インターネット字書きマンの落書き帳
ベッドの下にえっちな本を隠しておくタイプの新堂(新堂×荒井/BL)
新堂×荒井のこと好きかい? 今日から好きになろうぜ!
という訳で、平和な世界線で付き合ってる新堂×荒井の話をします。
今日は陰鬱としたしみったれた話を書きたいな~。
そう思ったので、しみったれた話を書きました。
ベッドの下にエロ本を隠していた新堂のエロ本ラインアップが年上お姉さん系ばっかりで「自分と全く違うじゃん! やっぱり女の方がいいんだね……」みたいな嫉妬でグチャグチャになる荒井の話をしてますよ。
最後はハッピーエンドなので大丈夫です。
何が大丈夫なのかは全然わかりません。
という訳で、平和な世界線で付き合ってる新堂×荒井の話をします。
今日は陰鬱としたしみったれた話を書きたいな~。
そう思ったので、しみったれた話を書きました。
ベッドの下にエロ本を隠していた新堂のエロ本ラインアップが年上お姉さん系ばっかりで「自分と全く違うじゃん! やっぱり女の方がいいんだね……」みたいな嫉妬でグチャグチャになる荒井の話をしてますよ。
最後はハッピーエンドなので大丈夫です。
何が大丈夫なのかは全然わかりません。
『ベッドの下に潜む』
昼休み、時折ため息をつきながら、荒井はいつもより時間をかけて購買のパンを食べきった。
悩んでいるといえば悩んでいるのだろうが、全ては些末なことだ。
きっかけは昨日、久しぶりに新堂の部屋に通された時のことだった。
「今、なんか飲み物でも持ってくるから待ってろよ」
新堂がそう声をかけ部屋を出た時、何とはなしに室内を見渡す。新堂の部屋に来るのは久しぶりだが、以前と少し違っている風に思えた。
何処が違っているのだろう。
新堂の部屋は雑然としている。
同級生や部活の後輩など、顔見知りや友人がよく集まり寝泊まりする事が多いのもあり、明らかに新堂の着る大きさではないトレーナーやジャージがクローゼットに押し込められているし、誰が持ちこむのか、机の上には週刊漫画雑誌が何冊も積み上げられていて勉強するスペースはどこにもない。あまり広くない部屋にはトレーニング用のマシーンやダンベルも置かれており、座る場所を確保するのが難しい程だ。
新堂の部屋にモノが多いのはいつもの事だ。知らない誰かの服がうずたかく積み上げられているのも、誰が置いていったかわからない歯ブラシが並んでいるのも日常茶飯事である。
新堂が自分のあずかり知らぬ所で他の男を部屋に上げているという事実は看過しがたいのが本音ではあるが、新堂はもともと友人や後輩を自室に招き、必要なら部屋に泊めるというのを日常にしていた。いくら荒井が恋人になり、そういう所作に嫉妬すると言ってもそれを辞めさせるのは不自然だろう。
恐らく新堂なら、「友人とはいえ、僕以外の人を部屋に上げないでほしい」と頼めばきっと新望み通りにしてくれるだろう。 しかし、それにより束縛する重い男だと思われたり、嫌われたりするのは絶対に嫌だった。
だから無理矢理自分を納得させて、気持ちを収めているのだが……。
「あっ……」
普段より少しだけ綺麗に整えられていたベッドの下を見れば、扇情的なポーズをとる女性の写真集がいくつも出てくる。
その中には、学生が所持していれば怒られが発生するような本もいくつか存在した。
新堂の友人はガサツな男が多い。デリカシーというものを持ち合わせていないような会話も当然のようにする。こういった本を持ちこむ輩も少なからずいるのだろう。
隠しておくというのは疚しいことがあるからだろうか。
出てきた本の殆どは「女教師」やら「年上のお姉さん」といったうたい文句が並んでおり、新堂の趣味が年上で清楚な優しいお姉さんだというのがよくわかる。
元々、異性が恋愛対象だった新堂にとって荒井と付き合うことはイレギュラーな出来事だ。
そして、新堂が本来、年上で優しい雰囲気の女性を理想像にしているのも知っていた。
新堂の理想が、自分とはほとんど逆だということもだ。
だから、新堂がこういった本を所持していて、それを隠しているということは静かに荒井を傷つけた。
「おう、待たせたな荒井。悪いな、ペットボトルのお茶しかなくて……」
そこまで言って新堂は荒井の手元に気付く。そしてお茶をテーブルに置くと、ひどく狼狽えながら本を取り上げた。
