インターネット字書きマンの落書き帳
坂上を慰める新堂を見てちょっとだけ動揺する荒井の話(新堂×荒井/BL)
俺はッ! 平和な世界線で付き合っている新堂×荒井を書くものです! 押忍!
今回は、坂上と仲良くなってきた荒井が、すっかり新聞部に遊びに来るようになった頃。
偶然、恋人である新堂が坂上をベッタリ甘やかしてヨシヨシしている所に立ち会ってしまい、ちょっと妬けてるけど坂上も自分にとって大事な友達だし、新堂が下心でそんなことするわけない!
なんて、自分を律しながら接する大人な荒井の話ですよ。
新堂×荒井の話好きかい?
今日から……何とかちょっとだけ好きになってくれると嬉しいぜ!
今回は、坂上と仲良くなってきた荒井が、すっかり新聞部に遊びに来るようになった頃。
偶然、恋人である新堂が坂上をベッタリ甘やかしてヨシヨシしている所に立ち会ってしまい、ちょっと妬けてるけど坂上も自分にとって大事な友達だし、新堂が下心でそんなことするわけない!
なんて、自分を律しながら接する大人な荒井の話ですよ。
新堂×荒井の話好きかい?
今日から……何とかちょっとだけ好きになってくれると嬉しいぜ!
『僕の大切な人』
「今日は、新聞部に寄っていくつもりだぜ」
事前に新堂からそのようなメッセージを受けていたため、荒井は放課後真っ直ぐに新聞部へ向かっていた。
初めて新聞部に来た時は、やれ汚いだの暑いだの散々文句を垂れていた新堂だったが集会では坂上のことがすっかり気に入ったのだろう。集会が終わり、無事に校内新聞が出来上がり企画も大成功に終えた後も、新堂は頻繁に新聞部へ訪れては坂上の記事を下読みしたり、イチゴミルクの差し入れをしたりと何かにつけて坂上を気遣っているようだった。
新堂曰く、
「別に坂上をどうこうしてやろう、なんて変な意味は無ぇんだけどな。ほら、坂上は何となく可愛いし、小さいくせにちょこちょこ動き回るだろ。あれを見てると、何か手伝ってやらないと、なんて思うんだよなぁ」
とのことらしく、気持ち的にはハムスターを可愛がる感覚に近いのだろう。
実際に坂上は小動物っぽさがあるのか、集会で知り合った他の仲間たちからも可愛がられており、岩下や福沢からはよくお菓子の差し入れをもらったり、風間からは特に意味もなく撫でられたりしていた。
だから新堂が坂上を目に掛けていることに対しては理解しているつもりだったが、新堂を追うように新聞部のドアを開けた時、坂上が新堂に抱きついてその胸に顔を埋めているのを見た時は流石に動揺した。
二人とも後ろを向いていたから荒井が入って来たのには気付いてないだろう。微かに聞こえる言葉から、坂上を新堂が慰めているというのはわかった。
「すいません新堂さん、僕がちゃんとしてないからこんな風に……」
「何言ってんだ、そんなのお前の責任じゃ無ェだろ。勝手に勘違いした奴が悪いのに、お前が責められる必用なんざ無ェ」
断片的に聞こえる会話から、坂上の身に何かしら理不尽な言いがかりをつけてきた連中がいたようだった。それに対し、坂上は必用以上に傷ついているらしい。
日野や朝比奈は頭ごなしに人を否定するタイプではないし、同級生の倉田から繰り出される理不尽な妄想にも慣れている坂上だからそういったことに対する憤りではないだろう。
おおかた、他人の色恋沙汰に巻き込まれでもして心ない言葉でもかけられたに違いない。坂上は小柄で普段から目立たぬよう行動をしているが、一歩下がっていてもはっきりとわかる美少年だ。多少控えめに過ごしていただけではその容姿を隠しきることは出来ないだろう。そうして、見た目が優れているがため、他人のやっかみを買ったりするというのは思春期の男女間にはよくあることなのだ。
そう考える荒井も、普段から人目に付かないよう顔を隠して生活しているつもりなのだが勝手に恋愛沙汰の舞台へあげられ見知らぬ相手から詰め寄られることがよくあった。
普通に考えれば知らない相手に何を言われても嬉しいと思うはずないのだが、それが恋愛ともなると価値観が狂う輩もいるようで、好きだといわれて断った、それだけのことなのに鬼畜生のように罵られたり、今まで好きだった気持ちを考えろと言われたりもする。時には「今好きな人がいないなら付き合ってもいいじゃないか」なんて無茶な要求をしたり、「本当は好きな人がいるのだろう、それは一体誰なんだ」なんてプライバシーを踏みにじるような要求を突きつける相手もいるものだ。
