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インターネット字書きマンの落書き帳

   
タテノとサクラとクリスマス
お互い距離感が近いけど別に付き合ってる訳ではない、男女の友人タテノとサクラの話です。
本日は、お互いにクリスマスだからプレゼントを贈り合おう!
何が欲しいかな? をする二人の話ですよ。

何かこう、チャリティーでブックサンタをしたいと思いまして。
pixivで作品を投稿したらブックサンタに寄付があるよ!
という話なので、そういうチャリティーに応募してもNGを食らわない作品を書きました。

happy holiday
happy Christmas!



『クリスマス・プレゼント』

 今日は寝坊して良い日だからと毛布にくるまり温まっていた桜井達乃のスマートフォンがメッセージが届いたのを報せたので、布団の中から手を伸ばしスマホを取れば友人の館野サクラから『クリスマスプレゼントを買いにお外へ行くよ~』という申し出だった。
 カレンダーを見ればもう師走も中旬を過ぎている。
 町中はクリスマスソングが流れ、家族連れやカップルで賑わうショッピングモールなどはイルミネーションが輝く頃合いだろう。
 何ら目的もなく歩き回るには少し騒がしすぎるくらいだが、プレゼントを探すという目的があれば賑やかさに気圧される事もないはずだ。せっかくのクリスマス前なのだから少しばかり浮かれた気分で街を歩きたいと思っていたところでもある。
 タテノはあくびをかみ殺しながらOKの返事を出し、早速二人で街に繰り出すことにした。
 約束の時間に駅へ着けば、時を同じくしてサクラも姿を現す。二人で並んで電車に乗り、もう少し大きめのショッピングモールがある街へと向かいながらタテノはサクラへ問いかけた。

「クリスマスプレゼントを買うって言ってたよな。誰のプレゼントを買うんだ。友達か? それとも家族?」
「えー、言ってなかったっけ。タテノのプレゼントを買うんだよ-」
「俺の? いや、俺とクリスマスプレゼントを選ぶのかよ。俺にあげるクリスマスプレゼントを?」
「そうだよ。それで、タテノは私のクリスマスプレゼントを買うの。それを、クリスマスにプレゼントするー。どう? お互いが見ている所でお互いに欲しいものを買えば絶対にハズれないプレゼントだよー」

 確かにサクラの言う通り、自分が見ている前でプレゼントを選ぶのなら絶対に自分の欲しいものがもらえることにはなる。サプライズはないが、約束された喜びがあるだろうし必用のないものをプレゼントされ処分に困ることもないだろう。

「すると、俺はサクラの欲しいプレゼントを買えばいいんだな。了解」
「そうそう、話が早くて助かるよー。あ、あんまり高いのは無理だからねー」
「わかってるって。俺もそんなに金無ぇから程ほどの値段で頼むぜ」

 二人は互いに頷きあうと、互いのプレゼントを選ぶために目的の駅で降りると手始めに小洒落た雑貨が並ぶエリアを覗いた。

「やっぱり、クリスマスの雰囲気を味わうのはこういう雑貨店がいいよね」

 サクラの言葉にタテノも頷く。大抵の店先には綺麗に飾られたクリスマスツリーやサンタ帽をかぶったテディベアなどが並び、溢れるばかりのクリスマス色に満ちていたからだ。
 店内のBGMも賑やかなクリスマスソングから落ち着いた賛美歌まで様々で、店先には思わず手にとりたくなるようなクリスマスカラーのマグカップや、お菓子がぎっしりつまったスノーマンの小物入れなど見ているだけで気分が聖夜へ向かうようなものばかりだ。
 だが、これを家に置けるかといわれると少し考えてしまう。たとえばタテノが結婚をして子供などがいたのなら、子供が喜ぶだろうからと12月の頭からクリスマスの準備をし、リビングをモールやらライトやらで飾り付け、サンタやスノーマンの小物を並べるのも悪くないと思うが実際は昼まで安穏と寝ているのを好む学生だ。いかにもクリスマス色の強い小物が部屋におかれていても、12月25日が過ぎたとたん正月ムードが出た世間から取り残された気持ちを抱くだけだろう。
 この点はサクラも似たようなもので、彼女も今頃夏まで飾られ埃を被ったスノーマンの人形を思い浮かべていることだろう。

「このお店にある雑貨は全部かわいいけどー、今必用かな、って言われたらそうじゃないかなー」
「奇遇だなサクラ、俺もそう思ってたところだ」

 二人は「だよねぇ」と言いながら、すぐさま近くにある電気店へと赴く。当然、目的は日曜家電ではなく、オモチャやゲームの置いてあるホビーコーナーだった。ここも、今はクリスマス前に子供たちへプレゼントを渡すためのサンタクロースに人気なのか、普段より沢山のオモチャが置かれ人も多く賑わっていた。

