インターネット字書きマンの落書き帳
好きになってくれないえりおの話(りひた→えりお)(BL)
利飛太と襟尾が出る話です。
利飛太→襟尾→津詰みたいな一方通行BL的な話ですよ。
津詰の事大好きなので津詰のことしか話さない襟尾と、そんな襟尾が大好きなのでかなわない恋だとわかっているけど襟尾に付き合ってしまう利飛太みたいなはなしです。
津詰といっしょに行けるような店を探す襟尾と、それに付き合う利飛太の話ですよ。
好きな人には幸せになってほしい!
でもオレの事好きになってはくれない!
地獄ですね! 地獄は健康にいいです!
利飛太→襟尾→津詰みたいな一方通行BL的な話ですよ。
津詰の事大好きなので津詰のことしか話さない襟尾と、そんな襟尾が大好きなのでかなわない恋だとわかっているけど襟尾に付き合ってしまう利飛太みたいなはなしです。
津詰といっしょに行けるような店を探す襟尾と、それに付き合う利飛太の話ですよ。
好きな人には幸せになってほしい!
でもオレの事好きになってはくれない!
地獄ですね! 地獄は健康にいいです!
『好きになってくれない』
賑やかな繁華街も路地が一つ違うだけで人の気配は少なくなり辺りは静まりかえる。
街灯は減りおおよそ店とも思えぬような小さい立ち飲み屋がいくつか並んでいるその場所は日雇い労働者などが一日のねぎらいに酒を飲むような店が多いその路地ではきちんとした背広を着た年若い襟尾のような男がいるだけでも異質に見えたのだろう。
たまにすれ違う男たちは皆、襟尾のことを異物でも見るかのように上目遣いで睨み付けていた。
「リヒタ、ほら早くこいって。こっちだよ、コッチ」
それでも襟尾はそんな視線など気にも留めずズンズン前へと進んで行く。
童顔で可愛らしい印象をあたえる顔立ちをしているが、この年齢で本庁は捜査一課の刑事をつとめるほど優秀な男だ。 治安が悪い場所など慣れっこだろうし、荒事を得意とする相手さえ軽くいなす自信があるのだろう。
むくつけき男たちが集まる裏路地でも物怖じしない態度は流石だなどと思いながら利飛太は彼の後を続いた。
「本当にこの道でいいんだね。お世辞にも、その……食事を提供する店があるようには見えないんだが」
利飛太は周囲の様子をうかがい、少し言葉を選んで告げる。狭い路地には珍しくこざっぱりとした男が二人連れ立って歩いているのは都会の影を生きる路地裏の住人にとって喜ばしい事では無いのだろう。
突き刺すような視線からは強い拒絶の色が見え、地域一帯が外部の人間を排他するような気概がうかがえた。
その上にゴミや空き瓶などが散乱しひどい臭いが漂っている。
襟尾はこの路地に隠れ家的の小さな店ながら安くて美味い定食を格安の値段で出してくれる場所があるといってたが、きちんと口に入るものが売っているのかも疑わしいうような様相であった。
「大丈夫だって、このあたりのタクシー運転手から聞いた店なんだから。えーと、あっちだったかなァ」
襟尾はどこか暢気な声を出すと路地裏を進む。割れたガラス瓶を踏むパキリという音が微かに響いた。
彼から一緒に食事へ行かないかと言われた時は珍しいと思ったが、確かにこんな暗がりは一人で行くのは気が引ける。荒事には慣れている利飛太でも流石に覚悟がいるような路地だった。
古くさい木賃宿が立ち並ぶ場所だ。表向きに名乗れないタイプの人間も潜伏しているのだろうと思うと襟尾の身分が刑事だと知られたら二度と出られないかもしれない。
襟尾の性格からすると、利飛太が断ったとしたらきっと一人で来ていただろう。そう思うと、仕事が入っていなくて良かった等と思うのだった。
「あ、あった。ここだ、ここ」
利飛太は随分と歩かされた気がしたが、実際に路地へと入ってから5分も経っていないだろう。
雑居ビルと安宿の間に赤提灯が提げられていた。提灯には「母大虫」と書いてある上、おおよそ店らしくない鉄のドアしかない装いはますます店らしくはないが何処からともなく煮込みの良い匂いが漂っている。
「おいおい、本当にここが店なのか……」
「ま、入ってみればわかるって。違ったら謝って出ればいいんだし、おじゃましまーす」