荒井はすっかり慣れてしまい適当にあしらうようにしてきたが、優しい坂上はそういった事情にもいちいち真摯に向き合い全てを受け止めて傷いてしまうのだろう。
荒井は二人に気付かれないよう廊下に出ると、部室棟から離れた場所にある自動販売機に向かっていた。 坂上も随分と泣いていたようだから、水を買うのがいいか。それとも暖かく甘いミルクティーのほうがいいだろうか。少し考え、冷たい水と温かなミルクティー、それとオレンジジュースを買った。三つあれば好きな者が選べるだろうし、選ばなかったものは持って帰ればいい。
そうして部室に戻った時、坂上は変わらず新堂の隣に座り肩を抱きよせられていた。新堂の身体は温かいし大きいからそばにいるだけで随分と安心感もあるのだろう、頬に涙の痕を残したまま、坂上はようやく笑顔を見せはじめる。新堂と話して幾分か心も軽くなったのだろう。自分一人で抱えていた感情を誰かと共有できたことで随分気持ちも違うはずだ。
「失礼します、坂上くん。良かったらこれ、飲んでください」
荒井は部室に一声かけると並べられた机の上に水とジュースを置いた。
「あ、荒井さん。あのっ、いついらっしゃったんですか……」
「いつでもいいじゃないですか、好きなものを選んでください。たまには先輩らしく、ジュースの一つくらいおごりたい気分だったので気にしなくていいですよ」
坂上は照れながら、オレンジジュースに手を伸ばしゆっくりと一口だけ飲むと、荒井と新堂に小さく頭を下げた。
「ありがとうございます。あの、おかげで落ち着きました……」
「おう、もう大丈夫か?」
「えぇ、もう一人でも大丈夫です。えぇっと……荒井さんは何か新聞部の用があったんですか? いま、部長も日野さんもいないので僕が留守番なんですけど……」
「僕は新堂さんを探していたので気にしなくてもいいですよ。それでは、行きましょうか新堂さん。坂上くんも、あまり思い詰めないでください。相談事があれば、僕も話を聞きますからね」
荒井は優しい声色で告げ、不慣れな笑顔で見つめれば坂上は嬉しそうに頭を下げる。そんな坂上の頭をくしゃくしゃに撫でると、新堂は荒井と連れ立って部室を後にした。
二人、並んで廊下を歩き階段にさしかかる頃
「新堂さんってわりと誰にでも優しいですよね」
荒井はぽつり、そう呟いた。
「そうか? いや、そうでも無ェと思うけどな……ムカつく奴は大勢いるし、殴る時は殴るぜ?」
確かにその通り、新堂は短期でカッとなるとすぐ手が出るタイプだが、新堂が殴る相手は大概が不良崩れや礼儀も知らず口だけ達者の面倒なクラスメイトばかりだから、誰にだって殴りかかってくるような狂犬といったタイプではない。
それに、新堂に自覚はないようだが、彼は自分が認めた相手には何かと世話を焼く気質がある。そのせいか、同級生だけではなく後輩連中にも新堂を慕う者は多いのだ。
現在のボクシング部は新堂のシンパが多く、口では「新堂を倒せれば俺が次期キャプテンだ」とうそぶいているが、新堂に対する忠誠心はかなり高い。 野球部の栗原が鳴神に来た理由の一つも新堂が通っているのなら楽しいだろうと思ったからだし、2年でも札付きのワルであり腕っ節の強さとけんかっ早さで有名な星野も手懐けているのだからたいした物だろう。
彼に思いを寄せる女子生徒の話はとんと聴かないが、彼を兄貴分として慕っている生徒なら一人二人では効かないだろう。
新堂は男相手だと恋愛を意識しないのもあって距離が近く、懐に入れて可愛がるから自然と手懐けられている生徒たちが多いのだ。男に対しては随分と人たらしな側面を見せるという奴だが、これを無自覚でやっているのだから、彼の恋人という立場である荒井は時々ひどく苛立たしく思えた。
今日、坂上を抱き寄せて涙を胸で拭いてやったのも新堂からすると後輩を慰める自然なことなのだろうが、荒井はそれを分かっていても胸の奥が焦れる。
「……わかってますよ、新堂さんは無意識でそうしてるんだって。でも……新堂さんの彼氏は僕ですから。そういうのを見せつけられると、ちょっと妬けちゃいます」
階段を下りながら振り返らずに言う荒井の言葉は素っ気ないが、妬いているのは本当だろう。 新堂は頭を掻くと踊り場についた時、不意に荒井の手をとってすこし強引に抱きしめた。
「ばかな心配してんじゃ無ェよ。確かにダチも後輩も俺にとっては大事だが……俺から抱きしめたいと思うのはお前だけだし、特別なのはお前一人だけだぜ。下らない嫉妬しなくても、それくらいわかってるだろう」
