インターネット字書きマンの落書き帳
王よ貴方は美しい(マルゴド)
エルデンリングは相変わらず王になれてません。(挨拶)
寄り道が……寄り道が多い!
マップのあちこちにボスがおちてる!
わーいたのしー!(キャッキャ)
楽しく世界を巡っていると、段々といろいろわかってきますね……。
という訳で!
今回は、ゴドリックに「美しい」と告げるマルギット概念に触れたくて書きました。
ゴドリックは美しくも弱い王であってほしい。
己がもつ劣等感で破滅してほしいと思っているし、それを認めたくない故に暗君であって欲しいと思っている……。
マルギットは王を憎からず思っていてほしい。
憎くてもその美しさは認めていてほしい……。
という欲望から生まれました。
俺の欲望コンサート、楽しんでくれよな!
今回「坩堝」という言葉をわりと「混ざりもの」的な意味で使いました。
タンタタン。タンタンタン。
寄り道が……寄り道が多い!
マップのあちこちにボスがおちてる!
わーいたのしー!(キャッキャ)
楽しく世界を巡っていると、段々といろいろわかってきますね……。
という訳で!
今回は、ゴドリックに「美しい」と告げるマルギット概念に触れたくて書きました。
ゴドリックは美しくも弱い王であってほしい。
己がもつ劣等感で破滅してほしいと思っているし、それを認めたくない故に暗君であって欲しいと思っている……。
マルギットは王を憎からず思っていてほしい。
憎くてもその美しさは認めていてほしい……。
という欲望から生まれました。
俺の欲望コンサート、楽しんでくれよな!
今回「坩堝」という言葉をわりと「混ざりもの」的な意味で使いました。
タンタタン。タンタンタン。
『老醜の王』
その王は、長身でありまた痩躯であった。
肌は生白いを通り越して蒼白くさえあり元より生気の無い顔を屍のような色に染め上げる。
容姿は老いてもなお美しかった。若き頃は絵画か人形かと讃えられるほど秀麗であった容姿は老いを刻んでもなお美しくあり続けた。その長身も相まって王が着飾るだけで王たる威厳を充分に発していただろう。
だが王は己の容姿を秀でているとも美しいとも思ってはいなかったし、むしろ脆弱な器である己に強い劣等感ばかりを抱いていた。
秀麗である事への自尊心より脆弱である事の劣等感が強く色濃く表れたのは、王がデミゴッドに中でも最も弱い存在であったのが理由の一つだろう。
女王の血を強く残し、強く逞しい。あるいは膨大な魔力を操る諸国の王たちと比べ彼はあまりにも弱かったのだ。
己で剣をもち戦っても諸国の王と渡り合うことすらかなわず、魔術を用いても望むような力を振るう事も出来ない。
それは王が諸国のデミゴッドと比べずっと血が薄い一族の末裔でしかなかったのが主たる理由であり王の努力不足などでは決してなかった。
生まれ持っての才知というのは存在し、努力しても報われぬ領域は確かにある。
もし努力次第で何でも手に入れられると思っている者がいるのなら、それは努力をすれば何でも与えられる環境にいたものかそれだけの才知を生まれもって持ち得ており限界が存在するという事すら知らぬ無知故の無慈悲といえよう。
そして王の周囲には、そのように無知ゆえに無慈悲な価値観しか持ち得ぬものばかりであった。
王がいかなる方法で己を鍛え限界に近いほど体を虐め抜いたとしても生まれ持ったデミゴッドたちの力には遠く及ばなかったが、諸国を治政するデミゴッドたちは王の努力も肉体の限界も理解し得ない存在だったのだ。
それは諸国にあるデミゴッドが己の才知にあぐらを掻いて安穏としているだけの存在ではなく才知がってもなお鍛錬を続け研鑽することでより優れた王になろうとする者たちばかりであったのも理由といえよう。
色濃き血をもつデミゴッドたちでさえ己の肉体に苦痛を課すような修練をし命を賭けて耐えさらなる力を得ているのだ。
血の薄き王の努力や研鑽など児戯に見えても致し方なかっただろう。
だが諸国にあるデミゴッドからすると児戯に見える訓練であっても脆弱なる王にとっては血のにじむような努力の結果であった。
王は、最初は己の力量を知らず人間より遙かに強靱である事に慢心した。
