インターネット字書きマンの落書き帳
学食で一緒に飯を食う新堂×荒井のはなし
平和な世界線でいずれ付き合う新堂×荒井の話します。
最初に新堂×荒井をかいたのが去年の8/17だったんで、1年書き続けたことになりますね。
やったねオレくん! 明日もホームランだ!
今回の話は、毎週水曜日に学食に行く新堂と彼を見るために学食に行く荒井。
二人が一緒に飯を食うようになるのを、新堂の友人である西澤が見ているみたいな話です。
新堂←荒井の片思いだけど、新堂も荒井のことまんざらじゃねぇよ……。
みたいな距離感をお楽しみください。
最初に新堂×荒井をかいたのが去年の8/17だったんで、1年書き続けたことになりますね。
やったねオレくん! 明日もホームランだ!
今回の話は、毎週水曜日に学食に行く新堂と彼を見るために学食に行く荒井。
二人が一緒に飯を食うようになるのを、新堂の友人である西澤が見ているみたいな話です。
新堂←荒井の片思いだけど、新堂も荒井のことまんざらじゃねぇよ……。
みたいな距離感をお楽しみください。
『水曜日の荒井くん』
水曜日になると学食に、必ず新堂が現れることを荒井は知っていた。
水曜日の学食ではいつも格安のデザートが週替わりで出ているからだ。
何でも調理場に水曜日だけ来る調理師が元パティシエだったらしく、プリンやらゼリーといった簡単なものながら安くて美味しいデザートをついでに一品と作ってくれているのだそうだ。
大の甘党である新堂は、デザート目当てに水曜日だけ学食を使うという訳である。
新堂の友人であれば、彼が水曜日に学食を使うというのは当然の認識だろう。
そして、新堂と特別親しくしてない荒井でも2年になる今に至るまでずっと彼の事を見ていたのでずっと以前からそれに気付いていた。
荒井が新堂の事を気に掛けるようになったきっかけは、1年の頃にあった部活勧誘の時だ。
当時はボクシング部の一部員だった新堂が新入部員勧誘のチラシをもって「ボクシングに興味がないか、スポーツはいいぞ」なんて歯を見せて笑う姿に、何故か懐かしさを覚えたのが全ての始まりだったろう。
最初は少し気になる程度だと思っていたのだが気に掛けているうちに自然と目で追うようになり、彼の姿を探すようになり、気付いたら好意に近い感情を抱いていたのだ。
とはいえ、思いを告げるつもりはない。
古い気質の新堂が男からの告白を受け入れるとは思えなかったし、他人を好きになるなど自ら弱みを見せるようで荒井のプライドが許さないという気持ちもあったから、このまま彼が卒業するまで遠くで見ているだけのつもりでいた。
そのつもりでいたのだが。
「おう、荒井か。こっち来て一緒に飯食おうぜ」
別のテーブルにいても、遠くでただ見ているだけでも新堂はいつだって目聡く荒井の姿を見つけた。
鳴神学園で囁かれる怖い話を聞かせて欲しい。
日野に語り部を頼まれた集会に新堂も呼ばれており、その時に集まったメンバーでやりとりをするうち色々と話をするような関係になっていたからだ。
新堂は荒井のようなタイプの人間は嫌っているだろうと思っていたのだが、後輩の面倒を見るのが先輩のつとめだと思っている所があるのだろう。本来好きではない相手でも一人でいたら気にして誘うくらいの気遣いはしているのかもしれない。新堂への気持ちを秘め、彼と出会うつもりはなかったのだが顔と名前を知られたのなら話しかけられるのもしかたないだろう。
誘われて断るのも失礼だし、何よりも本音を言うのなら彼と話す時間はその話が例えどんなに下らなくとも楽しいのだからしかたない。
「はい、新堂さん。すいません、メニューを選んだらすぐに行きますので」
「あぁ、わかった。今日は西澤もいるけど、俺の隣開けておくから頼んだらすぐ来いよ」
新堂は軽く手をふると人混みの中へ紛れて消える。その姿を目でおいかけながら、荒井は高鳴る胸へ静かに手をあてる。
一生見つけてもらうつもりなどなかったが、見つけられてしまった日々がこんなにも楽しいとは思っていなかった。
