま廊下を歩く。
9月が過ぎ、そろそろ10月に入ろうといった頃だった。
夏の大きな大会を終えた新堂は主将を二年に譲り、ボクシング部は引退している。夏の大会でそこそこの成績を出した新堂は運良くスポーツ推薦の声がかかり、今はその対策に追われている真っ最中だ。
新聞部に出入りすることが多いのも、日野から小論文の書き方を教わるというためであり、別に遊んでいる訳ではない。
最も、何をするにしても飽きっぽい新堂だ。集中力が5分で切れてしまってからは、文化祭にそなえあれこれと準備をする新聞部を手伝う方が多かったのだが。
最近の行いを振り返るが、荒井には特に何もしていない気がする。
新聞部で荷物を運んだり、必要なデータをプリントアウトしたくらいでは荒井が怒るはずはなく、時間がある時は充分すぎるくらい荒井を可愛がっているはずなのだが。
「……なぁ、荒井。怒ってるよな? 俺、何かお前にしたか?」
そもそも、荒井は怒りのスイッチがどこに入っているかがわかりにくいところがある。
心当たりがない時は、直接聞いた方が早い。
そう思い問いかければ、荒井は俯き視線を逸らした。
「いえ、別に怒っている訳ではないですよ」
「いーや、そういう時のお前は怒ってるんだよ。何か俺、お前に悪いことしたか?」
新堂は荒井の横顔を見つめる。
「先に言っておくけど、お前の事を責めようって訳じゃねぇからな。ただ、俺はそういうの疎いだろ。言われて直せることだったらなるべくそうしてぇから聞いてるってだけだから、遠慮なく言って欲しいんだわ。俺だって、おまえに嫌われたくねぇからな」
先手を打つよう告げたのが功を奏したのか、荒井はしばらく思案した後、ゆっくりと顔を上げた。
「新堂さん、最近はよく新聞部に行かれますよね。えぇ、理由は存じ上げております。日野さんから小論文の書き方を教えてもらうためだということは……」
基本的に、運動部も文化部も二学期になった時点で三年生は引退し、受験勉強や就職活動に備えることになっている。
それでも日野が新聞部に足繁く通うのは、文化祭が間近に控えているからだ。
運動部は夏の大会が終わるのが一つの節目となるのだが、文化部は文化祭を節目にし、それまでは先代の部長や副部長が手を貸すことが多い。
文化祭を目前に控えた現在、日野は開いた時間ほとんど新聞部にいるため、新堂も自然と新聞部に向かうようになっていた。
今の状態だとむしろ、新聞部の手伝いをしている時間の方が長いかもしれない。
「……ですが、新堂さんは小論文の勉強を全くしてませんよね。資料を運んだり、写真をとりに行くのに付き合ったり、毎日毎日新聞部の手伝いばかりしてませんか」
「あぁ、まぁな……やっぱ体動かしてる方が落ち着くし。何だ、俺が新聞部を手伝うのが気に入らないのか?」
「いえ、それは別にいいんです。日野さんから小論文の書き方を教わっているのでしたら、手伝うのが道理だ……きっと新堂さんはそう考えているのでしょう? 僕は新堂さんのそういう所は嫌いじゃないので。ですが……」
と、そこで荒井は一度言葉を詰まらせ、言うかどうか悩むような素振りを見せる。
だがすぐに顔をあげると、新堂の制服その裾を握りながら懸命に訴えた。
「でも、新堂さん……坂上くんの事をいつもかわいがりすぎてませんか?」
「え、あ……そうだな。坂上は日野以外で知ってる顔だし、あいつ小さい体でちたちた動きながら一生懸命頑張ってて根性あるからどうしても気になるんだよな」
そう言いながら新堂は坂上の姿を思い出す。
同年代の他の少年たちと比べても明らかに小柄で細い体をした坂上は、見た目こそ小さいが日野の指示を受けてあちこち駆け回っているのだが、その姿は懸命に餌を集めるリスか、あるいはハムスターを思わせてどこか可愛く思えた。
見た目も体格も可愛い上、動き方もちまちまして可愛いくせに男らしい所を見せようと、無理して荷物を多くもったりするから、つい手を貸したくなるのだ。
「だいたい、あいつはいつも細々と動いているんだよな。よく倉田と連んでるのを見るんだが、倉田はわりと猪突猛進タイプで、倉田の抜けている部分をフォローしたりしててな。何かこう、手伝ってやらねぇとって気がするんだよ。ま、俺は頭悪いから、力仕事くらいしか手伝うことなんてねぇんだけどな」
話している最中も、制服の裾を握る荒井の手に力が入るのが分かる。
何か、坂上への態度で気に入らないことがあったのだろうか?
