インターネット字書きマンの落書き帳
ネウロの二次創作、自分いけますよ! な気分で書いた笹弥子前提の吾代と弥子
ネウロがキてる気がする!
気のせいかもしれないけど!
というわけで、ネウロで未だ成仏出来ていない「笹弥子推しおじさん」が!
亡霊としてのSSを書きます!
最終回の後。
吾代とすっかり腐れ縁になり、時々愚痴をいいながら酒を飲む関係になった、そんな吾代と弥子の話ですよ。
吾代は過去の男に縛られてるし、弥子は笹塚さんに無茶苦茶縛られています。
双方ネウロには今でも元気に虐待を受けている事でしょう。
気のせいかもしれないけど!
というわけで、ネウロで未だ成仏出来ていない「笹弥子推しおじさん」が!
亡霊としてのSSを書きます!
最終回の後。
吾代とすっかり腐れ縁になり、時々愚痴をいいながら酒を飲む関係になった、そんな吾代と弥子の話ですよ。
吾代は過去の男に縛られてるし、弥子は笹塚さんに無茶苦茶縛られています。
双方ネウロには今でも元気に虐待を受けている事でしょう。
『わからなくてもいいから』
吾代忍は顔なじみのBARでウイスキーを傾けていた。
本当はあまり酒に強い訳でもなければ特に酒が好きな訳でもない。
だが、雇い主でもあり長く腐れ縁で結ばれた桂木弥子が「ちょっとだけお酒飲みたい気分だから」と言われたら断る訳にもいかないだろう。
お互い、事務所に陣取る影の支配者に対する愚痴もある。
「吾代さん、ごめんなさい。待ちました?」
予定の時間を10分ほど過ぎてから、弥子が姿を現した。
吾代と初めてあった時はまだ初々しい高校生で、学生服にも着られているような所があったが、今はスーツを着ていても違和感のない立ち姿をしている。
女子高生探偵ともてはやされた当時、弥子の裏にはネウロという巨大な力を持つ化け物がいたことを、吾代は知っていた。
彼女の推理はほとんどネウロの受け売りだったこともだ。
だが、ネウロが消えてからも彼女は探偵でありつづけた。
流石に女子高生は卒業したが、その後も頼まれれば各地に回り困った相手と向き合って交渉する、探偵よりずっと交渉人(ネゴシエーター)に近い存在になったが、どんな修羅場でも動じない胆力と堪能な語学力を生かし、以前とはまた違った舞台で彼女は今でも探偵であり続けている。
吾代はそんな彼女に対し、立派になったという思いと、全く変わらない子供のままだという思いを抱いていた。
事実そう、弥子はずっと出会った時と同じ少女のままだったろう。
あの頃のまま大人になり、あの時の気持ちをもったまま、彼女は強くなっていったのだ。
「で、どうしたよ。俺と飲みたいとか言って、本当はちょっと話したい事があるんだろう」
席についてすぐに、吾代はそう問いかける。
一方の弥子は。
「ごめん、待って吾代さん。とりあえずメニュー頼むね、あ、チーズ盛り合わせ10皿と、ポテトフライ大盛り、中盛り、小盛り全部。あ、ここソーセージとかも出すんですね、ソーセージ全種類をとりあえず10人前、フォッカッチャ? ありったけもってきてください、飲み物はビールで」
吾代の話しを一切聞かず、とりあえずの注文を始める。
たいした食い物のない店をチョイスしたつもりだったが、やはりメニューを隠しておくべきだった。吾代は早くも経費の事を考え軽い目眩を覚えていた。
現在、桂木探偵事務所の経理は全て吾代に任されているのだが、桂木弥子の食費という名の接待費に関しては税理士からいつも「嘘でしょう」と真顔で言われ、真実である事を証明すると、税理士は幽霊でも見たような顔になるのだ。
「それで……マジで何の用なんだ? ただ、酒のアテが食べたくなったって訳じゃないよな」
注文したメニューを全部平らげ、二周目に入りそうな雰囲気を察した吾代は弥子の「もう一回食べれるドーン」が始まる前に問いかける。
すると弥子は、少しはにかんだ表情で俯いた。
「へへ、実はね、最近、夢見ちゃったんだ」
「はぁ、夢だぁ?」
「そ、夢。私はね、綺麗なドレスを着て、指にはでっかい婚約指輪してるの。赤くて、キラキラしていて、それで舐めるとすっごく甘い宝石ね」
