インターネット字書きマンの落書き帳
新堂に片思いしているけどカズの事忘れられない荒井の話(BL)
死にたがりの荒井という概念が好きです。
死にたがりの荒井を何故か助けてしまう新堂という概念も好きです。
だから、好きな概念と好きな概念を詰め合わせました!
カズに思いを寄せながらも、一緒に行く事ができなかった荒井がそれから高校を卒業し、大学へ通うようになってもずっと死にたいと願い、殺してくれる相手を捜し続けている。
そんな荒井を、腐れ縁という理由だけで助けに来てくれる新堂の話ですよ。
荒井はカズに憧れを抱きながらも、ずっと新堂に恋心を抱いている。
新堂はずっとそれに気付かないまま、彼を助け続ける……そういう、話をします。
死にたがりの荒井を何故か助けてしまう新堂という概念も好きです。
だから、好きな概念と好きな概念を詰め合わせました!
カズに思いを寄せながらも、一緒に行く事ができなかった荒井がそれから高校を卒業し、大学へ通うようになってもずっと死にたいと願い、殺してくれる相手を捜し続けている。
そんな荒井を、腐れ縁という理由だけで助けに来てくれる新堂の話ですよ。
荒井はカズに憧れを抱きながらも、ずっと新堂に恋心を抱いている。
新堂はずっとそれに気付かないまま、彼を助け続ける……そういう、話をします。
『笑う白い声』
西日が入りあかね色に染まる室内で、荒井はぼんやりとベッドに仰向けになっていた。
彼の上には痩躯の青年が馬乗りになって妖しい笑みを浮かべている。
二人ですごすには手狭なワンルームにポツンと置かれた安普請のベッドは、青年が動くたびに激しく軋む音がした。
目に入るのは、シンクに残った食器にインスタント麺やコンビニ弁当の空箱で一杯につまったゴミ袋。籠いっぱいになった洗濯物。テーブルに置かれた薄っぺらい灰皿には煙草の吸い殻がうずたかく積まれている。
そんな中、優しい笑みを浮かべた青年は腕により強い力を込め、荒井の細い首を締め上げた。
「っぁ……ぁ……」
荒井はベッドに爪を立て、苦痛に抗う。
青年は苦しそうに藻掻く荒井の姿こそ求めていたものだと言わんばかりに頬を紅潮させ、どこか陶酔するように荒井の首を絞めていた。
整った顔立ちの青年は、華奢で細身に見える体つきとは裏腹に強い力を込める。色白というより蒼白の肌が、今は赤く染まっていた。肩ほどあるやや長めの髪と、中性的にも見える整った顔立ちは高校一年になったばかりの夏休み、15歳の頃に出会った青年によく似ていた。
「……カズさん」
声にならない声で、青年へと手を伸ばす。
あの夏、ついに届かなかった手が。声が、今なら届くような気がしたからだ。
思えばあの夏、カズと別れた時から荒井の時は全て止まってしまった気がした。
日常に戻り、日々を喧騒の中に身を置いていても常に漠然とした死への願望がつきまとっているのに気付いたのは、夏休みが明けてすぐの事だった。かといって一人で死ぬことは恐ろしく、いつも誰かが自分と死んではくれないかと願うようになっていた。
自分の周囲に才知ある友人を集めるよう執心するようになったのも、その頃だった。
元来人付き合いを好まない性分だった荒井が率先して人を立て社交的に振る舞うようになったのは、いつか一緒に死ぬ相手を求めていたからに相違ない。
共に死ぬのなら、才知がある相手がいい。価値観を共有出来るのなら尚更だ。
死ぬのは一度しか出来ないのだから、親しく接する事ができた友人たちを集めて彼らに気取られず毒を盛り、未来という名の退屈と絶望に気付く前に希望を抱いて死ねたのならそれこそが最高の死になるはずだった。
これから先にあるのは生きるという息苦しい圧迫と、死ねない醜さへの苦悩だという事を荒井はよく分かっていたからだ。
それでも友人たちを殺す事ができなかったのは、荒井自身が思いの外彼らの才能を愛してしまったからだろう。
時田はきっと名のある映画監督になるだろうから、自分が死んだ先でも映画を撮ってほしいと思ったし、曽我は自分の想像できる領域を越えた造形を手がける芸術家になるだろうからまだ死んでほしくないと願った。赤川とは下らない喧嘩ばかりしたが、彼ほどゲームに情熱があれば斬新な概念のゲーム制作をする事も不可能ではないだろう。
袖山は一見何でもない人間だが、荒井にとってとりわけ特別な存在だった。彼は普通に生きて平穏に過ごし、愛する人を見つけ誰かに愛されていてほしい。他人からすれば平凡であり珍しくもない家庭を築く中で、時々学生時代に荒井という友人がいたことを事を思い出してくれるのならそれは幸福な事だろう。そんな風に思わせる人間がいるのだという驚きと喜びを与えてくれたのだから、何としても生きていてほしかったのだ。
