インターネット字書きマンの落書き帳
夏に一緒にアイスを喰うシンドーパイセンとあらいくん(BL)
平和な世界線で普通に付き合っている新堂×荒井の話をします。(挨拶を兼ねた幻覚の説明)
暑い夏の最中、時間から隔絶されたような駄菓子屋で二人並んでアイスを食べたりしている。
ただそれだけの夏っぽい話を……冬に書いたよ。
ずっと夏だといい、ずっと夏にいる二人の話を楽しもうね。
二人は付き合っているけどまだ新堂の方が何となく気恥ずかしくて荒井の方が積極的に関係を詰めていく感じ……。
受けの方がイニシアチブを握っている感じ、好きだな。
今日からみんなも好きになるといいよ!
暑い夏の最中、時間から隔絶されたような駄菓子屋で二人並んでアイスを食べたりしている。
ただそれだけの夏っぽい話を……冬に書いたよ。
ずっと夏だといい、ずっと夏にいる二人の話を楽しもうね。
二人は付き合っているけどまだ新堂の方が何となく気恥ずかしくて荒井の方が積極的に関係を詰めていく感じ……。
受けの方がイニシアチブを握っている感じ、好きだな。
今日からみんなも好きになるといいよ!
『別の味がするアイス』
うだるような暑さの中、荒井昭二は汗を拭いながら帰路についていた。
滅多に学校へ来る事はないが頭抜けて成績の良い荒井はたまに学校へ行くと教師に話しかけられる事が多くその大半はもっと学校に来いといったありふれた小言なのだが、時々荒井がもつ深い知識を見いだした教師から無理難題を押しつけられたりする。
荒井としてもただ億劫なだけの押しつけ仕事は断るか無視するかなのだが、今回の頼まれごとは面倒さよりも興味と関心が勝ってしまい少し触れるだけのつもりが最後までやり通してしまうほど没入していた。
終わったのに気付いた時は西日が差しており、教室内には誰の姿もない。
今日は授業が半日だけだったから生徒は皆換えってしまったのだろうが一人で数時間は作業に没頭していたのだと思うと自分の好奇心に呆れた。
最も作業は終わったしかなり達成感のある仕事だったから満足は大きいがうまく教師に乗せられたのだといった思いは拭えぬまま、荒井は鞄を抱えると教師に一言だけ添えて学校を出た。
普段ならとっくに帰っている時間だ。
半日で帰る予定だったから弁当ももって来てないし学食も終わっている。
暑さのせいで腹は減ってないが僅かに喉の渇きを覚えながら荒井は普段の通用口とも違う道を通ったのは成し遂げた余韻に浸りたいのと抱いた熱を冷ましたいという理由からだった。
肌を刺すような強い日差しを浴び歩き出してすぐに後悔する。だが今さら普段の道へ戻ればそのほうがよほど遠回りになるのだから諦めてこの道を通るしかないだろう。 止めどなく流れる汗を拭い歩く荒井を聞き覚えのある声が呼び止めた。
「おい、荒井じゃ無ぇか。珍しいな、おまえの通学路ってこっちだったっけ」
見ればそこには新堂誠の姿がある。
後ろにはよくこんな店が生き残っていたものだと感心するほどに古めかしい昭和の駄菓子屋といった佇まいの店が見えていた。
新堂はその店の前にあるベンチで瓶ラムネを飲み一服してるらしい。ボクシング部の練習が終わり一休みでもしているのだろうか。
荒井は汗を拭うと新堂へと顔を向けた。
「えぇと、こっちは遠回りですね。ただ今日はこっちの道を通りたい気分だったのでこちらを選んだのですが……」
荒井は強い西日に手をかざすと目を細める。
「すでに後悔してますよ。今日はこんなにも暑かったんですね」
作業中はずっと冷房の効いた部屋にいたので外の気温など気にならなかったが今は夏の盛りなのだ。 梅雨時の合間に訪れた晴れだったせいか路上から蒸気が吹き出ているような気にすらなる。
いかにも辛そうな荒井の顔を見ると新堂は笑いながらベンチの隣を叩いて見せた。隣に座れという事だろう。 別に付きあう必用はないが歩くのもしんどい程だったので荒井は素直にベンチへと座る。すると新堂は古びた駄菓子屋へと入っていきアイスを二つ買うと一つを荒井へと差し出した。
