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インターネット字書きマンの落書き帳

   
穴におちた荒井の話(新堂×荒井)
この新堂と荒井はいずれ付き合うに違いない。(挨拶)

という訳で、新堂と荒井はいずれ付き合う。
そう信じて疑わないものです。

今回は、特にお互いを思っているとかそういう訳ではないんですけど。
荒井の事、そこまで嫌いじゃない新堂と、新堂のことそこまで嫌いじゃない荒井が出る話をしますよ。

旧校舎を探索中にうっかりでけー穴に落ちてしまった荒井を探しにくる新堂みたいな話です。

新堂×荒井のこと好きかい?
今日から好きになろうぜ!



『ひとりではさみしいものね』

 床の上に大の字になると、荒井は天井を見る。
 日が暮れてすっかり暗くなったその場所に今は月の光もなく、耳が痛くなるほどの静寂に満ちていた。

 夕暮れ時、旧校舎の一階を探索していた途中だった。
 目的は旧校舎のどこかにある図書室だ。
 旧校舎に残された書籍には、動かすのも危険だったため捨て置かれたものも多いと聞く。
 それじゃなくとも、戦前・戦後間もなく出された文豪の初版本のような貴重な品が残されていると聞いたので、探索の価値は充分あると思った。

 だが問題は、旧校舎のどこに図書室がるのか明らかになっていないことだった。

 見た目と違い広大な敷地をもつ旧校舎は、入るたびに内部の様子が違うとも噂されており、外から見ただけではどこに何があるのかなど判別できない。
 遠くから眺めていても何も得られないのなら、実際に行ってみるしかないだろう。
 そう思った荒井は、懐中電灯を片手に旧校舎へと向かう。

 旧校舎に立ち入るのは校則で禁止されていた。老朽化が主な理由ではあるが、怪異や呪物、因縁物などが潜んでいるからというのも多分にあるだろう。

 教室の並ぶ廊下を素通りし、職員室だった室内に地図でもないか探し、いくつ見たかはわからない捨て置かれた空き教室に入った瞬間、たゆんだ床がからミシリと音がし、荒井の視界が大きく揺れる。

 痛いと思った時は、すでに落ちていた。
 周囲には床板がちらばり、あちこち擦り傷になっている。
 一階の探索をしていたはずなのに、穴はかなり深く手を伸ばしても上に届きそうにもなかった。荒井が同年代の少年と比べて小柄であるというのを差し引いても、かなりの高さを落ちた事になるだろう。

 吐き気や頭痛はないので頭をひどく打ったような事はないが、身体中が軋むように痛む。
 どうやっても自力で脱出できないのに気付いた荒井はバッグからスマホを取りだしたが、不運というのは続くものだ。画面が割れたスマホはどうやっても動きそうになかった。

 こうなったら、無駄に騒ぐのは逆効果だ。
 静かに助けを待つしかないだろう。

 その場に身を丸め誰かこないか耳をそばだてるが、立ち入りが禁止されている旧校舎だ。助けが来る可能性は、限りなくゼロに近いだろう。
 せめて友人に一声かけてから行くべきだった。
 そう思うが、もし袖山などに声をかけたら

「荒井くん一人だと心配だから、僕も一緒に行くよ」

 なんて言って付いてくるだろう。
 袖山を巻き込む真似はしたくない。

 荒井は目を閉じ、暗闇に身を委ねる。
 床が抜けるとは想定外だったが、これは自分のミスだ。油断した自分が悪いのだから、誰をせめる気にもならない。

「あぁ、でも死ぬんだったら傍らに、友達がいてほしかったですね。曽我くん、赤川くん、時田くん……彼らが一緒に死んでくれるのなら、僕はもっと喜んで死んでいたでしょうから……」

 独りごちる荒井の耳に、微かだが足音が聞こえる。
 最初は気のせいだと思っていたが、軋む足音と歩幅から背丈は170cm以上はある。何とはなくだが、男のような気がした。