「わかります、坂上くんは頑張り屋ですから応援したくなる気持ちも、新堂さんが入れ込むのも……でも、新堂さんはいつも坂上くんのことを『かわいい』って呼んでますよね? 頭をくしゃくしゃに撫でたり、ほっぺをフニフニ触れたりして……少しスキンシップが多いと思いませんか?」
新堂はようやく荒井が何に苛立っているのかに気付いた。最近は新聞部に入り浸り、坂上を構うことが多かったからそれに対して嫉妬しているのだろう。
「いや、待てよ。確かにまぁ、坂上は可愛い奴だからよく構ってると思うけどな。頭撫でたりとか、頬を伸ばしたりするのは別に……他の奴にもやってるぜ。ボクシング部の星野とか、栗原とか……袖山にもやってるところ、お前何度か見てるよな? あいつらの時は特に何も言わなかっただろ?」
「それは……そうですよ、袖山くんは僕とタイプが違うじゃないですか。確かに同年代と比べれば袖山くんも小柄な方ですが、それでも身長は人並みにありますし、体格だって僕よりずっとしっかりしてますから。でも、坂上くんは……僕より小柄だし、僕より華奢です。だから……嫉妬してしまうんです。坂上くんは、どちらかというと僕に似てますから」
荒井の言葉に、新堂は首を傾げる。
確かに二人とも小柄で華奢という点ではよく似ていると思うが、顔立ちやタイプはかなり違うと思っていたからだ。
坂上はちまちま動き回る姿は小動物のようだが、荒井はどちらかといえば冷静で静かに動くのでは虫類側だと、新堂は思っていた。
「それに……新堂さんは、坂上くんには可愛いと沢山言うじゃないですか。僕にはそんなこと言わないのに……やはりそういうのは、悔しいです……」
荒井は制服の裾を引いてから、ぽつりとそう零す。
その姿を見て、新堂は思わず笑っていた。
「そりゃそうだろ、おまえ全然可愛くねぇもん」
「なぁっ……な、何言ってるんですか新堂さん。僕は……」
「でもよォ、俺はそんな可愛げのないお前のことが好きなんだぜ?」
新堂の言葉に、荒井は目を丸くする。その顔は少しずつ赤くなって見えたのは、西日のせいだけではなかっただろう。
新堂は荒井の頭に手をのばし、くしゃくしゃと撫でていた。
「あぁ、でも今のお前は……かわいいな。そういう所は、本当に可愛い」
そう言って歩き出す背中を。
「し、新堂さん! 待ってください!」
荒井は必死に呼び止める。
その声を、新堂は心地よく受け止めるのだった。
新堂が新聞部から出てしばらく歩いていると、不意に背後から荒井が声をかけてきた。
「新堂さん、今から帰りですか?」
「おぅ、荒井か……」
新堂は荒井の声色が僅かに普段と違い、声が震えているのに気付く。こんな声を出す時の荒井はひどく苛立っているか、あるいは腹を立てている時だ。
荒井を怒らせているのは大抵新堂の振る舞いが原因である事が多いのだが、さて、今回は一体何をしただろう。考えるうち、荒井は新堂の隣に並んで歩き出した。
しばらく無言のまま廊下を歩く。
9月が過ぎ、そろそろ10月に入ろうといった頃だった。
夏の大きな大会を終えた新堂は主将を二年に譲り、ボクシング部は引退している。夏の大会でそこそこの成績を出した新堂は運良くスポーツ推薦の声がかかり、今はその対策に追われている真っ最中だ。
新聞部に出入りすることが多いのも、日野から小論文の書き方を教わるというためであり、別に遊んでいる訳ではない。
最も、何をするにしても飽きっぽい新堂だ。集中力が5分で切れてしまってからは、文化祭にそなえあれこれと準備をする新聞部を手伝う方が多かったのだが。
最近の行いを振り返るが、荒井には特に何もしていない気がする。
新聞部で荷物を運んだり、必要なデータをプリントアウトしたくらいでは荒井が怒るはずはなく、時間がある時は充分すぎるくらい荒井を可愛がっているはずなのだが。
「……なぁ、荒井。怒ってるよな? 俺、何かお前にしたか?」
そもそも、荒井は怒りのスイッチがどこに入っているかがわかりにくいところがある。
心当たりがない時は、直接聞いた方が早い。
そう思い問いかければ、荒井は俯き視線を逸らした。
「いえ、別に怒っている訳ではないですよ」
「いーや、そういう時のお前は怒ってるんだよ。何か俺、お前に悪いことしたか?」
新堂は荒井の横顔を見つめる。
「先に言っておくけど、お前の事を責めようって訳じゃねぇからな。ただ、俺はそういうの疎いだろ。言われて直せることだったらなるべくそうしてぇから聞いてるってだけだから、遠慮なく言って欲しいんだわ。俺だって、おまえに嫌われたくねぇからな」
先手を打つよう告げたのが功を奏したのか、荒井はしばらく思案した後、ゆっくりと顔を上げた。
「新堂さん、最近はよく新聞部に行かれますよね。えぇ、理由は存じ上げております。日野さんから小論文の書き方を教えてもらうためだということは……」
基本的に、運動部も文化部も二学期になった時点で三年生は引退し、受験勉強や就職活動に備えることになっている。
