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インターネット字書きマンの落書き帳

   
みゃくみゃく様(創作洒落怖っぽいなんかヤバそうなネタ)
ミャクミャク様……だと……!?(挨拶)

というワケで、某万博のマスコット。
ミャクミャク様が、「もうその名前は怪異なんよ!」という方向でぶっちぎってくれたので、「もうそういう名前の洒落怖あったんじゃない?」って気持ちになったから……。

作っておくか!
そういう洒落怖っぽいの!

と思って、作っておきました。
ミャクミャク様が洒落怖で怪異として奉られていた頃の話です。




「みゃくみゃく様」

 最近、某万博のマスコット? キャラクター? の名前が決まった時、「うわ、まさか」と思った話を聞いてくれ。
 たいした話じゃない癖にめちゃくちゃ長くなってスマンとだけ、最初にいっておく。

 俺は小学校の頃、S県のわりと田舎の方に住んでいた。
 山奥の方で娯楽といったら○オン(当時はまだジ○スコだったが)くらいしかなく、その○オンでさえ車で30分は走らなければいけないといった田舎だ。
 当時はまだファミコンが出たばかりでもっている家も少なく、今ほど山も荒れていなかったからガキの遊びはもっぱら里山の探検で、今でこそ都会っこの俺も当時は山猿みたいに野山を駆けまわり、休みになると仲間たちと連れ立って山に入っては食べられる木の実を取って食ったり珍しい昆虫を追いかけたりしたもんだ。

 で、俺たちがよく遊び場にしてた山には「あそこには入っていけない」って言われる道が一つだけ存在していた。
 いわゆる禁足地って奴で、そこに入ると底なし沼があって危険だとか祟りがあるとか色々言われていたが、行ったらいけないって言われると行きたくなるもんだろう?

 俺がその場所の事を知った時にはすでに上級生の何人かはもうそこに行った事があって、何があるかは大体聞かされていた。
 行くなと言われる場所で、実際に行ったのが親にバレたらめちゃくちゃ怒られる場所だったというからそこに行った話をすれば学校ではヒーロー扱いだったからな。
 俺が聞こうとしなくても上級生と集まる機会があると行った事がある奴は率先してその時の話をしてくれた。

 その場所に行くには崖みたいに険しい細道を注意深く進んだ後、入り口となる場所は黄色と黒のロープで封鎖されて立ち入り禁止の看板が立っているからそれをくぐって先に進まないといけないらしい。
 傾斜のある小道を暫く進むと、急に開けた所が現れてそこにはワラでつくった紐と、何ていうんだろうな? 神社にあるギザギザに切られた白い紙みたいなのが紐にいくつもつけられて、その開けた場所を囲うように張り巡らされているんだそうだ。
 開けた場所は沼地みたいに足場が悪くひどくぬかるんでいるから、基本的にその縄の内側には入らない方がいいらしい。もし間違えて踏み込んだら本当に底なし沼みたいに身体ごと飲まれてしまうだろうと、その上級生は言っていた。
 張り巡らされた紐はまるでその沼全体を封印しているみたいになっていたとも言っていたかな。
 その奥には古びた祠があるだけで、あとは特に何もないんだそうだ。

 ところで、俺の住んでたその地域ではある区画だけ行われる祭りがあった。
 4年に一度行われる祭りで、詳しい内容はその祭りに携わった人間しか知らないってやつだ。
 祭事にけっこう厳しい決まりがあって、○日前には身体を清める、○日前から酒や肉は禁止、○日前には籠もって香草を焚く……みたいに、祭事に関わった人間だけに伝えられるルールが存在する。
 面倒そうな祭りだし、4年に一度という割に大々的にやるワケでもないあくまで地元の神事なんだが、その祭りがどうやら件の山奥にある禁足地に祭られた祠と関係があるらしいんだ。

