インターネット字書きマンの落書き帳
荒井フレンズを眺める新堂パイセン(新堂×荒井)
平和な世界線で普通に付き合ってる新堂×荒井の話を壁にむかって延々と繰り返すアカウントです。(挨拶を兼ねた幻覚の説明)
今日の話は、わりと初々しく付き合っている新堂×荒井。
荒井が荒井フレンズたち……赤川、時田、袖山と一緒に下校している姿を後ろで見ていた新堂パイセンと、新堂パイセンと二人で帰ろうとした時なんだか恥ずかしい気持ちになる荒井くんの話ですよ。
荒井が荒井フレンズと仲良くしている所を書きたかったので書きました。
ちょと袖山の感情が重そうに見えるけど、袖山は普通に荒井のこと友達だと思ってます。どういう弁護だこれ?
俺はッ、重たい感情を相手にぶつけてしまう男が大好きッ……。
荒井は好きになった相手に重たい感情を抱いて、自分でもそれが重たいと気付いているからあんまりバレたくない、みたいな態度とってほしいよね。
そう思わないかい?
今日からそう思おうぜ!
今日の話は、わりと初々しく付き合っている新堂×荒井。
荒井が荒井フレンズたち……赤川、時田、袖山と一緒に下校している姿を後ろで見ていた新堂パイセンと、新堂パイセンと二人で帰ろうとした時なんだか恥ずかしい気持ちになる荒井くんの話ですよ。
荒井が荒井フレンズと仲良くしている所を書きたかったので書きました。
ちょと袖山の感情が重そうに見えるけど、袖山は普通に荒井のこと友達だと思ってます。どういう弁護だこれ?
俺はッ、重たい感情を相手にぶつけてしまう男が大好きッ……。
荒井は好きになった相手に重たい感情を抱いて、自分でもそれが重たいと気付いているからあんまりバレたくない、みたいな態度とってほしいよね。
そう思わないかい?
今日からそう思おうぜ!
『背中を眺める』
新堂が部活に行こうと外に出た時、ちょうど荒井は下校する途中だったようで友人たちと連れ立って歩いていた。
この広い鳴神学園で偶然出くわすとは珍しいと思い声をかけようかと思ったのだが。
「さすが荒井くん、よく気付いたね。あのシーンはオマージュとして作っていて……」
「ところで荒井くん、前にキミが気にしているゲームがあっただろう。ゲームというよりデータ内を調査していくタイプの変わったゲームなんだけどさ……」
「あっ、荒井くん、ノートかしてくれてありがとう。もう移したから返しておくね、はいこれ」
荒井は友人らしい面子に囲まれて楽しそうに話しをしている。
同級生の友人と話している中に上級生である自分が割って入るのは野暮だろう。そう思い遠目で見守っているうち、新堂は気がついた。
「荒井くんもあの映画は見ているのかい」
そう話しかけるのは時田だ。
荒井が一番よく連んでいる友人で、彼の撮影した映画を編集するため居残りをする事も多いと聞いている。
去年の文化祭では凝った映画を自主制作して流しそれなりに評判になったとも聞いている、生徒数の多い鳴神学園でもちょっとした有名人だ。
荒井もまた彼の作る映画のファンであり、いわく「B級ホラーのようなものを作りたがる傾向はあるものの、技術や演出の能力は極めて高い」のだそうだ。
「はい、見てますよ。ありきたりな脚本ではありますが、キャラクターの掛け合いと演出は低予算ながら力を入れていて好感がもてますよね。チェーンソーなどは実物をいかに恐ろしく見せるかアングルに拘りがあるので、見応えがあると思います」
「やっぱり荒井くんは分かっているよねぇ、僕もそう思うよ。あえてCGを使わない事で重みが出るのが好きなんだよね。CGを使えば迫力のある映像が撮れるけど、あの頃のCGにはまだ重みがないから、その点で着ぐるみのようなクリーチャーも馬鹿には出来ないと思っているんだ」
映画の話をしているのか、時田は楽しそうに顔をほころばせている。
時田の映画に関する知識は荒井を越えていて、見ていない映画はないという位に古今東西、和洋様々な映画を見ているというからそんな彼だからこそ様々な映画の話ができる荒井との会話が楽しいのだろう。
「それで荒井くん、ようやくあのゲームが手に入ったんだけどキミもプレイしてみるかい。プレイするには初代のPSが必用だけど、プレイ時間はそこまでかからないと思うよ」