彼らを殺してまで得る喜びはないだろう。
そう思ったのは建前で、本心を語るのならもし彼らと心中して自分だけが生き残ってしまう事が恐ろしかったのだ。それいnは、カズ自身が何度も共に死のうと思い、何度も自分だけが生き残るという絶望を味わった事を語り聞いていたのもある。
畢竟、荒井という男は一人残される恐怖に耐えられなかっただけの臆病者なのだった。
臆病のまま生きていき、臆病だから自ずから死ぬ事も出来ず、誰かが殺してくれればいいと望むようになっていた。
その誰かがカズであったらどれだけ幸せだろうと願い、それが永遠に叶わぬという事を思うと自然と涙が出てきた。
だからだろう、高校を卒業し大学に通うようになってからは街でもBARでも、カズの面影がある男を自然と探すようになっていたのは。
背は自分より高く、身体は細く華奢。整った顔立ちで、髪は少し長く、耳にはいくつかピアスを開けている。厭世的で自分にも他人にも情熱がない、冷めた雰囲気をまとい、影を引きずるような男。
そんな男を見かけると、今度こそ自分を殺してくれるのではないかという淡い期待を抱きながら、声をかけてしまうのだ。
『僕の事を、好きにしてみたくありませんか』
それまで出会った男たちは、荒井がそう告げて笑えば、値踏みするような視線を向け、それから嫌な顔一つせずそっと肩を抱き寄せた。
荒井の立ち振る舞いが相手をそそらせるのか、それとも元々誰か殺したいと思っている人間を見抜く力があったのかはわからないが、誰もが皆、嬉々として荒井を部屋に連れては恋人のように愛しながら、奴隷のように粗雑に扱うのだ。
色々な男がいた。
殴る、蹴るという暴行だけを好む相手もいれば、おおよそ快楽とは無縁のセックスを強いる男もいただろう。殆どの男が彼を縛りかごの鳥のように監禁し、しばらく眺めて楽しんだがそれは彼の生まれ持った美貌とどこか背徳的な雰囲気がそうさせてきたのだろう。
最初は蝶よ花よと扱い宝物のように接する相手でも、いずれ暴力が表に出て、荒井を殺すために少しずつ力を込めるようになっていったる。
この青年もそうだ。
最初は部屋に閉じ込めてベッドの上で手足を縛り、首輪をつけた荒井をしばらく愛でていた。従順でいると強引なセックスをし、抵抗すればより興奮したように悦んで見せた。そしてセックスの時、必ず首を絞めるようになり、今日はようやく殺すために首を絞めてくれている。
これでようやく死ねる。ようやくカズと同じ場所に行ける。随分と遅くなってしまったが、恥の多い生涯というには充分だったろう。おまけにカズに似た身体を持つ男に殺されたのなら幸福だ。
頭でそう納得しようと努力するのだが、心と体が激しく反発する。
違うだろう、荒井昭二。お前はもっと臆病だ。理想を抱き理屈を捏ねて自分の死ぬ理由ばかり並べ立てているのは、生きるという未知に対する恐怖心に抗えないからだろう。
いくら飾り立ててもお前は、あの夏から逃げ出したのに何ら変わりがあるものか。
青白く冷たいカズの指先から逃れて平穏な学園生活に戻らずとも、死ぬ方法などいくらでもあっただろう。カズと別たれた後でも、彼を探す方法などいくらでもあっただろう。お前はそれだけの知識を、あの頃すでに持っていたはずだ。
だけど、おまえはそれをしなかった。
カズを探さなかったのは、生きていたいと思ったからだろう。死ぬのが恐ろしいから、追いかける事ができなかったのだ。
生き続けるという未知の恐怖と、死んだ先にある未知の恐怖を天秤にかけ、死を覗く恐怖より僅かに生き続ける好奇心が勝ったにすぎない。
だから今、首を絞められ苦しみあえぐ最中でも、生を渇望している。助けてほしいと渇望している。
「……そんな事は、ない。無い……無いです、未練なんて、カズさん……僕には……」
手を伸ばし空気ばかりを掴む。言葉は声にならず、呻くような音だけが漏れた。
楽になれるはずなのに、どうしてこんなにも心が乱されるのだろう。求めていた死を前にして、どうしてこんなにも怖れているのだろう。意識が途切れる前、手を伸ばし求めたものは。
「……いやだ、新堂さん……」
自分を平穏な世界へと戻した、楔だった。
※※※
カズと出会ったあの夏、青白い手が荒井へと向けられた。
「荒井くん、来るかい?」
カズは言葉少なに語るが、荒井はそれだけで充分すぎるほど彼が求めるものを理解していた。カズが世間でどのように呼ばれているのかも、何故に死に急いでいるという事も全て語った上で 一緒に死ぬに、相応しい人物として求められたのだ。
