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インターネット字書きマンの落書き帳

   
忘れものを取りに行く新堂と泣いてる荒井の話(新堂×荒井)
平和な世界線でいずれ付き合う新堂×荒井の話を……します!
(挨拶を兼ねた幻覚の説明)

部活が終わった後、教室に忘れ物してたのに気付いて取りに行く新堂が途中で泣いてた荒井に気付き、無視するのも悪いし放っておけないしなッ……。
なんて理由で声をかけるような話ですよ。
荒井は新堂に対して片思いをしている状況がとても好きなので、この時の荒井は片思いの新堂に燻る気持ちを抱えてどうしようもねぇ~って気持ちで泣いてるし、新堂は1mmもそれに気付いてません。

新堂×荒井のこと好きかい?
今年からでもいい、初めてみようぜッ……好意をな!



『誰の為に泣くのだろう』

 ボクシング部の練習が終わったあと、教室にスマホを忘れていたことに気付いた新堂は仕方なく教室まで戻る事にした。何かと怪異の多い鳴神学園に日が暮れてから入るのは危険だとわかっていたが、通学で電車に乗る時間が長い新堂にとってスマホという娯楽がないのは耐え難かったからだ。
 それに、1年の頃ならまだしも3年もこの学校に通っていればどうすれば危険で、何をすればそれを避けられるのかも自然とわかってくる。 近づかない方がいい廊下や通り道を避けながら教室へ向かう途中、中庭の花壇がある周辺でぼんやりと浮き出るような白い影を見た時、新堂はぎょっとしながら足を止めた。このルートは怪異の噂もなく安全だと思っていたが、まさか幽霊が出たのではないかと思ったからだ。
 だが目をこらせばそれが幽霊ではなく肉体をもった人間だというのがわかる。それも見知った顔だ。新聞部の日野に頼まれて参加した七不思議の集会で顔をあわせた荒井という男に間違いないだろう。
 同年代の少年として見ても小柄で華奢な上、滅多に外へ出ていないのか肌は驚く程白いのもあって日の落ちた後でも彼の身体はぼんやりと白く浮き出ているような気がした。きっと、肌が白いから校内のライトを反射させているだろう。浮き出るような彼の所作は遠くにいる新堂からもよく見え、彼が花壇で立ち尽くし涙を拭っているのがわかった。
 泣いているのだ、誰にも気付かれないように一人で。
 誰かに虐められでもしたのだろうか。
 集会で話を聞いた限りだと、荒井は友人も多くクラスでは極力目立たぬよう立ち振る舞っている風に思えた。その反面、他人をどこか見下すような態度も透けて見える。とりわけ学校に来て勉強をおろそかにする連中を軽蔑するような言い方をする所があり、そういった所作は俗に不良と呼ばれる連中からウケが悪いのを新堂はよく知っていった。不良と呼ばれる人間が面子を気にし、バカにされたとかプライドを傷つけられたという他人からすれば言いがかりのような理由で起こり出すのを当たり前に見てきているから尚更だ。
 荒井は要領が良いから自ら不良たちに関わるタイプでは無いように思えるが、そんな事お構いなしに絡んでくる奴もいる。そういった面倒な輩に暴力でもふるわれたのだろうか。
 だが、殴られ悔しかったというような様子ではない。遠目から怪我をしている風には見えなかったからだ。
 荒井は頭もいいし容姿はどこか浮世離れした美しさもある。美貌と知性を持ち合わせた人間にやっかむ輩もいるのかもしれない。
 どちらにしても、今の新堂にやれる事はないだろう。荒井の人柄についてよく知らないのもあるし、慰めの声をかけられた方が惨めな気持ちになる事だってあるのだから。
 見なかった事にして別のルートを通ろうと振り返るものの、やはりこの時間で後輩を一人放ってはおけない。ましてや知っている顔ならば知らんぷりは自分らしくない、といった一丁前の義侠心からむき直すと荒井の方へと近づいていった。