 一応、表向きは「ナンタラのミコト」とかいう有名な神様の祭りということになっている(この神様は実際に祭られてる神社も多いと思う)んだが、地元の一部の人間はその祭りの神様を「ナンタラのミコト」ではなく「みゃくみゃく様」と呼んでいたんだよ。
 たしか、「命」が二つ並んで「めいめいさま」みたいな感じが土地のイントネーションで「みょうみょうさま」「みゃくみゃくさま」になっていったみたいな話をジジババがしていたと思う。

 4年に一度その「みゃくみゃく様」を祭る理由は祟りを恐れてという話であり、その地区はよっぽどみゃくみゃく様が怖いのか禁足地に行く事はもちろん、その場所のことを口にする事もほとんど無かったっけ。(上級生も、その地域に住んでる奴にはその話をしなかった気がする)

 このみゃくみゃく様、とりあえず俺が聞いた限りでは「過去に集落を襲った疫病を、みゃくみゃく様が祓ってくれたので感謝している」って感じだった。
 でもそれはどうも表向きの話っぽく、本当は「疫病そのものがみゃくみゃく様」だったんじゃないかな、と俺は思っている。
 その土地に残っている伝承があまりに凄惨だったり集落の外に知られたら恥だったりするような事があると表向きには偽のそれっぽい話をする事があるんだろう? みゃくみゃく様は何かしらの理由でこの集落を呪っているとか、そんな存在だったんだろうと思うんだよ。

 何でそう思うのかって?
 このみゃくみゃく様が祓ったという疫病は、ひどい腫れ物ができる病でこぶし大のできものがブドウみたいにボコボコと次々生まれて腫れた部分がうっ血し、膿んだ部分が人間の白目みたいに。うっ血した部分が瞳孔みたいに見えて、傍目からすると身体にたくさんの目玉がついたみたいになるそうなんだ。
 それで、そのできものが爆ぜるように腐っていき、みんな痛みと熱で死んでしまうと……どうにもそういう呪いかタタリかがおこる存在らしい。

 身体にできものが出来るような病気は実際にあると思うんだが、こんな聞いただけでおぞましい病気なんて存在するのかはわからない。
 もし存在してたとしても、この集落だけにある風土病みたいなもんだったんだろうな。

 ともかく、みゃくみゃく様を怒らせると立ち所にその疫病が蔓延するから、怒らせないよう奉納するという目的で四年に一度、そこでは祭っていたというワケだ。

 な、俺が「うわっ」と思った理由、なんとなくわかるだろ?
 自分が小さい頃に住んでた場所で、祭りという形で怒りに触れないように祈られているような奴と同じ名前がつけられてたんだからさ。
 聞いた時は何か、胸の奥でヒュッって音が鳴った気がしたよ。

 あぁ……そうそう、俺がやけにこの病気に詳しいなって思うだろ?
 実は俺の家、その地域に昔から住んでたワケではなく親の仕事で一時的に住んでいただけだったんだよね。高校に入る前に転校して、今は全然違う所に住んでるし。

 で、田舎ってさ。自然がいっぱい~とか思うかもしれないけど、生活してみると結構閉鎖的で排他的で、新しく来た人間をそこまで歓迎しないんだよね。
 どこか「あの人たちは外から来た人だから」みたいな感じで見て、積極的に関わってこないみたいな。

 学校では同年代の友達とかは普通に接してくれて俺が友達からハブられるような事はなかったんだけど、親の方は「外から来た人」扱いが結構あったみたいで、土地の集会に呼ばれるようなこともなく近所からも距離をおかれてたみたいなんだ。
 だから俺が個人的に遊ぶのはクラスメイトの友達だったんだけど、親を含めて家族ぐるみの付き合いがあったのは俺と同じように「外から来た新しい家族」が自然と多くなっていた。

 そんな風に家族ぐるみで付き合っていた家のうちに、兄弟のいる家庭があった。仮にT家にしておく。
 そのT家には俺より年上の兄と、俺より年下の弟がの兄弟がいた。歳が近いのもあって俺もよく一緒に遊んでいたし、当時としては珍しいゲームをいくつも持っていたからよく遊ばせてもらってたんだよね。