時田の話が終わらないうちに、黒髪でくせ毛の男が話しかけてくる。
新堂は知らない顔だが話している内容からすると荒井が時々話すゲーム好きの友人、赤川だろう。ゲームだけではなくパソコン作業にも精通しており最近は自作ゲームにも挑戦していると聞く。
荒井の周りにはクリエイティブな趣味の友人が多いのだな、と新堂は改めて思いながら彼の背中を眺めていた。
「本当にあのゲームが手に入ったのかい? かなり苦労したんじゃないかな……」
「伝手をたどってやっとだったよ、まさか持っている人がいるとは思わなかったからラッキーだったよ。それで、プレイしてみるかい? ゲームと呼ぶには前衛的すぎる内容だろうけど」
「是非やらせてください、幸いにPSもメモリーカードも持っていますからプレイできると思います」
「そうくると思った。もってきているから、是非感想を聞かせてくれよ。このゲームについて語れる相手が欲しいからね」
赤川らしい男は嬉々として鞄からゲームを取り出す。
見た事もないタイトルの見た事もないパッケージだ。新堂がまだ子供だった頃、親戚の家で見た事がある気がするが本当にそうだとしたら随分と古いゲームだろう。荒井は新堂が普段やらないタイプのSLGやADVを好んで遊ぶ所があるが、レトロゲームもやるのだろうか。少し考えた後、荒井であれば興味があるならどんなゲームでも必ずプレイするだろうな、と思い直す。
荒井の好奇心は偏っており、珍しいものや奇妙なものに対しては執着に強い興味を示すのだから。
「あ、あの。荒井くん、僕もノート返しちゃうね。ありがとう」
おずおずとノートを差し出すのは袖山だ。
彼の事は新堂も知っている。去年まではサッカー部にいて、サッカー部の合宿中新堂が面倒を見た事があるからだ。
運動神経は全くといっていい程に無いがどんな無茶な練習にも文句一つ言わずついてくる根性のあるタイプで、彼が部を辞めてからも何かと目をかけ世話をしているのだ。
新堂と荒井、二人に共通する数少ない存在でもある。
誰に対してもどこか落ち着く気持ちにさせる不思議な雰囲気の男だった。
「もっとゆっくり借りていてもいいんだよ、すぐノートを使う訳でもないし……わからないところはなかったかな」
「大丈夫だったよ、ごめんね、僕が風邪をひいて授業に出られなかった分のノートをとらせてもらって……」
「気にしなくていいよ、僕が休んでいる時は袖山くんが貸してくれてるじゃないか。お互い様だっていうのにキミばっかり遠慮したら、僕が困ってしまうよ」
袖山を前に荒井は年相応の笑顔を向ける。
普段から理屈っぽい性格の荒井は何かと生意気な物言いをし頭が悪い相手や狭量な相手などを無意識に見下すような素振りを見せるのだが、袖山の前ではいかにも普通の少年だ。
これは荒井がまだ16歳の少年だというのもそうなのだが、袖山を前にすると誰でも毒気を抜かれてしまう独特な雰囲気があるというのもそうだろう。
新堂の前でもあの位可愛げがあればいいのに、と思ったが当人に言えば「僕はこれでも貴方の前で可愛く振る舞っているつもりですよ」と素っ気なく言うのが目に見えているからやめておこう。
そうやって彼らのやりとりを見て気付いたのだが、荒井の友人たちは基本的に皆が荒井に話しかけているのだ。
時田は赤川と、赤川は袖山と時々会話をするが、そこまで親しげな雰囲気ではない。みな、荒井とは友人だが他の相手のことはあまり知らないのだろう。
荒井はいかにも人付き合いが悪そうな見た目だが、これで結構友達が多い。その理由は彼が見た目に反して聞き上手な気質だからだ。 荒井は何を話しても大概の話題には付き合えるし的外れではない返答をしてくる。それに自分から余計な話をせず、じっと相手の言葉を聞いてから判断する傾向もある。
人間は話がうまい相手より聞くのが上手い相手のほうが付き合い安いとはいうが、荒井はその典型なのだ。
最も、あまりに聞き上手なため中村のように意図しない相手にもからまれる事があるのだろうが。
「何だよ荒井、モテるじゃ無ェかよ」
新堂はそう独りごちると、部室の方へ向かうため荒井たちとは別の道を歩く。
一度だけ振り返り、年相応に楽しそうに笑う荒井を見ればそれだけで何故か自分も楽しい気持ちになるのだった。
