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インターネット字書きマンの落書き帳

   
【駒鳥の神田が本命新堂でセフレ日野だった時の話(BL)】
「誰が駒鳥を殺したの」シナリオ。
このシナリオは神田拓郎を巡るドロドロの人間関係が売りだと思うんですけど(?)もし神田の本命が新堂だった時「最高にどうしようもねぇな!」ということに気付いたので、そういう話を書きました。

状況が複雑だから書きだしておくよ!

・神田は新堂が本命(新堂←神田)
・新堂は別に神田のこと特別視してない
・日野の本命は神田(神田×日野)
・肉体的には神田×日野

はいOK、前提終了!
それでは今日も楽しく二次創作をしていきましょう。


『駒鳥のすべて』

 最低な話をしようか。
 そう、最低の話だ。いまさら善人ぶるつもりもないし、傍目からすれば優柔不断で煮え切らないハンパな奴だろうと思うから俺に相応しいだろう。
 自分でさえそう思うんだ、人づてに話を聞いた君はもっとそう思っているんだろうな。
 それについて特に弁解するつもりはないよ。
 おおむねその通りだと思っているし、君が聞いた話も変えようのない事実だ。
 俺は言い寄ってきた女の子に二股かけた上、頭をぐしゃぐしゃに潰して死んだ愚か者。
 それ以上の事も以下の事も、何もありはしないんだ。だからもう、放っておいてくれないか。
 ……そう言ったって、それで納得するのなら俺の話なんぞ聞きにわざわざ来ないよな。
 いいよ、聞かせてあげよう。
 君が人づてに聞いた話に、俺個人の主観というどうしようもない自己弁護を含めた駒鳥の話をね。

 とはいえ、何から話したらいいんだろうな。
 そうだな……ひとまず、俺と新堂の話をしよう。
 新堂は俺のクラスメイトで、君はたぶん「俺を虐めていた新堂」として認識しているんじゃぁないかな。
 実際その通り、傍目からしたら俺は新堂に随分とイジられていたと思うよ。
 あいつはふざけて手をあげる素振りを見せることもあれば軽い気持ちで小突いたり、頭を叩いたりすることも日常茶飯事だ。冗談だといって他人を後ろから押してみたり、軽い悪戯だろうなんて顔で足をひっかけて笑っていたりする上、そういう行動を本気で冗談と思っているタイプだから悪気や悪意は一切ないんだよ。
 そのくせ、あとから「イジメてただろう」と詰め寄られたらたじろぎながら「イジメじゃない、遊びだ、挨拶だ」なんて言い訳するあたり案外小心者だし、気にする性分なんだろうな。もしくは、後から周囲に「あの態度はない」と散々なじられてようやく自分の行いに気付く浅慮な人間なのか。
 だからこそ新堂とも言えるんだろうが、俺はあれであいつの事、結構常識があるんだなって思っているよ。
 イジメは悪い事だってのを知ってるけど当人にその意識がないから後で言及されたとき、ちゃんと反省して後悔できるんだからそれって随分マトモだぜ。後からでも言われてちゃんと自覚出来るんだからな。
 知ってるか? イジメをする奴って大概は本気で自分が悪いとか、イジメていたなんて微塵も思っちゃいないんだ。周囲に言われても「あいつが嫌だって言わなかったからイジメじゃない」なんて本気で思っているんだよ。スタート地点で認識がずれてるんだから、それと比べたら俺は新堂のこと、かなり真面目な奴だって思うぜ。
 うん……? あぁ、金のことか。
 確かに新堂には金を渡していたよ。 1000円くらいの時もあれば、1万円くらい預けた事もある。トータルで10万近くはくれていたんじゃないかな。
 宿題を見せろってのは日常だったし、時計や万年筆を渡した事もある。
「何だよ神田、いいモノもってるじゃないか」
 なんて言いながら近づいてくるからな。
「欲しいならやるよ」
 って言うと目をキラキラさせてもっていくんだ。
 そのくせ、使うのは2,3日くらいですぐに飽きてどこかにやっちまうんだけどな。
 でもあれは、別に恐喝されてたとか脅されていたから渡してたって訳じゃないんだぜ。新堂も一度だって自分から「くれよ」と言った事はないからな。
 俺は新堂が「いいな」って言う時、本当に目がキラキラして珍しいものを見るような屈託ない顔をするもんだから、その顔が好きでくれてたんだ。
 俺がくれた時計や万年筆を、たかが2,3日でも新堂が使ってくれるのも嬉しかったしな。
 もうわかるだろ?  俺は新堂のこと、好きだったんだよ。
 きっかけは些細な事さ。
 俺は1年の頃部活の勧誘に無理矢理空手部に引っ張られそうになって真っ青になっていた時、漬けてくれたのが新堂だったんだ。新堂にとっては弱い者イジメしている先輩が見過ごせなかっただけで、俺を助けたなんて微塵も思ってないだろう。空手部に引っ張られた同級生を助けるため、上級生に逆らったなんてのも覚えてるかどうかわからないさ。
 でもあの時から新堂誠はずっと、俺にとってのヒーローなんだよ。
 その思いを三年も抱えているうちに、これがただの憧れなのかそれとも恋慕の情なのか自分でさえわからなくなってたんだよな。
 今でも自分の好意が友情なのか愛情なのか、俺にもわかってないくらいさ。
 ただ、新堂になら抱いて欲しいと思っていたのは間違いないな。
 何でそう思うのか、その話をするまえに俺と日野の関係を正しく伝えておく必用があるから、今度はそっちの話をしよう。