「婚約指輪食うのかおまえ……」
「それで、わぁ、すごい綺麗、嬉しいって思うと。私の、前に……笹塚さんが、いて。それで……」
弥子の表情に悲しみが満ちる。
笹塚のことは、吾代もよく覚えていた。
反社出身である自分と刑事の笹塚は合えば喧嘩ばかりしていたし、事件で身内を失ったという笹塚は死んだ妹と同じ年頃の弥子が、吾代のような反社と組む事そのものを止めたいという様子が度々うかがえた。
笹塚は、弥子を通して自分の妹を見ていたのか。
それとも弥子に対して特別な感情を抱いていたのかは、今となってはわからない。
何せもう、ずっと前に死んでいるからだ。
だが、弥子にとって笹塚は年々大きくなっていることを、吾代は気付いていた。
最初は、年の離れた兄を失ったような感情だったろう。
だが一年たつ頃に、弥子は明確に笹塚という男に自分の理想を投影しはじめていた。
吾代の事をずっと傍にいる男としてではなく、仕事の相棒で何でも話せる腐れ縁の友人として接するのも、弥子の内に笹塚がいるからだろう。
笹塚衛士という男は、桂木弥子にとって永遠になってしまったのだ。
「……私、笹塚弥子になるんですね、っていったら。笹塚さん、笑って。そうだよ、これからずっと一緒にいるからって……そうやって、目を覚ましたらそんな事なくて。笹塚さんはいなくて、私は桂木弥子で、笹塚さん、嘘つきなんて思っちゃって。本当は、私がいけないのに。私が勝手にそんなこと、笹塚さんに言わせただけなのに」
弥子の頬に、ぽろぽろと大粒の涙が零れる。
「……吾代さん、私このままでいいのかな。笹塚さんを置いて、幸せになっていいのかな」
絞り出すような声で告げ、弥子は吾代へと顔を向ける。
吾代はその顔を見ようともせず、ポケットに入れっぱなしのくしゃくしゃになったハンカチを取り出した。
「……わかんねぇよ。分かるわけねぇだろ」
吾代は自分の腕を強く握っていた。
自分だって、それは何度も思っている。
殺されたのがどうして五月女だったのだろう。
どうして自分が生き残ったのだろう。
あの人が生きていてくれたほうが、世界はよっぽど良くなっていたと思うのに。
ヴィジャヤは誰かに助けられる事を渇望していた。
大きな力ではなく、傍にいてただ話を聞いてくれる、そんな相手がいればそれだけで充分だったろうし、自分はそうなれたはずだ。
だけど、吾代にはそれが出来なかった。
取りこぼした命が多すぎる。
自分の僅かなすれ違いで命を取り落としてきたと、今でもそう思う。
そんな自分が生きていて、幸せになっていいのだろうか。
吾代自身、ずっとその問いかけに答えが出せないまま今もまだ生きていた。
きっとこれからも答えを探し、見つけられないまま終わるのだろう。
だが、分からないというの突き放すのは男らしくなかったか。
自分はわからない、幸せになっていいのかと問い続けていくしかない、その覚悟があるが、弥子までそんな自分の覚悟を押し付けてはいけないだろう。
嘘でも「幸せになれ」とか「笹塚もそう望んでいる」と言ってやるべきだっただろうか。
僅かな後悔を抱いて弥子を見た時。
「そうですよね、良かった。吾代さんにもわからないんだ」
驚いた事に、弥子は笑顔を向けていた。
涙はあのくしゃくしゃにしたハンカチで全部拭ったようだ。
「私、時々思うんです。美味しいもの食べている時、美味しいお酒飲んでる時、こんなに幸せでいいのかなって。それで考えちゃうんですよね、笹塚さんのいない世界で、私は幸せでいていいのかって。でも、いつも答えが出ないんです、笹塚さんが生きていたら「そんな事気にしてるのか」って呆れそうですけど……でもやっぱりわからない。だから……この痛みと一緒にずーっと、いいのかなって考えていこう。そんな風に、思い始めていたんですよね」
弥子の言葉に、吾代も笑う。
やはり彼女はとんでもない女だ。伊達に訳の分からない化け物と散々な運命を過ごしてきた訳ではない。
だが、まさか自分と似たような考えに行き着いていたとは思わなかった。
これも吾代と弥子の、腐れ縁という事なのだろう。