・
・
・
時田の映画を編集する作業に付き合っているうち、思いの外遅い時間になったので荒井はボクシング部の練習場へ向かっていた。帰宅部の自分にとっては遅い時間だが運動部ならまだ練習をしているのではないか、そう思ったからだ。
編集作業をしていた視聴覚室からやや離れた武道場の裏手へ回れば、ちょうど練習が終わったのか強面の部員たちが気だるそうに部屋を出て行く。彼らの後ろ姿を遠目で見ていれば、練習場の明かりが消え新堂が部室に鍵をかける姿が見えた。
ボクシング部のキャプテンである新堂は練習場と部室の鍵を任されているからいつも最後に出てくるのだ。
周囲に他の生徒がいないのを見計らうと荒井は静かに新堂の傍へと向かう。
「新堂さん、今終わったんですか」
そうしてあたかも今来たかのように声をかければ、新堂は大げさなくらい驚いて振り返った。
「うおっ! あ、荒井かよ。何だビックリさせるんじゃ無ェよ、幽霊でも出たかと思っただろ……」
「いくら鳴神だからって僕と幽霊を間違えるのはあんまりじゃないですか?」
「音もなく忍び寄ってくるからだろうが、まったく……こんな時間まで残ってたのか? 珍しいな」
「はい、時田くんの手伝いをしていたので……」
歩き出す新堂に並び、荒井は今日の出来事を話す。
といってもたいした話はない。時田の手伝いをしている映画の内容や、授業中に中村がした素っ頓狂な質問など代わり映えのない日常の話に、新堂もまた部であった代わり映えのない日常の話で返す、それだけの帰り道だ。
普段と変わりの無いような話しかしてないが、何となく心地よいこの時間が荒井は好きだった。
「そういえば、この前おまえ赤川か? あいつから何かゲーム受け取ってたよな、あれ何のゲームなんだよ。あんま見ねぇパッケージだったけど」
暫く歩いた時、不意に新堂に言われ荒井は目を見開いた。確かに最近赤川からレアなゲームを貸してもらったばかりだったからだ。
市場にはもう出回っておらず、リメイクも版権や内容的に難しいといったシロモノでプレミア価格がついているという逸品である。
「あ、あのゲームはレアなゲームで……って、どうして知ってるんですか? 僕が赤川くんからあのゲームを借りたことを……」
「見てたんだよ、おまえが時田とか袖山と一緒に歩いてる後ろを偶然通りかかったんだ」
「そうだったんですか? 気付きませんでした、それなら声をかけてくれれば良かったのに……」
「俺は練習場に行くつもりだったし、おまえが同級生と仲良く話してるのに上級生の俺が声かけたら邪魔する感じあるだろ。いや、でもオマエってモテるんだな。あの時一緒だったやつ、みんなオマエに話しかけてただろ」
新堂から笑いながらそんな事を言われ、荒井はその日一緒にいた友人たちを思い出す。
たしかに時田も赤川も袖山もみな、荒井の友人ではあるが時田、赤川、袖山はそこまで親しい間柄ではないという事に気付いたからだ。
実際、時田と赤川は面識があるようだし、赤川は袖山と顔なじみのようだがゆっくり会話するほど親しいようではない。というのも、時田と赤川は趣味である映画、ゲームの話しかしない性分で話が合わないからだろう。
袖山はそういう時ずっと聞き役であり、彼が率先して話しかけるのも荒井くらいだと思えば新堂から見て「荒井がモテる」という評価になるのも仕方ないことだろう。
もちろん、荒井が友人たちを特別な感情で見ている訳ではないのだが。
「別にモテてるとかじゃないですよ、たまたま話が合うってだけです、それに……」
と、そこまで言いかけて荒井はふと、袖山と話をしている時のことを思い出した。
あの日、やはり袖山から似たような事を言われたのだ。
『時田くんも、赤川くんも荒井くんと話している時はすごく楽しそうだよね』
袖山は、そう言った後笑顔のまま続けた。
『でも、荒井くんは新堂さんと話している時が一番楽しそうだよ。よく笑うし、自分から話すじゃないか。僕は、それがすこし羨ましいかな』
その時は袖山はよく自分を見ているのだという感心と僅かな気恥ずかしさを抱いただけだったが、今思い返すと少しばかり悔しような気持ちが広がる。 それではまるで他の人から見ても自分が新堂にすっかり惚れ込んでいるようではないか。
