インターネット字書きマンの落書き帳
風間から500円もらって困る坂上くんを助ける日野さん
日野と風間。
二人の先輩にそれぞれ別のベクトルで愛されている坂上くんの話ですよ。
今回は、風間から急に500円もらって「どうしよう!?」って困惑する坂上くんの話です。
日野さんが頼れる先輩で、風間さんは困った先輩で、それぞれ坂上くんのことは結構好きだよ。
坂上くんはちょっと面倒な人に好かれるタイプだろうから……。
ちょっと恋心がこじれている相手にいっぱい好かれているといいな♥ と思います。
色々な先輩に愛される坂上のこと好きかい?
今日から好きになろうぜ!
二人の先輩にそれぞれ別のベクトルで愛されている坂上くんの話ですよ。
今回は、風間から急に500円もらって「どうしよう!?」って困惑する坂上くんの話です。
日野さんが頼れる先輩で、風間さんは困った先輩で、それぞれ坂上くんのことは結構好きだよ。
坂上くんはちょっと面倒な人に好かれるタイプだろうから……。
ちょっと恋心がこじれている相手にいっぱい好かれているといいな♥ と思います。
色々な先輩に愛される坂上のこと好きかい?
今日から好きになろうぜ!
『風間さんからもらった500円』
新聞部の部室に来てから、坂上は机に置いた500円をじっと見つめていた。
新聞製作も特に無い時期は部室に顔を出す部員は普段よりも少なく、今は坂上の他に日野しか来ていない。日野はパソコンに入れた写真の整理をしながら、500円とにらめっこを続ける坂上に呆れたような顔を向けた。
「さっきから500円ばっかり見てるな、坂上。そんなに気にしてると、本当にその500円が祟るかもしれないぞ」
「で、でも……やっぱり、不思議じゃないですか。この500円、風間さんがくれたんですよ」
坂上はどこか不安そうな顔を向ける。
なんでも今朝の登校時、偶然に風間と出くわした坂上はまた500円をくれと迫られるのだろうと身構えていたところ、ニコニコ笑顔で近づかれながら 「やぁ坂上くん。いつもお世話になっているから、今日はボクから特別にプレゼントだ」 なんて普段と同じ軽い調子のまま、500円を手に握らされたのだ。
風間が節約家なんて言葉が生やさしいほどケチな性格なのは広い鳴神学園の中でも噂にあがるほどで、まだ自分の事を知らないであろう相手には必ず声をかけ「500円貸してくれるかい?」とさも急務であるかのように告げ、そのまま返さないのが日常茶飯事なのだ。
そんな風間が500円を奪う側ではなく、贈る側になるなんて風間を知っている人間なら誰でも疑うだろう。
明日で世界が滅亡するのではないか、そうとさえ考えても不思議ではない。
「日野さん、僕はどうしたらいいんでしょうか。この500円……」
坂上は今にも「もうだめです」とその場で倒れ伏しそうな顔で訴えてきた。
「そんなに不安ならさっさと使ってしまえばいいだろう? 手元においても碌な事はない」
「僕もそうしようと思ったんですけど、いざ使おうとした時、後で風間さんに責められるんじゃないかと思ったら不安になったんですよ。『どうしてボクがプレゼントした500円を使ってしまったんだい!?』なんて言われたら……」
なるほど、風間ならいいそうだ。
目の前にある500円は価値の高いレアな貨幣ではない、どこにでも流通している普通の500円玉だが、風間だったら自分がプレゼントしたから価値があるものだなんてムチャクチャな言い分を平気でねじ込んできそうではある。
風間はそういう男なのだ。
「それじゃぁ、取っておくか? 桐の箱にでもいれて使わないでおけば、アイツも喜ぶだろう」
「使わないでおいたらおいたで、『まだ使っていないのかい? あぁ、せっかくボクがプレゼントした500円が使ってもらえないなんて、何て悲しいんだろう。ボクはとても傷ついたよ……』なんて、いいそうじゃないですか」
