インターネット字書きマンの落書き帳
せかいでいちばん幸福な男(ヤマアル)
平和でも何でもないクソろくでもないヤーナムという土地で、それでもお互いを愛し合い慈しむヤマムラさんとアルフレートくんの話です。(挨拶を飛ばして幻覚の説明)
アルフレートくんは積極的に好き好き言ってほしいけど、ヤマムラさんは奥手というか恥ずかしがってしまってあまり言わないでほしいな……。
でも、アルフレートくんに愛してるとか言えない自分にすこしもどかしさを感じていて欲しいな……みたいな願望を丸出しにして書きました。
アグレッシブに行為を伝えるアルフレートくんと自分からはなかなか言えないけど言うと一度の感情がクソデカいヤマムラさんの話です! よ!
楽しんでください。
えっ、ヤマアルというCPを知らない?
今日から知ればいいよ!
アルフレートくんは積極的に好き好き言ってほしいけど、ヤマムラさんは奥手というか恥ずかしがってしまってあまり言わないでほしいな……。
でも、アルフレートくんに愛してるとか言えない自分にすこしもどかしさを感じていて欲しいな……みたいな願望を丸出しにして書きました。
アグレッシブに行為を伝えるアルフレートくんと自分からはなかなか言えないけど言うと一度の感情がクソデカいヤマムラさんの話です! よ!
楽しんでください。
えっ、ヤマアルというCPを知らない?
今日から知ればいいよ!
『今日の言葉を花束にして』
ソファーに腰掛けるヤマムラの隣に座るとアルフレートは彼の手を握りしめる。今は二人きりだから誰かに茶化される事もないだろう。仮に何かを言われたってアルフレートは気にしないし度を超した相手なら殺してしまえばいいだけだが二人で静かに過ごせる方が心地よいのは当然だ。
アルフレートが手を握ると、ヤマムラはわずかにアルフレートへ目をやるとその手を握り返してくれた。
ヤマムラはいま、黙って本を読んでいる。医療協会がヤーナムの子供たちに向けて出した物語でどれだけ医療協会が立派な成り立ちをしているのか、ヤーナムに必要な存在なのかという事を大げさに飾り立てて書かれた本だ。
それが半ば妄想といって良い程誇大に書かれた話なのはヤマムラも知っているが、この地にきて言葉は拙いながらもしゃべれるが読み書きが苦手なヤマムラは時々時間があるときに安く買った本を読んで文字の勉強をしているのだ。
アルフレートはその横顔を、静かに眺めていた。
鼻が低く髪は真っ黒で触れると少し硬いように思える。肌が浅黒く見えるのは日に焼けているからで実際はやや黄色みがかった色合いをしているのだそうだ。
フレームの細い眼鏡を鼻かけている横顔はヤーナムにあまりない顔立ちである。実際にヤマムラは異邦の狩人でありアルフレートが想像もつかないような遠き東の地から来たのだという。
閉鎖的な価値観をもつ者が多いヤーナムでは異邦の者は異邦のものであるというだけで忌み嫌われていた。(それは、ヤーナムの秘密である「血の医療」を不死の秘儀・秘薬だと思い群がるようにやってくる連中に嫌気がさしている、というのもあるのだろうが)
だがアルフレートにとってヤマムラの容姿はどこか安らぎを与えてくれる、愛しい姿だったのだ。
確かに目をひくような美男子ではないだろうし年齢もアルフレートから見れば親子ほど違う。
二人で歩いていても恋人同士に思われることはほとんど無いだろう。
それでもヤマムラはアルフレートにとっては誰よりも愛しく、誰よりも可愛い男(ひと)であるのは変わりなかったし、他人にどう思われようが気になどならなかった。
「ふふ……ヤマムラさん、好きです。愛してます……世界中の誰よりも、私は貴方の事が可愛いですよ」
あまりの愛しさについ言葉が溢れれば、ヤマムラは目を丸くしてアルフレートの方を向く。そして顔を真っ赤にすると困ったように鼻を掻いた。
「またキミはそういう事を言う……やめてくれよ、俺はもう可愛いなんて歳じゃない」
「でも可愛いですよ。そうやって照れてる顔も、声も、仕草も。全部が愛しくて、全部が可愛いです」
アルフレートは微笑むとさらにそう告げる。
アルフレート自身、自分がおおよそ正気の狩人だとは思っていなかった。周囲からは「処刑隊の亡霊」と揶揄され、すでに存在していない。むしろ医療協会が抹消しようとする処刑隊のまねごとをしてその装束を身にまといローゲリウスの言葉に殉じようとしている男など、正気であるはずがないのだ。
そんな彼でもヤマムラの前では幾分か人間らしい感情を抱いているという自覚があった。
愛情とは醜悪で暴力的な狂気の一つだ。だが今のアルフレートの内にある感情では最も静かで穏やかな思いであっただろう。
「まったく、キミはそう言ってすぐに俺を困らせようとする……」
ヤマムラは口元を押さえ顔の赤みを隠しながら本を読もうとするが集中できていないのは一目瞭然だった。
「別に困らせてるつもりは無いんです。でも、やっぱり……やっぱり、好きなので。この気持ちをおさえる事が私はあまり上手じゃないから……ふふ、好きです。ヤマムラさん。本当に愛してますよ」
「わっ、わかった! もうわかったから……」
ヤマムラは本をテーブルに置くと、アルフレートの方へ向く。
その目が真っ直ぐアルフレートを見つめていたのでアルフレートの心臓は自然と高鳴っていた。
「……でも、キミは愛してるとか……好きとか、可愛いとか。どれだけ俺に甘い言葉をかければ気が済むんだい? 今日だけで愛してるは18回、可愛いは9回、好きに至っては28回も言ってるんだよ」
「えっ、数えてたんですか!?」
「あんまりキミが言うからね……でも、俺はまだ一度も言ってない。言おうとは思うんだ。だけど人前だったり、言おうとしてもキミが先に言ってしまったりでなかなか上手くいかないから……」
ヤマムラはそう言いながらアルフレートの両手をしっかりと握りしめる。 濃いブラウンの瞳にはアルフレートの姿だけが映っていた。
「……俺も、キミの事が好きだ。とても愛しいし、誰よりも愛してる……そばにいてくれてありがとう、アルフレート」
そして優しく手を握ると、照れた笑顔を浮かべて唇を重ねる。
ただ触れるだけの挨拶みたいなキスは情熱をかき立てるに至らない稚拙とも言えるキスだったろうがそれでもアルフレートの心はすでにとろけそうなほどの喜びが注がれていく。
幸せの熱に浮かされてぼんやりとする最中、アルフレートは思っていた。
壊れた自分でもこんなにも愛してもらえるのなら、この世界は醜く歪んだ馬鹿馬鹿しい世界だけど、きっと自分は幸せなのだろうと。
そして自分はこの幸せを抱いたまま輝きへと邁進する、誰よりもこの世界に歓喜を感じられる存在なのだろうと。
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