同じデミゴッドでありその中でも最強との誉れを欲しいがままにするミケラに対し刃を向けたのも己の力を知らぬ無謀さからだったろう。
ミケラはそんな王を哀れむ気持ちを持ち合わせていたし、必要であれば彼の自尊心を傷つけぬようたち振る舞う事も出来ただろう。 だがミケラを愛するものたちは王の非礼を許しはせず、己が力をあます事なく使い王の肉体も精神も全てを破壊しつくしたのだ。
ミケラの愛は魔性である。
彼、あるいは彼女が望むにせよ望まないにせよミケラに愛を抱いたものは命ある限りその愛に縛られ支配されそしてミケラの刃となる。
王はそれまで人々の中にいた。そして人と比べれば遙かに大きく、強靱であり強き力をもっていた。 故に王はデミゴッドたちの本当の力を知らず、無謀な挑戦に走ってしまったのだ。
それは愚かさからくる挫折といえよう。
だがその挫折はそれまで人々を導く王として生きてきた者の自信を奪い正しくあろうとする心さえも希薄にさせた。
ミケラに刃向かう愚かな塵と罵られ、マレニアに乞われるがまま土下座をし足を舐り、それでも許されぬとわかると女に化けて隠れて逃げた。 その醜態が瞬く間に各地に広められたのも王の自尊心を奪う理由だったろう。
王は己の傲慢さを呪った。視野の狭さを恨んだ。
己の心を燃やし尽くす程に恨み尽くした後は王を褒め称え真の力量を伝えようとしなかった側近や配下を恨むようになり、その恨みが民に向くのもさして長い時間はかからなかった。
王は、もともと良き王ではなかった。
政(まつりごと)のほとんどは古くからいる配下にほとんど任せ王の主たる役目は先代から伝わる接ぎ木の秘技であった王にとって民はもともと接ぎ木の材料でしかない。自分の力を増大させるための家畜に対して情を向ける必要など元々なかった故に民に無関心だったのはある意味当然だったろう。
だが必要以上に圧政を敷き暴力で民衆を支配しようと思う程愚かではなかった。
その王が今まで行っていなかった愚かな所業を。民をより多く虐げ接ぎ木に没頭していったのは惨めな敗走の後からであり制御を失った力への渇望は世を顧みる余裕すらも失う。
強く逞しきものはほとんど接がれた。
敗走した後と比べ王の体はより大きくなりより強くもなったろうが、王は満足する事なく力あるものを求め続けた。
己の力量がミケラに遠く及ばないのを理解しての事だろう。
いや、ミケラどころか隣国の王ラダーンや狂った女王レナラにも及ばないのだ。
接いでも接いでも王が納得や満足をする日はついぞ訪れなかった。
あるいは王は最初からそれを理解していたのかもしれない。
諸国の王と比べ明らかに平穏で凶悪な獣も存在しないリムグレイブという土地を与えられたのも、それ以上熾烈な土地を与えても王の力では持て余すということを少なくとも他のデミゴッドたちは理解していた。
王は弱者であるが愚かではなく、それくらいの知恵は働く。己が領主たる王のなかで一等に弱いということは察していただろう。
だがそれを理解しながら否定したかったのだ。
曲がりなりにも自分はデミゴッドである。王であると。
王なのだから強いはずだ、他のデミゴッドたちと同等の力があるはずだ。
己が脆弱な存在であるはずがない、と。
努力と秘術のもたらした結果はいわずもかな、だが。
いつしか王は城内に引きこもり弱き人を嬲るようになっていた。嬲られるのは最初こそ獣や奴隷であったがその剣が民に向かうまでさして時間はかからなかった。
接ぎ木の秘術による凄惨な儀式と拷問とで王城は悲鳴が絶えず、だが王の劣等感は日に日に肥大するばかりであった。
劣等感が膨脹するほど焦燥は酷くなるものの、王の力は衰えていく。
血の薄いデミゴッドである王は他のデミゴッドたちよりよっぽど早く老いていったのだ。
何をしてもどうにもならない。
それを理解してもなお、何かを成し遂げたいと願う王は力を求めるのを止めはしなかった。
それは王が自分が他の人とは違うデミゴッドであると。王であると示したかったからだろう。
ラダーンは己の力を誇示するために強くなったのではない。己が目指す武人になろうと思いその先にあったのが王の強さである。
レナラもまた圧政を強いるために力を得た訳ではない。膨大な魔力が学院を守るのに充分な力をもっていたからその下に人が集っていった、それだけのことだ。
