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インターネット字書きマンの落書き帳

   
女装をさせる意味というもの(しんあら・BL)
普通に付き合っている新堂さんと荒井くんの話をします。(挨拶)

正月三が日くらいBLを書かないでいられないのか?
と我ながら思いますが いられないぞ!

今回は荒井くんに女装をさせて喜ぶ新堂さんの話です。
別に荒井くんの女装を書きたいという訳ではなく「嫌々ながらも女装する荒井くん」を書きたいので、女装要素は弱めですぞい。


『装いを強いるということ』

 自室のドアを背もたれにし新堂誠はスマホで時間を確かめる。
 荒井昭二に「衣装」を渡して着替えるように言いつけてから5分は経つはずだ。いくらか手間取ったにしても着るつもりが少しでもあるのなら着替え終わっている頃だろう。
 新堂はドア二度ほどノックすると返事も確かめないままノブを回した。

「おい、荒井。着替え終わったたか? 入るぞ」

 気持ちばかりに声をかけて部屋へと入れば荒井は冷たい視線を新堂へと注ぐ。
 その表情が屈辱に満ちていたのは荒井が鳴神学園の女子制服を着ている事でも明らかだった。

 新堂が鳴神学園の女子制服などを持っている理由は下らないことで、新堂の名前だけを知っていた母の友人が『鳴神学園を卒業したばかりで制服が残っているから譲ろう』ともってきたのを中を確認しないままもらってきたからだ。
 マコトなんて名前は男にも女にもあるものだから相手は性別も確かめずこちらに押しつけ、こちらもろくに確認せずに受け取ったから下らないミスだろう。
 幸いにほかにもらい手が出たので明日にクリーニングに出し綺麗になったら別の生徒の手に渡る予定にはなっているのだが、その制服がやや背丈のある女性のものだったのか荒井にも着られそうだなんて思ってしまったから新堂も魔が差した。
 両親が不在になるのも渡りに舟といったところで「クリーニングは自分が出す」なんてお使いを受けたような顔をして荒井を呼び出しこの制服を着させてみようと思い立ったのだ。

 とはいえ、正攻法で荒井を説得しても徒労に終わるのは明らかだ。
 荒井は一つを言えば十は言葉を返してくる位に頭が回る。自分がしたくないと思った事に対しては論点をずらして誤魔化してくることは新堂もよく解っているし交渉ではこちらが一歩劣るというのは充分に心得ている。

 だから強硬手段に出た。
 部屋に来るなり制服を押しつけて「着ておけ」とだけ言い部屋に残すことに決めたのだ。

 着てくれと頭を下げれば荒井なら仕方なしといった顔で着てはくれるだろう。
 だがそれは荒井に頼み事をするという事であり、いかにも荒井より下手に出ているようで気に入らない。
 あれこれ理屈をこねて説得するというのは最初にも言った通り、容易じゃ無いのはわかっている。理屈も屁理屈も荒井のほうがよっぽど捏ねるのがうまいのだ。当然、真正面からの説得は無駄だろう。

 それに、そもそも新堂は荒井に女装をしてほしいという訳ではない。
 自分の命令であれば荒井は嫌でも女の格好をし羞恥に満ちた顔でこちらを見るに違いない。荒井がきちんと自分の言葉に従うか試してみたい。
 そんな欲求が募ったからだ。

 理由も言わずただ「そうしろ」と押しつけたのなら荒井はきっと女ものの制服を着て自分の前に立つ恥ずかしさと新堂の希望を叶える喜び、どちらがより強いかを天秤にかけその上で自分のプライドに重きを置くかそれとも新堂の期待にこたえてこちらを喜ばせるかを考えるはずだ。

 もしプライドが勝っていたのなら、荒井はこんなものと一笑し制服を投げ捨て侮蔑の目を向ける事だろう。だが少しでも新堂への献身が勝っていればきっと着ているはずだ。
 そう思って試してみたのだがどうやら目論見通りとなったようだ。やはり荒井は理屈をこねて説得するより押しつけ考えさせるという暗黙の命令を下す方がよほど良い仕事をする。

「こんな格好を僕にさせたかったんですか、あなたは。とんだ変態ですね」

 相変わらず冷たい視線でこちらを見る荒井を横に新堂はベッドへ寝転ぶと「こっちへ来い」とジェスチャーしながら茶化すように笑っていた。

「何だ、似合うじゃねぇか。サイズもまぁ、ちょうどいいんじゃ無ぇか。おまえ女子で通っても大丈夫だろ」
「別に僕は女装をする趣味はありませんから、似合うと言われても嬉しくはありませんよ」

 荒井はそう言うと新堂の膝立ちのまま新堂の腰をまたいでスカートをたくし上げる。 パフスリーブの袖から伸びる荒井の腕は生白く細かったが少女のような華奢ではなく少年から青年へと変わり始めた身体でありそれがやけに艶めかしく見えた。

