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インターネット字書きマンの落書き帳

   
【シンドーパイセンの冬の登校風景(BL)】
平和な世界線で普通に付き合っている新堂パイセンと荒井くんの話をしてます。
(挨拶を兼ねた幻覚の説明)

今回は、坂上くんが登校する時に偶然新堂パイセンに見つかって途中まで一緒に歩いてたら荒井が静かな嫉妬で割り込んでくる話です。
坂上くんは何もしてないけど地味に巻き込まれています。

アパシーは夏の話で冬頃になると三年生陣営は進路も決まっているだろうなぁ……。
新堂パイセンは受験すんの? しねぇだろうなぁ……。
みたいな気持ちで書きました。

公式資料という同人誌が手元にないので憶測で書いてますが俺が「こうだったらいいな」と思っているので皆さんもぜひ「こうだったらいい」と思ってください。
卒業後自然と同棲している新堂パイセンと荒井くん概念~。(鳴き声)

pixivにも置いてありますのでお好きなほうでお読みください → pixiv版はこちらからどうぞ


『暖かい手』

 季節は冬になりますます寒さが強くなる中、坂上修一は吹き付ける風に目を閉じて身震いした。 今は雪こそ降っていないが投稿時刻は大概ひどく寒い。朝方が一日のなかで一番冷え込むらしいがそれを身をもって実感する。 学校に行っても決して暖かくなるわけではないが寒い中で立っているよりはよっぽどマシだと思い急いで学校へ向かうが身体が凍えて思うように歩く事も出来なかった。

「おい、坂上じゃ無ェか。ずいぶんとチンタラ歩いてんなァ」

 そんな坂上を新堂誠が呼び止める。
 新堂とは夏に行った新聞部のイベント「学校の七不思議特集」という記事を作る時に顔を合わせそれから親しく話すようになっていた。
 最初はボクシング部の部長という肩書きに金髪とピアス、かなり強面というのもあり恐ろしい人なのかと思ったが見た目よりずっと話しやすい人であり今でも頻繁に連絡を取り合っているのだ。 ボクシング部の部長という立場を終えてからは髪も黒に戻しており同学年の風間望から散々と「不良」やら「チンピラそのもの」と揶揄されていた見た目も幾分かは大人しくなっただろう。耳につけた派手なピアスは相変わらずだが。

「あっ、新堂さん。新堂さんも学校ですか」
「まぁな、三年になってもこの時期はまだガッコーに色々用があるんだよ」

 話す新堂の息は白い。坂上は寒さの気が紛れるだろうと思ったのと卒業間近の新堂と同じ通学路を歩ける期間もそうないのだろうと思い、自然と並んで歩いていた。

「最近はすごく冷えますよね、今朝もすごく寒くてなかなか起きられませんでしたよ」
「ウチの方では雪が残ってたぜ。ったく、俺は寒いの弱ェってのにな……おい、坂上。カイロもってるか」
「カイロ? いえ、もってないですけど……」
「じゃ、やるよ。ほら、ほらほらほら受け取れ」

 新堂はそう言いながら坂上に向けてポケットから使い捨てカイロを取り出して投げる。
 一つ、二つ、三つ、四つ……合計6つの使い捨てカイロがポケットから出てきていったいどこにそんなものを入れていたんだと不思議になりながら投げられたカイロを全部受け取った。

「えぇ、何でこんなカイロもってるんですか? あ、背中に貼るのもある……」
「言っただろ、俺は寒いのに弱ェんだって。あー……身体鍛えてるとよ、体脂肪が減るんだよ。わかるよな、体脂肪。ボクシングやると減量もあるし身体絞る事が多いから体脂肪が10%を切るのなんてザラなんだけどな」
「はぁ……」

 坂上はピンと来ていなかったが、成人男性の体脂肪率は10%から19%が普通だ。10%なら筋肉がはっきりとわかる程度の体つきになっているといえる。 10%を切った身体は余計な脂肪分がないほとんど筋肉だけの身体といってもいいだろう。