「いや、違うんだ荒井。これは、ダチが来てる時に泊まる礼だと言って置いていったものでな」
「ですが、やましいことがなければ隠しませんよね。捨ててもいい訳ですし」
「こんな本、堂々と捨てられる訳ないだろッ」
「それにしても、年上ですか。女教師、お姉さん、清楚な年上の女性、昔からお好きですよね、新堂さん」
「ち、違う。いや、違うのかと言われれば違わないんだが……そういうのじゃないんだ、いや、何がどういうのじゃないんだろうな……?」
新堂はしどろもどろになり、言い訳が全く機能しなくなる。荒井もこの手の話題が得意な方ではないが、新堂はほとんど会話にならなくなる程に不得手だった。これだけ言い訳をするのは、やはり後ろめたい気持ちがあるのだろう。
こういう本に出る女性を魅力的だと思うのだろうか。
何も言ってないのに、どうしても考えてしまう。
「……僕ですればいいじゃないですか」
こんなことを言っても仕方ないと思っている。だが、どうしても思ってしまうのだ。
「こんな本を使わなくても、僕は新堂さんのためなら何だってするし、何だって出来ますよ。だから、全部僕ですればいいんですよ。それなのに、どうして……」
自然と涙が溢れてくる。
どうして自分が泣いているのだろう。新堂が本を隠すことに対して、裏切られた気持ちを抱いているのだろうか。本質的に荒井のような人間は新堂の好みとかけ離れている、という事実を突きつけられたことに苛立ちや焦りを感じているのだろうか。自分がどれだけ尽くしても、どれだけ足掻いても新堂にとってイレギュラーな存在であることは代わらない、それが恐ろしいのだろうか。
理由もわからず流れてくる涙にどうしていいかわからず、声をあげて泣き出す荒井を新堂は抱きしめてくれた。
「ごめんな、荒井。ごめん、本当に……」
新堂もまた、何に対して謝っているのかなんてわからなかっただろう。
その日、新堂は荒井の身体中を慰めてくれたが、荒井はとうとう満たされぬ気持ちのまま、今に至っている。
いつもならこんなことはない。
新堂が抱いてくれたのなら、体に巡る血の全てが喜びに満たされるような心持ちになっていたというのに、蟠りが消えないのだ。
だが、どうしたらいいかわからない。
そもそも、理由もなく泣き出してしまうこと自体が新堂にとっても迷惑だったろう。
性愛のともなう行為は全て自分で済ませてほしいと思っているのは本当だが、そう考えること自体が重い男でしかないのもわかっている。
理性ではわかっているというのに、感情が付いてきてはくれないのだ。
とにかく、新堂に謝らなければいけないだろう、自分の身勝手な思いで振り回してしまったのだから。
今も頭ではそれを理解しているというのに、心が納得してくれないのだ。
「おい、荒井、いるか?」
昼食が終わった後も一人でぼんやり過ごしていると、教室に新堂が顔を見せる。
学年ごとに教室棟が別に存在する鳴神学園で、上級生が下級生の教室に来るのは極めて珍しいのもあり、周囲の視線は新堂と荒井に注がれた。
「……どうしたんですか、新堂さん」
それでなくとも、新堂は見るからに粗暴な不良で、荒井は華奢で大人しそうに見えるのだ。二人が話しているだけで、下級生に因縁をつけている不良のように見られるのだろう。
何か良くない相談をしているのではと耳をそばだてる生徒が随分といるのに、流石の新堂も気付いたようだ。
「ここでは話しづれぇな……移動するか」
新堂は荒井の腕を掴むと、そのままぐんぐん歩き出した。
着いたのは、ボクシング部の練習場だ。鍵の管理は顧問と主将の新堂の仕事がしているから昼休みはもちろん、放課後で部活の練習時間にならないと誰も来ない場所だ。鳴神学園は広いが、生徒数が多いので他の生徒が全くいないという場所は、休み時間には殆どない。ボクシング部の練習場は数少ない、二人がゆっくり話せる場所の一つだった。
「それで、何の用ですか新堂さん。僕に話があるって……」
練習場に置かれた長椅子にこしかけ、荒井は小声で問いかける。
その隣で新堂はしばらく腕を組み考えるような所作を見せた後、荒井へと向き直った。
「いや、その……な。昨日はホントに悪かったよ。アレをダチが持ってきたのはホントの話だし、隠してたのはお前が来るって分かっていたから、お前に見られたらばつが悪いってのもあった。ンでもな……何つーか……俺は、やっぱその……全部、お前でする、ってのは……多分、できねーと思うんだよ」
