インターネット字書きマンの落書き帳
ルドウイークの模造なる日々
醜い獣となったルドウイークが、人間だったころに愛した女性の思い出に浸る話です。
ルドウイークをわりと不器用で自分のことを清らかだとも英雄だとも思っていない、たまたま獣を殺すのが人より少し上手だったひと、くらいのイメージで書いておりますぞい。
夢小説的な感じに近いような気がします!
夢小説というジャンルのことよくわからない人が書いているので正式な夢小説じゃないとは思いますが。
いぜん、ぷらいべったーにupしておいた作品を引き上げて行き場がなくなったのでブログにあげたんで、ひょっとしたら過去作に同じ話があるかもしれませんが、そこは可愛い俺のすることなので許してください。
ルドウイークと彼を慕う淑女みたいなの好き?
俺もーーーーーーーーー!
ルドウイークをわりと不器用で自分のことを清らかだとも英雄だとも思っていない、たまたま獣を殺すのが人より少し上手だったひと、くらいのイメージで書いておりますぞい。
夢小説的な感じに近いような気がします!
夢小説というジャンルのことよくわからない人が書いているので正式な夢小説じゃないとは思いますが。
いぜん、ぷらいべったーにupしておいた作品を引き上げて行き場がなくなったのでブログにあげたんで、ひょっとしたら過去作に同じ話があるかもしれませんが、そこは可愛い俺のすることなので許してください。
ルドウイークと彼を慕う淑女みたいなの好き?
俺もーーーーーーーーー!
『つきのにおい、ひのよすが』
微睡みから目覚めたルドウイークの前に、俯き加減の女性がこちらを見る。
今日は狩りの日じゃないのね、ルド。
軽やかなメゾソプラノの声は耳にも心地よく、洗いたてのシーツも、日の光をたっぷり含んだベッドも、開け放たれた窓から流れる風もすべて暖かい。
逆光のせいではっきりと顔は見えないが、きっと彼女は笑っているのだろう。
笑ってくれていればいいと、ルドウイークは願っていた。
「あぁ、暫くは狩りに出なくても良さそうだ。ここの所、獣もずいぶんと少なくなったし……」
キミとどこかに行けるといい。
そう言いかけて、ルドウイークは言葉を飲み込む。
毎日のように獣の血を浴びて狂人のように暴れ回る医療教会の狩人が、こんな可憐な花を手折ってはいけない。そう、思ったからだ。
「少し、休もうと思う。ゆっくりと……」
たどたどしく言葉を紡げば、眼前にいる女性はゆっくりとした所作で血濡れた装束を手に取る。
それだったら、装束を今のうちに洗っておかなくちゃね。
優しい声はちょうど窓から流れてくる心地よい風に似ていていた。
彼女は艶やかな白い手を、ルドウイークの装束へと向ける。血と肉片がこびりつき、獣の脂がまとわりついた汚らしい装束だ。
彼女にはあんな汚いものを触って欲しくはない。
白い指先を血の赤で染めるなど、あってはならないこと。血で汚れるのは自分だけでいいのだ。
それよりも、彼女には傍にいてほしい。
汚れの無い手と清らかな身体で、自分の傍らに寄り添っていて欲しいのだ。
気付いた時、ルドウイークは彼女の手をとっていた。
片手で握れるほどに細い手首。蝋のように艶やかな白い肌。陽の光を浴びてそのブラウンの髪は淡く輝いているようにも見えた。
どうしの、ルドウイーク。
彼女は不思議そうな顔をする。実際は彼女の顔が光に包まれはっきり見えなかったが、声の調子と仕草とで困惑しているのは見てとれた。
「私の装束は、血で汚れているだろう。汚いから、キミには触って欲しくない。キミの手まで、汚したくないから……」
ルドウイークは指を組み視線を逸らすと、ぎこちなく言葉を紡ぐ。
世間では英雄だと持て囃される男も、彼女の前ではただの人だ。いや、ただの人以下だろうとルドウイークは思っていた。視線を交わし他人と話すことだってままならない男の何が英雄だというのだろう。とんだ意気地なしだ。獣に対して勇敢に立ち振る舞えるのは、相手が人間じゃないからだ。
