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インターネット字書きマンの落書き帳

   
合コン帰りのシンドーさん(しんあら・BL)
平和な世界線で普通に付き合っている新堂さんと荒井くんの話です。(挨拶を兼ねた幻覚)

今回の話は付き合ってるけど周囲には言っていないので新堂さんも荒井くんもフリーだと思われているから、新堂さんが合コンに誘われてしまう話です。
とはいえ新堂さんはそこそこのアホなので合コンを合コンだと気付いてもいないしモテているのも全く気付いたりしません。
本命がいる時は無頓着になる新堂さんという概念、きっと健康にいいと思います。
本命がいない時も無頓着というか「ハッキリ言わないと全然気付かない」ってタイプな気はしますけどね。

合コンの話をしているといったが、実際は「合コン終わったあとの話」をしています。
かわいい俺のすることだから許してやってください。




『開口一番』

「悪ぃな荒井、今すぐヤらせてくれ」

 夜中にたたき起こされたと思ったら新堂は荒井の肩を乱暴に掴むと開口一番そう言った。
 今日は友人たちとカラオケだと聞いていたから来ないものだと思ってすっかり寝入っていたというのに夜中にスマホが鳴ったかと思うとすぐにウチに来るというから相変わらず身勝手なものだ。 しかもこちらの返答も待たず服を脱がそうとボタンに指をかけるのだからたまったものじゃない。
 荒井の家は両親が不在の事が多いのだがちゃんと家にいる時もある。放任している割には荒井に対して厳しい要求をしてくる両親が新堂の姿を見たら『あんな輩と連むなんてなにごとだ』と激昂するのは間違いない。見られたら確実に面倒なことになるのだからあまり身勝手な振る舞いは困るのだが。

「まってください新堂さん……どうしてそうなったんです? 今日は友人と遊ぶって話じゃありませんでしたか……」
「あぁ、そうだったんだけどな。一時間くらい前に解散になったからすぐバイクふかしてここまで来たんだよ」

 そう言いながら新堂は荒井の身体を抱き寄せる。ベッドから出たばかりの荒井には新堂の身体はまだ冷たく思えた。

「でも、どうして急に僕のところへ来たんですか……解散した後うちに来るつもりでしたら事前に言っておいてくれれば準備もしてましたし、寝ないで待っていたんですけど」

 荒井はそう言いながらこれではまるで抱かれるのを期待していたようだと思い少し恥ずかしくなる。 だが鈍感な新堂はそんなことに気付く様子もないまま歯を見せて笑っていた。

「いや、俺も今日はカラオケ終わったらすぐ家に帰ってとっとと寝ちまうつもりだったんだけどなァ。カラオケの後、仲間たちと盛り上がっているうちにこう……ま、その気になっちまったって訳だ」

 カラオケでどうしてその気になるというのだろうか。 荒井は新堂の交友関係をほとんど全て網羅しているのだが今日遊んでいた相手は新堂と同じタイプのコワモテで大柄な、良く言えば硬派な。悪く言えばモテそうにもないむさ苦しい男たちだったはずだ。基本的に自分の事をノーマルだと思っている新堂が仲間内を相手に妙な空気になるはずがないのだが。

「どうしてその気になってるんです……見知った仲間なんでしょう?」
「そうだったんだけどな。何か行ってみたら他校の女子生徒とかがいたんだよなァ」

 不思議に思い何かあったのか聞いてみれば新堂は首を傾げながらそう答えた。
 行った先に女子がいたのならそれはいわゆる「合コン」という奴だったのではないだろうか。新堂が合コンというのを聞いていなかったか相手が説明していなかったか……急遽人数が足りなく呼び出されたのかもしれない。

「俺たちが4人で向こうも同じ人数でよ、皆でパーティゲームとかしてやけに密着してくる女が多くてよォ。また女の身体って柔らかくていいニオイするんだよなぁ」

 合コンだったのではないか、と思ったがこれは「かもしれない」ではない。間違いなく合コンだ。 新堂の友人は比較的に硬派……というよりも顔や雰囲気が恐ろしげないかつい男が多いのですっかり油断していたがどうやら合コンを開けるくらいの人脈がある者もいたようだ。
 自分がいるのに何で合コンなどと思うが新堂は表向きフリーなのだから誘われるのは不思議ではない。合コンだという話なら断るか、行っても黙っているのだろうがこの様子なら合コンに行っていたという自覚は全くないのだろう。

「ちょっと……何デレデレしてるんですか? それって合コンですよ。僕がいるのに合コンなんて行ってきたんですか?」

 だがそれでも苛立つものは苛立つし許せないものは許せない。思わず新堂の耳を思いっきり引っ張ると荒井は冷たい目で新堂を見た。
 たとえ合コンである事を知らなかったとしても女子がやけに多いのならば察する事も出来ただろう。都合が悪いと席を立っても文句は言われないはずだ。それに本来なら自分と過ごす時間を反故にして他の誰かとに行っていたのは腹が立つ。