やはり、その話かと思う。
だが改めてそれを伝えられるのは辛い。
新堂はやはり異性の体に魅力を感じ、性的に興奮を覚えるのは異性の体なのだ。
自分がどれだけ愛しても、尽くしたとしても、その位置に行くことは不可能なのだ。それを突きつけられた気がするからだ。
「……わかってます。僕が、悪いんですよ。新堂さんに何でも受け入れてもらおうとするのは、結局僕のエゴでしかないんですから」
自分を納得させるため口ではそう告げるが、自然と腕に力が入る。
やり場のない感情が、どんどん肥大していった。
「あー、なんかわかってない気がするな。そうじゃねぇんだよ荒井、おまえのことが嫌いだとか……そういうのじゃなねぇんだ。むしろ、何つーかな……お前に嫌な思いしてほしくねぇし、お前のこと雑に扱いたくねぇから無理だ、って話してんだ」
「……嫌な思い、ですか」
「ほら、エロ本なんか読んでると……いや、お前はあんまりそういうの読まないだろうけど、モデルになってる女優とか、けっこう恥ずかしいポーズとったりしてる訳だろ。当人が望んでるのか、本意なのかは知らねーけど……お前は俺のためなら何でも出来るっていうし、実際にしてくれるってのはわかるんだよ。でも、俺はお前にそんなことしてほしくねぇし、させたくねぇんだ」
新堂はそう言いながら、荒井の頬に触れる。大きな手は厚ぼったくも温かかった。
「それに、そういう風にするってなると、お前の恥ずかしい写真がデータになるってことだろ。万が一でもそれが俺以外の誰かに見られたらと思うと、それも許せねぇんだ。お前のそういう姿は、俺だけが知ってればいい……そんな訳だからよ。やっぱ、全部お前で代替する、ってのは無理だよ。ま、そういう風に思う俺も大概だとは思うんだけどな」
胸に抱いていた蟠りが、解けて消えていく気がする。
自分はつまらない勘違いをしていた。そして、つまらない嫉妬で新堂を傷つけていたのだ。
「す、すいません、新堂さん。僕は……」
「ま、お前がそれでも嫉妬するってのなら仕方ねぇ。俺がそういうこと思わないようになるまで、俺と付き合ってもらうしかねぇんだが……耐えられるか?」
新堂はいたずらっぽく笑うと、荒井の体を抱き寄せる。
肩越しに感じる温もりを確かめるよう、荒井は自然と唇を重ねた。
「……当たり前ですよ。僕はそれでも貴方が、僕以外の誰かを見るのに嫉妬してしまうんですから。だからどうか、壊れるまで抱いてください。僕は、貴方にそうされたい」
そして、静かに笑う。
「じゃ……午後の授業はフケるか」
「はい……」
二人の影は自然と重なると、静かに溶けていった。
昼休み、時折ため息をつきながら、荒井はいつもより時間をかけて購買のパンを食べきった。
悩んでいるといえば悩んでいるのだろうが、全ては些末なことだ。
きっかけは昨日、久しぶりに新堂の部屋に通された時のことだった。
「今、なんか飲み物でも持ってくるから待ってろよ」
新堂がそう声をかけ部屋を出た時、何とはなしに室内を見渡す。新堂の部屋に来るのは久しぶりだが、以前と少し違っている風に思えた。
何処が違っているのだろう。
新堂の部屋は雑然としている。
同級生や部活の後輩など、顔見知りや友人がよく集まり寝泊まりする事が多いのもあり、明らかに新堂の着る大きさではないトレーナーやジャージがクローゼットに押し込められているし、誰が持ちこむのか、机の上には週刊漫画雑誌が何冊も積み上げられていて勉強するスペースはどこにもない。あまり広くない部屋にはトレーニング用のマシーンやダンベルも置かれており、座る場所を確保するのが難しい程だ。
新堂の部屋にモノが多いのはいつもの事だ。知らない誰かの服がうずたかく積み上げられているのも、誰が置いていったかわからない歯ブラシが並んでいるのも日常茶飯事である。
新堂が自分のあずかり知らぬ所で他の男を部屋に上げているという事実は看過しがたいのが本音ではあるが、新堂はもともと友人や後輩を自室に招き、必要なら部屋に泊めるというのを日常にしていた。いくら荒井が恋人になり、そういう所作に嫉妬すると言ってもそれを辞めさせるのは不自然だろう。