「荒井くんは、僕と似ているから」
淡く笑うカズの顔は今まで見たどんな人よりも。いや、人だけではない。映画でも絵画でも、あらゆる作品と比べても美しかっただろう。 そして二度とこんな美しい人と出会う事はないだろうとも思った。 ここで幕を閉じるのが最も自分に相応しい死であるとも。
それでも、荒井は手をとることが出来なかったのだ。
「……すいません、カズさん僕は。好きな人が、いるんです」
洗練された芸術のような人生にいることを望ませたのは、恋心という最も陳腐で最も薄っぺらい感情からだった。
端からすれば下らない感情だろうし、今自分で考えても面白みも美しさもない一時の気の迷いだと思う。
だがそれでもあの時は、鳴神学園に戻りもう一度愛した男の姿を見たいと願ったのだ。
決して手に入る事などないとわかっている、新堂の顔を見たいと。
新堂はカズのように美しい訳でもなければ人より優れた容姿をしている訳でもない。普通の家庭に育ち、当然のように両親からの愛情を受けて育った普通の少年だったろう。
もちろん、死に焦がれて生き急いでいる訳でもなければ人生に思い詰めたり大きな挫折を経験して躓いた訳でもない。むしろ大きな失敗をする前にうまく逃げ口上を作る程度には人間くさく、たいした努力もしないくせに尊大で、その癖ひどく臆病な、ありきたりなつまらない人間だったろう。
だがそんな下らなくてちっぽけな人間である新堂を、荒井は好いていた。
きっかけもまた些末なことで、入学式に部の勧誘で悪漢めいた男に絡まれ連れて行かれそうになった時、助けてくれたのがはじまりである。
『おい、気をつけろよ、お前みたいな細っこい奴でもあいつら平気で引きずっていくからな。あ、これ、一応ボクシング部の勧誘チラシな。俺は無理に勧誘しねぇよ、入りました、辞めましたじゃ張り合いもねぇ。興味があるダチがいたら紹介しておいてくれよな』
そう言って歯を見せて笑う彼の姿は初めて見るのに懐かしいように思え、一目見た瞬間に彼とはずっと共にいるのだろうという予感めいた気持ちを抱いていた。
殆ど一目惚れのような状態のまま自然と彼の姿を探すようになり、自分自身の恋心を否定するために彼の事を探るうち、どんどん深みにはまっていったのだ。
彼を見つけたら安心するようになり、彼の事なら何でも知っていたいと思うようになる。そんなにも思いを募らせているというのに、いざ彼の前に立つと思うように言葉は出ず、恥ずかしさが勝り自然と避けるようになる。
初恋の痛みを引きずりながら迎えた夏、カズの言葉に答えられなかったのは、そんなちっぽけな恋心が捨てきれなかったからだ。
そうして戻ってきた日常で、荒井は未だ恋心を捨てられないまま、何も告げる事なく新堂のそばにありつづけた。
鳴神学園で新堂の卒業を見送り、その後も新堂が通っている大学となるべく近い学校へ通い、ずっとそばに居続けていた。それでも二人の間にある距離は、鳴神学園で過ごしていた時と全く変わっていなかっただろう。
近くの大学に通っている先輩と後輩で、メッセージを送れば返事をするのは億劫ではない相手で、たまに顔をあわせたら話をする友人。
その関係から一歩も進めないまま、今日まで過ごしてきた。
そんな自分が嫌で死を求めていたというのに、死を目前にするといつも脳裏にちらつくのは新堂の姿だった。
死にたいくせにいつも間際になると生の象徴である新堂の姿を思い浮かべてしまうなど、何と恥ずかしい人生なのだろうか。恥の多い人生と言うには経験が少ないだろうが、これだけ大きな恥を抱えていれば、きっとカズも笑ってくれるはずだ。
笑いながら。
「本当は僕じゃなくて、新堂くんに笑ってほしかったんだろう」
そういって、荒井のことを軽蔑する目で見るのだろう。それが自分には相応しい死だ。死を渇望し生に焦がれる、愚かで臆病な自分には。
「ダメだよ。もっと沢山の恥を抱えて、もっと生きる事に狂うといい」
気付いた時、荒井の隣にカズが立っていた。あかね色の空を背景に、淡い笑顔を浮かべて。長い時をずっと、そこで待っていたかのように。
「カズさん……僕は、もう。もう……」
生きているのが辛かった。思いを遂げる事も出来ず、自分の事を好きにしてくれると確信できる相手にしか身を委ねる事ができない臆病さが。世界の鱗片に触れただけで、知識とは一生かかっても貪り切れないほど深く多い事に気付き、一画だけを見て全てを知った気になる自分の傲慢が。自分に相応しい人間だけを選んで交友する癖に、他人にとって必用な人間になる事ができない狭量さが。