なるほど、風間ならそれもあり得る。
使っても悲しまれ、使わなくても責められる。そう思ったらにっちもさっちも行かなくなってしまったのだろう。
それにしても、最近の坂上は風間の真似が随分と上手くなっている。集会があってからよほど頻繁に絡まれているのだろう。鳴神学園はマンモス校で1年と3年では教室棟も違うというのに、きっと風間は坂上を茶化すためわざわざ会いに行っているに違いない。
「あぁ、僕どうしたらいいんでしょう、日野さん」
坂上は頭を抑えながら机に伏せる。すっかり悩んでもう限界なんだろう。
日野は苦笑いをしながら財布を取り出し、100円玉を5枚並べた。
「それじゃ、その500円は俺が預かるってのはどうだ。この100円玉5枚と交換して、両替って形で俺に譲ってくれ。そうすれば、使った訳でもないし、俺が持っているってことにすれば風間に何を言われても大丈夫だろう」
「えっ、いいんですか日野さん」
「いいっていいって、これでも俺の方が風間の扱いには慣れてるつもりだしな」
日野の提案に、坂上は手をとって喜ぶ。本当に助かったと思ったのだろう。
「ありがとうございます日野さん! 本当に悩んでたので……」
「大げさだな、風間のすることを一々気にしてたら身体が持たないぞ?」
「そうかもしれませんけど……やっぱり、気になりますから……」
相変わらず、坂上は優しい奴だと思う。だから風間も気に入って、わざわざ1年の教室まで会いに行くのだろう。
「だが、俺の坂上をあんまり惑わせないでほしいもんだな」
「えっ? いま、何か言いましたか。日野さん」
「いや、何でもないさ。それより用が済んだら写真のファイルを整理するの手伝ってくれ。一人だと骨が折れそうだ」
「はい、わかりました」
坂上は自分の小銭入れに100円玉を入れると嬉しそうに日野と並ぶ。
お人好しで素直すぎるほど純真な坂上の笑顔を見るのが、日野は好きだった。
※※※
翌日、日野は朝のホームルームが始まる前に風間のクラスへ顔を出した。
「おい、風間。これ」
そう言いながら親指で500円玉を弾けば、風間は慌てて立ち上がりバランスを崩しそうになりつつ何とか500円を受け取る。
そして、日野の方を見ると悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「やぁ、ありがとう日野。日野がこれを返すってことは、坂上くんはあの500円を使えなかったんだね」
「あぁ、お前のせいで随分と悩んでいたぞ」
事の発端は全てが風間の気まぐれだ。
いつも500円玉をほしがっている自分が、逆に500円玉を施したとしたら坂上はどんな反応をするのだろうか。
そんな悪戯を思いついた風間は、何としてもそれを試したくなった。だが、500円は風間にとって大金だ。それをただで渡したくはない。
500円を渡して、坂上がもし使ってしまったのなら「何で使ったんだい? キミに預けていただけなのに」とでもいってまた返してもらうつもりだった。
だがずっと使わないでいたら、ずっと返してもらえない。500円損したままだ。
その時にそなえ、もし坂上が500円を使わないようなら日野が両替してそれを取り戻してほしいと、事前に頼んでおいたのだ。
「そうか、昨日の坂上くんはボクの事で頭がいっぱいだったか……ふふ、おかしいねぇ。そーんなにずっとボクを思ってくれてるなんて」
「下らない悪戯はもうやめろよ、うちの坂上をあんまりからかわないでやってくれ。あいつはお前と違って純粋ないい奴なんだからな」
日野に釘を刺され、風間は唇を尖らせる。
同じ部の先輩だからって、日野はいつも坂上の保護者のように振る舞うのはどうにも気に入らなかったからだ。
「べつに、坂上くんは日野のものじゃぁないでしょ、いいじゃないかボクが何をしても」
「風間のものでも無いからな、部に差し障りのある真似は程ほどにしてくれ」