 日野は俺の事、何か言ってたか。
 親友? そうか、でもキミだって不思議に思うだろう。たかが親友のため命を張れるもんなのか、命を賭けてもいいくらいの相手が、ただの親友止まりだったのか、なんてさ。
 少なからずキミだって気付いてたんじゃないのか。
 日野は俺にとってただの親友って存在じゃない。
 少なくても日野は俺の事をそうは見てなかったと思うよ、あいつは俺の事好きだったからな。
 あぁ、そうだ、日野は俺の事を愛してくれていた。
 告白もされたし、セックスもしてたよ。
 そういう意味では岩下や福沢よりずっと深い付き合いだったと言ってもいいだろうな。
 何でそんな風になったのか、きっかけを考えればほとんど気が動転してた、と言うしかないよ。俺は日野の家によく遊びに行ってたし、日野も俺の家にはよく遊びに来ていた。お互いの家を行き来するくらいの友達で、テスト前には一緒に勉強もしてたんだ。日野は頭がいいし教え方も上手かったから、何をしたって平均以上の結果は出せない俺にとって有り難い家庭教師だったしな。そういう事もあって、日野の家に泊まりで出かけたりすることも珍しくなかったんだ。
 初めてあいつとセックスしたのは二年の冬、日野の誕生日前後だったかな。日野の家に両親がいないから朝までダラダラ過ごすぞ、って泊まりに行った時、流れでそうなったんだよ。
 いや、流れというよりももっと計画的だったんだろうな。
 風呂に入って着替えた後、日野にベッドへ押さえつけられて急に日野から懇願されたんだ。
「おまえの事好きだ、このままだと友達でいるのが辛い。抱いてくれ、絶対に良くしてやるから」
 なんて、言われてさ。
 俺はその頃友達っていえば日野くらいなもんだったし、もし断ったら日野はもう俺の友達でいてくれないんじゃないか、だとしたらあの広い鳴神学園で俺は1年一人ぼっちになるんじゃないかと思うともうそれが怖くてね。
 わかるだろ、あの鳴神学園で心を許せる相手がいなくなるなんて、灯台が消えた暗がりで立ち往生する小舟みたいなもんさ。
 一人になりたくない、だけどこんな所で童貞捨てるなんていいのか、いや、それくらいで日野が俺から離れないでいてくれるなら安いモノだ。日野ほど頼れる人間を失いたくはないだろうなんて、そんな打算がぐるぐる頭のなか回って断れないような気持ちになってたんだよな。
 それに、最初にも言ったけど、俺は新堂の事好きでさ。必死に俺へすがる日野の気持ちもわかったから、無碍に断る事なんて出来なかったんだよね。
 もし、俺の気持ちが愛情だったとしたら。男の日野を抱けるんだったら、俺の新堂への思いがもっとハッキリするんじゃないかとか。そんな事も考えたりしてさ。
 日野のことは友達だと思っていて恋人のように振る舞えるかなんてわかってなかったけどさ
「勃つかわからないけど、試してみるか」
 なんて、つい言っちゃったんだよ。
 絆されたといえば聞こえがいいが、要するにずっと俺は日野の好意を利用してたって訳だ。
 日野は、けっこう頑張ってくれてさ。まぁ、上手いんだろうな。努力家だし頭もいいし練習してたんだと思う。 ただの友達だと思ってたけど、必死になりながら顔を真っ赤にして頑張ってくれている日野を見てると俺も思った以上に興奮していて、ダメだったら口と手だけでって話だけどそのまま最後までしちゃったんだよ。
 最中も気持ち良いさと背徳感が合わさって、流され飲まれていった。勢いだけで流されたとか雰囲気に飲まれたなんて言い訳するのも、キミが同じ立場だったらわかると思うぜ。最もキミは俺よりもずっと理性的で自分を押しとどめる事ができたかもしれないけどさ。
 うん、つまるところ俺は我慢がきかなかったってだけなんだよ。それにあれこれ言い訳している、卑怯な奴なんだ。
 だから終わった後にあったのは、心地よさよりひどい後悔だったよ。
 俺にとって、抱いた後でも日野ってやっぱり親友でそれ以上の感情にはなれなかったんだから。
 日野を抱いた後で、俺は自分が新堂に抱いている思いが日野に対して抱いているものとは全然違うんだって改めて実感したし、日野の身体を抱いてみて俺もあんな風に新堂に抱いてもらえたらどんなにいいだろうなんて、そんな風に考えていた有様だ。
 どうだい、ひどい話だろう。
 せっかく俺のために健気に頑張って尽くしてくれて、命まで賭けてくれる日野のまえで、俺ずっと新堂のこと考えてたんだぜ。
 日野はそれに気付いてたのかどうか本人の口から一度だってその話はでなかったけど、あいつ 頭がいいし、俺のこと本当に好きだったみたいだからさ、たぶん気付いてたんじゃないかな。
 俺があいつ抱いてる時ちょっと上の空になってたことも、俺が新堂のこと目で追いかけてる事もさ。