例えそれが事実だったとしてまだ、自分から認めるような気持ちにはなれなかった。
「それに、どうした?」
言葉を止めたからか不思議そうにこちらをのぞき込む新堂を前に、赤くなる顔を誤魔化すよう荒井は少し先に進んでから彼へと手を差し伸べた。
「べつに、何でもないですよ。それより、あのゲームが気になるなら僕の家に来ますか? 家族はいませんからご安心を。もっとも、プレイしてみたら驚くような内容だと思いますけど」
「ふーん、そうか。ま、眠くなるまで遊んでみてもいいかもなァ。すぐクリア出来るのか?」
「それは貴方次第ですよ、新堂さん。さ、行きましょう」
新堂が手を握るのを確認してから、荒井はゆっくり歩き出す。
自分の顔が笑顔になっていることに、荒井自身も気付いてはいなかった。
新堂が部活に行こうと外に出た時、ちょうど荒井は下校する途中だったようで友人たちと連れ立って歩いていた。
この広い鳴神学園で偶然出くわすとは珍しいと思い声をかけようかと思ったのだが。
「さすが荒井くん、よく気付いたね。あのシーンはオマージュとして作っていて……」
「ところで荒井くん、前にキミが気にしているゲームがあっただろう。ゲームというよりデータ内を調査していくタイプの変わったゲームなんだけどさ……」
「あっ、荒井くん、ノートかしてくれてありがとう。もう移したから返しておくね、はいこれ」
荒井は友人らしい面子に囲まれて楽しそうに話しをしている。
同級生の友人と話している中に上級生である自分が割って入るのは野暮だろう。そう思い遠目で見守っているうち、新堂は気がついた。
「荒井くんもあの映画は見ているのかい」
そう話しかけるのは時田だ。
荒井が一番よく連んでいる友人で、彼の撮影した映画を編集するため居残りをする事も多いと聞いている。
去年の文化祭では凝った映画を自主制作して流しそれなりに評判になったとも聞いている、生徒数の多い鳴神学園でもちょっとした有名人だ。
荒井もまた彼の作る映画のファンであり、いわく「B級ホラーのようなものを作りたがる傾向はあるものの、技術や演出の能力は極めて高い」のだそうだ。
「はい、見てますよ。ありきたりな脚本ではありますが、キャラクターの掛け合いと演出は低予算ながら力を入れていて好感がもてますよね。チェーンソーなどは実物をいかに恐ろしく見せるかアングルに拘りがあるので、見応えがあると思います」
「やっぱり荒井くんは分かっているよねぇ、僕もそう思うよ。あえてCGを使わない事で重みが出るのが好きなんだよね。CGを使えば迫力のある映像が撮れるけど、あの頃のCGにはまだ重みがないから、その点で着ぐるみのようなクリーチャーも馬鹿には出来ないと思っているんだ」
映画の話をしているのか、時田は楽しそうに顔をほころばせている。
時田の映画に関する知識は荒井を越えていて、見ていない映画はないという位に古今東西、和洋様々な映画を見ているというからそんな彼だからこそ様々な映画の話ができる荒井との会話が楽しいのだろう。
「それで荒井くん、ようやくあのゲームが手に入ったんだけどキミもプレイしてみるかい。プレイするには初代のPSが必用だけど、プレイ時間はそこまでかからないと思うよ」
時田の話が終わらないうちに、黒髪でくせ毛の男が話しかけてくる。
新堂は知らない顔だが話している内容からすると荒井が時々話すゲーム好きの友人、赤川だろう。ゲームだけではなくパソコン作業にも精通しており最近は自作ゲームにも挑戦していると聞く。
荒井の周りにはクリエイティブな趣味の友人が多いのだな、と新堂は改めて思いながら彼の背中を眺めていた。
「本当にあのゲームが手に入ったのかい? かなり苦労したんじゃないかな……」
「伝手をたどってやっとだったよ、まさか持っている人がいるとは思わなかったからラッキーだったよ。それで、プレイしてみるかい? ゲームと呼ぶには前衛的すぎる内容だろうけど」
「是非やらせてください、幸いにPSもメモリーカードも持っていますからプレイできると思います」
「そうくると思った。もってきているから、是非感想を聞かせてくれよ。このゲームについて語れる相手が欲しいからね」
