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インターネット字書きマンの落書き帳

   
殺人中毒の男たち(しんあら・BL)
一度人を殺してから殺人が癖になってしまった新堂さんと新堂さんに殺されたい荒井くんという概念の話をしますね!

推しCPは人を軽率に殺したりバラバラにしたりするのが似合う!
特に似合わなくても共通の秘密という甘美な響きに抗えない!

そう思いませんか?
思わない? 今日から思ってみようぜ!

そんな訳で衝動的に人を殺してしまう新堂さんと何処からか現れて後始末をする新堂さんに殺されたい荒井くんです。
どうぞ。




『いずれ殺す命のにおい』

 新堂誠は顔についた返り血を拭いながら肩で呼吸を整えていた。目の前にはすでに物言わなくなった死体が無造作に転がっていたのだが、それを前にしても彼の胸に湧き上がる感情は殺してしまったという罪悪感や良心の呵責といった心は一切無かった。
 代わりに湧き上がるのはいくら殴ってもなかなか死なないという相手のしぶとさや返り血のぬぬるさ、汚れた服と部屋との掃除が大変そうだとい苛立ちと殺されるのだと気付いてから急に逃げ回って命乞いをする相手の卑屈さばかりだ。

 まったく、殺されたくないのであれば最初からこちらを敬い常に従順に生きていればよかったのだ。刃向かって粋がって向かってきた癖にいざ自分が殺される事に気付いてからようやく助けを求めるなど甘えるのが遅すぎる。 きっと平和に飼い慣らされ死など非日常のことであり自分とは無縁な世界だろうと思い込んでいたに違いないのだ。その危機管理能力の欠如が死を招く結果になったのだろう。これが平和ボケという奴か、あるいは野生の本能が鈍り本当に危険な相手を見極める力が衰えてしまったのだろう。人間のもつ野生などとうに消え果てているのだから。

 それにしても思ったより手こずってしまった。返り血を浴びすっかり濡れたシャツが肌に張り付いたせいで身体が急速に冷えていく。血しぶきを浴びていた時は生ぬるい血は心地よいくらいだったが時間が経って冷えた血は生臭く冷たく粘るばかりでただただ不愉快であった。
 かといってわざわざシャワーを浴びるのもこれから死体を解体(バラ)す作業があるのだと思うとひどく億劫だ。どうせその時また血まみれになるのだ、今シャワーを浴びても外へ出て死体を捨てにいくためまたシャワーを浴びなければいけない。死体を埋めて戻ったらもう一度シャワーを浴びるとなるとますます面倒だ。
 それに血濡れた服の処分も考えなければいけない。そのまま捨てれば不審に思われるのだが血の染みというのはとかく落ちにくいのだ。さてどうするかと椅子に座ると新堂はポケットにねじ込んだ煙草を取り出す。以前はボクシングのため不良と呼ばれようがチンピラと呼ばれようが酒と煙草には手を出さなかったのだが最初の殺しをしてからはどちらも楽しむようになっていた。
 特に人を殺した後にある鉛のような疲労感を煙に乗せて吐き出すのは狂おしいほどに心地よかったのだ。
 その快楽に目覚めてしまったからか、それとも新堂という人間が元々そういう性分だったからか、今の彼はもはやその一服を楽しむために殺しているようなところさえあった。

 それでも殺しはやはり面倒ごとが多い。人間の死体を一つ無かった事にするのはそれだけ大変なことだし部屋や凶器といったものの後始末にも一苦労だ。さて何から始めたものかと考えながら煙草をくわえる新堂の前にライターを灯した白い手が伸びる。見ればそこにはレインコートを着込んだ荒井昭二が立っていた。

