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インターネット字書きマンの落書き帳

   
付き合ってるみゆしばに巻き込まれる城戸の話(BL)
久しぶりにみゆしばをいっぱい見てもらえて嬉しい♥
だから過去作品をアグレッシブに掘り起こしていきたいと思います。

今でもメチャクチャ好きなCPだからね♥

そんな訳で、平和な世界線で付き合ってる手塚と芝浦の話をします。
今回は城戸くんが遊びに来てなんか大変なことになる話です。

芝浦は過去に城戸の会社でバイトしていたから顔見知りみたいな設定だから、城戸のこと「真司」って呼んでます。
かつ、世界観は2002年~2003年頃をイメージしています♥

『日常を乱す喧騒』

 あと30分もしたら帰る。
 手塚から来たメールを読んですぐに芝浦はシャワーを浴びる事にした。今日は授業も無かったから一日手塚の部屋で過ごしておりまだ顔もきちんと洗っていないのに気付いたからだ。
 身体の隅々まで洗いすべての準備を済ませたのち浴室から出て下着のまま少し身体を冷ましていればドアの方から鍵を開ける音がする。きっと手塚が帰って来たのだ。そう思った芝浦はシャツだけ羽織ると玄関まで迎えに出た。

「ただいま。おい、芝浦……」
「おかえり、手塚っ」

 ドアが開けばすぐに手塚の姿が見える。ここは手塚の家なのだから手塚が帰ってくるのは当然だがそれでも彼の姿を見ると心が弾み、その勢いのまま芝浦は手塚の胸に飛びつくと少しだけ背伸びをして唇を重ねた。
 突然のキスに手塚は驚いたようだったが、それ以上に芝浦を大切に思う気持ちが強かったのだろう。飛びついてきた彼の身体をしっかり抱き留めてくれたから、芝浦は唇を舐り舌を這わせたっぷりとキスを満喫する。そうしてゆっくり唇を放すと甘い声で囁いた。

「あのさ、手塚……今日さ、ちゃんと準備してあるから……俺、すぐでも大丈夫だよ」
「芝浦、あのな……」

 芝浦の甘い誘いに、手塚はやや困惑したような声を出す。気乗りしないのだろうか。今日は最初から恋人である自分がいるのだからそういうつもりでいると思っていたのだが。

「何だよ、今日ダメなの?」
「いや、そうじゃなくてな……何というか……おまえ、俺からのメールちゃんと読んだか?」
「あと30分で帰るってメールだろ? それならちゃんと読んだって、俺そういうのマメだから」
「あぁ、その後もう一つ、メール出したんだがそっちは気付いてなかったんだな。そうか……そうか」
「何だよ、何が言いた……」
「実は、あの後城戸と会ってな……久しぶりに話しでもと思って……今、後ろにいる」

 手塚がそう告げるのを待っていたかのように彼の後ろから城戸真司が顔を見せると、ぎこちない笑顔になり芝浦へと小さく頭を下げて見せた。

「や、やぁ。その、芝浦……ひ、久しぶり……」

 その姿を見た瞬間、芝浦は勢いよく後ろへと飛び退く。それはさながら捕まるまいと逃げる海老のようであった。

「えっ、ちょ……まって真司なんでいるの!? なんで……っていうか誤解! 誤解だから」

 首と両手をぶんぶん振りながら芝浦はとっさにそう口に出るが、自分で言っていてそれがもはや無駄な抵抗なのだというのは理解していた。理解していたが何か放していないと恥ずかしさに押しつぶされて頭がおかしくなってしまいそうだったのだ。
 だがそれは見てしまった城戸もまた近い状態だったのだろう。

「誤解? 誤解って何だよ!? えっと、遊びだったとかそういうの? あれ? とりあえず、俺邪魔だったら帰るけど、手塚。どうする……」

 城戸も両手をばたつかせながら、意味のわからない事を口走る。しでかしてしまった芝浦も混乱しているがそれを見た城戸もまたひどく狼狽しているようだった。見知った友人が知らないうちに恋人同士として付き合っていればそれも至極当然の反応ではあるのだろう。

「まって帰るなよ真司っ! 今おまえが帰ったらなんか、逆に面倒なことになりそうだから説明! もっと説明させてよ……それに、俺べつに別に遊びでやってないから! 本気だからな!」

 いよいよ言っている事がおかしな方向になっているのに気づいた手塚は芝浦を背後から抱きしめるとその口を手で塞ぐ。芝浦も最初は恥ずかしそうにじたばた動いていたが、すぐに諦めたようにうなだれ静かになっていった。