それでも日野が新聞部に足繁く通うのは、文化祭が間近に控えているからだ。
運動部は夏の大会が終わるのが一つの節目となるのだが、文化部は文化祭を節目にし、それまでは先代の部長や副部長が手を貸すことが多い。
文化祭を目前に控えた現在、日野は開いた時間ほとんど新聞部にいるため、新堂も自然と新聞部に向かうようになっていた。
今の状態だとむしろ、新聞部の手伝いをしている時間の方が長いかもしれない。
「……ですが、新堂さんは小論文の勉強を全くしてませんよね。資料を運んだり、写真をとりに行くのに付き合ったり、毎日毎日新聞部の手伝いばかりしてませんか」
「あぁ、まぁな……やっぱ体動かしてる方が落ち着くし。何だ、俺が新聞部を手伝うのが気に入らないのか?」
「いえ、それは別にいいんです。日野さんから小論文の書き方を教わっているのでしたら、手伝うのが道理だ……きっと新堂さんはそう考えているのでしょう? 僕は新堂さんのそういう所は嫌いじゃないので。ですが……」
と、そこで荒井は一度言葉を詰まらせ、言うかどうか悩むような素振りを見せる。
だがすぐに顔をあげると、新堂の制服その裾を握りながら懸命に訴えた。
「でも、新堂さん……坂上くんの事をいつもかわいがりすぎてませんか?」
「え、あ……そうだな。坂上は日野以外で知ってる顔だし、あいつ小さい体でちたちた動きながら一生懸命頑張ってて根性あるからどうしても気になるんだよな」
そう言いながら新堂は坂上の姿を思い出す。
同年代の他の少年たちと比べても明らかに小柄で細い体をした坂上は、見た目こそ小さいが日野の指示を受けてあちこち駆け回っているのだが、その姿は懸命に餌を集めるリスか、あるいはハムスターを思わせてどこか可愛く思えた。
見た目も体格も可愛い上、動き方もちまちまして可愛いくせに男らしい所を見せようと、無理して荷物を多くもったりするから、つい手を貸したくなるのだ。
「だいたい、あいつはいつも細々と動いているんだよな。よく倉田と連んでるのを見るんだが、倉田はわりと猪突猛進タイプで、倉田の抜けている部分をフォローしたりしててな。何かこう、手伝ってやらねぇとって気がするんだよ。ま、俺は頭悪いから、力仕事くらいしか手伝うことなんてねぇんだけどな」
話している最中も、制服の裾を握る荒井の手に力が入るのが分かる。
何か、坂上への態度で気に入らないことがあったのだろうか?
「わかります、坂上くんは頑張り屋ですから応援したくなる気持ちも、新堂さんが入れ込むのも……でも、新堂さんはいつも坂上くんのことを『かわいい』って呼んでますよね? 頭をくしゃくしゃに撫でたり、ほっぺをフニフニ触れたりして……少しスキンシップが多いと思いませんか?」
新堂はようやく荒井が何に苛立っているのかに気付いた。最近は新聞部に入り浸り、坂上を構うことが多かったからそれに対して嫉妬しているのだろう。
「いや、待てよ。確かにまぁ、坂上は可愛い奴だからよく構ってると思うけどな。頭撫でたりとか、頬を伸ばしたりするのは別に……他の奴にもやってるぜ。ボクシング部の星野とか、栗原とか……袖山にもやってるところ、お前何度か見てるよな? あいつらの時は特に何も言わなかっただろ?」
「それは……そうですよ、袖山くんは僕とタイプが違うじゃないですか。確かに同年代と比べれば袖山くんも小柄な方ですが、それでも身長は人並みにありますし、体格だって僕よりずっとしっかりしてますから。でも、坂上くんは……僕より小柄だし、僕より華奢です。だから……嫉妬してしまうんです。坂上くんは、どちらかというと僕に似てますから」
荒井の言葉に、新堂は首を傾げる。
確かに二人とも小柄で華奢という点ではよく似ていると思うが、顔立ちやタイプはかなり違うと思っていたからだ。
坂上はちまちま動き回る姿は小動物のようだが、荒井はどちらかといえば冷静で静かに動くのでは虫類側だと、新堂は思っていた。
「それに……新堂さんは、坂上くんには可愛いと沢山言うじゃないですか。僕にはそんなこと言わないのに……やはりそういうのは、悔しいです……」
荒井は制服の裾を引いてから、ぽつりとそう零す。
その姿を見て、新堂は思わず笑っていた。
「そりゃそうだろ、おまえ全然可愛くねぇもん」
「なぁっ……な、何言ってるんですか新堂さん。僕は……」
「でもよォ、俺はそんな可愛げのないお前のことが好きなんだぜ?」
新堂の言葉に、荒井は目を丸くする。その顔は少しずつ赤くなって見えたのは、西日のせいだけではなかっただろう。
新堂は荒井の頭に手をのばし、くしゃくしゃと撫でていた。
「あぁ、でも今のお前は……かわいいな。そういう所は、本当に可愛い」
そう言って歩き出す背中を。
「し、新堂さん! 待ってください!」
荒井は必死に呼び止める。
その声を、新堂は心地よく受け止めるのだった。
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