だが、これを幸せだと思ってしまえばきっと、自分はもっと欲しくなる。
「いけませんね、僕としたことが……もう、おさえがきかなくなりそうですよ。新堂さん」
誰に聞かせる訳でもなく呟くと、荒井は学食へと向かう。
昼休みというひととき、他愛もない話を楽しむために。
『水曜日の新堂』
新堂が混み合う学食で席を確保してからフロアをぐるりと見渡せば、一人で学食へ向かう荒井の姿が目に留まる。
荒井は時々袖山と一緒に学食へ来ているが、殆どの場合は一人で食事をしている。学食まで来て一人で食べるのも寂しいだろうし、鳴神学園には不良連中も多い。虫除けじゃないが自分が傍に居れば変な生徒にからまれる事もないだろう。
「おう、荒井か。こっち来て一緒に飯食おうぜ」
手を振りながら荒井へ呼びかければ、彼は上目遣いになり少し考える仕草を見せる。 荒井はたいてい一人だ。友達は多いようだが、一人でいる時間が欲しいタイプなのかもしれない。食事を一人でとりたいという人間もいるし、先輩と連れ立っての食事など味わう余裕もないかもしれない。 大概の場合、荒井は少し笑いながら付き合ってくれるのだが今日はどうだろうか、そんな事が気になってしまう。
以前はただ、一人でいる荒井を構うつもりで呼び止めていただけだが最近は唯一学食を使う水曜日、一緒に食事をするのが楽しみになっていた。
「はい、新堂さん。すいません、メニューを選んだらすぐに行きますので」
荒井は僅かに笑うと顔をあげる。
その笑顔を見るとひどく安心して、新堂も自然と笑顔になっていた。
「あぁ、わかった。今日は西澤もいるけど、俺の隣空けて置くから頼んだらすぐ来いよ」
新堂は手をふると、学食へと並ぶ荒井の姿を見送った。
今日もきっと、楽しい食事になるだろう。
『水曜日の西澤』
普段は母親の作った弁当をもたされる西澤が久しぶりに学食へ行こうとした時、新堂を呼び止めたのは下手に女子と並んで食事をすればいらぬ噂が立ったり、自分の親衛隊を名乗る生徒たちが色めき立ち近づくのを防ぐためという打算も多少あった。
新堂は不良っぽい外見こそしているが西澤にとって話しやすい友人だったしスポーツに関して取り組む姿はおおむね真面目で面倒見も良く、サッカー部の雑務を細々と手伝ってもらっているから日頃から信頼していたし、彼が傍にいると他の女子が怖がって近づかないという効果があるのだ。
だから西澤は学食に行くとき、大概新堂と一緒に行くようにしていた。
「新堂、学食に行くなら一緒に食事をしないか」
「西澤か、いいぜ。俺も今日は一人だったからな」
西澤の周りにあつまる男子は、秀麗で品行方正な彼に少なからず嫉妬の色を見せたり、彼の周りにあつまる女子のおこぼれを貰おうと必死におべっかを使う連中も多い中、新堂はそういった所がなくあくまで一人の友人として向き合ってくれている。
そういったところも西澤にとって話しやすい友人だったと言えただろう。
食事を頼み席を確保すると、新堂は一つとなりの席に荷物を置いてもう一つの座席を確保する。 どうしてそんな事をするのだろうと不思議に思っていたら、フロアを見渡した新堂は数多い生徒たちの中から目聡く一人を見つけると手をふりながら声をかけた。
「おう、荒井か。こっち来て一緒に飯食おうぜ」
彼が声をかけた方を見れば、二年の生徒が伏し目がちに新堂たちの様子を見ている。遠目からして色白で細身の綺麗な顔立ちをしているのがわかった。
そういえば、最近の新堂はよく後輩たちと話をするがとりわけ彼が傍にいる事が多いような気がする。 新堂は荒井と呼んだ後輩と一言、二言話をすると思い出したかのように西澤の方を見た。
「悪い、西澤。荒井が一人で学食にいたからつい誘っちまったけど、別にいいよな。そっちに座らせねぇからよ」
「うん、別にいいよ。新堂の知り合いかい?」
新堂はボクシング部のキャプテンである他、運動部からしばしば救援要請で出向いたりするので顔が広い。特に後輩は、自分が認めた相手には何かと世話を焼くタイプだからこちらが思っている以上に知り合いが多いのだ。