襟尾はそう言うと躊躇なくドアをあける。店はカウンターが5席、4人座れる畳席が二つほどあるお世辞にも広くはない店だがカウンターには大皿で筑前煮やらロールキャベツといった料理が山ほど並べられており、まだ夕方頃だというのにすでに客席の半分は埋まっていた。
「いらっしゃいませー、何名様でしょうか?」
そう聞いてくるのは店の女将だろう。ふくよかな体系と愛想のいい笑顔が印象的だ。
煮込み料理の温もりもあって、懐かしい家庭的な雰囲気が店内いっぱいに漂っていた。
二人連れだと告げると畳かカウンターどちらでも好きなところに座っていいと言われたので、利飛太と襟尾は並んで座ると女将オススメという料理をいくつか頼んでみた。
お通しで出たのはタコとワカメの酢の物だ。それから、握りこぶしのようなコロッケ。じっくりと煮込んだ牛すじ。出汁の案配が絶妙な揚げ出し豆腐。どれを食べても絶品だ。決して高い食材を使っている訳でもないのにこれだけ美味しいのは料理に手間暇をかけ時間をかけ、しっかり下ごしらえをしているからだろう。
「良かったらお酒もどうですか? いい日本酒をそろえてますから」
女将に誘われ注がれた日本酒も料理にあう切れ味のよい辛口仕込みで、飲み終わったあとに芳醇なかおりを残す味わいが格別だった。 この女将、かなり目利きに違いない。
「どれもこれもすっごい美味いですねぇ、すごいなぁ。最上級の家庭の味って感じですよ」
ほろ酔いになり顔を赤くしながら襟尾はすっかり上機嫌になり、女将もまたまんざらでもない様子で笑う。 襟尾はグラスを傾けるとぽつり呟いた。
「これなら津詰さんも喜んでくれるかなぁ」
津詰というのは襟尾の上司である。元々彼は津詰に憧れて刑事になり、つい最近になってようやく津詰の部下として働くチャンスを得てからは毎日のようにどうしたら津詰が喜んでくれるのか、何をしたら津詰の役に立てるのかを話すようになっていた。
襟尾が津詰に憧れているのは警察学校で同期だった頃からだ。その頃から津詰に憧れ刑事になったと言ってはばからなかった襟尾は憧れだけで本庁の刑事になったのだからたいしたものだろう。
その上、一線を退いていた津詰が刑事として復帰しその相棒に抜擢されたのだから喜び浮かれるのも当然だ。
ずっと憧れだけだった存在が現実に、自分の目の前に存在しているのだから。
だが、津詰に対して「何かしたい」「役に立ちたい」「尽くしたい」という気持ちを何ら見返りも求めず自然にできるのは、ただの尊敬ではないだろう。 尊敬だけなら自分の仕事だけを真面目にしていれば充分だ。それを考えた時、襟尾の津詰に対する思いは単純な敬愛でも愛情に比重が多いように思えた。
少しだけ感情のバランスが崩れれば、襟尾だってきっと「自分は津詰を愛しているのだ」ということに気付いてしまうだろう。
利飛太がそう思うのは、襟尾を愛しているからだった。
警察学校の頃からそう、可愛い同期の友人はいつしか愛しい存在に変わっていた。最初に声をかけた時から「愛らしい顔立ちだ」と思っていた男は今はただ愛おしい。
隣に座り、手を伸ばせば触れる場所に存在している彼は。
「いやぁ、こんな所まで付き合ってくれるのリヒタだけだからさ。よかったよ、おまえが友達で」
心の距離は永遠に縮まらないまま、今に至っている。
そしてこれからもこの距離が変わることは無いのだろう。襟尾は津詰に憧れ彼を愛し続けるし、彼にだけ視線を注ぐ。そしてきっと、利飛太の思いは届かないのだ。
話す事は許されても、並んで食事することは許されても、唇を交わす事は決して許されない。それが二人の関係なのだから。
ひとしきり食事を終え、勘定を済ませて店を出る。女将から「またどうぞ」と涼やかな声で送られた時、路地裏はすっかり暗くなっていた。
「いい店だったね。ボリュームたっぷりで、ボスには少し重いかなぁ」
「いや、大丈夫じゃないか。健啖家だって聞くしね」
「確かにボスけっこう食べるんだけど、胃もたれとかはするみたいなんだよなぁ……でも、誘ってみるだけ誘ってみるよ。いい店だったのは事実だからね」
きっと、利飛太の思いが届く事はないのだろう。だがそれでも、襟尾を遠ざけたり距離を取ろうとするようなことを思わなかったのは彼の笑顔に触れていたかったからだ。