 それで、4月になったら新堂と同じクラスになった。
 偶然だけど、嬉しかったな。チャンスが巡ってきたとは思わなかったけど、廊下の彼方から見ているのがやっとの距離から同じ教室で授業を受ける立場になれたんだから。
 俺はダラダラと日野の身体を抱きながら、新堂にイジメられてる風を装ってあいつに小遣いを渡したりプレゼントを渡したりで、何とか気を引けないか打算を抱いていたんだ。
 滅茶苦茶だろ? わかってるよ、俺だって毎日、何やってるんだろうって自分でも思ってたくらいだからね。
 いっそ日野に新堂のこと好きだって打ち明けて俺の事諦めてもらったほうがいいのか、身体の関係はもう止めておこうとか、逆に日野のこと本気で好きになるよう努力しようかとか色々考えたけど、何もかも決断できないまま時間だけが過ぎていった。
 とどのつまり、俺は臆病だったんだよな。
 日野は俺の事を好きな自分の気持ちを認めて受け入れる事ができたから俺に告白したんだろう? だけど俺はそれが出来なかった。俺は俺自身が新堂のこと好きだって認めることが出来なかったんだよ。
 仮に認めることが出来たとしても、新堂に告白してオッケーしてくれるとも思えなかったしな。
 キミだって思わないだろ? 新堂はそういう所少し固い性格だし。それに、新堂にとって俺はまだ金やモノをくれるクラスメイトくらいの認識でまともな会話すらしたことない状態だったんだ。
 何ともならないけど何とかしたい。 何かがかわるきっかけが欲しい。
 漠然とそう考えているうちに、岩下に告白されたんだよ。

 これがきっかけで、日野との関係を変える事ができるんじゃないか。
 彼女がいるから、身体だけの関係は断ち切れるんじゃないだろうか。
 そのほうが日野にとってもいいだろうし、日野だって俺に彼女が出来たんなら諦めてくれるだろう。
 そう思った俺は、彼女の告白に二つ返事でOKしていたよ。
 キミも知っての通り、岩下は鳴神学園でもトップクラスの美女だ。彼女に告白されて断る男なんていないと言われていたし、彼女ほどの相手と付き合っているのなら日野の誘いを断る理由には充分になると思ったんだ。
 最も俺の場合、岩下と付き合っている間も日野の身体には世話になってたから何も変える事なんてできなかった訳だけどね。
 ……何で日野を切れなかったのかって?
 あいつとはやっぱり親友だし、彼女がいても気にしない、もともと俺の恋人として堂々と過ごすつもりはないって日野が縋ったから、断り切れなかったんだよ。あいつ、最初から俺の日陰にいるつもりだったんだよな。
 日野なんて名字なのに、日向に行こうとしないなんてあいつらしいよホント。