だから生き急ぎ、死へと邁進しているというのに。
「僕はもう、生きている事が重すぎます……貴方への思いも、新堂さんへの思いも、抱えているだけで歩けないほどなんです」
自然と涙が溢れていた。
恋い焦がれ、愛しいと思っていてもそのどちらも手にする事ができないまま、だが、死であるカズも、生である新堂も、いつもそばに寄り添って笑ってくれているのだ。
どちらも何より優しいから、心は幾度も悲鳴をあげた。
だから今度こそ、カズにつれていってほしい。そう願って顔を上げるも、カズは意地悪く笑うと青白い手を伸ばし、荒井の胸元へと触れた。
「僕だって、何度もそうしてきたんだ。キミもまだ、まだ、何度でも……死に急いで、死ねないで、苦しんでみるといい。僕は、ずっとそれを見ているからね」
優しい声色で囁くと、カズは荒井の身体を突き放す。
その刹那、荒井の身体は遠く深い谷へと落ちていき意識は彼方へと沈むのだった。
※※※
目覚めた時、荒井の身体には点滴の管が繋がっていた。
清潔なシーツとカーテンにシーリングライトが見え、若干アルコール消毒の香りが漂う部屋の雰囲気でここが病院だというのはすぐにわかる。
同時にそれは、死に損なったという報せでもあった。
「よぉ、気付いたか?」
荒井が目覚めているのを確認するかのように、新堂が顔をのぞき込む。
どうして新堂がこんな所にいるのだろう。別に連絡はとってなかったはずだ。そもそも、ずっと監禁されていたんだから連絡を取る術もなかったのに。渦巻く疑問に答えるよう、新堂は大きくため息をついた。
「坂上から連絡があったんだよ。数日、お前と連絡がつかないから探してくれって。まーた変な男に引っかかって殺されそうになってんじゃ無ェかって言われたから探してたら案の定だ。まったく、お前の趣味をとやかく言うつもりは無ェが、どうして毎回殺されそうになってんだろうな」
どうやら、死ぬ前に新堂に助けられたらしい。
実のところを言えば、新堂にこうして助けられるのは一度や二度ではなかった。
初めて他の男と心中しようとした時、相手が怖がり逃げ出して事が露見してから、坂上や日野は荒井の行動を常に気に留めるようになっており荒井と連絡がつかなくなると、すぐさま探すような体制が自然と出来上がっていたのだ。
特に同じ地域に住んでいる新堂は荒井の行動範囲や交友を概ね把握しており、殺されかけていたり死にかけている荒井を一番最初に見つけるのは殆ど彼の仕事になっていた。
「……あの人は、僕を殺せなかったんですね」
仕方ないという気持ちと、臆病者と誹る気持ちが混じった言葉に新堂は頭を抑えながら大きく首を振って見せる。理解しがたい、とでも言いたいのだろう。
「俺が部屋訪ねた時は、部屋の隅っこでガタガタ震えてたぜ。お前が息しなくなってビビっちまったんだろうな。俺を見て、本気で殺すつもりなんてなかったなんて泣いて土下座までしやがって、情けねぇ奴だったぜ」
どうやら、男は最初から荒井を殺すつもりはなかったようだ。あくまでプレイの一環として荒井の首を絞めていたのだろう。だからこそ、新堂が探しに来た時に息を吹き返す事ができたのだろう。
「そうですか……」
荒井は興味なさげに視線を自分の手へ向ける。結局、他人を殺せるような人間は理性も倫理観も飛び越えた普通と違う人間なのだ。そういう人間が、普通の生活で見つかる事など早々ないのだろう。
「日野や坂上に泣きつかれてるし、お前に死なれると俺だって寝覚めが悪ィから助けてやってるけどな、いつまでも俺だってお前のお守りが出来る訳でも無ェんだから、あんまり手を煩わせるんじゃ無ェよ。死にたがるのも自由だが、お前が死ぬと嫌だって人間が結構いるんだからな」
新堂は荒井のスマホを手に取ると、その画面を荒井へ向ける。スマホには坂上や日野、袖山といった見知った名前が荒井を心配し何度もメッセージを送っている痕跡がうかがえた。
「じゃぁな、俺は授業があるから行くけどよ。本当に辛くなったら相談くらいしろよな。いちいち助けに行く身にもなってくれ……次は本当に死んでるんじゃないかって探しに行くのは、結構キツいんだぜ」
新堂は素っ気なく言うと立ち上がり病室を後にしようとする。
「……新堂さん」
それなら、僕の生きる希望になってください。
自分が生きていて、ただ寄り添うだけでも幸せだという事を貴方が教えてください。
貴方のそばに居られるなら、もう少し生きてみようと思えるんです。
もう、僕が男の人を好いているのはとっくに知っているんでしょう。それなら僕を、貴方のそばにおいてください。