風間の鼻先に指をつきつけ、よくよく言い聞かせてから日野は去って行った。
普段の日野より幾分か不機嫌に見えたが、気のせいだろうか。
「ま、ボクには関係ないけどね」
風間は席に座ると、口元に手をやり思案する。
次はどんな悪戯を仕掛けようか。500円を求めた時、困ったような顔を見せる。風間の冗談に呆れたような目を向ける。だがそれでも、風間のことを見捨てたりはせず、いちいちきちんと反応をする。
そんな坂上を、風間は密かに好いていた。
新聞部の部室に来てから、坂上は机に置いた500円をじっと見つめていた。
新聞製作も特に無い時期は部室に顔を出す部員は普段よりも少なく、今は坂上の他に日野しか来ていない。日野はパソコンに入れた写真の整理をしながら、500円とにらめっこを続ける坂上に呆れたような顔を向けた。
「さっきから500円ばっかり見てるな、坂上。そんなに気にしてると、本当にその500円が祟るかもしれないぞ」
「で、でも……やっぱり、不思議じゃないですか。この500円、風間さんがくれたんですよ」
坂上はどこか不安そうな顔を向ける。
なんでも今朝の登校時、偶然に風間と出くわした坂上はまた500円をくれと迫られるのだろうと身構えていたところ、ニコニコ笑顔で近づかれながら 「やぁ坂上くん。いつもお世話になっているから、今日はボクから特別にプレゼントだ」 なんて普段と同じ軽い調子のまま、500円を手に握らされたのだ。
風間が節約家なんて言葉が生やさしいほどケチな性格なのは広い鳴神学園の中でも噂にあがるほどで、まだ自分の事を知らないであろう相手には必ず声をかけ「500円貸してくれるかい?」とさも急務であるかのように告げ、そのまま返さないのが日常茶飯事なのだ。
そんな風間が500円を奪う側ではなく、贈る側になるなんて風間を知っている人間なら誰でも疑うだろう。
明日で世界が滅亡するのではないか、そうとさえ考えても不思議ではない。
「日野さん、僕はどうしたらいいんでしょうか。この500円……」
坂上は今にも「もうだめです」とその場で倒れ伏しそうな顔で訴えてきた。
「そんなに不安ならさっさと使ってしまえばいいだろう? 手元においても碌な事はない」
「僕もそうしようと思ったんですけど、いざ使おうとした時、後で風間さんに責められるんじゃないかと思ったら不安になったんですよ。『どうしてボクがプレゼントした500円を使ってしまったんだい!?』なんて言われたら……」
なるほど、風間ならいいそうだ。
目の前にある500円は価値の高いレアな貨幣ではない、どこにでも流通している普通の500円玉だが、風間だったら自分がプレゼントしたから価値があるものだなんてムチャクチャな言い分を平気でねじ込んできそうではある。
風間はそういう男なのだ。
「それじゃぁ、取っておくか? 桐の箱にでもいれて使わないでおけば、アイツも喜ぶだろう」
「使わないでおいたらおいたで、『まだ使っていないのかい? あぁ、せっかくボクがプレゼントした500円が使ってもらえないなんて、何て悲しいんだろう。ボクはとても傷ついたよ……』なんて、いいそうじゃないですか」
なるほど、風間ならそれもあり得る。
使っても悲しまれ、使わなくても責められる。そう思ったらにっちもさっちも行かなくなってしまったのだろう。
それにしても、最近の坂上は風間の真似が随分と上手くなっている。集会があってからよほど頻繁に絡まれているのだろう。鳴神学園はマンモス校で1年と3年では教室棟も違うというのに、きっと風間は坂上を茶化すためわざわざ会いに行っているに違いない。
「あぁ、僕どうしたらいいんでしょう、日野さん」
坂上は頭を抑えながら机に伏せる。すっかり悩んでもう限界なんだろう。
日野は苦笑いをしながら財布を取り出し、100円玉を5枚並べた。