「えぇ、勿論わかってます。だけど……ちゃんと、証明してください。僕だけが一番だってこと、すぐに証明できるでしょう?」
荒井は悪戯っぽく笑うと、新堂の前で目を閉じる。新堂は僅かに顔を紅くすると仕方ないといった顔で、でも満更でもない表情を浮かべながら、荒井と静かに唇を重ねた。
うっすらと紅をさしたように赤く艶のある荒井の唇は吸い付くほど甘く柔らかに新堂の心を満たすのだった。
「今日は、新聞部に寄っていくつもりだぜ」
事前に新堂からそのようなメッセージを受けていたため、荒井は放課後真っ直ぐに新聞部へ向かっていた。
初めて新聞部に来た時は、やれ汚いだの暑いだの散々文句を垂れていた新堂だったが集会では坂上のことがすっかり気に入ったのだろう。集会が終わり、無事に校内新聞が出来上がり企画も大成功に終えた後も、新堂は頻繁に新聞部へ訪れては坂上の記事を下読みしたり、イチゴミルクの差し入れをしたりと何かにつけて坂上を気遣っているようだった。
新堂曰く、
「別に坂上をどうこうしてやろう、なんて変な意味は無ぇんだけどな。ほら、坂上は何となく可愛いし、小さいくせにちょこちょこ動き回るだろ。あれを見てると、何か手伝ってやらないと、なんて思うんだよなぁ」
とのことらしく、気持ち的にはハムスターを可愛がる感覚に近いのだろう。
実際に坂上は小動物っぽさがあるのか、集会で知り合った他の仲間たちからも可愛がられており、岩下や福沢からはよくお菓子の差し入れをもらったり、風間からは特に意味もなく撫でられたりしていた。
だから新堂が坂上を目に掛けていることに対しては理解しているつもりだったが、新堂を追うように新聞部のドアを開けた時、坂上が新堂に抱きついてその胸に顔を埋めているのを見た時は流石に動揺した。
二人とも後ろを向いていたから荒井が入って来たのには気付いてないだろう。微かに聞こえる言葉から、坂上を新堂が慰めているというのはわかった。
「すいません新堂さん、僕がちゃんとしてないからこんな風に……」
「何言ってんだ、そんなのお前の責任じゃ無ェだろ。勝手に勘違いした奴が悪いのに、お前が責められる必用なんざ無ェ」
断片的に聞こえる会話から、坂上の身に何かしら理不尽な言いがかりをつけてきた連中がいたようだった。それに対し、坂上は必用以上に傷ついているらしい。
日野や朝比奈は頭ごなしに人を否定するタイプではないし、同級生の倉田から繰り出される理不尽な妄想にも慣れている坂上だからそういったことに対する憤りではないだろう。
おおかた、他人の色恋沙汰に巻き込まれでもして心ない言葉でもかけられたに違いない。坂上は小柄で普段から目立たぬよう行動をしているが、一歩下がっていてもはっきりとわかる美少年だ。多少控えめに過ごしていただけではその容姿を隠しきることは出来ないだろう。そうして、見た目が優れているがため、他人のやっかみを買ったりするというのは思春期の男女間にはよくあることなのだ。
そう考える荒井も、普段から人目に付かないよう顔を隠して生活しているつもりなのだが勝手に恋愛沙汰の舞台へあげられ見知らぬ相手から詰め寄られることがよくあった。
普通に考えれば知らない相手に何を言われても嬉しいと思うはずないのだが、それが恋愛ともなると価値観が狂う輩もいるようで、好きだといわれて断った、それだけのことなのに鬼畜生のように罵られたり、今まで好きだった気持ちを考えろと言われたりもする。時には「今好きな人がいないなら付き合ってもいいじゃないか」なんて無茶な要求をしたり、「本当は好きな人がいるのだろう、それは一体誰なんだ」なんてプライバシーを踏みにじるような要求を突きつける相手もいるものだ。
荒井はすっかり慣れてしまい適当にあしらうようにしてきたが、優しい坂上はそういった事情にもいちいち真摯に向き合い全てを受け止めて傷いてしまうのだろう。
荒井は二人に気付かれないよう廊下に出ると、部室棟から離れた場所にある自動販売機に向かっていた。 坂上も随分と泣いていたようだから、水を買うのがいいか。それとも暖かく甘いミルクティーのほうがいいだろうか。少し考え、冷たい水と温かなミルクティー、それとオレンジジュースを買った。三つあれば好きな者が選べるだろうし、選ばなかったものは持って帰ればいい。