「さすが、クリスマス商戦ってやつ? 普段よりガンプラの種類が多い気がするねー」

 サクラはプラモデルコーナーに向かい嬉々としてガンプラの物色をはじめる。タテノはその隣で城や日本の風景が主となったプラモを眺めながら、いま手持ちにあるフィギュアとあわせたら面白い写真がとれないかと思案していた。

「プラモは悪くないが、もらったらすぐ作りたくなっちゃうよなぁ……あんまり積みプラモをする訳にもいかないし」
「そうだねー、クリスマスでパーティとかしてさ。プレゼントもらって作りたくなっちゃったら、チキンを食べたぺとぺとの手でプラモデルに触れるのもちょっと嫌だよねー」

 二人はひとしきりプラモデルコーナーをまわると、そのままゲームコーナーへ向かう。

「ゲームも最近はDLで買うことが増えちゃったからなぁ、パッケージだとカートリッジを差し替えるのが億劫でな」
「あ、それ私もー。カートリッジだと無くしちゃうし、ゲーム機が変わったら前のゲーム遊べなくなることが多いなら、DLでいいかなーってなっちゃうんだよね」
「特典が豪華なゲームだとか、どうしても手元に置いておきたい理由があれば別なんだよなー」

 そう言いながら、ガラスケースに入った豪華特典セットを眺める。ゲームの他に設定資料やキャラクター特製フィギュアまでついた立派な限定品がいくつも並んでいる。豪華な特典というだけあり、お値段もなかなかの豪華さだ。

「あはは、ちょっと気になってたゲームの特典付きは予算オーバーだよー」

 サクラはクスクス笑うと歩き出す。そのまま一通り店内を回ったが、興味をひくものはあっても今すぐ欲しいというものはなかった。

「案外と、プレゼントに欲しいものって思いつかないもんだなぁ」

 その後もいくつかの店をまわったが、どうにもそこまで欲しいというものはない。本当に欲しいと思ったものは自分で買っているというのもあるし、是非とも必用だというものは値段がそれなりに高く友達同士のプレゼントにするには気が引けるというのもあるのだろう。

「そうだねー、だったら消耗品のほうがいいのかな。ほら、ちょっと珍しいバスボムとかー」
「いやいや、俺はそんなもの使わねぇって……バスボム? バスルーム破壊するのか」
「違うよー、入浴剤みたいなものかな……あ、まってタテノ! あのお店、あのお店に行こう!」

 話の途中で何かを見つけたサクラは、タテノの手を引っ張りながら店へ入る。そこは多数の茶葉を扱う紅茶専門店のようだった。

「へぇ、紅茶専門店か……初めてきたな」
「えへへ、実は私も初めてきたんだー。でもね、この前友達の家にいって、そこで飲んだフレーバーティーがすっごく美味しいの! だから私も買ってみようと思っていたんだけど、外寒くなってきたし、日が沈むのも早くなっちゃったからさー。家を出るのが億劫で、ずーっと来れないでいたんだよねー」

 サクラはそう言いながら、缶入りのフレーバーティーを確認する。クリスマスに向けたギフト商品なのだろうか、赤と緑の色合いが楽しい可愛らしいデザインの缶がいくつもある。きっと、この缶を求めて毎年買うリピーターも多いのだろう。そう思える程魅力的な彩りに満ちあふれていた。

「紅茶か、寒くなってきたから最近俺も飲んでるぞ。そうだな、たまには専門店の紅茶ってのも買ってみるか……」
「あ、だったらお互いに気になるお茶を選んで、それをプレゼントにしよー。3つくらいだったらそんな高くないし、同じくらいの値段で選べるよね」

 確かに、紅茶なら悪くない。デザインのよい缶なら、気に入ったら小物入れに使うことも出来るだろう。さっそく二人で定番の茶葉やミルクティーにあう茶葉などを探し、次いでフレーバーティーを物色する。そうして、お互い気に入った茶葉を入れたプレゼントが出来上がった。
 帰り道、タテノはサクラの。サクラはタテノの気に入った茶葉を紙袋に入れてもらいそれを揺らしながら歩く。

「ふふ、楽しみー。クリスマスには今日選んだお茶が飲めるんだー」
「そうだな。俺もちょっと楽しみだ、どんな味がするんだろうな」

 そして、思うのだ。
 誰かを思い選ぶプレゼントというものは、こんなにも楽しいものなのかと。
 きっとクリスマスにいつまでも、プレゼントを渡しあう人々がいるのは誰かを思い選ぶこともまた幸せだと知っているからだろう。
 笑うタテノの息は白く夜空へと消えていった。

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