 そのT兄弟が誰から聞いたのか禁足地に行って「みゃくみゃく様」の祠で何かやってはいけない事をやってしまったらしいんだ。
 祠の扉を開けたとか、供え物に触ったとかそういう奴だったかな。

 その場所で怪我をして、禁足地に外から来た人間が入ったから大変だとひどい騒ぎになったのは今でもはっきりと覚えてる。地元の偉そうな人にT家族は相当糾弾されたし、T兄は暫く学校に行けないくらいキツいお叱りを受けていて、やっぱりあそこはヤバい場所なんだと子供心に思ったもんだ。怖いのはタタリというより、人をあそこまで罵倒できるあの土地そのものだったけど。

 で、T弟はその場所でひどい怪我をしてすぐ入院することになった。
 外から来た人間なうえ、土地の禁忌に触れたからってT弟の同級生は誰も見舞いに行くと言えないような雰囲気で、そんなT弟のクラスメイトに頼まれたのもあったし俺自身もT弟と仲良かったのもあって見舞いに行く事になったんだが、もう病室に入ったらすごい腐臭がしてさ。
 明らかに異様なんだよ。果物が熟れて腐ったような、とにかく異様な匂いが病室に入る前から漂ってくるの。
 そのひどい臭いがT弟からしてくるんだから、本当にびっくりしたというか何というか……。
 しかも、T弟の腕がまたひどくて元々の大きさから二倍くらいに膨れ上がっている上、包帯の上からもわかるほどボコボコと瘤が出来てるんだよ。ブドウみたいにさ。
 しかも包帯がない所も腫れはじめてて、その腫れ物がまるで目玉みたいにぎょろぎょろと動いているものだから俺はもう来てすぐ帰りたいほど怖くて。
 何を話したのかもよく覚えてないうち、早々に帰ったような記憶がある。薄情だよな、T弟は仲良くて結構遊んでたんだけど、あの時はもう異質なモノにとりつかれた怪物のようにしか思えなかったんだよな。

 それから、T弟がどうなったのかはわからない。入院した後、程なくして引っ越してしまったからだ。
 そんな田舎で禁忌に触れたとなったら居心地が悪かったのだろうという人もいたし、T弟の治療のために引っ越したという人もいたが詳しい事はわからない。だからT弟の腕がどうなったのか、T弟がまだ生きているかはわからないままだ。すっきりしなくて悪いがこれは仕方ないよな。

 だが当時、外から来た俺がT兄弟と同じような事をしないか不安もあったんだろう。その事件があってから道行く俺を呼び止めると知らないジジババが俺を脅かすみたいに色々と吹き込んだんだ。俺がやけに「みゃくみゃく様」について詳しいのはそのジジババの戯言が子供なりに恐ろしかったってのもある。

 「あの腕はもう切り落とすしか無い」とか「できものが爆ぜて死ぬ」だとか、怪我したT弟を見てきた俺に散々と恐ろしい事を言っておびえさせたのは、思い出すまでもないって感じだ。
 あれだけ散々とタタリだ、呪いだと言われていたから当時の俺もT弟は腕が無くなってしまったんだろうとか、できものが悪くなって死んでしまったんだろうと思っていたが……元気だといいんだけどな。ガキのいたずらで呪いだかタタリで死ぬのはあんまりだろ?

 っと、長くなっちゃってスマン。
 何だか懐かしい気持ちと、もしT弟がここを見ていたらと思って書いてしまった。
 某万博が成功するように俺もみゃくみゃく様に祈ってみるわ。
 恐ろしいタタリがあるような奴でも、ちゃんと奉ってればいい事もしてくれるんだろうから成功を祈るくらいいいよな?

 それじゃ、ここまで付き合ってくれてありがとうな。

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