「よし、それじゃお互いに傷がある同士、乾杯するか」
「えっ? 吾代さんも傷あるんですか。やっぱり五月女さん?」
「うるせぇ、男のハートにずかずか踏み込むんじゃねぇよ。ほら、乾杯だ」
二人は互いに笑うと、グラスをぶつけ乾杯する。
偶然に出会い、散々と化け物に翻弄された二人は唯一同じ苦労を吐き出せる腐れ縁の友人として、互い同じように酒を飲む。
そして互いに、密かに願っていた。
この腐れ縁が一日でも長いていくようにと。
吾代忍は顔なじみのBARでウイスキーを傾けていた。
本当はあまり酒に強い訳でもなければ特に酒が好きな訳でもない。
だが、雇い主でもあり長く腐れ縁で結ばれた桂木弥子が「ちょっとだけお酒飲みたい気分だから」と言われたら断る訳にもいかないだろう。
お互い、事務所に陣取る影の支配者に対する愚痴もある。
「吾代さん、ごめんなさい。待ちました?」
予定の時間を10分ほど過ぎてから、弥子が姿を現した。
吾代と初めてあった時はまだ初々しい高校生で、学生服にも着られているような所があったが、今はスーツを着ていても違和感のない立ち姿をしている。
女子高生探偵ともてはやされた当時、弥子の裏にはネウロという巨大な力を持つ化け物がいたことを、吾代は知っていた。
彼女の推理はほとんどネウロの受け売りだったこともだ。
だが、ネウロが消えてからも彼女は探偵でありつづけた。
流石に女子高生は卒業したが、その後も頼まれれば各地に回り困った相手と向き合って交渉する、探偵よりずっと交渉人(ネゴシエーター)に近い存在になったが、どんな修羅場でも動じない胆力と堪能な語学力を生かし、以前とはまた違った舞台で彼女は今でも探偵であり続けている。
吾代はそんな彼女に対し、立派になったという思いと、全く変わらない子供のままだという思いを抱いていた。
事実そう、弥子はずっと出会った時と同じ少女のままだったろう。
あの頃のまま大人になり、あの時の気持ちをもったまま、彼女は強くなっていったのだ。
「で、どうしたよ。俺と飲みたいとか言って、本当はちょっと話したい事があるんだろう」
席についてすぐに、吾代はそう問いかける。
一方の弥子は。
「ごめん、待って吾代さん。とりあえずメニュー頼むね、あ、チーズ盛り合わせ10皿と、ポテトフライ大盛り、中盛り、小盛り全部。あ、ここソーセージとかも出すんですね、ソーセージ全種類をとりあえず10人前、フォッカッチャ? ありったけもってきてください、飲み物はビールで」
吾代の話しを一切聞かず、とりあえずの注文を始める。
たいした食い物のない店をチョイスしたつもりだったが、やはりメニューを隠しておくべきだった。吾代は早くも経費の事を考え軽い目眩を覚えていた。
現在、桂木探偵事務所の経理は全て吾代に任されているのだが、桂木弥子の食費という名の接待費に関しては税理士からいつも「嘘でしょう」と真顔で言われ、真実である事を証明すると、税理士は幽霊でも見たような顔になるのだ。
「それで……マジで何の用なんだ? ただ、酒のアテが食べたくなったって訳じゃないよな」
注文したメニューを全部平らげ、二周目に入りそうな雰囲気を察した吾代は弥子の「もう一回食べれるドーン」が始まる前に問いかける。
すると弥子は、少しはにかんだ表情で俯いた。
「へへ、実はね、最近、夢見ちゃったんだ」
「はぁ、夢だぁ?」
「そ、夢。私はね、綺麗なドレスを着て、指にはでっかい婚約指輪してるの。赤くて、キラキラしていて、それで舐めるとすっごく甘い宝石ね」
「婚約指輪食うのかおまえ……」
「それで、わぁ、すごい綺麗、嬉しいって思うと。私の、前に……笹塚さんが、いて。それで……」
弥子の表情に悲しみが満ちる。
笹塚のことは、吾代もよく覚えていた。
反社出身である自分と刑事の笹塚は合えば喧嘩ばかりしていたし、事件で身内を失ったという笹塚は死んだ妹と同じ年頃の弥子が、吾代のような反社と組む事そのものを止めたいという様子が度々うかがえた。
笹塚は、弥子を通して自分の妹を見ていたのか。
それとも弥子に対して特別な感情を抱いていたのかは、今となってはわからない。