「いや、合コンって……ん? あぁいうの合コンなのか? 一緒に飯くってカラオケしてゲームしただけだぜ……」

 だが肝心の新堂に合コンの意識が全くなかった。やはりというからしいというか、色恋沙汰に関してはひどく無頓着な新堂だから全く気付かず普通にカラオケをして帰ってきたのだろう。これは責めるのは筋違いだろうし、まったく状況を理解してない新堂を叱ったって馬鹿らしい。
 荒井は耳から手を離すと長いため息をついていた。

「それで……どうしてここに?」
「だから、お前を抱かせて欲しいからだっての。な? いいだろ?」
「何でそうなったのかを聞いてるんですよ……何かあったんですか」

 力なく問えば、新堂は宙を見て少し考えてからこたえた。

「いや、何もねぇよ。ただ、やけにベタベタする女がいてよォ。すげぇ可愛いとか美人って訳じゃねぇんだけど、やっぱ近くに来て優しくしてもらえるって嬉しいだろ。胸もけっこうデカかったし」
「胸が大きい方が好きなんですか?」
「別にこだわりがあるって訳じゃねぇよ、胸のでけぇ女がいい奴って訳じゃねぇもんな。でもよ、デカイ胸って珍しいだろ? だからつい見ちまうんだよな。ま、その女がよ。やけにベタついてくる上終わったら『終電がないから帰れない』とか抜かすんだわ」

 それは、完全に新堂へアプローチをかけているのではないか。新堂は鈍感だからハッキリ言わないと絶対に伝わらないし自信家のくせに恋愛方面にはとんと初心な反応をするから自分から何か言うような事もない。仮に言えたとしてもタイミングがおかしい時の方が多いのだから無言のアプローチなどのれんに腕押し、糠に釘って奴だ。
 荒井が新堂と付き合うようになってからそれほど長い時間が経っている訳ではないが空気の読めない発言やこちらが想定しない反応を見せて思わぬ方向へ話が転がってしまいという事をすでに何度も経験していた。

「それは、新堂さんに好意を抱いていたんだと思いますが……まぁいいです。それでどうしたんですか?」
「おう、タクシーにぶち込んでちゃんと家に帰れよって送り出してやったぜ。太っ腹だろ」

 新堂は得意げにそういう。やはり相手のアプローチだった事など一切気付いていなかったようだ。荒井はひとまず安心した。
 だがこれからは新堂の交友をもうすこししっかり管理しておこう。新堂は粗暴で短気なので女性からは怖れられるばかりで自分でもあまりモテないと思っているのだがそういった所に男らしさを感じる相手だって少なからずいるのだ。
 それにとにかく身体がいい。ある程度の経験をもつ相手なら本命でなくとも一度くらい試してみたいと感じるコトだってあるだろう。
 もしそんな風に新堂をつまみ食い感覚で手を出す輩がいたのなら荒井は自分の感情を抑える自信はなかったので、迷わずタクシーに乗せ帰らせた新堂の選択は正しかったと言えよう。もしここで間違ってたら相手は消えていたのだろうから。

「それはそれは、良い事をしましたね。相手もきっと紳士的な人物だととても喜んでいたと思いますよ」

 荒井は力ない笑顔で褒める。こう言っておけば今後も新堂は似たような事を言う相手をタクシーにぶち込んで帰すことだろう。いつまでも効果があるとは思わないが、新堂の興味が自分以外のところに向かないように。また新堂に興味をもつ人間のアプローチが無駄になるための布石を打っておくのは大事だ。

「だろ? まぁ……散々そんな事されてたからなぁ。向こうが身体ひっつけて来るとやっぱあったけぇとは思うし、柔らかいとも思うからよ……そうなるとどうしてもお前の身体思い出しちまってな……」

 そこで新堂は荒井の身体を抱きしめ肩へ顔を押しつける。

「……お前の身体、抱きてぇなと思っちまったんだよな。あぁ……この匂い、やっぱ落ち着くぜ。今日いた女もみんないーい匂いがしたけどよ、俺にはお前の匂いが一番落ち着くんだわ」

 空気が読めない鈍感のくせに、空気を読まない時は自然とそんな事が言えるのだから聞いている方はたまったものではない。 普段は鈍感で無神経で、特別顔がいいという訳でもない新堂がさらりと愛を伝えるのはいつも荒井を動揺させた。

「何いってるんですか……まったく、もう……」

 嬉しいような気恥ずかしいような気持ちを内に秘め、荒井は新堂の身体を抱きしめ返す。

「そんな事言われたら、断れないじゃないですか……わかりました。抱いてもいいですから……まず、シャワーを浴びてください。外から戻ったばかりなんですよね?」
「えぇ、いいだろ……こっちは急いで来てやったんだぜ」
「他人のニオイがする貴方の身体なんてゴメンなんですよ、こっちは……いいでしょう? 僕も一緒に浴びますから」

 荒井は新堂の頬に触れ妖しく笑うと少し背伸びをして唇を重ねる。色々と言いたい事はあるが今は真っ直ぐ自分を求めてくれたことを喜んでもいいだろう。
 触れた唇は少し冷たかったが、慣れ親しんだ新堂のにおいがしたのが嬉しかった。

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東吾
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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
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