デミゴッドたちは元より己の名を残し力を誇示するために生きている訳では無い。
力をもっていたから自然と名が残ったのである。
それを考えると、己の名を残すために力を求めるという考えそのものが王と他のデミゴッドたちとは違いでありまた王が脆弱な存在であるのを示していたともいえよう。
そう、王はデミゴッドよりずっと人間に近い価値観を持つ存在だったのだ。
あるいは人のなかに現れる英雄よりもずっと俗物だったろう。
力を求め強さに執着するようになった王は己の美しい顔を呪い、細い手足を呪い、生白い指先を呪った。老いて力が衰えるとますます接ぎ木にのめり込み周囲の悪評もどこふく風といった体で軽率に命を踏みにじるようになった王を周囲は耄碌したと。老醜を晒したと嘆いた。
だがそれでも王は秀麗なままであった。
力を得ぬ脆弱な、だが美しい王のままであったのだ。
坩堝の災禍を身に宿す者たちを傍におき、囚人として鎖につないで拷問をする。そういった趣味が如実に表れるようになったのは、接ぎ木の王が老醜の王とささやかれるようになった頃合いだろう。
坩堝の痕を残すものたちは、大概が巨躯であり屈強な戦士の体をもっており事実として良き戦士であった。 時には竜の。時には獣のより洗練された殺意を身に宿した彼ら、あるいは彼女らは醜く歪んだ容姿と坩堝特有の野蛮な行動から多く人々に忌み嫌われ、王はそれを理由に坩堝たる者たちを存分に虐げた。
王の狂気が坩堝に向かっている間は人々も平穏であり、坩堝はいくら打ち据えても簡単に壊れる事もなかった故に人々は喜んで坩堝を王に差し出し、王もまた嬉々としてそれを打ち据えた。 坩堝の多くはその体に鋭い爪を、あるいは牙を。角を、尾を、竜の如く翼や鱗などを現しておりそれは人の体に張り付くにはあまりにも歪であり、中にはそれがある故に四肢や視覚などの動きを妨げるものすらあった。 坩堝はそれだけ歪であり異質な存在として異端視されてきたのだ。
恐ろしく、そして醜い獣だと。
だが王にとって存在するだけで恐れられる肉体は羨望のものだった。
鋭い爪が、牙が、角が、尾が、翼が、竜の如く厚い鱗が、全てが強きものの持つ部位であるが故、それが妬ましかった。
坩堝は王にとって憧れであり王にとって最も美しい存在だったのだ。
それ故に、何より憎悪の対象となる。
自分の持ち得なかったものを、忌み嫌われる坩堝がもっているのだから。
忌み鬼と呼ばれる囚人がいた。
忌み鬼とはまさしく大衆から忌み嫌われる外見であり、鬼のように醜くだが巨大な体と力をもつ、そんな男だった。
忌み鬼は善人ではなかったが悪人でもなかったがその外見とい強さとから疎まれ遠ざけられるようになっていた。 孤独な忌み鬼が囚人となったのは、王の供物としての意味合いが大きかっただろう。
老いてますます孤独になり劣等感が肥大しても自分は俗物ではないと、そんな自惚れに浸る王は常に嬲る相手を求めており民は己にその刃が向かぬよう常に新たな贄を求めていた。
忌み鬼は都合の良い贄だったのだ。
鎖につながれた忌み鬼を、王はとりわけ気に入った。
今まで見たどの坩堝より恐ろしく強い男を鞭で、杖で、強かに打ち据えてやると心が震えたからだ。
熱した鉄で体を焼けばうなり声を上げ耐え憎々しい目でこちらを見る忌み鬼の顔は今まで見たどの坩堝たちより高揚感を与えた。
そうして忌み鬼を虐げている時だけ王は自分が強き者でいられる気がしたのだ。
それが儚い幻でしかないというのを片隅で理解しながら。
忌み鬼は頑健であったが故に他の坩堝のように容易く壊れる事はなかった。
王の責め苦は坩堝を簡単に壊してしまう程に過酷であったが、忌み鬼はその過酷な拷問にも耐えうる肉体をすでに得ていたのだ。
王は喜び、様々な苦痛を与えた。常人であれば死に至る苦痛を当然のように与えるかわりに食事や睡眠は最低限しか与えずにいたがそれでも忌み鬼は倒れる事はなく、ただ毎日妬ましい目で王を見据えるのだった。王はそれが嬉しかった。
それからどれだけ月日が経ったろう。
数日だったかもしれないし、数ヶ月だったかもしれない。あるいは数年だったかもしれない。時は定かではないしどうでもよい。
重要なのは、忌み鬼の目が強い憎しみから憐憫にも近い色が見えるようになったことである。