何せもう、ずっと前に死んでいるからだ。
だが、弥子にとって笹塚は年々大きくなっていることを、吾代は気付いていた。
最初は、年の離れた兄を失ったような感情だったろう。
だが一年たつ頃に、弥子は明確に笹塚という男に自分の理想を投影しはじめていた。
吾代の事をずっと傍にいる男としてではなく、仕事の相棒で何でも話せる腐れ縁の友人として接するのも、弥子の内に笹塚がいるからだろう。
笹塚衛士という男は、桂木弥子にとって永遠になってしまったのだ。
「……私、笹塚弥子になるんですね、っていったら。笹塚さん、笑って。そうだよ、これからずっと一緒にいるからって……そうやって、目を覚ましたらそんな事なくて。笹塚さんはいなくて、私は桂木弥子で、笹塚さん、嘘つきなんて思っちゃって。本当は、私がいけないのに。私が勝手にそんなこと、笹塚さんに言わせただけなのに」
弥子の頬に、ぽろぽろと大粒の涙が零れる。
「……吾代さん、私このままでいいのかな。笹塚さんを置いて、幸せになっていいのかな」
絞り出すような声で告げ、弥子は吾代へと顔を向ける。
吾代はその顔を見ようともせず、ポケットに入れっぱなしのくしゃくしゃになったハンカチを取り出した。
「……わかんねぇよ。分かるわけねぇだろ」
吾代は自分の腕を強く握っていた。
自分だって、それは何度も思っている。
殺されたのがどうして五月女だったのだろう。
どうして自分が生き残ったのだろう。
あの人が生きていてくれたほうが、世界はよっぽど良くなっていたと思うのに。
ヴィジャヤは誰かに助けられる事を渇望していた。
大きな力ではなく、傍にいてただ話を聞いてくれる、そんな相手がいればそれだけで充分だったろうし、自分はそうなれたはずだ。
だけど、吾代にはそれが出来なかった。
取りこぼした命が多すぎる。
自分の僅かなすれ違いで命を取り落としてきたと、今でもそう思う。
そんな自分が生きていて、幸せになっていいのだろうか。
吾代自身、ずっとその問いかけに答えが出せないまま今もまだ生きていた。
きっとこれからも答えを探し、見つけられないまま終わるのだろう。
だが、分からないというの突き放すのは男らしくなかったか。
自分はわからない、幸せになっていいのかと問い続けていくしかない、その覚悟があるが、弥子までそんな自分の覚悟を押し付けてはいけないだろう。
嘘でも「幸せになれ」とか「笹塚もそう望んでいる」と言ってやるべきだっただろうか。
僅かな後悔を抱いて弥子を見た時。
「そうですよね、良かった。吾代さんにもわからないんだ」
驚いた事に、弥子は笑顔を向けていた。
涙はあのくしゃくしゃにしたハンカチで全部拭ったようだ。
「私、時々思うんです。美味しいもの食べている時、美味しいお酒飲んでる時、こんなに幸せでいいのかなって。それで考えちゃうんですよね、笹塚さんのいない世界で、私は幸せでいていいのかって。でも、いつも答えが出ないんです、笹塚さんが生きていたら「そんな事気にしてるのか」って呆れそうですけど……でもやっぱりわからない。だから……この痛みと一緒にずーっと、いいのかなって考えていこう。そんな風に、思い始めていたんですよね」
弥子の言葉に、吾代も笑う。
やはり彼女はとんでもない女だ。伊達に訳の分からない化け物と散々な運命を過ごしてきた訳ではない。
だが、まさか自分と似たような考えに行き着いていたとは思わなかった。
これも吾代と弥子の、腐れ縁という事なのだろう。
「よし、それじゃお互いに傷がある同士、乾杯するか」
「えっ? 吾代さんも傷あるんですか。やっぱり五月女さん?」
「うるせぇ、男のハートにずかずか踏み込むんじゃねぇよ。ほら、乾杯だ」
二人は互いに笑うと、グラスをぶつけ乾杯する。
偶然に出会い、散々と化け物に翻弄された二人は唯一同じ苦労を吐き出せる腐れ縁の友人として、互い同じように酒を飲む。
そして互いに、密かに願っていた。
この腐れ縁が一日でも長いていくようにと。
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