「それじゃ、その500円は俺が預かるってのはどうだ。この100円玉5枚と交換して、両替って形で俺に譲ってくれ。そうすれば、使った訳でもないし、俺が持っているってことにすれば風間に何を言われても大丈夫だろう」
「えっ、いいんですか日野さん」
「いいっていいって、これでも俺の方が風間の扱いには慣れてるつもりだしな」
日野の提案に、坂上は手をとって喜ぶ。本当に助かったと思ったのだろう。
「ありがとうございます日野さん! 本当に悩んでたので……」
「大げさだな、風間のすることを一々気にしてたら身体が持たないぞ?」
「そうかもしれませんけど……やっぱり、気になりますから……」
相変わらず、坂上は優しい奴だと思う。だから風間も気に入って、わざわざ1年の教室まで会いに行くのだろう。
「だが、俺の坂上をあんまり惑わせないでほしいもんだな」
「えっ? いま、何か言いましたか。日野さん」
「いや、何でもないさ。それより用が済んだら写真のファイルを整理するの手伝ってくれ。一人だと骨が折れそうだ」
「はい、わかりました」
坂上は自分の小銭入れに100円玉を入れると嬉しそうに日野と並ぶ。
お人好しで素直すぎるほど純真な坂上の笑顔を見るのが、日野は好きだった。
※※※
翌日、日野は朝のホームルームが始まる前に風間のクラスへ顔を出した。
「おい、風間。これ」
そう言いながら親指で500円玉を弾けば、風間は慌てて立ち上がりバランスを崩しそうになりつつ何とか500円を受け取る。
そして、日野の方を見ると悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「やぁ、ありがとう日野。日野がこれを返すってことは、坂上くんはあの500円を使えなかったんだね」
「あぁ、お前のせいで随分と悩んでいたぞ」
事の発端は全てが風間の気まぐれだ。
いつも500円玉をほしがっている自分が、逆に500円玉を施したとしたら坂上はどんな反応をするのだろうか。
そんな悪戯を思いついた風間は、何としてもそれを試したくなった。だが、500円は風間にとって大金だ。それをただで渡したくはない。
500円を渡して、坂上がもし使ってしまったのなら「何で使ったんだい? キミに預けていただけなのに」とでもいってまた返してもらうつもりだった。
だがずっと使わないでいたら、ずっと返してもらえない。500円損したままだ。
その時にそなえ、もし坂上が500円を使わないようなら日野が両替してそれを取り戻してほしいと、事前に頼んでおいたのだ。
「そうか、昨日の坂上くんはボクの事で頭がいっぱいだったか……ふふ、おかしいねぇ。そーんなにずっとボクを思ってくれてるなんて」
「下らない悪戯はもうやめろよ、うちの坂上をあんまりからかわないでやってくれ。あいつはお前と違って純粋ないい奴なんだからな」
日野に釘を刺され、風間は唇を尖らせる。
同じ部の先輩だからって、日野はいつも坂上の保護者のように振る舞うのはどうにも気に入らなかったからだ。
「べつに、坂上くんは日野のものじゃぁないでしょ、いいじゃないかボクが何をしても」
「風間のものでも無いからな、部に差し障りのある真似は程ほどにしてくれ」
風間の鼻先に指をつきつけ、よくよく言い聞かせてから日野は去って行った。
普段の日野より幾分か不機嫌に見えたが、気のせいだろうか。
「ま、ボクには関係ないけどね」
風間は席に座ると、口元に手をやり思案する。
次はどんな悪戯を仕掛けようか。500円を求めた時、困ったような顔を見せる。風間の冗談に呆れたような目を向ける。だがそれでも、風間のことを見捨てたりはせず、いちいちきちんと反応をする。
そんな坂上を、風間は密かに好いていた。
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