「よぉ、荒井だったよな」

 声をかければ、荒井は驚いたように顔をあげる。誰もいないと思って泣いていた所、新堂が現れて驚いたのだろう。濡れた目はすっかり赤くなっている。
 新堂は荒井の頬に手をやると、涙の痕を拭っていた。

「何泣いてんだよ、クラスの不良にでも絡まれたのか?」

 試しに思い当たる事を聞いてみるが、やはり不良に殴られたといった様子はない。見る限り痣も傷もないからだ。 すると荒井は少し困ったような笑みを向けた。

「そんなこと……そんなヘマはしませんよ。これでも立ち振る舞いには気をつけているつもりですから」
「そっか。でも、お前なんか生意気に見えるからなァ。不良じゃなくてもやっかみで嫌がらせする奴がいそうでちょっと心配だぜ」

 話しをしながら新堂は自分のクラスにいる吉田の事を思い出す。勉強一辺倒で塾の数とテストの点数しか誇るものがないような吉田が、勉強も出来て趣味も満喫している荒井のような人間を見たら嫉妬で狂い陰湿な嫌がらせなどしてきそうだと、そんな事を思ったからだ。

「ご心配ありがとうございます。そういうのでは無いですよ……これは、僕の問題で……僕自身が至らない事を、勝手に悔しがっているだけなので」

 荒井は新堂の手に触れ、自分の頬から離す。触れた手は見た目よりずっと冷たく、彼が生きているのか不安になる程だった。

「本当か? もしお前を泣かせるような奴がいたら遠慮なく相談しろよ。俺がぶっ飛ばしてやるから」

 改めて見れば、荒井は同世代の少年と比べて明らかに小柄で華奢だろう。新堂からすれば小さな子供にさえ見える。そんな彼が泣いている姿を見て、自分が守ってやらなければいけないという使命感にも似た感情がわき上がるのは至極当然のことだったろう。
 新堂の言葉を聞き、荒井は少し当惑したような顔を見せた。泣いていたから同情されたとも思ったのか。上級生の自分がしゃしゃり出て困っているのかもしれない。もっと気の利いた言葉をかけてやるべきだったかと今さらのように後悔する新堂を前に、荒井は小さく呟いた。

「……それなら僕は僕自身を殴ってもらうべきなんでしょうか。それとも新堂さんを殴ってもらうべきなんでしょうか」

 独り言のつもりだったのだろうが、周囲が静かだから聞こえてしまった。だが殴るべきは自分(新堂)とはどういう意味だろう。知らない間に荒井を傷つけるようなことをしていたのだろうか。新堂は無粋で無頓着な自覚はあるので、いかにも繊細そうな荒井だ。自分がしらないうちに何かしていたのかもしれない。謝っておいた方がいいのか迷っているうちに、荒井はまた笑顔を向けた。

「僕のことで新堂さんが手を汚す必用はないですよ。邪魔な奴を排除する方法は心得てますから……」
「お、おう。そっか。それなら……いいんだけどよ。本当に大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。ですが、もし……もし少しでも僕を気に掛けてくれるのなら、またこうして話をしてくれませんか。少しでも……気が紛れるので」
「何だ、それくらいなら別にいいぜ。俺は下らない話しか出来ないと思うけどな」

 荒井が笑うのを見て、新堂はどこか安心する。そして、これからはもう少し下らないことでも彼に声をかけてみようと思った。荒井は何となくインテリで気難しそうに思っていたから、集会の後もあまり新堂から話したり、メッセージを送ったりすることはなかったのだ。

「ご心配をかけました。何か用があったんじゃないですか? こんな時間に校舎内にいるなんて……練習はもう終わってますよね」
「あぁ、スマホを教室に忘れたから取りに行く途中だったんだ。悪いな荒井、もう行くぜ」

 新堂は自分が何をしにここまで来たのかようやく思い出したような顔をすると、来た道を一気に走り出す。去り際一度振り返り

「じゃぁな、泣きたい時があったら遠慮なく俺に言えよ。何も出来ねぇけど、話くらい聞いてやるからよ」

 そう言いながら手を振れば、荒井も胸元で小さく手を振り、どこか安心したような笑顔を浮かべるのだった。

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インターネット駄文書き
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