「でな、体脂肪率ってのが10%切るとよ……信じられないくらい寒いんだよ」
「えっ、寒いんですか? 筋肉ついてると、寒い?」
「おう。体脂肪率が低いてのはようは身体に脂肪が少ねぇって事なんだけどよォ。脂肪ってのは寒さを防ぐ効果みたいなのがあるらしいんだわ。だからこの時期、ボクシングやってる奴はみんな寒さで凍えてんだよ。流石に耐えられず少しウェイト増やすやつもいるくらいだぜ」

 筋肉は鍛えていれば強いのだろう、などと漠然と思っていた坂上は思わぬ弊害がある事に目を丸くする。
 新堂は他にも、体脂肪率が10%を切ると免疫力が衰えがちになりより食事や生活習慣を気遣わなければすぐ風邪をひいてしまう事や減量のための食事でストレスがたまり気が折れてしまう選手もいる話などを聞いた。

「知りませんでした、スポーツを極めるのは大変だと思ってましたけど筋肉がついてれば必ずしも健康になれるってワケじゃないんですね」
「実はそうなんだよなァ。俺なんかコレで結構風邪ひきやすい方なんだぜ、笑っちゃうだろ。明らかに不健康そうな荒井は滅多に風邪なんてひかねぇのにな」
「荒井さんはあんまり病気しないんですか? よく学校を休んでいる気がするんですが……」
「あぁ、あいつが休むのは新作ゲームが発売するとか徹夜して模型作ってたから眠くなったとかそういう事ばっかりだ。風邪は一回もねぇよ。いっかい熱出したのかと思って見舞いに行ったらピンピンしてやがったぜ」

 新堂は考えるより先に手が出るスポーツマンタイプで、荒井は常に思慮深く周囲の様子を観察し滅多に外には出ないインドア派だ。
 二人とも性格や気質は全く違うのだが気が合うのか行動をよく共にしているのは何となく知っていたのだが見舞いにも行くとは新堂も思ったより面倒見がいいのだな、などと坂上は思っていた。

「風邪ひきやすくなって寒いんだったら身体鍛えるのも大変ですね……」

 坂上はコートを掴むと一つ身震いする。すると新堂は笑いながら坂上の身体を抱き寄せた。

「でもよ、筋肉付けるとカロリー消費ってのか? 燃焼効果があるらしいんだよな。だから、俺の身体ってかなり暖かいらしいぜ。ほら、どうよ」

 身体を寄せると確かに新堂の身体は温かい。寒がりだからカイロを多めに入れているのもあるだろうが、彼自身の体温がかなり高いのもあるだろう。
 後で聞いたが新堂は平熱が37度近くあるのも珍しくなく、筋肉量が多いと自然と温かな身体になるとの事だった。

「えっ!? 本当だ、新堂さん身体すごい暖かいですね」
「だろ? 俺は寒いんだけどよォ……俺の身体や手は温かいらしいんだよな。何なら坂上、ポケット一つ貸してやるぜ、ほら」

 言われるがまま新堂のコートに手をつっこめば、驚くほど暖かい手が強く握りしめてくる。  坂上の手と比べれば一回りは大きく思える手はスポーツをやっている手なのだからもっと硬く傷や肉刺などあるのかと思っていたがつきたての餅を思わす程に柔らかかく、そして暖かかった。
 だが暖かさ以上に新堂が指先を搦め手を握りしめる事が気恥ずかしくなる。別に意識して手を握っているワケではなくただ坂上の手を冷やさないように自然と指先を搦め強く握ってくれているのだろうがしっかりと結ばれた手はまるで恋人同士が手を握るような所作だったからそれがたまらなくくすぐったい気持ちにさせるのだ。

「どーよ、暖かいだろ?」

 新堂は屈託なく笑うが、手を握られている坂上はひどく心臓がドキドキする。
 自然に手を握られたからその行動に他意はないのだろうが、自然にやるからこそやけに新堂がかっこ良く見えてしまう。彼がスポーツマンであり鍛えられた肉体を良く知っているから余計にそう感じるのだろう。