「ほら、喰えよ。水分足りねぇと熱中症で倒れるからな」
「えっ? あぁ……ありがとうございます」
荒井は驚きながらアイスを受け取る。新堂が何か奢ってくれるとは思っていなかったからだ。
「お、俺が何か奢るとか珍しいって顔してんな……お前は一応俺の後輩だし、後で貸しだ何だと面倒くせぇ事は言わねぇから安心しろって。たまには先輩の好意に甘えていいんだぜ?」
たまたま機嫌が良かったのか、臨時収入でも入ったのだろうか。 お世辞にも金回りが良いとは言えない新堂にしては珍しいがせっかくの好意だ、受け取っておこう。それに喉が非道く渇いていて倒れそうだったのも事実なのだから。
「では遠慮なく頂きますね」
一言告げてからアイスを囓ればシャクシャクと心地よい音をたて氷が喉へ滑り落ちていく。
やけに派手な桃色とたっぷりの練乳が入った甘いイチゴミルクのアイスは喉の渇きを随分と癒やしてくれた。
「あ……美味しい……」
思わずそうつぶやけば、新堂はアイスの袋を開けながら笑う。
「ははっ、こんな安いアイスが美味く感じる程度には喉が渇いてたんだろうよ。お前が歩いてるのを見て、すっかり頭が茹だってるように見えたから声かけたんだけど良かったぜ。多分気付かないうちに熱中症になってたんだろうな」
そう言われれば作業をしていた室内は確かに涼しかったが集中しすぎて水分を摂るのは忘れていた気がする。 外があまりに暑いから熱気にやられたのだと思っていたが水分不足で朦朧としていたのだろう。事実としてアイスを食べるうちにみるみる活気が戻ってきて頭も幾分か落ち着いて考えられるようになってきた。
「新堂さんはここで休憩ですか? 新堂さんも通学路はコッチじゃないですよね」
アイスを囓りながら聞けば、新堂はソーダ味のアイスを口にする。
「ボクシング部の練習が終わった後、西澤に呼ばれてサッカー場の方に行ってたんだよ。向こうから帰るならと思ってこっちの道に来たんだが、喉渇いてたからなぁ。久しぶりにこの駄菓子屋に寄ったって訳だ」
背後に見える駄菓子屋は昭和の佇まいをしている。 アイスクリームと書かれた大きめの冷蔵庫にタバコの看板、傍には赤でこそないが小銭やテレフォンカードの使える公衆電話なども置かれており、中は薄暗く狭いがチューブに入ったゼリーやきなこ棒といった懐かしの駄菓子だけではなく指でこすると煙が出るようなオモチャなどもあるようでますます時が止まったような場所に思えた。
鳴神学園は怪異の温床だが、昭和の頃から時が止まったようなこの駄菓子屋もある種の怪異のように見えてくる。
「それに、この店のベンチってなんか涼しいんだよな。いい風が吹き込んできて休むのにちょうどいいんだ」
だが新堂は三年通っているうちに何度もこの駄菓子屋に寄っているのだろう、さして疑う様子もなくアイスを囓りながら笑っていた。
一瞬その涼しさはこの店が怪異だからではと疑ったがどうやらこの場所が高いビルや壁などの合間にあるようで他よりやや強めの風が吹き付けてくるからのようだ。 確かに夏でこの風を受けるのは心地よい。少し風が強いからアイスが早く溶けてしまいそうだが。
「そういえば、新堂さんはソーダ味なんですね」
アイスを食べきって残った棒を弄びながら新堂を見る。新堂もまたあと一口で全て食べ終わりそうだった。
「そうだが何だ? ソーダ味の方が良かったか? いや、他のアイスがバニラ系だったからよぉ、夏は口当たりのいい氷菓の方が美味いと思ってな」
残り一口になったアイスを差し出しながら新堂は笑う。 別に残りが欲しい訳ではなく何とはなしに聞いたつもりだが、そんな風にされると悪戯心が芽生えるというものだ。
荒井は少し距離を詰めると微かに笑い唇を重ねた。心地よいソーダの味が舌の先に触れる。
「おっ、おい。おまっ……何してんだよ……」
新堂は驚き後ろへ飛び退くと辺りを見渡した。誰かに見られたのかどうなのか、それが心配だったのだろう。その慌てた姿がかわいらしいもので、荒井は自然と笑っていた。
