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インターネット字書きマンの落書き帳

   
薔薇を送る新堂パイセンと送られる荒井くん(新堂×荒井)
付き合う前の新堂×荒井の話を書きたいお年頃の紳士なので……書きますッ!

今回のシチュエーションはですね。
新堂のこと以前から何とはなしに気になっている荒井が、新堂から不意に花束を渡されて「!?」ってなるような……話ですよ。

荒井は新堂に片思いしているけど、新堂も荒井のこと憎からず思っている。
そんな両片思いの話です。
風間もついてます。いや、おまけ玩具じゃないよ!?

DKなんだから甘酸っぱい感じをこう……たまには出したいですよねッ。



『赤い薔薇の花束をおまえに』


「荒井、これオマエにやるよ」

 新堂誠はそう言うと薔薇の花束を荒井昭二へと差し出した。
 花束といってもせいぜい5,6本の小さな包みだが新堂のような強面の男が差し出すのはひどく不釣り合いに見える。

「どうしたんですか、この花。どうして僕に?」

 荒井は困惑しながらも花束を凝視する。すると新堂は苦笑いをしながら話し始めた。

「いや、別にたいした理由じゃ無ェんだよ。お袋が薔薇をもらってきたってゴキゲンで俺に押しつけてな。好きな子にもプレゼントしてやれ、なんて言うんだが……」

 好きな子と言われ、荒井は驚いたように顔を上げる。
 荒井はずっと前から新堂のことを好いていた。今でもそれが淡い憧れなのか、それとも恋慕の情に近いものなのかは分からなかったが傍にいて心地よく思えるという今の状態はそれほど苦にならなかったから誰にも言わず、そっと秘めて置く事にしたまま今に至っている。
 だから新堂は自分の思いなど気付いてないはずだ。
 しかも薔薇の花束なんて洒落たものをプレゼントされるような関係でもない。
 荒井の表情に気付いたのか、新堂は慌てて言葉をつづけた。

「おい誤解すんなよ。俺は好きな女もいねぇし、出会いなんてのも特にねぇからな。薔薇なんてもらって喜ぶ奴なんざいないんだよ。でも、オマエは違うよな荒井」

 新堂だって福沢には随分と慕われている。彼女にプレゼントすればきっと喜ぶだろうが、気付いてないのだろうか。
 それに、荒井だって恋人はいないし気になる相手は新堂くらいなものだ。自分が薔薇を受け取ってもどうしたらいいかわからない、という点では新堂と同じである。
 言葉の意味を図りかねて首を傾げると、新堂は少しあきれ顔を見せた。

「何だよ、いるんだろ恋人。たしか、姫乃とか言ったっけ? オマエのクラスにいる中村とかいうやつが言ってたぜ、あんまり上手くいってねぇんだろ。だから、花でもプレゼントして機嫌をとったらどうだ?」

 どうやらクラスメイトの中村があること無い事新堂に吹き込んだらしい。
 新堂は単純だ。他人を信じやすいような所もあるから騙されやすい。中村の言ってる事も全て真に受けてしまったのだろう。
 姫乃は確かに荒井の事を好いているが別に恋人関係ではないのだから、それは訂正しなければならない。

「僕は中村くんと友達ではありませんよ。あの人は勝手に友達ぶって色々言ってますが、殆どが嘘ですから」

 正確に言うのなら、中村は思い込みの激しいだけの人物だ。自分の妄想を真実だと信じ込んでいるのだから当人は嘘をついている自覚はないだろう。
 だが、現実と異なる話を吹聴するのなら嘘つきといってもいいだろう。まさか上級生である新堂にまでしたり顔で話しかけ、あたかも荒井の友人が如く振る舞っているとは思わなかったが。

「うぇ、マジかよ。それじゃ、オマエもいらねぇか、薔薇なんて……」

 新堂はどこか困ったような顔をする。
 よほど薔薇の処分に困っているのだろう。新堂は自分の容姿が強面で気障な行動は似合わないと思っているから、誰かに薔薇を差し出して渡すなどという行為をあまりしたく無いはずだ。

「ですが、もしいただけるのでしたら僕が受け取ってもいいでしょうか。姫乃くんとは別に恋仲ではありませんが、薔薇ならきっと喜ぶと思うので」
「本当か、助かるぜ荒井。それじゃ、ほら……受け取ってくれよな」

 新堂は嬉しそうに笑うと再び荒井へと薔薇を差し出す。
 これは別に自分のために渡されたものではない。ただ厄介な荷物を受け渡すだけのもので、特別な意味などない。

「ありがとう……ございます、新堂さん」

 だがそれでも、新堂から渡される花束は荒井にとって特別で何よりも嬉しかった。


 ***


「新堂、キミに薔薇を育てているような知り合いがいるなんて初耳だよ」

 階段から降りてきた新堂を、風間がそう呼び止める。 新堂はそんな風間を見てばつの悪そうな表情を向けていた。

「何だ風間、テメェいつからそこにいたんだ」
「いつからでもいいだろう? それより薔薇なんて洒落たものが手に入ったのなら何でボクに声をかけてくれないのさ。ボクからプレゼントを求めているオニャノコなんて100人も1000人もいるんだからボクに預けた方が効果的だろう?」

 さも当然といった様子で手を広げる風間を前に、新堂は吐き捨てる。

「どうしてテメェなんざに花なんか渡さねぇといけねぇんだよ、テメェは俺から何か貰おうと思うまえにこの前貸した500円をサッサと返せってんだ」
「おぉ、こわ。でもボクにくれる方が普通だと思うけどねぇ。だいたい、荒井くんは一学年下じゃないか。わざわざ彼を呼び出してまで手渡す必用は無いだろう。ボクなら、同じ教室棟にいるんだし」
「うるせぇな、テメェにはやりたく無ェんだよ」
「荒井くんにはくれてもいい、ってのかい? ……花束をもらった彼は嬉しそうだったし、荒井くんは可愛いしねぇ」

 ニヤニヤと笑いながら風間は新堂へと迫る。
 すると新堂は耐えかねたかのように風間の尻を軽く蹴飛ばした。

「うるせぇ……それ以上何も言うんじゃ無ェ。いいか、この事を他の誰かに言ったら暫く口聞けない身体にしてやるからな」

 そうして足早に立ち去る新堂の背中を眺め、風間は微かに笑っていた。

「まったく、素直じゃないよねぇ。気になっているならそれくらい伝えてもいいじゃないか、荒井くんは可愛いからそう思うくらいは自然な事だと思うし、荒井くんだってキミならまんざらでもないと思うけどなぁ」

 そして、そんな事を呟くのだった。

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