「相変わらず無計画で衝動的な殺人ばかりしますね、あなたは」

 煙草に火を灯してから荒井は抑揚のない声で言う。いつの間に来ていたのだろうとは思うが荒井は家の鍵を預けているのだからいつ来たって不思議ではない。だがそれにしてもこのタイミングで現れたのは決して偶然ではないだろう。
 新堂なら今日殺すだろうと予測していて準備をして来たのだろうか。それとも何処かで盗聴でもしているのだろうか。新堂は煙を身体の中に満たすと一息でそれを吐き出した。
 別にどちらにしたっていいしどちらでもかまわない。荒井は新堂の理解者であり共犯者なのだから。新堂の殺した人間を片付けるのは大概荒井も手伝っていたし逆に荒井が殺したいといった相手がいる時は新堂も協力していた。 今も荒井を呼んで片付けさせるか迷っていたところなのだから呼ぶ前に来てくれたのは幸いだったろう。

「悪かったな」

 新堂は口先だけでそう言い紫煙をくゆらす。悪いとは思っていなかったし殺しは衝動に身を任せ暴力に訴えかける方が何より心地よく楽しいと思っていたから気のない返事になったのだが荒井はそんな新堂の内心を見透かしたように小さなため息をついていた。

「こんなに心のこもってない謝罪もそうそうありませんよ……まぁいいです。シャワーを浴びて着替えてきてください。あぁ、着替えは外に行ける格好にしてくださいよ。この死体を捨てに行くんですから」

 薄手のゴム手袋をつけながら荒井は新堂を見ずに言う。だが新堂は暫くその場から動かずに荒井の背中を見つめていた。

「……早くシャワーを浴びてきてくださいよ。そんなに返り血を浴びたら気持ち悪いでしょう?」
「そうなんだけどよ、タバコに火ぃつけちまったんだ。一本吸い終わるまでお前のことみてるとするわ。別にいいだろ? ……死体バラしてる時のおまえ、綺麗だぜ」
「何いってるんですか……ま、好きにしてくださいよ」

 荒井は呆れたような素振りこそ見せるが新堂に褒められるのは満更でもないといった様子で持参した鞄から見るからに物騒な無数の道具を取り出すと表情を変える事もなく目の前の死体を切り刻み始めた。
 死体とはいえ血抜きをしている訳ではないから切れば血は出るし臓腑もこぼれる。それだというのに荒井は微かに笑いながら黙々と死体を刻む姿は壊す事そのものが楽しいといった様子であった。あるいは人間の中身を見るのが好きなのだろうか。知識欲が旺盛な荒井にとって人間の中身に触れるのは良い刺激になるのだろう。
 その点は人間が泣き叫び怖れ怯えて卑屈になっていく姿を見るのが好きだった新堂とは対照的と言えただろう。新堂は死体にさして興味はなくただ邪魔な肉袋程度にしか思っていなかったからだ。
 荒井の手は血に塗れレインコートには返り血で滴る荒井の白い肌はもともと美しい彼の横顔をいっそう輝かせて見える。白雪姫の物語で姫の頬や唇はよく血のように赤く美しいと表現されていたが今の荒井もさながらそのような姿なのだろう。最も彼の頬は本当に血で濡れているのだが。

 煙草の灰が落ちフィルター近くまで焼けそうになるのに気づき自分が思った以上に長く荒井の姿を眺めていたのに気付いた。一人だった時は冷たいシャツの感触にうんざりしていたというのに荒井がそばにいると気にならなくなるのだから新堂は自分が思っている以上に荒井のことを気に入っているのだろう。
 残り僅かな煙草を灰皿に押し当てもみ消すと髪をかき上げる。渇き始めた血が凝固しやけに指へ絡まった。

「じゃ、シャワー浴びて着替えてくるわ。外に行ける格好でいいのか」
「はい。僕もバラし終わったらすぐ出かける準備をしますよ」
「いや、おまえもシャワー浴びてから出ろよ。レインコートを着てりゃぁそりゃ身体は汚れねぇけど、ほら……」