「ここで騒ぐと俺が困る。城戸、お前さえよければ寄っていくか? ……芝浦とは、今見た通りの関係だ。そういった恋愛関係がある人間のそばにいる事に抵抗があるというのなら無理強いしないが」
「えっ? えっと……お邪魔しようかな。芝浦と会うのも久しぶりだし」
「という訳だ、芝浦。お前も部屋に入れ……あんまり玄関前で騒ぐな。近所迷惑になるからな」
「うう……」

 芝浦はうなだれたまま半ば手塚に抱えられるように部屋へと入る。それに続き城戸も部屋へと入り、二人はそれぞれ適当な場所へと腰掛ける。そんな彼らを横目に手塚はキッチンへ立つと戸棚からいくつかカップを取り出した。

「城戸、暖かいものならコーヒーか紅茶がある。冷たいものなら麦茶かコーラだな。どうする?」
「あっ、じゃコーヒー。暖かいので」
「わかった。芝浦もコーヒーでいいか」
「うん、いつもの奴で」

 そんなやりとりの後珈琲の準備をし始めた手塚を眺めながら、城戸はソワソワしながら芝浦へ話しかけていた。

「あのさ……いつから手塚と付き合ってたんだよ。俺、全然気付かなかったけど」
「別に、言う必用もないと思っていたから言わなかっただけだし。大体真司ってすごいお喋りだろ? 一番言いたくないタイプじゃん……」
「お喋りって、そんな事ないだろっ!? 知ってたら気を遣ってやってた、っていうか……」 「分かっててここにいる時点で全然気ぃ使われてないんですけど?」

 城戸と芝浦は互いに肘を小突きあう。声を抑えているつもりのようだったが何を話しているのかは手塚の耳にも届くほどだった。

「二人とも、キャンキャン喋るな。ほら、城戸。コーヒーだ。砂糖とミルクはどうする?」
「あ、手塚。ありがと……砂糖とミルクももらえる?」
「わかった。ほら、芝浦。お前の分は砂糖もミルクも入れてあるからな」
「へへ、ありがと」

 二人はカップを受け取ると、城戸は一旦テーブルの上にそれを置き、芝浦はすぐに暖かなコーヒーを啜る。その様子を見ながら、城戸は何気なく手塚の方を見た。

「……そういえば、手塚ってコーヒー飲まなかったよな? 頼んでもカフェイン抜きにしてたし」
「あぁ……俺は飲まないんだが、芝浦が飲むからな」
「そうそう、朝起きた時にさ。すっごく甘いコーヒーが飲みたくなる事があるから、俺が買ってきておいてもらってるんだ」

 手塚の言葉に付け足すよう、芝浦はそう言う。手にしているカップも城戸に渡されたものと違う、芝浦自前のカップのようだった。少なくとも私物を置いてそれを日常的に使う程度には親しい間柄であり、城戸が思っている以上に付き合いは長いのだろう。

「ほら、城戸。砂糖とミルクだ。少なかったら言ってくれ」

 手塚はそう言いながら砂糖とミルクを城戸へと渡すと、自身のカップを手にしたまま芝浦の隣に座った。注がれているのはハーブティだろうか。強い香草の匂いがする。当然のように芝浦の隣へ腰掛ける手塚を眺めながら、城戸は改めて驚いたように二人を見た。

「いや、でも本当に全然知らなかったよ……っていうか、二人とも別にそんな素振りも見せないし……」
「別に、真司にプライベートの事そんなに話すほど仲良くないし」
「芝浦、お前なぁ……っ。それに、そこ! 何で俺の事は名前で呼ぶのに、手塚の事は名字で呼んでんだよ。普通、恋人の事名前で呼ばないか!?」
「へー、真司は恋人の事名前で呼んであげちゃうんだー……可愛い所あるじゃん」
「何で俺の話になるんだよ!? 俺は関係ないだろ……恋人いた事ないからそういうのわかんないし……」

 城戸はそう言いながらずるずるとテーブルに突っ伏す。敗北を感じたようだ。

「そうだな……俺が芝浦を名前で呼ばないのは、芝浦が自分の名前を『女の名前っぽい』と思って気にしてるからだ」

 手塚はカップの茶を啜りながら、そんな事を話はじめた。

「淳、という名前は男でも女でもいる名前だろう? 芝浦の場合、学生の頃から童顔なのもあってよく『可愛い』やら『女の子っぽい』やら騒がれていたようで、名前が少しコンプレックスなんだ。だから俺は芝浦を名前で呼ばない……というワケだな」
「そうそう、その点は手塚も同じでさ。というより、手塚の方が俺よりよっぽど女っぽい名前だろ? だから俺も手塚の事なるべく名字で呼んでるんだよね」
「あぁ、なるほどね……確かに手塚、名前の漢字は格好いいけど読み方ちょっと変わってるもんな」