彼が困っているのなら傍で支えてやりたいと思うし、彼とかわす言葉はいつもとても暖かく、利飛太の道を照らしてくれている。
「じゃ、帰り際にもう少し飲んでくか? まだリヒタと話したい事があるしな」
「それじゃぁ、お供しようかな。僕も君と語りたい事があるんだ」
狭い路地で二人は並んで歩く。
二つの影は肩が重なるほど近かったが、交わる事はなく月明かりに照らされずぅっと長く伸びていた。
賑やかな繁華街も路地が一つ違うだけで人の気配は少なくなり辺りは静まりかえる。
街灯は減りおおよそ店とも思えぬような小さい立ち飲み屋がいくつか並んでいるその場所は日雇い労働者などが一日のねぎらいに酒を飲むような店が多いその路地ではきちんとした背広を着た年若い襟尾のような男がいるだけでも異質に見えたのだろう。
たまにすれ違う男たちは皆、襟尾のことを異物でも見るかのように上目遣いで睨み付けていた。
「リヒタ、ほら早くこいって。こっちだよ、コッチ」
それでも襟尾はそんな視線など気にも留めずズンズン前へと進んで行く。
童顔で可愛らしい印象をあたえる顔立ちをしているが、この年齢で本庁は捜査一課の刑事をつとめるほど優秀な男だ。 治安が悪い場所など慣れっこだろうし、荒事を得意とする相手さえ軽くいなす自信があるのだろう。
むくつけき男たちが集まる裏路地でも物怖じしない態度は流石だなどと思いながら利飛太は彼の後を続いた。
「本当にこの道でいいんだね。お世辞にも、その……食事を提供する店があるようには見えないんだが」
利飛太は周囲の様子をうかがい、少し言葉を選んで告げる。狭い路地には珍しくこざっぱりとした男が二人連れ立って歩いているのは都会の影を生きる路地裏の住人にとって喜ばしい事では無いのだろう。
突き刺すような視線からは強い拒絶の色が見え、地域一帯が外部の人間を排他するような気概がうかがえた。
その上にゴミや空き瓶などが散乱しひどい臭いが漂っている。
襟尾はこの路地に隠れ家的の小さな店ながら安くて美味い定食を格安の値段で出してくれる場所があるといってたが、きちんと口に入るものが売っているのかも疑わしいうような様相であった。
「大丈夫だって、このあたりのタクシー運転手から聞いた店なんだから。えーと、あっちだったかなァ」
襟尾はどこか暢気な声を出すと路地裏を進む。割れたガラス瓶を踏むパキリという音が微かに響いた。
彼から一緒に食事へ行かないかと言われた時は珍しいと思ったが、確かにこんな暗がりは一人で行くのは気が引ける。荒事には慣れている利飛太でも流石に覚悟がいるような路地だった。
古くさい木賃宿が立ち並ぶ場所だ。表向きに名乗れないタイプの人間も潜伏しているのだろうと思うと襟尾の身分が刑事だと知られたら二度と出られないかもしれない。
襟尾の性格からすると、利飛太が断ったとしたらきっと一人で来ていただろう。そう思うと、仕事が入っていなくて良かった等と思うのだった。
「あ、あった。ここだ、ここ」
利飛太は随分と歩かされた気がしたが、実際に路地へと入ってから5分も経っていないだろう。
雑居ビルと安宿の間に赤提灯が提げられていた。提灯には「母大虫」と書いてある上、おおよそ店らしくない鉄のドアしかない装いはますます店らしくはないが何処からともなく煮込みの良い匂いが漂っている。
「おいおい、本当にここが店なのか……」
「ま、入ってみればわかるって。違ったら謝って出ればいいんだし、おじゃましまーす」
襟尾はそう言うと躊躇なくドアをあける。店はカウンターが5席、4人座れる畳席が二つほどあるお世辞にも広くはない店だがカウンターには大皿で筑前煮やらロールキャベツといった料理が山ほど並べられており、まだ夕方頃だというのにすでに客席の半分は埋まっていた。
「いらっしゃいませー、何名様でしょうか?」
そう聞いてくるのは店の女将だろう。ふくよかな体系と愛想のいい笑顔が印象的だ。
煮込み料理の温もりもあって、懐かしい家庭的な雰囲気が店内いっぱいに漂っていた。
二人連れだと告げると畳かカウンターどちらでも好きなところに座っていいと言われたので、利飛太と襟尾は並んで座ると女将オススメという料理をいくつか頼んでみた。