恐らく新堂なら、「友人とはいえ、僕以外の人を部屋に上げないでほしい」と頼めばきっと新望み通りにしてくれるだろう。 しかし、それにより束縛する重い男だと思われたり、嫌われたりするのは絶対に嫌だった。
だから無理矢理自分を納得させて、気持ちを収めているのだが……。
「あっ……」
普段より少しだけ綺麗に整えられていたベッドの下を見れば、扇情的なポーズをとる女性の写真集がいくつも出てくる。
その中には、学生が所持していれば怒られが発生するような本もいくつか存在した。
新堂の友人はガサツな男が多い。デリカシーというものを持ち合わせていないような会話も当然のようにする。こういった本を持ちこむ輩も少なからずいるのだろう。
隠しておくというのは疚しいことがあるからだろうか。
出てきた本の殆どは「女教師」やら「年上のお姉さん」といったうたい文句が並んでおり、新堂の趣味が年上で清楚な優しいお姉さんだというのがよくわかる。
元々、異性が恋愛対象だった新堂にとって荒井と付き合うことはイレギュラーな出来事だ。
そして、新堂が本来、年上で優しい雰囲気の女性を理想像にしているのも知っていた。
新堂の理想が、自分とはほとんど逆だということもだ。
だから、新堂がこういった本を所持していて、それを隠しているということは静かに荒井を傷つけた。
「おう、待たせたな荒井。悪いな、ペットボトルのお茶しかなくて……」
そこまで言って新堂は荒井の手元に気付く。そしてお茶をテーブルに置くと、ひどく狼狽えながら本を取り上げた。
「いや、違うんだ荒井。これは、ダチが来てる時に泊まる礼だと言って置いていったものでな」
「ですが、やましいことがなければ隠しませんよね。捨ててもいい訳ですし」
「こんな本、堂々と捨てられる訳ないだろッ」
「それにしても、年上ですか。女教師、お姉さん、清楚な年上の女性、昔からお好きですよね、新堂さん」
「ち、違う。いや、違うのかと言われれば違わないんだが……そういうのじゃないんだ、いや、何がどういうのじゃないんだろうな……?」
新堂はしどろもどろになり、言い訳が全く機能しなくなる。荒井もこの手の話題が得意な方ではないが、新堂はほとんど会話にならなくなる程に不得手だった。これだけ言い訳をするのは、やはり後ろめたい気持ちがあるのだろう。
こういう本に出る女性を魅力的だと思うのだろうか。
何も言ってないのに、どうしても考えてしまう。
「……僕ですればいいじゃないですか」
こんなことを言っても仕方ないと思っている。だが、どうしても思ってしまうのだ。
「こんな本を使わなくても、僕は新堂さんのためなら何だってするし、何だって出来ますよ。だから、全部僕ですればいいんですよ。それなのに、どうして……」
自然と涙が溢れてくる。
どうして自分が泣いているのだろう。新堂が本を隠すことに対して、裏切られた気持ちを抱いているのだろうか。本質的に荒井のような人間は新堂の好みとかけ離れている、という事実を突きつけられたことに苛立ちや焦りを感じているのだろうか。自分がどれだけ尽くしても、どれだけ足掻いても新堂にとってイレギュラーな存在であることは代わらない、それが恐ろしいのだろうか。
理由もわからず流れてくる涙にどうしていいかわからず、声をあげて泣き出す荒井を新堂は抱きしめてくれた。
「ごめんな、荒井。ごめん、本当に……」
新堂もまた、何に対して謝っているのかなんてわからなかっただろう。
その日、新堂は荒井の身体中を慰めてくれたが、荒井はとうとう満たされぬ気持ちのまま、今に至っている。
いつもならこんなことはない。
新堂が抱いてくれたのなら、体に巡る血の全てが喜びに満たされるような心持ちになっていたというのに、蟠りが消えないのだ。
だが、どうしたらいいかわからない。
そもそも、理由もなく泣き出してしまうこと自体が新堂にとっても迷惑だったろう。
性愛のともなう行為は全て自分で済ませてほしいと思っているのは本当だが、そう考えること自体が重い男でしかないのもわかっている。
理性ではわかっているというのに、感情が付いてきてはくれないのだ。
とにかく、新堂に謝らなければいけないだろう、自分の身勝手な思いで振り回してしまったのだから。
今も頭ではそれを理解しているというのに、心が納得してくれないのだ。
「おい、荒井、いるか?」
昼食が終わった後も一人でぼんやり過ごしていると、教室に新堂が顔を見せる。