 城戸はそう言いながら、カップに砂糖とミルクを入れて乱暴にかき回す。 その姿を眺めながら、手塚はふっと笑って見せた。

「最も理由はそれだけじゃないんだ。なぁ……淳?」

 急に名前を呼ばれ、芝浦は驚いたように手塚へと向いた。

「なっ、なんだよ手塚っ。急に名前で呼ぶのは……」
「いいだろ、俺も名前で呼んでくれ。なぁ?」
「っ、う……わかた、わかったよ……海之っ……さん……」

 芝浦は絞り出すような声でそう言うと、顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。

「あーっ、無理! 無理! 名前は人前では無理だからっ……勘弁してよ……俺そういうマジなやつ絶対無理なんだって……」
「な、こいつ名字を呼び捨てには出来るが、名前を人前では呼び捨てに出来ないみたいなんだ。俺だけじゃなく、雄一の事も『雄一さん』て呼ぶしな」
「あんまりからかわないでくれるかな、海之ちゃん? いい加減にしないと怒るけど」
「……茶化してちゃん付けでは呼べるのに、まったく。羞恥心のスイッチがどこにあるかわからない奴なんだよ。芝浦はな」

 俯いたまま少しふて腐れたように口をとがらす芝浦の頭を、手塚は優しく撫でてやる。 からかった詫びも兼ねているのだろう。その姿を見て、城戸は思い出したように言った。

「ふーん……って、芝浦、俺の事は呼び捨てにしてるだろ!? 何で俺は大丈夫で、手塚は無理なんだよ!?」
「真司は真司でいいんだよ! でも、手塚は……こう、無理。手塚で慣れてるし、名前で呼ぶの……なんか無理」

 顔を隠して恥ずかしがる芝浦を、城戸は渋い顔をして見ていた。解せぬ。というのは見てとれる。

「そんな顔しないでやってくれ、城戸。芝浦にとってお前は歳が近いから気を遣わない友人なんだろう」
「歳が近いって……手塚と俺、一つしか違わないんだけど……」
「ははっ、真司ってば俺より子供っぽいもんねー」
「なぁんだよっ、芝浦。おまえもっと年上を敬えって!」

 城戸は芝浦とまた言い合いを始める。ただその言い合いは怒りのこもった罵りあいというよりは子犬同士のじゃれ合いのように見えた。

「さて、二人とも何か食べるか? ……パスタでいいなら夕飯は俺が作る。その間、ゲームでもしててくれ」

 立ち上がる手塚を横に、芝浦はゲームのコントローラーを握る。

「よーし……真司、対戦で何か相手してやろっか。何がいい? レースもの? 格ゲー? ま、絶対俺の方が強いと思うけど」
「言ったな! ……絶対泣かしてやる。えっと……待ってろ、これならやった事あるから……」

 ゲームを選びながら、ふと城戸は顔を上げると思い出したように芝浦の方を見た。

「そういえば、芝浦。おまえ俺が来た時手塚に、確か『準備出来てる』って言ってたよな。そのわりに、飯の支度も何もしてなかったみたいだけど、何の準備してたんだよ? 掃除してたようには見えないし、結局、飯だって手塚に作らせてるし……」

 手塚と芝浦の手が止る。気まずい空気が二人の間に流れていたが、空気を読まない城戸はそんな事気付いてもいないだろう。

「それは……何というか、な……」

 何か言いかける手塚の言葉を遮るように、芝浦は棚から一本のゲームを取り出した。

「はい、今日のゲームはこれ! ……俺に勝ったら答えてやるよ。ま、勝てる訳ないと思うけどね」

 それは芝浦が最も得意とする対戦型のFPSゲームだ。難易度が高く、少し練習した程度では到底勝つ事が出来ないような代物でもある。

「言ったな! まってろ、すぐ練習してお前の事ケチョンケチョンにしてやるからな」
「はいはい、そういう事は勝ってから言ってくださーいっと。じゃ、格の違いってのを教えてあげちゃおっかなー」

 嬉々として画面に向う二人を眺めながら、手塚は一息ついて台所に立つ。
 後ろからは子供のように笑う城戸と芝浦の声が響いていた。

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東吾
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職業:
インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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