お通しで出たのはタコとワカメの酢の物だ。それから、握りこぶしのようなコロッケ。じっくりと煮込んだ牛すじ。出汁の案配が絶妙な揚げ出し豆腐。どれを食べても絶品だ。決して高い食材を使っている訳でもないのにこれだけ美味しいのは料理に手間暇をかけ時間をかけ、しっかり下ごしらえをしているからだろう。
「良かったらお酒もどうですか? いい日本酒をそろえてますから」
女将に誘われ注がれた日本酒も料理にあう切れ味のよい辛口仕込みで、飲み終わったあとに芳醇なかおりを残す味わいが格別だった。 この女将、かなり目利きに違いない。
「どれもこれもすっごい美味いですねぇ、すごいなぁ。最上級の家庭の味って感じですよ」
ほろ酔いになり顔を赤くしながら襟尾はすっかり上機嫌になり、女将もまたまんざらでもない様子で笑う。 襟尾はグラスを傾けるとぽつり呟いた。
「これなら津詰さんも喜んでくれるかなぁ」
津詰というのは襟尾の上司である。元々彼は津詰に憧れて刑事になり、つい最近になってようやく津詰の部下として働くチャンスを得てからは毎日のようにどうしたら津詰が喜んでくれるのか、何をしたら津詰の役に立てるのかを話すようになっていた。
襟尾が津詰に憧れているのは警察学校で同期だった頃からだ。その頃から津詰に憧れ刑事になったと言ってはばからなかった襟尾は憧れだけで本庁の刑事になったのだからたいしたものだろう。
その上、一線を退いていた津詰が刑事として復帰しその相棒に抜擢されたのだから喜び浮かれるのも当然だ。
ずっと憧れだけだった存在が現実に、自分の目の前に存在しているのだから。
だが、津詰に対して「何かしたい」「役に立ちたい」「尽くしたい」という気持ちを何ら見返りも求めず自然にできるのは、ただの尊敬ではないだろう。 尊敬だけなら自分の仕事だけを真面目にしていれば充分だ。それを考えた時、襟尾の津詰に対する思いは単純な敬愛でも愛情に比重が多いように思えた。
少しだけ感情のバランスが崩れれば、襟尾だってきっと「自分は津詰を愛しているのだ」ということに気付いてしまうだろう。
利飛太がそう思うのは、襟尾を愛しているからだった。
警察学校の頃からそう、可愛い同期の友人はいつしか愛しい存在に変わっていた。最初に声をかけた時から「愛らしい顔立ちだ」と思っていた男は今はただ愛おしい。
隣に座り、手を伸ばせば触れる場所に存在している彼は。
「いやぁ、こんな所まで付き合ってくれるのリヒタだけだからさ。よかったよ、おまえが友達で」
心の距離は永遠に縮まらないまま、今に至っている。
そしてこれからもこの距離が変わることは無いのだろう。襟尾は津詰に憧れ彼を愛し続けるし、彼にだけ視線を注ぐ。そしてきっと、利飛太の思いは届かないのだ。
話す事は許されても、並んで食事することは許されても、唇を交わす事は決して許されない。それが二人の関係なのだから。
ひとしきり食事を終え、勘定を済ませて店を出る。女将から「またどうぞ」と涼やかな声で送られた時、路地裏はすっかり暗くなっていた。
「いい店だったね。ボリュームたっぷりで、ボスには少し重いかなぁ」
「いや、大丈夫じゃないか。健啖家だって聞くしね」
「確かにボスけっこう食べるんだけど、胃もたれとかはするみたいなんだよなぁ……でも、誘ってみるだけ誘ってみるよ。いい店だったのは事実だからね」
きっと、利飛太の思いが届く事はないのだろう。だがそれでも、襟尾を遠ざけたり距離を取ろうとするようなことを思わなかったのは彼の笑顔に触れていたかったからだ。
彼が困っているのなら傍で支えてやりたいと思うし、彼とかわす言葉はいつもとても暖かく、利飛太の道を照らしてくれている。
「じゃ、帰り際にもう少し飲んでくか? まだリヒタと話したい事があるしな」
「それじゃぁ、お供しようかな。僕も君と語りたい事があるんだ」
狭い路地で二人は並んで歩く。
二つの影は肩が重なるほど近かったが、交わる事はなく月明かりに照らされずぅっと長く伸びていた。
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