赤川らしい男は嬉々として鞄からゲームを取り出す。
見た事もないタイトルの見た事もないパッケージだ。新堂がまだ子供だった頃、親戚の家で見た事がある気がするが本当にそうだとしたら随分と古いゲームだろう。荒井は新堂が普段やらないタイプのSLGやADVを好んで遊ぶ所があるが、レトロゲームもやるのだろうか。少し考えた後、荒井であれば興味があるならどんなゲームでも必ずプレイするだろうな、と思い直す。
荒井の好奇心は偏っており、珍しいものや奇妙なものに対しては執着に強い興味を示すのだから。
「あ、あの。荒井くん、僕もノート返しちゃうね。ありがとう」
おずおずとノートを差し出すのは袖山だ。
彼の事は新堂も知っている。去年まではサッカー部にいて、サッカー部の合宿中新堂が面倒を見た事があるからだ。
運動神経は全くといっていい程に無いがどんな無茶な練習にも文句一つ言わずついてくる根性のあるタイプで、彼が部を辞めてからも何かと目をかけ世話をしているのだ。
新堂と荒井、二人に共通する数少ない存在でもある。
誰に対してもどこか落ち着く気持ちにさせる不思議な雰囲気の男だった。
「もっとゆっくり借りていてもいいんだよ、すぐノートを使う訳でもないし……わからないところはなかったかな」
「大丈夫だったよ、ごめんね、僕が風邪をひいて授業に出られなかった分のノートをとらせてもらって……」
「気にしなくていいよ、僕が休んでいる時は袖山くんが貸してくれてるじゃないか。お互い様だっていうのにキミばっかり遠慮したら、僕が困ってしまうよ」
袖山を前に荒井は年相応の笑顔を向ける。
普段から理屈っぽい性格の荒井は何かと生意気な物言いをし頭が悪い相手や狭量な相手などを無意識に見下すような素振りを見せるのだが、袖山の前ではいかにも普通の少年だ。
これは荒井がまだ16歳の少年だというのもそうなのだが、袖山を前にすると誰でも毒気を抜かれてしまう独特な雰囲気があるというのもそうだろう。
新堂の前でもあの位可愛げがあればいいのに、と思ったが当人に言えば「僕はこれでも貴方の前で可愛く振る舞っているつもりですよ」と素っ気なく言うのが目に見えているからやめておこう。
そうやって彼らのやりとりを見て気付いたのだが、荒井の友人たちは基本的に皆が荒井に話しかけているのだ。
時田は赤川と、赤川は袖山と時々会話をするが、そこまで親しげな雰囲気ではない。みな、荒井とは友人だが他の相手のことはあまり知らないのだろう。
荒井はいかにも人付き合いが悪そうな見た目だが、これで結構友達が多い。その理由は彼が見た目に反して聞き上手な気質だからだ。 荒井は何を話しても大概の話題には付き合えるし的外れではない返答をしてくる。それに自分から余計な話をせず、じっと相手の言葉を聞いてから判断する傾向もある。
人間は話がうまい相手より聞くのが上手い相手のほうが付き合い安いとはいうが、荒井はその典型なのだ。
最も、あまりに聞き上手なため中村のように意図しない相手にもからまれる事があるのだろうが。
「何だよ荒井、モテるじゃ無ェかよ」
新堂はそう独りごちると、部室の方へ向かうため荒井たちとは別の道を歩く。
一度だけ振り返り、年相応に楽しそうに笑う荒井を見ればそれだけで何故か自分も楽しい気持ちになるのだった。
・
・
・
時田の映画を編集する作業に付き合っているうち、思いの外遅い時間になったので荒井はボクシング部の練習場へ向かっていた。帰宅部の自分にとっては遅い時間だが運動部ならまだ練習をしているのではないか、そう思ったからだ。
編集作業をしていた視聴覚室からやや離れた武道場の裏手へ回れば、ちょうど練習が終わったのか強面の部員たちが気だるそうに部屋を出て行く。彼らの後ろ姿を遠目で見ていれば、練習場の明かりが消え新堂が部室に鍵をかける姿が見えた。
ボクシング部のキャプテンである新堂は練習場と部室の鍵を任されているからいつも最後に出てくるのだ。
周囲に他の生徒がいないのを見計らうと荒井は静かに新堂の傍へと向かう。
「新堂さん、今終わったんですか」
そうしてあたかも今来たかのように声をかければ、新堂は大げさなくらい驚いて振り返った。
「うおっ! あ、荒井かよ。何だビックリさせるんじゃ無ェよ、幽霊でも出たかと思っただろ……」