二年だと他にも野球部の栗原や袖山、星野などとも話をしているところを見たことがあるから後輩の世話をすること自体はさして驚きもなかったのだが。
「知り合いっていうか、ダチだよダチ。あいつはどう思ってるか分かんねーけどな」
照れくさそうに笑う新堂の顔がいつもと少し違って見えたから、西澤は何とはなしに彼の気持ちを察する。
「そっか、良かったな新堂」
そして自然と、笑顔になっていた。
きっとまだ当人も気付いてない気持ちを、その隣で眺めながら。
水曜日になると学食に、必ず新堂が現れることを荒井は知っていた。
水曜日の学食ではいつも格安のデザートが週替わりで出ているからだ。
何でも調理場に水曜日だけ来る調理師が元パティシエだったらしく、プリンやらゼリーといった簡単なものながら安くて美味しいデザートをついでに一品と作ってくれているのだそうだ。
大の甘党である新堂は、デザート目当てに水曜日だけ学食を使うという訳である。
新堂の友人であれば、彼が水曜日に学食を使うというのは当然の認識だろう。
そして、新堂と特別親しくしてない荒井でも2年になる今に至るまでずっと彼の事を見ていたのでずっと以前からそれに気付いていた。
荒井が新堂の事を気に掛けるようになったきっかけは、1年の頃にあった部活勧誘の時だ。
当時はボクシング部の一部員だった新堂が新入部員勧誘のチラシをもって「ボクシングに興味がないか、スポーツはいいぞ」なんて歯を見せて笑う姿に、何故か懐かしさを覚えたのが全ての始まりだったろう。
最初は少し気になる程度だと思っていたのだが気に掛けているうちに自然と目で追うようになり、彼の姿を探すようになり、気付いたら好意に近い感情を抱いていたのだ。
とはいえ、思いを告げるつもりはない。
古い気質の新堂が男からの告白を受け入れるとは思えなかったし、他人を好きになるなど自ら弱みを見せるようで荒井のプライドが許さないという気持ちもあったから、このまま彼が卒業するまで遠くで見ているだけのつもりでいた。
そのつもりでいたのだが。
「おう、荒井か。こっち来て一緒に飯食おうぜ」
別のテーブルにいても、遠くでただ見ているだけでも新堂はいつだって目聡く荒井の姿を見つけた。
鳴神学園で囁かれる怖い話を聞かせて欲しい。
日野に語り部を頼まれた集会に新堂も呼ばれており、その時に集まったメンバーでやりとりをするうち色々と話をするような関係になっていたからだ。
新堂は荒井のようなタイプの人間は嫌っているだろうと思っていたのだが、後輩の面倒を見るのが先輩のつとめだと思っている所があるのだろう。本来好きではない相手でも一人でいたら気にして誘うくらいの気遣いはしているのかもしれない。新堂への気持ちを秘め、彼と出会うつもりはなかったのだが顔と名前を知られたのなら話しかけられるのもしかたないだろう。
誘われて断るのも失礼だし、何よりも本音を言うのなら彼と話す時間はその話が例えどんなに下らなくとも楽しいのだからしかたない。
「はい、新堂さん。すいません、メニューを選んだらすぐに行きますので」
「あぁ、わかった。今日は西澤もいるけど、俺の隣開けておくから頼んだらすぐ来いよ」
新堂は軽く手をふると人混みの中へ紛れて消える。その姿を目でおいかけながら、荒井は高鳴る胸へ静かに手をあてる。
一生見つけてもらうつもりなどなかったが、見つけられてしまった日々がこんなにも楽しいとは思っていなかった。
だが、これを幸せだと思ってしまえばきっと、自分はもっと欲しくなる。
「いけませんね、僕としたことが……もう、おさえがきかなくなりそうですよ。新堂さん」
誰に聞かせる訳でもなく呟くと、荒井は学食へと向かう。
昼休みというひととき、他愛もない話を楽しむために。
『水曜日の新堂』
新堂が混み合う学食で席を確保してからフロアをぐるりと見渡せば、一人で学食へ向かう荒井の姿が目に留まる。
荒井は時々袖山と一緒に学食へ来ているが、殆どの場合は一人で食事をしている。学食まで来て一人で食べるのも寂しいだろうし、鳴神学園には不良連中も多い。虫除けじゃないが自分が傍に居れば変な生徒にからまれる事もないだろう。