巡る言葉を全て飲み込み。
「ありがとうございます……」
その場を取り繕うだけの礼を口にする。新堂は僅かに目を細めると。
「心にも無ェ事言うなよ。バーカ」
呆れと侮蔑の混じった視線で、荒井を強く突き放す。
こんなにも恥を抱えて、まだ恥を増やさなければいけないのか。何も遂げられない思いを抱いたまま、まだ生きなければいけないのか。
白っぽい空間で、荒井は唇を噛みしめる。
『それでいいんだよ、もっと、恥の多い生涯を送るといい』
空虚な部屋に、微かにカズの声が聞こえた気がした。
西日が入りあかね色に染まる室内で、荒井はぼんやりとベッドに仰向けになっていた。
彼の上には痩躯の青年が馬乗りになって妖しい笑みを浮かべている。
二人ですごすには手狭なワンルームにポツンと置かれた安普請のベッドは、青年が動くたびに激しく軋む音がした。
目に入るのは、シンクに残った食器にインスタント麺やコンビニ弁当の空箱で一杯につまったゴミ袋。籠いっぱいになった洗濯物。テーブルに置かれた薄っぺらい灰皿には煙草の吸い殻がうずたかく積まれている。
そんな中、優しい笑みを浮かべた青年は腕により強い力を込め、荒井の細い首を締め上げた。
「っぁ……ぁ……」
荒井はベッドに爪を立て、苦痛に抗う。
青年は苦しそうに藻掻く荒井の姿こそ求めていたものだと言わんばかりに頬を紅潮させ、どこか陶酔するように荒井の首を絞めていた。
整った顔立ちの青年は、華奢で細身に見える体つきとは裏腹に強い力を込める。色白というより蒼白の肌が、今は赤く染まっていた。肩ほどあるやや長めの髪と、中性的にも見える整った顔立ちは高校一年になったばかりの夏休み、15歳の頃に出会った青年によく似ていた。
「……カズさん」
声にならない声で、青年へと手を伸ばす。
あの夏、ついに届かなかった手が。声が、今なら届くような気がしたからだ。
思えばあの夏、カズと別れた時から荒井の時は全て止まってしまった気がした。
日常に戻り、日々を喧騒の中に身を置いていても常に漠然とした死への願望がつきまとっているのに気付いたのは、夏休みが明けてすぐの事だった。かといって一人で死ぬことは恐ろしく、いつも誰かが自分と死んではくれないかと願うようになっていた。
自分の周囲に才知ある友人を集めるよう執心するようになったのも、その頃だった。
元来人付き合いを好まない性分だった荒井が率先して人を立て社交的に振る舞うようになったのは、いつか一緒に死ぬ相手を求めていたからに相違ない。
共に死ぬのなら、才知がある相手がいい。価値観を共有出来るのなら尚更だ。
死ぬのは一度しか出来ないのだから、親しく接する事ができた友人たちを集めて彼らに気取られず毒を盛り、未来という名の退屈と絶望に気付く前に希望を抱いて死ねたのならそれこそが最高の死になるはずだった。
これから先にあるのは生きるという息苦しい圧迫と、死ねない醜さへの苦悩だという事を荒井はよく分かっていたからだ。
それでも友人たちを殺す事ができなかったのは、荒井自身が思いの外彼らの才能を愛してしまったからだろう。
時田はきっと名のある映画監督になるだろうから、自分が死んだ先でも映画を撮ってほしいと思ったし、曽我は自分の想像できる領域を越えた造形を手がける芸術家になるだろうからまだ死んでほしくないと願った。赤川とは下らない喧嘩ばかりしたが、彼ほどゲームに情熱があれば斬新な概念のゲーム制作をする事も不可能ではないだろう。
袖山は一見何でもない人間だが、荒井にとってとりわけ特別な存在だった。彼は普通に生きて平穏に過ごし、愛する人を見つけ誰かに愛されていてほしい。他人からすれば平凡であり珍しくもない家庭を築く中で、時々学生時代に荒井という友人がいたことを事を思い出してくれるのならそれは幸福な事だろう。そんな風に思わせる人間がいるのだという驚きと喜びを与えてくれたのだから、何としても生きていてほしかったのだ。
彼らを殺してまで得る喜びはないだろう。
そう思ったのは建前で、本心を語るのならもし彼らと心中して自分だけが生き残ってしまう事が恐ろしかったのだ。それいnは、カズ自身が何度も共に死のうと思い、何度も自分だけが生き残るという絶望を味わった事を語り聞いていたのもある。
畢竟、荒井という男は一人残される恐怖に耐えられなかっただけの臆病者なのだった。
臆病のまま生きていき、臆病だから自ずから死ぬ事も出来ず、誰かが殺してくれればいいと望むようになっていた。