「いくら鳴神だからって僕と幽霊を間違えるのはあんまりじゃないですか?」
「音もなく忍び寄ってくるからだろうが、まったく……こんな時間まで残ってたのか? 珍しいな」
「はい、時田くんの手伝いをしていたので……」
歩き出す新堂に並び、荒井は今日の出来事を話す。
といってもたいした話はない。時田の手伝いをしている映画の内容や、授業中に中村がした素っ頓狂な質問など代わり映えのない日常の話に、新堂もまた部であった代わり映えのない日常の話で返す、それだけの帰り道だ。
普段と変わりの無いような話しかしてないが、何となく心地よいこの時間が荒井は好きだった。
「そういえば、この前おまえ赤川か? あいつから何かゲーム受け取ってたよな、あれ何のゲームなんだよ。あんま見ねぇパッケージだったけど」
暫く歩いた時、不意に新堂に言われ荒井は目を見開いた。確かに最近赤川からレアなゲームを貸してもらったばかりだったからだ。
市場にはもう出回っておらず、リメイクも版権や内容的に難しいといったシロモノでプレミア価格がついているという逸品である。
「あ、あのゲームはレアなゲームで……って、どうして知ってるんですか? 僕が赤川くんからあのゲームを借りたことを……」
「見てたんだよ、おまえが時田とか袖山と一緒に歩いてる後ろを偶然通りかかったんだ」
「そうだったんですか? 気付きませんでした、それなら声をかけてくれれば良かったのに……」
「俺は練習場に行くつもりだったし、おまえが同級生と仲良く話してるのに上級生の俺が声かけたら邪魔する感じあるだろ。いや、でもオマエってモテるんだな。あの時一緒だったやつ、みんなオマエに話しかけてただろ」
新堂から笑いながらそんな事を言われ、荒井はその日一緒にいた友人たちを思い出す。
たしかに時田も赤川も袖山もみな、荒井の友人ではあるが時田、赤川、袖山はそこまで親しい間柄ではないという事に気付いたからだ。
実際、時田と赤川は面識があるようだし、赤川は袖山と顔なじみのようだがゆっくり会話するほど親しいようではない。というのも、時田と赤川は趣味である映画、ゲームの話しかしない性分で話が合わないからだろう。
袖山はそういう時ずっと聞き役であり、彼が率先して話しかけるのも荒井くらいだと思えば新堂から見て「荒井がモテる」という評価になるのも仕方ないことだろう。
もちろん、荒井が友人たちを特別な感情で見ている訳ではないのだが。
「別にモテてるとかじゃないですよ、たまたま話が合うってだけです、それに……」
と、そこまで言いかけて荒井はふと、袖山と話をしている時のことを思い出した。
あの日、やはり袖山から似たような事を言われたのだ。
『時田くんも、赤川くんも荒井くんと話している時はすごく楽しそうだよね』
袖山は、そう言った後笑顔のまま続けた。
『でも、荒井くんは新堂さんと話している時が一番楽しそうだよ。よく笑うし、自分から話すじゃないか。僕は、それがすこし羨ましいかな』
その時は袖山はよく自分を見ているのだという感心と僅かな気恥ずかしさを抱いただけだったが、今思い返すと少しばかり悔しような気持ちが広がる。 それではまるで他の人から見ても自分が新堂にすっかり惚れ込んでいるようではないか。
例えそれが事実だったとしてまだ、自分から認めるような気持ちにはなれなかった。
「それに、どうした?」
言葉を止めたからか不思議そうにこちらをのぞき込む新堂を前に、赤くなる顔を誤魔化すよう荒井は少し先に進んでから彼へと手を差し伸べた。
「べつに、何でもないですよ。それより、あのゲームが気になるなら僕の家に来ますか? 家族はいませんからご安心を。もっとも、プレイしてみたら驚くような内容だと思いますけど」
「ふーん、そうか。ま、眠くなるまで遊んでみてもいいかもなァ。すぐクリア出来るのか?」
「それは貴方次第ですよ、新堂さん。さ、行きましょう」
新堂が手を握るのを確認してから、荒井はゆっくり歩き出す。
自分の顔が笑顔になっていることに、荒井自身も気付いてはいなかった。
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