「ソーダ味の味見ですよ。いいじゃないですか、せっかく別のアイスを頼んだんですから」
「味見ってなぁ、俺のアイスは残ってるんだぞ。わざわざそんな事しなくてもわかるじゃ無ぇかよ」
「でも、僕の味はわからないでしょう? ……お礼ですから受け取ってください」
涼しい顔の荒井を前に、新堂は頭を掻きながら残りのアイスを食べきる。
そんな彼の横顔を眺める荒井に心地よい風が吹き付けるのを、荒井は目を細めて眺めていた。
出来る事ならずっとこんな夏が続けばいい。
密かにそう思いながら。
うだるような暑さの中、荒井昭二は汗を拭いながら帰路についていた。
滅多に学校へ来る事はないが頭抜けて成績の良い荒井はたまに学校へ行くと教師に話しかけられる事が多くその大半はもっと学校に来いといったありふれた小言なのだが、時々荒井がもつ深い知識を見いだした教師から無理難題を押しつけられたりする。
荒井としてもただ億劫なだけの押しつけ仕事は断るか無視するかなのだが、今回の頼まれごとは面倒さよりも興味と関心が勝ってしまい少し触れるだけのつもりが最後までやり通してしまうほど没入していた。
終わったのに気付いた時は西日が差しており、教室内には誰の姿もない。
今日は授業が半日だけだったから生徒は皆換えってしまったのだろうが一人で数時間は作業に没頭していたのだと思うと自分の好奇心に呆れた。
最も作業は終わったしかなり達成感のある仕事だったから満足は大きいがうまく教師に乗せられたのだといった思いは拭えぬまま、荒井は鞄を抱えると教師に一言だけ添えて学校を出た。
普段ならとっくに帰っている時間だ。
半日で帰る予定だったから弁当ももって来てないし学食も終わっている。
暑さのせいで腹は減ってないが僅かに喉の渇きを覚えながら荒井は普段の通用口とも違う道を通ったのは成し遂げた余韻に浸りたいのと抱いた熱を冷ましたいという理由からだった。
肌を刺すような強い日差しを浴び歩き出してすぐに後悔する。だが今さら普段の道へ戻ればそのほうがよほど遠回りになるのだから諦めてこの道を通るしかないだろう。 止めどなく流れる汗を拭い歩く荒井を聞き覚えのある声が呼び止めた。
「おい、荒井じゃ無ぇか。珍しいな、おまえの通学路ってこっちだったっけ」
見ればそこには新堂誠の姿がある。
後ろにはよくこんな店が生き残っていたものだと感心するほどに古めかしい昭和の駄菓子屋といった佇まいの店が見えていた。
新堂はその店の前にあるベンチで瓶ラムネを飲み一服してるらしい。ボクシング部の練習が終わり一休みでもしているのだろうか。
荒井は汗を拭うと新堂へと顔を向けた。
「えぇと、こっちは遠回りですね。ただ今日はこっちの道を通りたい気分だったのでこちらを選んだのですが……」
荒井は強い西日に手をかざすと目を細める。
「すでに後悔してますよ。今日はこんなにも暑かったんですね」
作業中はずっと冷房の効いた部屋にいたので外の気温など気にならなかったが今は夏の盛りなのだ。 梅雨時の合間に訪れた晴れだったせいか路上から蒸気が吹き出ているような気にすらなる。
いかにも辛そうな荒井の顔を見ると新堂は笑いながらベンチの隣を叩いて見せた。隣に座れという事だろう。 別に付きあう必用はないが歩くのもしんどい程だったので荒井は素直にベンチへと座る。すると新堂は古びた駄菓子屋へと入っていきアイスを二つ買うと一つを荒井へと差し出した。
「ほら、喰えよ。水分足りねぇと熱中症で倒れるからな」
「えっ? あぁ……ありがとうございます」
荒井は驚きながらアイスを受け取る。新堂が何か奢ってくれるとは思っていなかったからだ。
「お、俺が何か奢るとか珍しいって顔してんな……お前は一応俺の後輩だし、後で貸しだ何だと面倒くせぇ事は言わねぇから安心しろって。たまには先輩の好意に甘えていいんだぜ?」
たまたま機嫌が良かったのか、臨時収入でも入ったのだろうか。 お世辞にも金回りが良いとは言えない新堂にしては珍しいがせっかくの好意だ、受け取っておこう。それに喉が非道く渇いていて倒れそうだったのも事実なのだから。