汚くなんか、ありませんよ。
それだというのに、彼女は優しかった。
ルドウイークの傍により、彼の頬に触れ髪に触れて、優しく微笑んでくれるのだ。
貴方は、命を削り我が身を削り戦ってくれている。それの、何が汚いというのでしょう。どうしてそれが穢らわしいというのでしょうか。
もし、貴方を穢らわしいと誹る者があるとするのなら、その言葉は私が背負います。
ルドウイーク、どうかあなた一人で全て背負わないでください。私にも、背負わせて欲しいから。
なんと優しくそして慈悲深いのだろう。
ルドウイークは激しい胸の高鳴りを精一杯抑えながら彼女の手を引き、二人でベッドに寝転んだ。
シーツをかえたばかりのベッドで二人向き合うと、彼女は穏やかな笑みをみせた。
ルドウイークの、あなたはからは土煙が立ち上るようなにおいがするの。
暖かい風が渦を巻いて、貴方の回りを優しく包んでいるように思えるの。
きっと貴方のかおりは夜のかおり。あなたからは、月のあなたは大地の香りがする。
だからあなたはとても静かで、とても美しいのね。
「そうか、君からは……太陽の匂いがする……」
胸に広がる温かな喜びを感じながら、ルドウイークは不器用に笑う。笑うといっても口角を上げるだけで本当に笑顔になっているかはわからなかったが、それでも彼女は嬉しそうにルドウイークへと寄り添った。
彼女はどんな顔をしていたのだろう。
あの時笑っていてくれたのか、それとも呆れた目で見ていたのか、覗いてみるがやはりどうしても彼女の顔も表情もわからない。
見えないのではない、思い出せないのだ。
あんなに愛しかったのに、彼女の顔が何も…………。
血なまぐさいにおいに急かされ、ルドウイークは目を覚ます。
臓腑と骨があちこちに散らばり、周囲はむせかえるほどの腐臭が漂っている。
死んでるのは獣か、それとも狩人か、それさえもわからぬほど深い血だまりのなか、ルドウイークの傍らでは聖剣と呼ばれた月光が淡くも妖しく輝いていた。
吐き気を催すほど不快なこの臭いが彼女の告げた月のにおいの正体だったというのか。
それだとしたら、自分は一体何のために戦い傷ついてきたというのか。そうだとしたのなら……。
いや、これ以上考えるのはやめよう。
今の自分はもう、英雄ではない。討伐されるべくして歪んだ、醜い獣なのだから人であった頃の思い出をよすがにする必用はないだろう。
こんな墜ちた獣の想いであの清らさを穢すのもしのびない。
饐えたにおいに包まれ、躯を塒にしてルドウイークは今日も夢を見る。
月に捉えられた醜い獣として、いずれ死による静寂が与えられることを切に願いながら。
微睡みから目覚めたルドウイークの前に、俯き加減の女性がこちらを見る。
今日は狩りの日じゃないのね、ルド。
軽やかなメゾソプラノの声は耳にも心地よく、洗いたてのシーツも、日の光をたっぷり含んだベッドも、開け放たれた窓から流れる風もすべて暖かい。
逆光のせいではっきりと顔は見えないが、きっと彼女は笑っているのだろう。
笑ってくれていればいいと、ルドウイークは願っていた。
「あぁ、暫くは狩りに出なくても良さそうだ。ここの所、獣もずいぶんと少なくなったし……」
キミとどこかに行けるといい。
そう言いかけて、ルドウイークは言葉を飲み込む。
毎日のように獣の血を浴びて狂人のように暴れ回る医療教会の狩人が、こんな可憐な花を手折ってはいけない。そう、思ったからだ。
「少し、休もうと思う。ゆっくりと……」
たどたどしく言葉を紡げば、眼前にいる女性はゆっくりとした所作で血濡れた装束を手に取る。
それだったら、装束を今のうちに洗っておかなくちゃね。
優しい声はちょうど窓から流れてくる心地よい風に似ていていた。
彼女は艶やかな白い手を、ルドウイークの装束へと向ける。血と肉片がこびりつき、獣の脂がまとわりついた汚らしい装束だ。
彼女にはあんな汚いものを触って欲しくはない。