 それで岩下さんと付き合うようになったんだが、彼女は知っての通り、束縛がひどいんだ。
 何処にいる、何をしている、今はどうしている、そういう追求もすごかったし、休み時間に誰と会っていたとか休日には何をしているとか微細にチェックしてるんだよ。
 それでも男子生徒に対してはけっこうガードが甘かったし、特に日野と合うのは納得してくれていたからそのへんは彼女も油断していたのか、日野は岩下にかなり信頼されていたんだろうな。
 あるいは、日野のこと知った上で彼女は俺に付き合ってくれていたのかもしれない……なんて、さすがにそれはないか、彼女は本当に独占欲が強かったから。
 うん、でも俺は彼女の束縛をそこまで辛いとは思わなかったかな。
 毎日どこにいると聞かれるのも、常に傍にいられるのもそれほど嫌じゃなかったし、何より日野との距離が以前より遠くなって考える余裕が出来ていたからね。
 彼女と付き合ううちに、俺はこれからどうするのかじっくり考えるようになったんだよ。岩下の束縛は俺にとって許容範囲だったからこのまま彼女と付き合うのも悪くない。日野は日陰にいるつもりだと言っていたけど、段々距離も離れていくだろう。
 俺も気持ちに折り合いがついたら新堂の事を諦めて、このままずっと岩下と付き合えれば案外丸く収まるんじゃないかなんて甘い考えを抱いていた矢先のことだ。
「神田くん、あなた、新堂くんに嫌がらせをされているの?」
 岩下に言われた時、冷や水をぶっかけられたような気持ちになっていたよ。
 彼女は新堂が俺から小遣いを巻き上げている所を見ていたみたいだし、他の奴らからも「新堂は神田を恐喝しているチンピラだ」って認識で話を広げていたのをは俺も知っていたから、当然彼女もそう思ったんだろうな。実際、新堂は俺を恐喝して金をせびっている不良と何らかわらない態度だったし、あの状況でたとえ俺が「新堂に恐喝されてなんかいない、進んで小遣いを渡しているだけなんだ」なんて言っても、誰だって新堂にそう言わされてると思ったろうさ。
「そんなことはない、新堂は別に何もしてないから、どうかあいつにだけは手を出さないでくれないか」
 新堂の話をされて慌てた俺の口からとっさに出た言葉がそれだったんだけど、正直かなりマズイ言葉を口走ったと思ったよね。そんなの、どう考えても不良からの報復を怖れているいじめられっ子の言葉じゃないか。
 当然、岩下はかえって新堂のイジメを確信したみたいだよ。
 だから、俺は本当に怖かった。彼女だったら
「貴方にとって邪魔な人間は必用ないでしょう」
 なんて涼しい顔をして新堂を殺してしまうんじゃないかと、本気で思ったからね。
 ほら、岩下はお金持ちのご令嬢でたとえ殺人を犯しても死体を無かった事にするのは難しい事じゃない、なんて噂も流れていたし。
 えっ? 実際に岩下が金持ちの令嬢かどうかって?
 それは俺も知らないんだ、一緒に過ごしている時の彼女は派手な服装なんてしてこなかったし、持っているものも品がいいけど素朴なものが多かった。俺は彼女の家に行った事もなかったからね。
 日野にあんな事してたクセに、彼女とは手をつなぐだけでキスもセックスもしたことなかったんだよ。健全なもんだろ。

 岩下に新堂が殺されてしまうかもしれない。
 そう思うようになったら気が気じゃなくて、毎日不安でいっぱいになっていたよ。
 俺の立場でどうしたら新堂が守れるんだろうか、俺は新堂にをしてやれるんだ、必死になって考えた。
 それほど親しい訳じゃないから「岩下に狙われている、逃げろ」なんていったって新堂は信じてくれないだろう。むしろ新堂は岩下と親しく話していて、付き合いの長さだったら彼氏の俺よりもっと長かったんだ。ほら、新堂はボクシング部のキャプテンで岩下は演劇部の部長だろう。お互い部長同士、相談したり困った事を話したり、そういうこと気軽に話せる関係だったからさ。
 かといって、俺から新堂に「もう何もあげない」なんて言ったら、今まで無理矢理金やものをせびられていた風に見えてしまうだろう。岩下の性格だと、過去にしてきた償いをさせないと許さない、なんて新堂に危害を与える事も充分すぎるくらい考えられた。
 どうしたらいいんだ、どうしてこうなったんだ。
 悩みあぐねている時、俺に声をかけてきたのが福沢だったんだ。
「前から憧れてました、付き合ってください」
 なんて、目を輝かせながら立った時、俺はこれが新堂を守れるチャンスかもしれないと内心悦んでいたよ。
 彼女はいかにも気まぐれで、俺の事なんて好きなんじゃないって事は最初からわかっていた。
俺よりも、学園一の美女と付き合っている幸運な男という俺の肩書きに興味があったんじゃないかな。
 もし俺が岩下から彼女を乗り換えたとしたら、美女の認める男の恋心を奪った魅力的な女性として認められるんじゃないか。そうなったらきっと面白いんじゃないか。彼女からはそんな好奇心しか感じなかったから、利用するのに躊躇なんてなかったよ。
 その時の俺は、岩下の目から新堂を逸らすのにもう必死だったからね。
 新堂が俺をイジメているかどうかより、俺が他の女にうつつを抜かしている方が岩下にとって重大で、そうなれば岩下は絶対に俺を許さない。その構図を描くには彼女を使うのが一番楽だなんて、安易に思ってしまってね。俺は彼女の誘惑に乗ったふりをして、岩下の目から隠れるよう黙って二人であったり、わざと彼女の痕跡を鞄の中に忍ばせたりしたんだよ。
 当然、岩下はすぐに気付いたよ。
 俺が二股かけてる、裏切ってる、許さない、二度と顔を見せるな、おまえを殺してやる。散々な言われようだったけど、殺意が新堂じゃなく俺に向かってくれたのは計算通りだ。
 彼女の凍てつく視線も殺意も、殺意を抱きながらも俺に執着する態度もそりゃぁもう恐ろしいものだったが、こんな状態でも日野は俺の味方でさ。岩下の凶行が俺に及ばないよう色々と尽力してくれて、何とか無事に過ごせていたよ。
 日野は岩下とも知り合いだったから、俺への殺意を上手い事逸らしてくれていたらしい。
 まったく、本当に日野には世話になりっぱなしだよな。俺が死んでからもあいつ、俺のために色々と尽くしてくれていたんだろう。
 本当に、どうしてあいつの事好きになれなかったんだろうなぁ……。