その誰かがカズであったらどれだけ幸せだろうと願い、それが永遠に叶わぬという事を思うと自然と涙が出てきた。
だからだろう、高校を卒業し大学に通うようになってからは街でもBARでも、カズの面影がある男を自然と探すようになっていたのは。
背は自分より高く、身体は細く華奢。整った顔立ちで、髪は少し長く、耳にはいくつかピアスを開けている。厭世的で自分にも他人にも情熱がない、冷めた雰囲気をまとい、影を引きずるような男。
そんな男を見かけると、今度こそ自分を殺してくれるのではないかという淡い期待を抱きながら、声をかけてしまうのだ。
『僕の事を、好きにしてみたくありませんか』
それまで出会った男たちは、荒井がそう告げて笑えば、値踏みするような視線を向け、それから嫌な顔一つせずそっと肩を抱き寄せた。
荒井の立ち振る舞いが相手をそそらせるのか、それとも元々誰か殺したいと思っている人間を見抜く力があったのかはわからないが、誰もが皆、嬉々として荒井を部屋に連れては恋人のように愛しながら、奴隷のように粗雑に扱うのだ。
色々な男がいた。
殴る、蹴るという暴行だけを好む相手もいれば、おおよそ快楽とは無縁のセックスを強いる男もいただろう。殆どの男が彼を縛りかごの鳥のように監禁し、しばらく眺めて楽しんだがそれは彼の生まれ持った美貌とどこか背徳的な雰囲気がそうさせてきたのだろう。
最初は蝶よ花よと扱い宝物のように接する相手でも、いずれ暴力が表に出て、荒井を殺すために少しずつ力を込めるようになっていったる。
この青年もそうだ。
最初は部屋に閉じ込めてベッドの上で手足を縛り、首輪をつけた荒井をしばらく愛でていた。従順でいると強引なセックスをし、抵抗すればより興奮したように悦んで見せた。そしてセックスの時、必ず首を絞めるようになり、今日はようやく殺すために首を絞めてくれている。
これでようやく死ねる。ようやくカズと同じ場所に行ける。随分と遅くなってしまったが、恥の多い生涯というには充分だったろう。おまけにカズに似た身体を持つ男に殺されたのなら幸福だ。
頭でそう納得しようと努力するのだが、心と体が激しく反発する。
違うだろう、荒井昭二。お前はもっと臆病だ。理想を抱き理屈を捏ねて自分の死ぬ理由ばかり並べ立てているのは、生きるという未知に対する恐怖心に抗えないからだろう。
いくら飾り立ててもお前は、あの夏から逃げ出したのに何ら変わりがあるものか。
青白く冷たいカズの指先から逃れて平穏な学園生活に戻らずとも、死ぬ方法などいくらでもあっただろう。カズと別たれた後でも、彼を探す方法などいくらでもあっただろう。お前はそれだけの知識を、あの頃すでに持っていたはずだ。
だけど、おまえはそれをしなかった。
カズを探さなかったのは、生きていたいと思ったからだろう。死ぬのが恐ろしいから、追いかける事ができなかったのだ。
生き続けるという未知の恐怖と、死んだ先にある未知の恐怖を天秤にかけ、死を覗く恐怖より僅かに生き続ける好奇心が勝ったにすぎない。
だから今、首を絞められ苦しみあえぐ最中でも、生を渇望している。助けてほしいと渇望している。
「……そんな事は、ない。無い……無いです、未練なんて、カズさん……僕には……」
手を伸ばし空気ばかりを掴む。言葉は声にならず、呻くような音だけが漏れた。
楽になれるはずなのに、どうしてこんなにも心が乱されるのだろう。求めていた死を前にして、どうしてこんなにも怖れているのだろう。意識が途切れる前、手を伸ばし求めたものは。
「……いやだ、新堂さん……」
自分を平穏な世界へと戻した、楔だった。
※※※
カズと出会ったあの夏、青白い手が荒井へと向けられた。
「荒井くん、来るかい?」
カズは言葉少なに語るが、荒井はそれだけで充分すぎるほど彼が求めるものを理解していた。カズが世間でどのように呼ばれているのかも、何故に死に急いでいるという事も全て語った上で 一緒に死ぬに、相応しい人物として求められたのだ。
「荒井くんは、僕と似ているから」
淡く笑うカズの顔は今まで見たどんな人よりも。いや、人だけではない。映画でも絵画でも、あらゆる作品と比べても美しかっただろう。 そして二度とこんな美しい人と出会う事はないだろうとも思った。 ここで幕を閉じるのが最も自分に相応しい死であるとも。
それでも、荒井は手をとることが出来なかったのだ。
「……すいません、カズさん僕は。好きな人が、いるんです」
洗練された芸術のような人生にいることを望ませたのは、恋心という最も陳腐で最も薄っぺらい感情からだった。
端からすれば下らない感情だろうし、今自分で考えても面白みも美しさもない一時の気の迷いだと思う。