「おう、荒井か。こっち来て一緒に飯食おうぜ」
手を振りながら荒井へ呼びかければ、彼は上目遣いになり少し考える仕草を見せる。 荒井はたいてい一人だ。友達は多いようだが、一人でいる時間が欲しいタイプなのかもしれない。食事を一人でとりたいという人間もいるし、先輩と連れ立っての食事など味わう余裕もないかもしれない。 大概の場合、荒井は少し笑いながら付き合ってくれるのだが今日はどうだろうか、そんな事が気になってしまう。
以前はただ、一人でいる荒井を構うつもりで呼び止めていただけだが最近は唯一学食を使う水曜日、一緒に食事をするのが楽しみになっていた。
「はい、新堂さん。すいません、メニューを選んだらすぐに行きますので」
荒井は僅かに笑うと顔をあげる。
その笑顔を見るとひどく安心して、新堂も自然と笑顔になっていた。
「あぁ、わかった。今日は西澤もいるけど、俺の隣空けて置くから頼んだらすぐ来いよ」
新堂は手をふると、学食へと並ぶ荒井の姿を見送った。
今日もきっと、楽しい食事になるだろう。
『水曜日の西澤』
普段は母親の作った弁当をもたされる西澤が久しぶりに学食へ行こうとした時、新堂を呼び止めたのは下手に女子と並んで食事をすればいらぬ噂が立ったり、自分の親衛隊を名乗る生徒たちが色めき立ち近づくのを防ぐためという打算も多少あった。
新堂は不良っぽい外見こそしているが西澤にとって話しやすい友人だったしスポーツに関して取り組む姿はおおむね真面目で面倒見も良く、サッカー部の雑務を細々と手伝ってもらっているから日頃から信頼していたし、彼が傍にいると他の女子が怖がって近づかないという効果があるのだ。
だから西澤は学食に行くとき、大概新堂と一緒に行くようにしていた。
「新堂、学食に行くなら一緒に食事をしないか」
「西澤か、いいぜ。俺も今日は一人だったからな」
西澤の周りにあつまる男子は、秀麗で品行方正な彼に少なからず嫉妬の色を見せたり、彼の周りにあつまる女子のおこぼれを貰おうと必死におべっかを使う連中も多い中、新堂はそういった所がなくあくまで一人の友人として向き合ってくれている。
そういったところも西澤にとって話しやすい友人だったと言えただろう。
食事を頼み席を確保すると、新堂は一つとなりの席に荷物を置いてもう一つの座席を確保する。 どうしてそんな事をするのだろうと不思議に思っていたら、フロアを見渡した新堂は数多い生徒たちの中から目聡く一人を見つけると手をふりながら声をかけた。
「おう、荒井か。こっち来て一緒に飯食おうぜ」
彼が声をかけた方を見れば、二年の生徒が伏し目がちに新堂たちの様子を見ている。遠目からして色白で細身の綺麗な顔立ちをしているのがわかった。
そういえば、最近の新堂はよく後輩たちと話をするがとりわけ彼が傍にいる事が多いような気がする。 新堂は荒井と呼んだ後輩と一言、二言話をすると思い出したかのように西澤の方を見た。
「悪い、西澤。荒井が一人で学食にいたからつい誘っちまったけど、別にいいよな。そっちに座らせねぇからよ」
「うん、別にいいよ。新堂の知り合いかい?」
新堂はボクシング部のキャプテンである他、運動部からしばしば救援要請で出向いたりするので顔が広い。特に後輩は、自分が認めた相手には何かと世話を焼くタイプだからこちらが思っている以上に知り合いが多いのだ。
二年だと他にも野球部の栗原や袖山、星野などとも話をしているところを見たことがあるから後輩の世話をすること自体はさして驚きもなかったのだが。
「知り合いっていうか、ダチだよダチ。あいつはどう思ってるか分かんねーけどな」
照れくさそうに笑う新堂の顔がいつもと少し違って見えたから、西澤は何とはなしに彼の気持ちを察する。
「そっか、良かったな新堂」
そして自然と、笑顔になっていた。
きっとまだ当人も気付いてない気持ちを、その隣で眺めながら。
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