学年ごとに教室棟が別に存在する鳴神学園で、上級生が下級生の教室に来るのは極めて珍しいのもあり、周囲の視線は新堂と荒井に注がれた。
「……どうしたんですか、新堂さん」
それでなくとも、新堂は見るからに粗暴な不良で、荒井は華奢で大人しそうに見えるのだ。二人が話しているだけで、下級生に因縁をつけている不良のように見られるのだろう。
何か良くない相談をしているのではと耳をそばだてる生徒が随分といるのに、流石の新堂も気付いたようだ。
「ここでは話しづれぇな……移動するか」
新堂は荒井の腕を掴むと、そのままぐんぐん歩き出した。
着いたのは、ボクシング部の練習場だ。鍵の管理は顧問と主将の新堂の仕事がしているから昼休みはもちろん、放課後で部活の練習時間にならないと誰も来ない場所だ。鳴神学園は広いが、生徒数が多いので他の生徒が全くいないという場所は、休み時間には殆どない。ボクシング部の練習場は数少ない、二人がゆっくり話せる場所の一つだった。
「それで、何の用ですか新堂さん。僕に話があるって……」
練習場に置かれた長椅子にこしかけ、荒井は小声で問いかける。
その隣で新堂はしばらく腕を組み考えるような所作を見せた後、荒井へと向き直った。
「いや、その……な。昨日はホントに悪かったよ。アレをダチが持ってきたのはホントの話だし、隠してたのはお前が来るって分かっていたから、お前に見られたらばつが悪いってのもあった。ンでもな……何つーか……俺は、やっぱその……全部、お前でする、ってのは……多分、できねーと思うんだよ」
やはり、その話かと思う。
だが改めてそれを伝えられるのは辛い。
新堂はやはり異性の体に魅力を感じ、性的に興奮を覚えるのは異性の体なのだ。
自分がどれだけ愛しても、尽くしたとしても、その位置に行くことは不可能なのだ。それを突きつけられた気がするからだ。
「……わかってます。僕が、悪いんですよ。新堂さんに何でも受け入れてもらおうとするのは、結局僕のエゴでしかないんですから」
自分を納得させるため口ではそう告げるが、自然と腕に力が入る。
やり場のない感情が、どんどん肥大していった。
「あー、なんかわかってない気がするな。そうじゃねぇんだよ荒井、おまえのことが嫌いだとか……そういうのじゃなねぇんだ。むしろ、何つーかな……お前に嫌な思いしてほしくねぇし、お前のこと雑に扱いたくねぇから無理だ、って話してんだ」
「……嫌な思い、ですか」
「ほら、エロ本なんか読んでると……いや、お前はあんまりそういうの読まないだろうけど、モデルになってる女優とか、けっこう恥ずかしいポーズとったりしてる訳だろ。当人が望んでるのか、本意なのかは知らねーけど……お前は俺のためなら何でも出来るっていうし、実際にしてくれるってのはわかるんだよ。でも、俺はお前にそんなことしてほしくねぇし、させたくねぇんだ」
新堂はそう言いながら、荒井の頬に触れる。大きな手は厚ぼったくも温かかった。
「それに、そういう風にするってなると、お前の恥ずかしい写真がデータになるってことだろ。万が一でもそれが俺以外の誰かに見られたらと思うと、それも許せねぇんだ。お前のそういう姿は、俺だけが知ってればいい……そんな訳だからよ。やっぱ、全部お前で代替する、ってのは無理だよ。ま、そういう風に思う俺も大概だとは思うんだけどな」
胸に抱いていた蟠りが、解けて消えていく気がする。
自分はつまらない勘違いをしていた。そして、つまらない嫉妬で新堂を傷つけていたのだ。
「す、すいません、新堂さん。僕は……」
「ま、お前がそれでも嫉妬するってのなら仕方ねぇ。俺がそういうこと思わないようになるまで、俺と付き合ってもらうしかねぇんだが……耐えられるか?」
新堂はいたずらっぽく笑うと、荒井の体を抱き寄せる。
肩越しに感じる温もりを確かめるよう、荒井は自然と唇を重ねた。
「……当たり前ですよ。僕はそれでも貴方が、僕以外の誰かを見るのに嫉妬してしまうんですから。だからどうか、壊れるまで抱いてください。僕は、貴方にそうされたい」
そして、静かに笑う。
「じゃ……午後の授業はフケるか」
「はい……」
二人の影は自然と重なると、静かに溶けていった。
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