忍者ブログ

インターネット字書きマンの落書き帳

   
愛しているのを一人が占めるということ
平和な世界線で普通に付き合ってる新堂と荒井の話してます。(寒さでイカれちまってる人類の代表としての発言)

平和な世界線で普通に付き合ってる……俺の世界ではそうなんだよ。
キミの世界でもそうなるといいね。

今回は荒井の両親が不在の時に荒井の家へ泊まる新堂の話をしてますよ。
全体的に新堂の家は親が普通の家庭で荒井の家は親があまり干渉してこない家庭として書いてますがこれは俺の趣味です。

そういう趣味はない?
今日からそういう趣味になろうぜ!



『独占あるいはありふれた支配か執着』

 荒井昭二が自室に戻ると新堂誠は電話の最中だった。

「だから前にも言っただろ? 今日は泊まりだって……俺の事信頼して無ェのかよ。荒井の家だよ荒井の家。だから夕食いらないって朝も言っただろ? ……そんな大事な用があるならカレンダーに書いておけ? 見てみろよカレンダー、書いてあるから! 『あらほんとだ』じゃ無ェだろ。わかったなら切るぞ? ……わかってるって、荒井にゃ迷惑かけねぇよ」

 黙っていても聞こえる程大きな声で通話している相手はどうやら母親のようだ。部屋に入った荒井を前にばつの悪そうな表情を見せている。
 新堂は斜に構えた雰囲気の「いかにも不良」といった容姿であり実際の素行も良いとは言えない生徒ではあるのだが両親はいたって普通の家庭であり、家族が不仲だとか家庭環境が不遇といった様子は見られなかった。 少なくとも虐待を受けているとか家庭崩壊しており家に居場所がないといった事はなく特に用事がなければ普通に家へと帰り家族と食卓を囲むのが日常にある。今日のように余所へと泊まるといった時は心配で所在確認の電話がかかってくる程度には愛されているのだろう。

「あぁ? いや、いいから。別に荒井の家に手土産とかもって行くとか逆に迷惑だっての。ちゃんと礼は俺がしておくからお袋は心配すんなって、じゃあな。切るぞ」

 新堂は早口でまくし立てると有無を言わさぬまま電話を切る。その姿を見ながら荒井は空になった新堂のグラスにコーラを注いでやった。

「……今日、僕の家に来ることを家のカレンダーに書いてあるんですか?」

 そしてつい、聞こえた内容を口にする。
 自分の家へ遊びに来るといった日程まで食卓のカレンダーに書き込まれているのは気恥ずかしさもあるがそれ以上に面白く思えた。新堂のように怖れるものなど何もないといった態度を普段示している人間が家族に細々と気遣っているのだと思うと尚更だ。

「聞こえてたのかよ……仕方ねぇだろ、カレンダーに書いておかねぇと忘れるって何でも俺のせいにされんだから面倒なんだよ。書いておいても忘れる癖にな」

 苦虫を噛み潰したような顔になる新堂を前に、荒井は微かに笑って見せる。

「いいじゃないですか、心配されているのならそれだけ愛されているんですよ。親の愛情なんて僕らの年頃では煩わしいものでしょうが与えられているのならそれはきっと幸福なことですからね」

 そんな事を言いながら自分のグラスにコーラを注ぐ荒井を新堂は頬杖をついたまま眺めていた。
 新堂はもう何度も荒井の家へ泊まっているがその間一度だって荒井の両親を見た事はない。それどころか電話やメッセージなどを受けている様子も無かった。
 荒井の室内を見る限り教育にも趣味にも充分なモノを与えられているようには見えるが深く干渉をされているようには見えない。

「何だよ、やけにご高説を垂れるじゃ無ェか。テメェは自由にやっているから少しは干渉されてみたいってのか」
「別にそんな事はありません。一般論って奴ですよ。それに僕は両親から信頼されてますので、無駄な干渉はされませんから」
「信頼されてる、ねぇ……」

 新堂はグラスに手を伸ばしコーラを一息で飲み込む。
 荒井は確かに鳴神学園からすればやや引きこもりがちで滅多に学校へと来ない事を除けばそこまで問題行動を起こす訳ではない「普通の」生徒と言えるだろう。 だが荒井をよく知る新堂からすると荒井はまったく普通などではない、むしろ新堂の知る不良仲間よりもよっぽど激しく恐ろしい男だと思っている。
 そのような人間でも親や教師から信頼されているというのだ。以前先輩から『親や教師が俺たちを信頼するのは成績がいい時だけだ』などと言っていたがまさしくその通りだ。

「信頼されてますよ。僕の言葉なら両親は何だって信じますし、仮に信じなくとも僕なら説得して見せますよ。そのくらいの自信はあります」

 荒井もまたグラスへ手を伸ばすとゆっくりとコーラを煽る。口元から一滴こぼれた液体は顎から首筋を伝い開けたワイシャツの中へと滑り落ちていった。
 荒井は恐ろしい男だ。独占欲も執着心も人一倍強く妙な所で意固地になるから大人しそうな見た目に反して性格も扱いづらい。いや、扱いづらいなんて可愛い言い方ではおさまらないほどの手前勝手なエゴイストだ。
 そんな奴でも服を脱げば驚くほど艶麗な姿となり妖しくこちらを誘ってみる上、人間の快楽を搾り尽くそうとする程に何だって試すし何だってしてみせるのだから人を見かけで判断してはいけない、とはまさにこのことだ。
 少しばかり覚えが悪いので上達が遅いのだがそのせいで試してみる回数も増えるから一層そそられるものがある。
 荒井はこぼれた滴に気づき口元を拭う。その姿を熱っぽく見ている自分に気付き、新堂は頭を掻いた。
 新堂は荒井にひどく好かれ人一倍の嫉妬心に縛られている状態だが新堂だって荒井に惚れ込んでいる。荒井が他の誰かに抱かれるなど想像しただけで狂いそうになる。 独占欲が強く執着心が人一倍つよいのはお互い様なのだ。

「ま、俺はお前の両親がお前に無頓着でいる方がありがてぇけどな。そうだろ? ……おまえが欲しいだけ愛してやる。俺だけがお前を愛してる。それは……悪く無ェからな」

 新堂の言葉に、荒井は微かに笑う。
 それは作り笑いや嘲笑ではない珍しい程の優しい笑顔だ。

「僕は愛を乞うた事などありませんが……貴方が僕に全てを注いでくれるなら、僕もそれは悪くないと。そう、思いますよ」

 そして互いの熱を確かめるようなキスをする。
 自然と身体を抱き寄せ肌を重ねる最中、グラスについた滴がテーブルを濡らしていた。

拍手

PR
  
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 8 9
11 12 14 15 16
19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
プロフィール
HN:
東吾
性別:
男性
職業:
インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
Copyright ©  -- くれちきぶろぐ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]