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インターネット字書きマンの落書き帳

   
つきしま軍曹の概念嫁。(金カム二次創作)
ゴールデンカムイ、最高でしたね!
7年というなかなかの長期連載だというのにダレる事がなく、最終回まで面白い。
すさまじい事だと思います。

感動したので、感動を二次創作にぶつけました。
月島軍曹の概念嫁の話です。

月島軍曹と結婚をした、年下でそこそこ良い家柄の奥さん……。
という概念の話ですよ。
たぶん、月島軍曹に良くにた顔の子どもがいます。
概念の話です。




『不器用で寡黙なあの人』

 いらっしゃいませ、鯉登さん。
 わざわざお土産を届けに? ありがとうございます。
 あいにく月島は出払ってしまっているのですが、少しお待ちになりますか?
 今お茶でもいれますから……。
 お時間よろしければ、夕食もご一緒しましょう。程なく戻ってくると思いますので……。

 ふふ、心配せずとも大丈夫ですよ。
 月島はとても優しくしてくれます。

 確かに口数は多くありませんし、外に出ても誰かと打ち解けるワケでもなくいつでもムスッと口をつぐんで直立不動で立ってるものですから、周りの人は遠巻きにさも恐ろしげに見ていく事もしばしばあります。
 近所のこどもたちから「かみなりオヤジがいる」なんてはやし立てられるのも気に入らないのでしょうね。このあたりはヤンチャな子が多いですから……。

 えぇ、とても寡黙で冗談なんか言ってもクスリともしませんわ。
 でもあの人がとても優しい人だというのも、何よりも私と家族を愛してくれているのだということもわかります。
 私(わたくし)はあの人の妻ですもの……。

 確かにあの人は不器用な人ですわ。
 英語やらロシア語やら私の知らない言葉を流ちょうに話せる癖に、自分の思いを伝えるのはからっきし。
 だから、嘘なんかつかず何でも黙って飲み込もうとする。困った時は黙り込み、全てを一人で背負ってしまう。
 あの人はそんな、不器用でかなしい人……。

 なんて、それは鯉登さんがいっとうによくわかってらっしゃいますよね。
 ふふ……。

 えぇ、あの人と結婚するという話になった時は私も驚きましたわ。
 私よりも随分と歳が離れた人でしたし、その頃の私はまだ本当に小娘で自分が結婚し誰かの妻になるなんてまだ考えてもいませんでしたから。
 もちろん、私も家柄からして夫となるのは軍人だろうと漠然と思っておりましたし時がくれば覚悟もしておりました。
 でもまさか自分より一回り以上年上の男性が夫になるとは思ってもおりませんでしたし、お見合いというのも初めてでしたからそりゃぁもう緊張しましたし、とても動揺しましたわ。

 でもね、実際に月島と会った時、あの人は開口一番こう言ったのです。

「私は、この歳になっても身を固める事すらできなかったろくでなしの人間です」
「そして未だ、若い頃の初恋が忘れられずにいるようなしみったれた性格です」
「このような不器用で愛想もない男だ。誰かを幸せにできるような自信はない」
「だからどうぞ、私が失礼を働いたせいにしてお断りください」
「あなたはまだ若く美しい。私のような人間を背負い生きて行く必要などありません」

 なんて、ね。
 細かい言葉は違ったかもしれませんが、概ねそのような事をこれから嫁ぐかもしれない私に言ったのですよ。
 でも私はそれを聞いて、あぁ、この人となら添い遂げたいな、と。
 そのように思ったのです。

 きっとこの人は嘘などつかない。
 私がこの人へ寄り添うのなら、この人はきっと私を幸せにしてくれるでしょう……と。

 いいえ、それ以上に私は、この人と幸せになりたいと、そう思ったのです。
 この人と一緒に、幸せというものは何なのか探しながら家庭を作れたらきっとそれこそが幸福なことだろう、と……。

 私は、政略結婚により生まれた娘でしたから。
 偽物の家族というものも体裁上の関係というものもよく存じておりますので……。

 私も、あの人と同じように幸せというのが何なのかわからなかったから一緒に探してくれる相手を無意識に求めていたのでしょうね。

 月島は本当に不器用で寡黙なひとですがが、ろくでなしのしみったれというのは当人の思い込みで真実ではなかったと、今でははっきりそう思っておりますわ。
 あの人は私を愛し、家族を愛し、軍人である自分もまた愛している。
 あまり多く語らない人ですが、僅かな言葉とその仕草で充分すぎるくらいにそれが伝わりますの。
 言葉なんか少なくとも、ただ傍にいるだけで思いというのは存外に伝わるものですね。

 初恋の「いご草」ちゃんの事が忘れられず、お酒が入った時に彼女を懐かしむような話をしたのはちょっと妬けてしまいましたけど。
 でも、不思議ですわね。
 あの人の初恋を聞くのはもっと苦しく辛いことだと思っていたのに、私はあの人が今でも若かりし頃の思い出を大切にしまい込んでいる姿さえ美しいと思ったのです。
 この人は過去の美しい思いをずっと宝物のようにしまっておいてくれる人なんだ、と……私もいつかあの人が細い目をもっと細ぅくして、懐かしそうに私との生活を語ってくれたらいい等と、そんな風に思ってしまったのです。

 きっと私は「いご草ちゃん」に初恋をしたままのあの人が、とてもとても愛しいのですようね。
 嫉いてないといえば、それは嘘になりますけどね。

 今ではあの人も、良き夫で良き父ですわ。
 私はあの人が仕事に集中できるよう、家のこと。あの人が苦手な外の事を担うことであの人の手助けをできればと、そう思っております。
 月島と私は恋をして結ばれた訳ではありませんから、月島の心を燻らせている「いご草ちゃん」にはずっと敵わないかもしれません。でも、私はいまの月島とともに生きる時間が愛おしいのです。 不器用ながら私や家族を愛そうとしてくれるあの人との思いが重なっていくのとても喜ばしいのです。

 私どもの立場になりますと、恋を知らぬまま結婚する事も珍しくないのですが、私は結婚した後に恋することまで出来るのですからきっと幸せですね。

 あぁ、でも私があの人にとって一等の存在になるのは当分先か。あるいはずぅっとないのかもしれませんわ。
 何せあの人はずぅっと、鯉登さん。あなたのために、生きておりますから。

 ふふ……そんな困った顔をして、鯉登さんは本当にまっすぐで正直な方ですね。
 月島が信頼するのもよくわかりますわ。
 本当に、妬けてしまいます。

 ……あら、月島が戻ってきたみたいです。  
 れでは、お夕飯の準備をいたしましょうか。
 たいしたもてなしは出来ませんが、その方がきっと楽しいでしょうからね。

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