「それより新堂さん、女装する男の方が興が乗るタイプだったんですか? 貴方にそのような趣味があるとは思っていませんでしたけれども、スカートをはいた僕の方が嬉しいなんて趣味をおもちだとは知りませんでしたよ」

 新堂の前でスカートの裾をひらつかせながら荒井は挑発するように笑う。流石に下着は普段のボクサーパンツのままだったが揺れるたびに白い肌と下着とが見え隠れするのは散々見てきた身体だというのにやけに蠱惑的だ。新堂は荒井の太腿を乱暴に掴むと口角だけを上げ笑ってみせた。

「いや、別に。実の事をいうとな、俺はテメェの格好なんざどうだっていいんだよ。スカートはこうが化粧しようがテメェの好きにしたらいい。ただな……俺の命令でテメェがイヤイヤこの服を着たってんなら悪くねぇ」

 強く太腿を掴めば指がうずまるほど柔らかく暖かい血の躍動を感じる。
 太腿には太い動脈が通っているから心臓に触れているかのように鼓動を感じることがあるが、今の荒井は普段より幾分か鼓動が早いような気がした。恐らくだが冷静を装っているが今の姿に羞恥を感じ、普段しない新堂からのオーダーにこちらの気持ちが推し量れず動揺もしているのだろう。

「なぁ荒井、教えろよ。俺に着ておけと言われただけで着る気になったのか? 女装する趣味もないのに女の服を着たのか? 嫌々で着たのか、それともテメェは女装趣味があって嬉々として着たのか? どうなんだ?」

 荒井の目から凍てつくような冷たい光は消え、狼狽したように視線が泳ぐ。
 新堂がどのような反応をするのかいくつかパターンを考えてはいたがそのどれにも当てはまっていなかったため少しばかりパニックになっているのだろう。理知的な荒井には珍しい事ではあるが服を渡してからさして考える時間を与えずにいたのだから混乱するのも無理はない。

「僕には女装趣味なんてないですよ。それに、こんな顔ですからね。女性のようだと言われ小馬鹿にもされてきましたから、喜んでこんな格好するはずもありません」
「なら嫌々で着たんだな。おい、どうだ? 嫌だってのにこんなカッコさせられた気分、聞かせてくれるよなァ」
「それは……」

 荒井は力なくその場に座り込む。
 新堂の腰に荒井の柔らかな身体が触れ、ベッドの上はスカートが花弁のように広がっていた。

「貴方がそうしろ言ったのなら、僕は逆らいませんよ……僕はてっきり、貴方は女性の姿をしている方が良いものだと思っていましたから。姿形だけを変えた僕の姿を見て喜んで、目先のものごとに囚われる貴方を散々とコケにしてやろうと思っていたんですが……」
「何だ、当てが外れたか?」

 からかうつもりで言ったのだが、荒井は驚くほど素直に頷くと見てわかるほどに顔を赤くする。

「僕が試されているとは思っていませんでしたから……」

 最後は消え入りそうなほどか細い声になっていた。
 女装が目的ではなく手段だったという事など想像もしていなかったのだろう。聡い荒井ならもう少し時間を与えていればその可能性にも気付いていたのかもしれないが、ここは時間配分を見誤らなかった新堂の勝利という事でいいだろう。

「ははッ、てめぇは本当にいーい子だな。ほら、来いよ。ご褒美をくれてやる」

 荒井の腰へと手を伸ばせば自分から抱かれるように胸へと飛び込んでくる。冷やかしのつもりで「似合ってる」などと言ったがやはり荒井は女装などせずそのままの姿でいる方がいい。荒井なら女装をし化粧でもほどこせば美女に変貌できるだろうが、それで荒井の性分が変わるという訳ではない。どんな格好をしていても皮肉屋で他人を見下し全てにおいて斜に構える生意気なままなのだ。
 そんな荒井が嫌々ながら女子の制服などを着て自分の前でスカートを揺らすなどといった行為をする。この生意気で鼻持ちならぬ性格の荒井がしたくもない事を自分のためにするという事のほうがよっぽどそそるというものだ。

 嫌なことでも新堂への愛があるからする。
 新堂から限られたくない、嫌われたくない、そういった怖れから自分に従う。
 荒井の意思は自分のためにあり、自分の自由に出来る。という事実が新堂を喜ばせそしてひどく昂ぶらせた。

「新堂さん、ご褒美をいただけるんですよね」

 目の前には艶めかしく笑う荒井の姿がある。
 この昂ぶりは愛なのだろうか。それとも支配欲が満たされた歓喜からか独占欲が刺激されているだけか、それともただの執着か。全てが曖昧のまま新堂は荒井の頬に触れ少し乱暴に唇を奪う。
 今はどうでもいいし、どうだっていい。
 ただこの熱をもっと悦びに変えていければそれでいいのだ。

 こたえはその先で見つければいいのだから。

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インターネット駄文書き
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