白い指先を血の赤で染めるなど、あってはならないこと。血で汚れるのは自分だけでいいのだ。
それよりも、彼女には傍にいてほしい。
汚れの無い手と清らかな身体で、自分の傍らに寄り添っていて欲しいのだ。
気付いた時、ルドウイークは彼女の手をとっていた。
片手で握れるほどに細い手首。蝋のように艶やかな白い肌。陽の光を浴びてそのブラウンの髪は淡く輝いているようにも見えた。
どうしの、ルドウイーク。
彼女は不思議そうな顔をする。実際は彼女の顔が光に包まれはっきり見えなかったが、声の調子と仕草とで困惑しているのは見てとれた。
「私の装束は、血で汚れているだろう。汚いから、キミには触って欲しくない。キミの手まで、汚したくないから……」
ルドウイークは指を組み視線を逸らすと、ぎこちなく言葉を紡ぐ。
世間では英雄だと持て囃される男も、彼女の前ではただの人だ。いや、ただの人以下だろうとルドウイークは思っていた。視線を交わし他人と話すことだってままならない男の何が英雄だというのだろう。とんだ意気地なしだ。獣に対して勇敢に立ち振る舞えるのは、相手が人間じゃないからだ。
汚くなんか、ありませんよ。
それだというのに、彼女は優しかった。
ルドウイークの傍により、彼の頬に触れ髪に触れて、優しく微笑んでくれるのだ。
貴方は、命を削り我が身を削り戦ってくれている。それの、何が汚いというのでしょう。どうしてそれが穢らわしいというのでしょうか。
もし、貴方を穢らわしいと誹る者があるとするのなら、その言葉は私が背負います。
ルドウイーク、どうかあなた一人で全て背負わないでください。私にも、背負わせて欲しいから。
なんと優しくそして慈悲深いのだろう。
ルドウイークは激しい胸の高鳴りを精一杯抑えながら彼女の手を引き、二人でベッドに寝転んだ。
シーツをかえたばかりのベッドで二人向き合うと、彼女は穏やかな笑みをみせた。
ルドウイークの、あなたはからは土煙が立ち上るようなにおいがするの。
暖かい風が渦を巻いて、貴方の回りを優しく包んでいるように思えるの。
きっと貴方のかおりは夜のかおり。あなたからは、月のあなたは大地の香りがする。
だからあなたはとても静かで、とても美しいのね。
「そうか、君からは……太陽の匂いがする……」
胸に広がる温かな喜びを感じながら、ルドウイークは不器用に笑う。笑うといっても口角を上げるだけで本当に笑顔になっているかはわからなかったが、それでも彼女は嬉しそうにルドウイークへと寄り添った。
彼女はどんな顔をしていたのだろう。
あの時笑っていてくれたのか、それとも呆れた目で見ていたのか、覗いてみるがやはりどうしても彼女の顔も表情もわからない。
見えないのではない、思い出せないのだ。
あんなに愛しかったのに、彼女の顔が何も…………。
血なまぐさいにおいに急かされ、ルドウイークは目を覚ます。
臓腑と骨があちこちに散らばり、周囲はむせかえるほどの腐臭が漂っている。
死んでるのは獣か、それとも狩人か、それさえもわからぬほど深い血だまりのなか、ルドウイークの傍らでは聖剣と呼ばれた月光が淡くも妖しく輝いていた。
吐き気を催すほど不快なこの臭いが彼女の告げた月のにおいの正体だったというのか。
それだとしたら、自分は一体何のために戦い傷ついてきたというのか。そうだとしたのなら……。
いや、これ以上考えるのはやめよう。
今の自分はもう、英雄ではない。討伐されるべくして歪んだ、醜い獣なのだから人であった頃の思い出をよすがにする必用はないだろう。
こんな墜ちた獣の想いであの清らさを穢すのもしのびない。
饐えたにおいに包まれ、躯を塒にしてルドウイークは今日も夢を見る。
月に捉えられた醜い獣として、いずれ死による静寂が与えられることを切に願いながら。
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