だがそれでもあの時は、鳴神学園に戻りもう一度愛した男の姿を見たいと願ったのだ。
決して手に入る事などないとわかっている、新堂の顔を見たいと。
新堂はカズのように美しい訳でもなければ人より優れた容姿をしている訳でもない。普通の家庭に育ち、当然のように両親からの愛情を受けて育った普通の少年だったろう。
もちろん、死に焦がれて生き急いでいる訳でもなければ人生に思い詰めたり大きな挫折を経験して躓いた訳でもない。むしろ大きな失敗をする前にうまく逃げ口上を作る程度には人間くさく、たいした努力もしないくせに尊大で、その癖ひどく臆病な、ありきたりなつまらない人間だったろう。
だがそんな下らなくてちっぽけな人間である新堂を、荒井は好いていた。
きっかけもまた些末なことで、入学式に部の勧誘で悪漢めいた男に絡まれ連れて行かれそうになった時、助けてくれたのがはじまりである。
『おい、気をつけろよ、お前みたいな細っこい奴でもあいつら平気で引きずっていくからな。あ、これ、一応ボクシング部の勧誘チラシな。俺は無理に勧誘しねぇよ、入りました、辞めましたじゃ張り合いもねぇ。興味があるダチがいたら紹介しておいてくれよな』
そう言って歯を見せて笑う彼の姿は初めて見るのに懐かしいように思え、一目見た瞬間に彼とはずっと共にいるのだろうという予感めいた気持ちを抱いていた。
殆ど一目惚れのような状態のまま自然と彼の姿を探すようになり、自分自身の恋心を否定するために彼の事を探るうち、どんどん深みにはまっていったのだ。
彼を見つけたら安心するようになり、彼の事なら何でも知っていたいと思うようになる。そんなにも思いを募らせているというのに、いざ彼の前に立つと思うように言葉は出ず、恥ずかしさが勝り自然と避けるようになる。
初恋の痛みを引きずりながら迎えた夏、カズの言葉に答えられなかったのは、そんなちっぽけな恋心が捨てきれなかったからだ。
そうして戻ってきた日常で、荒井は未だ恋心を捨てられないまま、何も告げる事なく新堂のそばにありつづけた。
鳴神学園で新堂の卒業を見送り、その後も新堂が通っている大学となるべく近い学校へ通い、ずっとそばに居続けていた。それでも二人の間にある距離は、鳴神学園で過ごしていた時と全く変わっていなかっただろう。
近くの大学に通っている先輩と後輩で、メッセージを送れば返事をするのは億劫ではない相手で、たまに顔をあわせたら話をする友人。
その関係から一歩も進めないまま、今日まで過ごしてきた。
そんな自分が嫌で死を求めていたというのに、死を目前にするといつも脳裏にちらつくのは新堂の姿だった。
死にたいくせにいつも間際になると生の象徴である新堂の姿を思い浮かべてしまうなど、何と恥ずかしい人生なのだろうか。恥の多い人生と言うには経験が少ないだろうが、これだけ大きな恥を抱えていれば、きっとカズも笑ってくれるはずだ。
笑いながら。
「本当は僕じゃなくて、新堂くんに笑ってほしかったんだろう」
そういって、荒井のことを軽蔑する目で見るのだろう。それが自分には相応しい死だ。死を渇望し生に焦がれる、愚かで臆病な自分には。
「ダメだよ。もっと沢山の恥を抱えて、もっと生きる事に狂うといい」
気付いた時、荒井の隣にカズが立っていた。あかね色の空を背景に、淡い笑顔を浮かべて。長い時をずっと、そこで待っていたかのように。
「カズさん……僕は、もう。もう……」
生きているのが辛かった。思いを遂げる事も出来ず、自分の事を好きにしてくれると確信できる相手にしか身を委ねる事ができない臆病さが。世界の鱗片に触れただけで、知識とは一生かかっても貪り切れないほど深く多い事に気付き、一画だけを見て全てを知った気になる自分の傲慢が。自分に相応しい人間だけを選んで交友する癖に、他人にとって必用な人間になる事ができない狭量さが。
だから生き急ぎ、死へと邁進しているというのに。
「僕はもう、生きている事が重すぎます……貴方への思いも、新堂さんへの思いも、抱えているだけで歩けないほどなんです」
自然と涙が溢れていた。
恋い焦がれ、愛しいと思っていてもそのどちらも手にする事ができないまま、だが、死であるカズも、生である新堂も、いつもそばに寄り添って笑ってくれているのだ。
どちらも何より優しいから、心は幾度も悲鳴をあげた。
だから今度こそ、カズにつれていってほしい。そう願って顔を上げるも、カズは意地悪く笑うと青白い手を伸ばし、荒井の胸元へと触れた。
