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インターネット字書きマンの落書き帳

   
その花は蒼と混じる(ドヴァエラ)
久しぶりにエランドゥルさんが書きたくなったので書きました。
スカイリムは故郷なので、書きたいと思った時には書いていきたいですね。

この話はドヴァーキン×エランドゥルさんの話ではあるものの、特に二人がイチャイチャするような奴や「じれってぇ! 俺ちょっとエッチな雰囲気にしてくらぁ!」ってモノでもなく、スカイリム本編の時代が伝承になりつつある頃。
一つの伝承として語られてる二人、みたいな話ですよ。

こうった伝承のような話を書くのは好きなのでやっていて楽しいんだな~。(ゴロゴロ)




『聖堂は蒼く染まり』

 ナイトコーラー聖堂はペイル地方にある建物でも最も古いものである。 元々はデイドラを奉った建物だったが一人の神官がマーラのシンボルを作り掲げペイルにてマーラ信仰の基礎を作ったという伝承をもつものだ。
 それだけ古い伝承が残るだけあり、聖堂の老朽化は進み建物自体はすっかりほころんでいる。
 だがそのほころびから、つい最近一部の壁にかけられた強い封印魔法が綻びデイドラ信仰の痕跡が発見されたため今までドヴァーキンの伝説その一つとして語られてきた物語の信憑性が一気に増し、都の新聞社を賑わせたのも記憶に新しい。

 そんな伝統あるナイトコーラー聖堂の改修を依頼されたのはつい先日のことだった。
 長期休みになり観光客が押し寄せてくる前にもう少し見栄えを良くしておきたいのだろう。すでに鉱山も閉鎖されたペイルはほとんど観光地となっており、ナイトコーラー聖堂は最も人気のあるスポットの一つだから綺麗にしておきたいのは当然のことだ。

 だが、修繕するにしよ改装するにせよ建物を見なければ始まらない。
 外観を少し直すだけでいいのか、基礎からやりなおさないといけないのか、どの程度の予算なのか。そういった相談をするために男がペイルへと赴いた時は遅く短い夏のさなかだった。

「今の時期ならナイトコーラー聖堂は青い花が咲いているので見ていくと良いですよ」

 今や形式だけとなった首長からそう告げられずともナイトコーラー聖堂には行く予定だったが、実際にその丘に立った時は美しさからついため息がこぼれた。
 まだ雪が残る聖堂の前には一面に青い花が広がっていたからだ。
 背の低い花に触れてみれば、不思議なことにその花は全て葉がまるで灰を被ったようにくすんだ色になっており、その色はちょうどダンマーの肌のような色になっていた。
 それを見て男は俺は昨日酒場で聞いた話を思い出す。その時はよくある与太話だと思っていたのだが実物を見るとそうではないのだろうと思ってしまったからだ。

 話はよく聞く伝承から始まっていた。
 そう、ナイトコーラー聖堂でマーラの信徒とし教義を広めた司祭はダンマーの司祭と蒼い目をした年若いノルド男の話だ。
 二人は深く愛し合っていた。
 ヴァーミルナの信徒でありダンマーの閉鎖的な価値観から最初は若いノルドを拒んでいたダンマーの司祭も、情熱的なアプローチと長年の交流でついに心を開き二人は結ばれたのだ。
 一説によればそのノルド男はドヴァーキンであったとも言われているが、スカイリム全土において「あれは実はドヴァーキンであった」という伝承は多いからこの話もまた「せっかくだからドヴァーキンにしておこう」といったものだと言われていた。それが先日、ドヴァーキンの伝説に残る「デイドラの封印」を示す部屋が発見され話題になったのだが……。
 ともかく司祭と男は互いをよく愛し信頼し、ペイルの人々もまた二人を祝福したのだという。

 だが、ダンマーとノルドとでは寿命が違う。
 深く愛した男も老いさらばえ、ダンマーの司祭を残し先に死んだ。司祭は深く悲しんだが、男がそれを望まないと思い一人でナイトコーラー聖堂を守り続けていた。
 そうして長らく時を過ごしていたある日、ダンマーの司祭はふと思い出したのだ。

『魂が巡るのであれば、必ずおまえの元へと戻ってくる。おまえの傍でまた過ごそうと思う。生きていたら、待っていてくれ』

 男がそう、言っていた事を。
 魂が巡るのがいつだかわからない。ダンマーも老いていたが、あるいはそろそろ巡り戻っているのではないか。 どこかで生まれ変わっているのではないか。 そう思ったダンマーの司祭は久しぶりにペイルを離れ、マーラの教えを説きながら男を探す旅に出た 。
 雪原を越え、谷を越え、時に霊峰に挑み、人々に教えを説きながら時に人を助け、男の影を求めた。
 そうして数年の旅をし、結局男を見つけるには至らずナイトコーラー聖堂に戻った時、聖堂にこの青い花が咲いていたのだ。

 ダンマーの司祭はすぐに気付いた。
 その花こそ、愛したあの男であると。

 厳しい雪の最中に一輪だけ咲いていた花の前で膝をつくと、司祭はただ涙を流していた。
 そうだ、彼が生まれ変わるのならわざわざ自分の遠くなどに行くはずがない。 この聖堂に自分がいるのを知っているのだから、聖堂の傍に咲くはずだと。
 司祭は青い花を愛し慈しみ育てるうちに丘いっぱいに青い花が咲き乱れるようになった。
 そうして青い花は司祭が眠るその日まで、ずぅっと聖堂に咲き続けたのだ。

 不思議なのはこの後で、司祭が死に埋葬を終えてしばらく後、緑の葉をつけていた青い花のその葉が少ずつ灰の色に染まっていったのだ。 そうして、この周囲にだけ灰の混じった葉をもつ青い花が咲くようになった。
 人々は、二人の魂が結ばれた証だろうとそれをマーラの奇跡ととらえ、その場に咲く花を今でも大事に育てている。

 花は祝福され、ナイトコーラー聖堂に咲き続けているのだ。
 全てが伝承となるほど遠い過去の話になった今でも。

 男は、マーラの信徒ではない。 生まれ変わり云々というのもわかってはいない。
 だが、男が司祭を愛し司祭もまた深く男を愛していたのならそれくらいの奇跡がおきても良いのだろうと思った。

 古いナイトコーラー聖堂を眺め、男はもう一度ため息をつく。
 蒼白い花と灰色の葉をもつ花はその日も世界の愛を祝福するように揺れていた。

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