「えぇっと。は、はい、暖かいです。暖かいんですけどっ」

 どう言ったらいいのだろう。新堂は善意から手を握ってくれているがとにかく恥ずかしいし、倉田に見られたら何を言われるか解ったものじゃない。だが今、新堂と手を握っているのはそれほど悪い気はしなかったし隣で歩く新堂が普段よりずっとかっこ良く見えているのも確かだ。
 新堂は別に深い意味があって坂上の手に触れたワケではないだろうし、やましい気持ちもないのだからこのまま手を握っていても別にいいのだろうが誰かに見られたらやはり恥ずかしいような気がする。
 あれこれ考え頭がパンクしそうになっていた坂上の隣で、急に新堂は前へ倒れそうになるのを踏みとどまった。

「何してるんですか、新堂さん」

 見れば何時からいたのか荒井が二人の後ろにいた。新堂の尻でも蹴飛ばしたのか、片足だけで立っている。

「おうっ……誰が俺の尻蹴飛ばしたんだと思ったら荒井かよ。相変わらず弱っちい蹴りだな。その程度で俺を倒せると思ってんのか」

 何とか転ぶのを踏みとどまった新堂は振り返りながら笑う。そんな新堂を前に、荒井は呆れたように深いため息をついた。

「別に新堂さんを打ち倒そうとは思ってませんよ。僕は、新堂さんに絡まれ困っている坂上くんを助けただけです。すいませんね、坂上くん。新堂さんがウザ絡みをして、迷惑でしたよね」
「え、えぇと。いえ、別に……」
「ほら、坂上くんが迷惑だって言ってますよ。あんまり後輩を脅さないであげてください、新堂さん」

 迷惑だとは言ったつもりは無かったが何故か言ってる事にされてしまった。最も、この状況に気恥ずかしい思いをしていたのは確かだから助けられたのは間違いないのだが。
 だが荒井は随分と怒っているように見えた。 荒井が感情を露わにするのはこちらに何かしらの意志を伝えたい時であり意図もなく表情を変える事はほとんど無いので意識せず怒る様子を見るのは珍しい。

「それより新堂さん、少し話があるんですけど。坂上くん、新堂さんをお借りしていいですか?」
「えっ? 別にいいですけど」
「俺に話? 何だよ、用があるなら別に坂上と一緒でも……」
「あなたに話があるんです、新堂さん。いいですか? ……察しが悪いのもいい加減にしないと怒りますよ」

 荒井の顔を見て新堂は少し考え、それからばつの悪そうな表情へと変わる。

「あぁ、そうか。そうだな……悪い坂上、ちょっと先に行くな」
「はい、わかりました。それじゃぁ……」

 坂上が最後まで声をかけるより先に、荒井は新堂の手を引いてどんどん先にすすんで行く。 そして角を曲がるより少し早く荒井が新堂のポケットへ手を入れるのを見て坂上は新堂の手を何とはなしに思い出していた。

「新堂さんの手、大きかったなぁ。それに暖かくて柔らかくて、僕より背が高いから手が大きいのかな。暖かいのは鍛えてるから?」

 ポケットに手を入れるのを口実に手が握れるのなら少し鍛えてみるのもいいかもしれない等思っている坂上の背を倉田が勢いよく叩く。

「なーにぼーっとしてるの坂上くん! ほらほら、遅刻するよー」
「痛ッ! く、倉田さん……よく寒くないね……」
「なになに? 寒いから恵美ちゃんと手ぇつないで学校行きたいとか? キャー、坂上くん積極的ー。でもね、恵美ちゃんの手はそんなに安くないから」
「いや、そんな事言ってないから……カイロ使う? もらったんだけど」
「えー、なになに、欲しい使う使う。スカートってやっぱ寒いんだよねー」

 後から来た倉田とともに歩きながら、先に行った新堂と荒井の背中を思い出す。
 自分が隣にいた時とはまた違う笑顔を向けていた二人の表情、その真意に坂上が気付くのは荒井が卒業した後新堂と一緒に住んでいるという話を聞かされた時だった。

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インターネット駄文書き
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紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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