「僕だって、何度もそうしてきたんだ。キミもまだ、まだ、何度でも……死に急いで、死ねないで、苦しんでみるといい。僕は、ずっとそれを見ているからね」
優しい声色で囁くと、カズは荒井の身体を突き放す。
その刹那、荒井の身体は遠く深い谷へと落ちていき意識は彼方へと沈むのだった。
※※※
目覚めた時、荒井の身体には点滴の管が繋がっていた。
清潔なシーツとカーテンにシーリングライトが見え、若干アルコール消毒の香りが漂う部屋の雰囲気でここが病院だというのはすぐにわかる。
同時にそれは、死に損なったという報せでもあった。
「よぉ、気付いたか?」
荒井が目覚めているのを確認するかのように、新堂が顔をのぞき込む。
どうして新堂がこんな所にいるのだろう。別に連絡はとってなかったはずだ。そもそも、ずっと監禁されていたんだから連絡を取る術もなかったのに。渦巻く疑問に答えるよう、新堂は大きくため息をついた。
「坂上から連絡があったんだよ。数日、お前と連絡がつかないから探してくれって。まーた変な男に引っかかって殺されそうになってんじゃ無ェかって言われたから探してたら案の定だ。まったく、お前の趣味をとやかく言うつもりは無ェが、どうして毎回殺されそうになってんだろうな」
どうやら、死ぬ前に新堂に助けられたらしい。
実のところを言えば、新堂にこうして助けられるのは一度や二度ではなかった。
初めて他の男と心中しようとした時、相手が怖がり逃げ出して事が露見してから、坂上や日野は荒井の行動を常に気に留めるようになっており荒井と連絡がつかなくなると、すぐさま探すような体制が自然と出来上がっていたのだ。
特に同じ地域に住んでいる新堂は荒井の行動範囲や交友を概ね把握しており、殺されかけていたり死にかけている荒井を一番最初に見つけるのは殆ど彼の仕事になっていた。
「……あの人は、僕を殺せなかったんですね」
仕方ないという気持ちと、臆病者と誹る気持ちが混じった言葉に新堂は頭を抑えながら大きく首を振って見せる。理解しがたい、とでも言いたいのだろう。
「俺が部屋訪ねた時は、部屋の隅っこでガタガタ震えてたぜ。お前が息しなくなってビビっちまったんだろうな。俺を見て、本気で殺すつもりなんてなかったなんて泣いて土下座までしやがって、情けねぇ奴だったぜ」
どうやら、男は最初から荒井を殺すつもりはなかったようだ。あくまでプレイの一環として荒井の首を絞めていたのだろう。だからこそ、新堂が探しに来た時に息を吹き返す事ができたのだろう。
「そうですか……」
荒井は興味なさげに視線を自分の手へ向ける。結局、他人を殺せるような人間は理性も倫理観も飛び越えた普通と違う人間なのだ。そういう人間が、普通の生活で見つかる事など早々ないのだろう。
「日野や坂上に泣きつかれてるし、お前に死なれると俺だって寝覚めが悪ィから助けてやってるけどな、いつまでも俺だってお前のお守りが出来る訳でも無ェんだから、あんまり手を煩わせるんじゃ無ェよ。死にたがるのも自由だが、お前が死ぬと嫌だって人間が結構いるんだからな」
新堂は荒井のスマホを手に取ると、その画面を荒井へ向ける。スマホには坂上や日野、袖山といった見知った名前が荒井を心配し何度もメッセージを送っている痕跡がうかがえた。
「じゃぁな、俺は授業があるから行くけどよ。本当に辛くなったら相談くらいしろよな。いちいち助けに行く身にもなってくれ……次は本当に死んでるんじゃないかって探しに行くのは、結構キツいんだぜ」
新堂は素っ気なく言うと立ち上がり病室を後にしようとする。
「……新堂さん」
それなら、僕の生きる希望になってください。
自分が生きていて、ただ寄り添うだけでも幸せだという事を貴方が教えてください。
貴方のそばに居られるなら、もう少し生きてみようと思えるんです。
もう、僕が男の人を好いているのはとっくに知っているんでしょう。それなら僕を、貴方のそばにおいてください。
巡る言葉を全て飲み込み。
「ありがとうございます……」
その場を取り繕うだけの礼を口にする。新堂は僅かに目を細めると。
「心にも無ェ事言うなよ。バーカ」
呆れと侮蔑の混じった視線で、荒井を強く突き放す。
こんなにも恥を抱えて、まだ恥を増やさなければいけないのか。何も遂げられない思いを抱いたまま、まだ生きなければいけないのか。
白っぽい空間で、荒井は唇を噛みしめる。
『それでいいんだよ、もっと、恥の多い生涯を送るといい』
空虚な部屋に、微かにカズの声が聞こえた気がした。
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