「すいません、誰かいますか? 申し訳ないのですが、穴に落ちてしまって……助けてください。ですが、教室にはすぐ入らないでください、大きな穴がありますから!」

 すると、声に誘われるよう足音が近づいてくる。
 助かるかもしれない。そう思った時、穴の上から顔が覗いた。

「おい、荒井。そこか?」
「……新堂さん?」

 顔を見せたのは新堂だった。ボクシング部の主将で、いかにも不良っぽい外見をしているのだが、運動部での怪異に幾度も会っているという変わり種だ。
 何で新堂がこんな遅くに旧校舎などにいるのだろう。
 荒井の疑問を見越したように、新堂はスマホをこちらに向けた。

「日野から連絡があったんだよ。荒井がまだ帰ってないみたいだから、まだどこかにいるかもしれない。探しておいてくれ、ってな。行方不明といえば旧校舎だろ? だから何となく旧校舎を見に行ったんだが、アタリだったようだな」

 新堂は八重歯を見せて笑う。彼は時々動物的な直感で危険を避ける事があるが、その直感は行方不明の後輩を探す時にも役立つようだ。
 何にしても、これで助かる。
 そう思い顔を上げる荒井のいる穴に、新堂はいきなり飛び降りてきた。

「ちょ、ちょっとまってください新堂さん。何で穴に降りてきてるんですか。上から引っ張ってもらわないと、この高さは出られませんよ」
「いや、そう言うがな。いくら俺でもお前に手を伸ばしてこの穴で手が届く訳ないだろ? ロープでもないと到底無理だって。だが、そんなものすぐに用意できねぇ。日野には伝えてあるから、助けてもらうのは明日にして、今日はま、この穴でゆっくりすごそうぜ」

 新堂はそう言いながら、エコバッグに入ったお菓子を差し出す。
 中には弁当や軽食の他、スナック菓子やジュース、レジャーシートまで入っていた。

「ここで一夜を過ごす気満々じゃないですか、何考えてるんですか……」

 呆れる荒井を前に、新堂は笑う。

「いや、滅多にないだろ? 旧校舎で一泊するなんて経験はよ……それに、たまにはお前とゆっくり話してみたかったしな」
「僕は特に話す事なんて無いですよ……」
「そう言うなって。それに、ここで簡単に助けられないってのは本当なんだよ。周囲を歩いて見たが、どこも床がガバガバでな。うっかり力を入れると盛大に床が抜けるだろうから、俺一人じゃ元々無理なんだよ。といっても、今更助けの生徒は呼べないだろ。教師を呼んだとしたら、来るのは黒木だ。そのまま俺たちが黒木の夜食に成りかねない」
「確かに、黒木先生は生徒を物理的に食していると専らの評判ですからね」
「だから、今すぐお前を助けるのは無理なんだよ。だったら、一人でいるより二人でいる方がいいだろ」

 レジャーシートの上には、ナゲットやポテトが広げられている。
 もう、小さなパーティだ。

「それに、怒られるのも一人より二人の方がマシだよな。こんな場所に一人でいるのもつまらねぇだろうし、腹も減ったろ? おまえ何食うかわからなかったから適当に買ってきたぜ。ま、せっかくだから今日は楽しんでいこうぜ」

 まったく、どこまでお気楽なのだろう。
 ここは旧校舎、怪異の腹の中にいるようなものだ。

 だがそれでも、新堂が近くにいるのなら何とかなるような気がする。
 少なくとも、一人で静かに死なせてはくれないだろう。

「……そういうのは僕のポリシーと反しますから、まだまだ生きていることにしましょう」

 荒井は新堂に向き合って座ると、ポテトに手を伸ばす。

「何だ荒井、けっこう怪我してるな。応急処置用の道具も買ってきたから、使うか?」
「腹ごしらえしてからでいいですか? すっかり空腹で、考えるのも億劫なんです」
「そうか、ま、腹が減ってるなら大丈夫だな」

 新堂はそういいながらカラカラと笑う。
 旧校舎の窓からは、見えないと思っていた月の光が差し込んでいた。

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インターネット駄文書き
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