そうして部室に戻った時、坂上は変わらず新堂の隣に座り肩を抱きよせられていた。新堂の身体は温かいし大きいからそばにいるだけで随分と安心感もあるのだろう、頬に涙の痕を残したまま、坂上はようやく笑顔を見せはじめる。新堂と話して幾分か心も軽くなったのだろう。自分一人で抱えていた感情を誰かと共有できたことで随分気持ちも違うはずだ。
「失礼します、坂上くん。良かったらこれ、飲んでください」
荒井は部室に一声かけると並べられた机の上に水とジュースを置いた。
「あ、荒井さん。あのっ、いついらっしゃったんですか……」
「いつでもいいじゃないですか、好きなものを選んでください。たまには先輩らしく、ジュースの一つくらいおごりたい気分だったので気にしなくていいですよ」
坂上は照れながら、オレンジジュースに手を伸ばしゆっくりと一口だけ飲むと、荒井と新堂に小さく頭を下げた。
「ありがとうございます。あの、おかげで落ち着きました……」
「おう、もう大丈夫か?」
「えぇ、もう一人でも大丈夫です。えぇっと……荒井さんは何か新聞部の用があったんですか? いま、部長も日野さんもいないので僕が留守番なんですけど……」
「僕は新堂さんを探していたので気にしなくてもいいですよ。それでは、行きましょうか新堂さん。坂上くんも、あまり思い詰めないでください。相談事があれば、僕も話を聞きますからね」
荒井は優しい声色で告げ、不慣れな笑顔で見つめれば坂上は嬉しそうに頭を下げる。そんな坂上の頭をくしゃくしゃに撫でると、新堂は荒井と連れ立って部室を後にした。
二人、並んで廊下を歩き階段にさしかかる頃
「新堂さんってわりと誰にでも優しいですよね」
荒井はぽつり、そう呟いた。
「そうか? いや、そうでも無ェと思うけどな……ムカつく奴は大勢いるし、殴る時は殴るぜ?」
確かにその通り、新堂は短期でカッとなるとすぐ手が出るタイプだが、新堂が殴る相手は大概が不良崩れや礼儀も知らず口だけ達者の面倒なクラスメイトばかりだから、誰にだって殴りかかってくるような狂犬といったタイプではない。
それに、新堂に自覚はないようだが、彼は自分が認めた相手には何かと世話を焼く気質がある。そのせいか、同級生だけではなく後輩連中にも新堂を慕う者は多いのだ。
現在のボクシング部は新堂のシンパが多く、口では「新堂を倒せれば俺が次期キャプテンだ」とうそぶいているが、新堂に対する忠誠心はかなり高い。 野球部の栗原が鳴神に来た理由の一つも新堂が通っているのなら楽しいだろうと思ったからだし、2年でも札付きのワルであり腕っ節の強さとけんかっ早さで有名な星野も手懐けているのだからたいした物だろう。
彼に思いを寄せる女子生徒の話はとんと聴かないが、彼を兄貴分として慕っている生徒なら一人二人では効かないだろう。
新堂は男相手だと恋愛を意識しないのもあって距離が近く、懐に入れて可愛がるから自然と手懐けられている生徒たちが多いのだ。男に対しては随分と人たらしな側面を見せるという奴だが、これを無自覚でやっているのだから、彼の恋人という立場である荒井は時々ひどく苛立たしく思えた。
今日、坂上を抱き寄せて涙を胸で拭いてやったのも新堂からすると後輩を慰める自然なことなのだろうが、荒井はそれを分かっていても胸の奥が焦れる。
「……わかってますよ、新堂さんは無意識でそうしてるんだって。でも……新堂さんの彼氏は僕ですから。そういうのを見せつけられると、ちょっと妬けちゃいます」
階段を下りながら振り返らずに言う荒井の言葉は素っ気ないが、妬いているのは本当だろう。 新堂は頭を掻くと踊り場についた時、不意に荒井の手をとってすこし強引に抱きしめた。
「ばかな心配してんじゃ無ェよ。確かにダチも後輩も俺にとっては大事だが……俺から抱きしめたいと思うのはお前だけだし、特別なのはお前一人だけだぜ。下らない嫉妬しなくても、それくらいわかってるだろう」
「えぇ、勿論わかってます。だけど……ちゃんと、証明してください。僕だけが一番だってこと、すぐに証明できるでしょう?」
荒井は悪戯っぽく笑うと、新堂の前で目を閉じる。新堂は僅かに顔を紅くすると仕方ないといった顔で、でも満更でもない表情を浮かべながら、荒井と静かに唇を重ねた。
うっすらと紅をさしたように赤く艶のある荒井の唇は吸い付くほど甘く柔らかに新堂の心を満たすのだった。
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