「では遠慮なく頂きますね」
一言告げてからアイスを囓ればシャクシャクと心地よい音をたて氷が喉へ滑り落ちていく。
やけに派手な桃色とたっぷりの練乳が入った甘いイチゴミルクのアイスは喉の渇きを随分と癒やしてくれた。
「あ……美味しい……」
思わずそうつぶやけば、新堂はアイスの袋を開けながら笑う。
「ははっ、こんな安いアイスが美味く感じる程度には喉が渇いてたんだろうよ。お前が歩いてるのを見て、すっかり頭が茹だってるように見えたから声かけたんだけど良かったぜ。多分気付かないうちに熱中症になってたんだろうな」
そう言われれば作業をしていた室内は確かに涼しかったが集中しすぎて水分を摂るのは忘れていた気がする。 外があまりに暑いから熱気にやられたのだと思っていたが水分不足で朦朧としていたのだろう。事実としてアイスを食べるうちにみるみる活気が戻ってきて頭も幾分か落ち着いて考えられるようになってきた。
「新堂さんはここで休憩ですか? 新堂さんも通学路はコッチじゃないですよね」
アイスを囓りながら聞けば、新堂はソーダ味のアイスを口にする。
「ボクシング部の練習が終わった後、西澤に呼ばれてサッカー場の方に行ってたんだよ。向こうから帰るならと思ってこっちの道に来たんだが、喉渇いてたからなぁ。久しぶりにこの駄菓子屋に寄ったって訳だ」
背後に見える駄菓子屋は昭和の佇まいをしている。 アイスクリームと書かれた大きめの冷蔵庫にタバコの看板、傍には赤でこそないが小銭やテレフォンカードの使える公衆電話なども置かれており、中は薄暗く狭いがチューブに入ったゼリーやきなこ棒といった懐かしの駄菓子だけではなく指でこすると煙が出るようなオモチャなどもあるようでますます時が止まったような場所に思えた。
鳴神学園は怪異の温床だが、昭和の頃から時が止まったようなこの駄菓子屋もある種の怪異のように見えてくる。
「それに、この店のベンチってなんか涼しいんだよな。いい風が吹き込んできて休むのにちょうどいいんだ」
だが新堂は三年通っているうちに何度もこの駄菓子屋に寄っているのだろう、さして疑う様子もなくアイスを囓りながら笑っていた。
一瞬その涼しさはこの店が怪異だからではと疑ったがどうやらこの場所が高いビルや壁などの合間にあるようで他よりやや強めの風が吹き付けてくるからのようだ。 確かに夏でこの風を受けるのは心地よい。少し風が強いからアイスが早く溶けてしまいそうだが。
「そういえば、新堂さんはソーダ味なんですね」
アイスを食べきって残った棒を弄びながら新堂を見る。新堂もまたあと一口で全て食べ終わりそうだった。
「そうだが何だ? ソーダ味の方が良かったか? いや、他のアイスがバニラ系だったからよぉ、夏は口当たりのいい氷菓の方が美味いと思ってな」
残り一口になったアイスを差し出しながら新堂は笑う。 別に残りが欲しい訳ではなく何とはなしに聞いたつもりだが、そんな風にされると悪戯心が芽生えるというものだ。
荒井は少し距離を詰めると微かに笑い唇を重ねた。心地よいソーダの味が舌の先に触れる。
「おっ、おい。おまっ……何してんだよ……」
新堂は驚き後ろへ飛び退くと辺りを見渡した。誰かに見られたのかどうなのか、それが心配だったのだろう。その慌てた姿がかわいらしいもので、荒井は自然と笑っていた。
「ソーダ味の味見ですよ。いいじゃないですか、せっかく別のアイスを頼んだんですから」
「味見ってなぁ、俺のアイスは残ってるんだぞ。わざわざそんな事しなくてもわかるじゃ無ぇかよ」
「でも、僕の味はわからないでしょう? ……お礼ですから受け取ってください」
涼しい顔の荒井を前に、新堂は頭を掻きながら残りのアイスを食べきる。
そんな彼の横顔を眺める荒井に心地よい風が吹き付けるのを、荒井は目を細めて眺めていた。
出来る事ならずっとこんな夏が続けばいい。
密かにそう思いながら。
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