 新堂は手を伸ばし荒井の頬に触れる。頬についた返り血を拭うためだったのだがまだ乾ききってない指先でぬぐったせいで蒼白の肌に赤黒い血がかえって多くついただろう。荒井は新堂の方へ顔を向けるとレインコートの袖で血を拭うがそれはますます顔に広がりまるでひどい擦り傷が出来たようにも見えた。
 その顔を見て新堂は自分の感情がざわざわと揺れるのに気付く。
 この綺麗な顔に醜い傷痕をつける事が出来たらどれほど楽しいだろうか。荒井は顔だけでなく身体も白く絹のような肌をしているから全身を青く腫れ上がらせればどれだけ気分が高揚するだろうか。痛め付けて屈服させれば泣き喚き命乞いの一つでもするのだろうか。普段から冷静でどこか他人を見下すような態度をするこの男が泣き叫び本気の命乞いをする姿はきっとさぞ滑稽だろうがまるで自分の死を全て受け入れるかのように壊れる身体をじっと観察してくれても構わない。

 壊してしまいたい、できるだけ非道い暴力でありとあらゆる痛みや苦しみを注げればどれだけ楽しいだろう。そんな風に気持ちが昂ぶってしまうのは今しがた人を殺した熱がまだ抜けきってないからだろうか。

「いま、僕のこと殺したいと思いました?」

 新堂の心など全て解っているというように荒井は微笑むとゴム手袋を外し乾きはじめた頬の血を削る。粉々になった薄い膜がぽろぽろとこぼれあたりを舞った。

「あぁ、その細ェ首を締め上げて苦しがるおまえの顔が見てぇ。白い肌を刃物でズタズタにしてやりてぇし、腕も足も骨が粉々になるまで叩き潰してやりてぇ……その綺麗な顔が苦痛で歪んでうめき声を上げてくれるのか? それとも素知らぬ顔をして壊れる自分をじぃっと観察してンのか? ……心配すんな、俺はテメェの綺麗な顔が汚く歪むのが見てぇしクソみてぇな性格がどれだけ変わるのか知りてぇから頭は最後まで壊さないでおいてやるよ」

 思っていないなんて嘘をついても荒井ならこちらの思いなど見透かしていることだろう。それに自分が殺人に囚われた人間だというのを荒井はすでに知っているのだから隠し立てする必用もない。素直に気持ちを吐き出せば、荒井もまた蕩けるような瞳で新堂を捉えた。

「嬉しいですよ新堂さん。だけどもう少し僕のことを丁重に殺せるようにしてくださいね。衝動的に暴力的に殺されるのも悪くないのですが……僕は貴方の内に秘めた暴力と発想がもっと高みに至った時に殺されたい。貴方になら殺されていいし、貴方に殺されたいんです」

 荒井の求める理想がどこにあるのか解らなかったが今はまだその時ではないのはわかる。そして荒井が心の底から自分に殺されたいと願っているのもだ。 だからこそ荒井は新堂の殺しに協力するのだろうし自分自身が理想の死をより強くイメージするため誰かを殺しているのだから。

 新堂が荒井を殺したいという気持ちは限りなく純粋で激しいものだろう。同時に荒井が新堂に殺されたいと願う気持ちも一途で純粋な思いといえる。
 これはただの執着なのだろうか。それとも愛と呼んでいい感情なのだろうか。

「……心配すんな、テメェは必ず俺が殺してやる」

 新堂は笑顔を見せ自然と唇を重ねる。
 この感情が愛といえるのかは解らない。だがこの獲物は誰にも渡したくない気持ちは今まで抱いたどんな感情よりも強く激しいのは確かだ。
 だから気持ちを示すため、そして荒井が自分の獲物であるというマーキングの意味もこめて唇を重ねれば荒井もまた拒む事なく唇を受け入れる。

 獲物でもあり共犯者でもある愛しい命の唇からは濃い血のにおいがした。

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インターネット駄文書き
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紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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