殴り血反吐をまき散らしてる時でも、焼きごてで肉が焦げる不快な臭いを漂わせてる時でも、致死に近い毒で呼吸も出来ず悶え苦しんでる時でも、忌み鬼が王を見る目にかつての怒りが見えなくなっていたのだ。
忌み鬼の憎しみが唯一の愉悦であった王はまた焦燥した。そしてもう一度忌み鬼が己を憎しみの目で見るようより熾烈な拷問を与えた。 それでも忌み鬼の目に憎しみと怒りが戻ることはなかった。
鉄の杖をもち、何度その体を打ち据えただろう。
いかに屈強な男とはいえ骨は砕け立つのもやっとだろう。
そこまで痛めつけてもなお、忌み鬼は悲しそうな目を向け王を見る。
王は千に届くほどの虐げの後、息を切らせ忌み鬼に問うた。
「何故、以前のように私に憎しみの目を向けぬ。お前の怒りが。お前の苦しみが、私を王にしてくれるというのに」
忌み鬼は眇にて王を捉える。
「憎しみも痛みも消えうる程のものを、得ているゆえ」
忌み鬼の言葉その意味を図りかねるよう、王は首をかしげた。
憎しみも痛みも消えうるとは、すでに忌み鬼はそのような感情を抱くことがないのだろう。それを上回る何かを得ているから。 忌み鬼からそれを奪えばまた憎しみと痛みと苦痛とでのたうち回ってくれるというのだろうか。
「得るものなどここには何もないだろう。あるのは私と、永遠の責め苦だけ。おまえは責め苦を得れば歓喜を覚えるおぞましい変態か? ならば何もせず黙って見てそれを慰みにするだけだ」
「王が求めるのであれば、それでもいい」
瞳は相変わらず憎しみに燃える事はない。むしろ哀れみが増しているように見える。
「何だ。貴公は私が求めるのなら打たれるのも歓喜であるというのか? 私が求めるのなら死をも恐れぬというのか? 甚だ馬鹿馬鹿しい。滑稽だ。私は……」
抵抗できない相手を虐げていなければ生きる事すら苦しいほど脆弱な王である。
憎まれていなければ生きていけないのだ。
だが忌み鬼はおずおずと王へ近づくと枷のつけられた腕で王の手をとる。
忌み鬼がその気になれば容易にへし折る事もできよう。思わぬ忌み鬼の言葉で油断をし間合いに入れてしまった。失態に気付いた時、王は死を覚悟した。殺されるほどの苦痛を眼前の男にしてきた自覚はあったからだ。
しかし男は王の前に跪くと触れた手の甲へ口づけをした。
「求めるのは王、貴方のその姿だけだ。王よ、貴方は美しい。醜く歪んだこの体を貴方が歓喜の目で見てくれる。それで己は救われた」
忌み鬼の言葉は偽りなく、だからこそ狂気に歪んだ王の心に触れる。
王は己の美しく、だが脆弱な体を恨み生きてきた。
忌み鬼は己の醜く、そして恐ろしい力を恨み生きてきた。
王にとって忌み鬼を虐げるのは快楽であったが忌み鬼にとって王が己に執着するのが歓喜であったのだ。
その思いは狂気の沙汰であり正気ではない。
だが狭間の地において正気である事に何の意味があるというのだ。
真正直に誠実に生きる意味も理由もない世界でなお生きようとするのなら何かに狂い没入するしかない。
王は相変わらず己の秀麗なる見た目を恨み、脆弱な体を恨み、怨嗟のはけ口として民にも褪せ人にも無体を強い接いでいった。
忌み鬼は己の歪な体を恨み、容易く壊してしまう有り余る力を恨み、悲憤のはけ口を王の寵愛で接ぐ。
二人の関係はおおよそ正気ではない、狂気の産物であったろう。 それでも。
「王よ、貴方は美しい」
忌み鬼から囁かれる言葉だけが、王に微かな癒やしを与える。
王は暗君であった。己が幸せでなかったのだから、どうして民を幸せにできようか。
故に多くを殺し多くを虐げ、自らの自尊心さえ失っていた。
忌み鬼は鬼であった。おおよそ人らしい扱いなど受けず誰からも愛された事のない男が、どうして誰かを愛せよう。
故に多くを殺し傷つけ、生きる意味など見いだせなかった。
周囲から老醜と罵られる王と、忌み鬼と呼ばれる男。
二人が違い寄り添って互いに愛しいと思えた時間は彼らの過ごした時のなかで刹那の事である。
だがそれでも、きっと幸福であったろう。
たとえ一時でも、愛しさを口にするのが苦痛でない相手と同じ時を紡ぐ事が出来たのだから。
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