 あぁ、俺が岩下に嫌われ捨てられたのを知ってから、すぐに福沢は俺から離れていったよ。
 元々俺みたいな地味な男好みじゃなかったんだろう。
 ひょっとしたら岩下が何かしらの報復を彼女にしたのかもしれないけど、それは彼女の自業自得だろ? なんて考えるのは俺が冷たい奴だからだろうな。自分だって彼女を利用したくせにひどいものだと思うけど、俺ももう考える余裕なんて殆どなくなっていたから、むしろ彼女がこれ以上俺のいざこざに巻き込まれずに済んで良かった、くらいに思っていたよ。 

 こんな性格だ。
 線路を枕にして寝ていたところ電車で頭をグチャグチャに潰され死んだのも、なるほど当然の死に様だって思えたりはしないかな。

 死ぬ前の俺に何があったのか。
 どうして俺が死んだのか、誰が俺を殺したのか、キミはそれが気になるのか。
 だけど俺はそんなこと、もうどうだっていいし、何だってかまわないんだよ。

 そうだな……俺が死ぬ前の、最後の日の話をしよう。
 あれは放課後、HRが終わって間もなく。俺は久しぶりに、新堂と話をしたんだ。
 岩下と付き合うようになってから、新堂は俺に興味を失ったみたいに声をかけなくなっていた。岩下の性格を知っていた新堂は彼女の独占欲にも気付いてたんだろうな。
 岩下と付き合うようになった俺に下手な絡み方をして彼女の恨みを買いたくない、そんな事を思っていたんじゃないのか。
 だけどあの時俺はもう岩下とは別れているのと同然の状態だったから、話しかける気になったんだろう。
 新堂は俺を見てさ。
「神田、おまえって……」
 そう、何かを言おうとした。
 その後の言葉は教室の中で誰かが大声で笑ったからうまく聞き取れなかったし、逆光で唇の動きも見えなかった。俺が聞き取れなかったと思い込んでいるだけで、実際は言葉を止めていたのかもしれない。
 だけど俺は新堂に、言われたような気がしたんだ。
『おまえって、最低だよな』
 そう、言われた気がした。
 いや、そう言われたようにしか、思えなかったんだ。

 ……それが、俺の全てだよ。
 どうして俺の頭がぐちゃぐちゃに潰されたのか。誰がどうして、そうなったのか。
 きっとキミはそれが分からなくて、真実を知りたいから俺と話をしたんだろう。
 でも、これが俺の真実だ。
 全ての結果であり、俺の選んだ結末なんだよ。
 心と体が別もので、頭はもう何も考えられないほど滅茶苦茶な人間。それが俺であることは、何があっても変わらないんだ。
 だからもう、これでいいだろう。
 誰がどうしたって、キミにとっても俺にとってもどうだっていいしどうでもいい。
 ただ最低な話があり、頭をぐちゃぐちゃにした死体が残る。
 それが駒鳥の全てなんだから。

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東吾
性別:
男性
職業:
インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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