インターネット字書きマンの落書き帳
幼い頃から変わらぬ思い(隆押)
幼なじみで従兄弟の押切トオルを心配する隆幸兄さんの話です。
印象としては隆幸兄さん→トオル君みたいな話ですが、トオル君も別段従兄弟の事を嫌ってはいない。むしろずっと初恋の相手で変わりはない……みたいな時空を生み出して描いてます。
端的にいうと、ただの幻覚だよ!
今回はその幻覚を、隆幸兄さんの視点で語ります。
別にイチャイチャしているとか、そういう話ではないんですが。
両片思いみたいな話ではあるのでそこんとこヨロシクでございますことよ。
気持ちとして隆幸兄さん×トオルくんみたいな感情で描いてます。
このトオルくん視点のもかきたい……と思っているうちになかなか書けないんだよなァ~。
印象としては隆幸兄さん→トオル君みたいな話ですが、トオル君も別段従兄弟の事を嫌ってはいない。むしろずっと初恋の相手で変わりはない……みたいな時空を生み出して描いてます。
端的にいうと、ただの幻覚だよ!
今回はその幻覚を、隆幸兄さんの視点で語ります。
別にイチャイチャしているとか、そういう話ではないんですが。
両片思いみたいな話ではあるのでそこんとこヨロシクでございますことよ。
気持ちとして隆幸兄さん×トオルくんみたいな感情で描いてます。
このトオルくん視点のもかきたい……と思っているうちになかなか書けないんだよなァ~。
『あの頃から変わっていないのに』
小さい時から、トオルはどこか人と関わるのを避けているような所があった。
人見知りをするといえばそうだろう。だが見知った友人にさえ粗野に振る舞い喧嘩をしてそのまま疎遠になるという事も少なくはない。
気性が荒いという訳ではないのだが、中性的で女の子に見えるような顔立ちとは裏腹に性格は頑固で強情な所もあるから、そういったギャップに驚いた相手が時にトオルをからかうので喧嘩になって疎遠になる。 そういった事が多かったのだろう。
だがトオルは一人でも別段不自由はしない性格だった。
普段から一人で本を読んだり音楽を聴いたりして余暇をすごしているし、する事がないなら予習・復習と勉強などをしている所をよく見る。子供の頃は母親から 「トオルちゃんはちゃんと勉強していて偉いわね、隆幸も見習いなさい」 なんて、良く言われたものだ。
今思えば、トオルは集団行動が苦手だったのだろう。 周囲と一緒に同じ事をする行為そのものに喜びや楽しみを感じられない性質だったに違いない。
今でもトオルの印象は、孤独を好みなれ合いを嫌う頑固で融通の利かない男だと言えるだろう。
だが俺にとってはそれでも「可愛い唯一の存在」だ。
そう思うようになったのは、ちょうど今頃の季節。クリスマスに子供たちで集まった時の事だった。
何故年の違う子供たちばかりでクリスマスパーティなどをしていたのかははっきりと覚えていないが、この地域は行事や活動が盛んだったからおそらくは保護者たちが催した子ども会の一端だったのだろう。
皆が思い思いのグループでテーブルに並べられたお菓子を食べたり、それぞれに割り当てられたケーキをつついたりしている最中もトオルはいつものように壁を背にして隠れるように座っていた。
時々クラスメイトらしい女の子がトオルに声をかけていたが、トオルはばつが悪そうな顔をして誘いを断っているようだ。一人でいるのを好むトオルにとって、賑やかできらびやかなあの場所は居心地が悪かったに違いない。
「おい、トオル。一人か? それなら俺と一緒にお菓子もらってこようぜ」
俺は何だかたまらなくなってトオルに声をかけた。
トオルは一人でいるのを好むのは知っていたが、人が集まる場所で一人でいるというのは目立つものだ。さっきの女子生徒のように気を遣って声をかけてくる人間を断るのも億劫だろう。
それなら見知った俺と一緒にいる方がトオルにとってはまだ気楽なのではないか。そう思って声をかけたのだ。
トオルは俺の手をしばらく眺めた後、うつむきながら呟いた。
「隆幸兄さんか……ありがとう。でも、俺は……こういう所で、どうやって過ごしていいかよくわからないから……」
俺もトオルも一人っ子ではあったが、俺の家は親戚連中が近くに住んでいるので大人も子供も出入りが多かった。 それに対してトオルの家は郊外にもあるし親戚といえば俺の家くらいだったから、人づきあいをあまりしなくても良かったのだろう。
だからなのかはわからないが、トオルは本当にこれだけの人を前にどうやって過ごすべきなのかわからないようだった。そんな事いちいち考えなくとも好きなように過ごせばいいとは思うのだが、考えてしまうほどトオルは真面目な男なのだ。聡明な男といってもいい。
慎重すぎる気がしたが、トオルからすれば俺が楽観的すぎるのだろう。
「何だよ、そんな事気にしなくてもいいだろ? ……どうしたらいいのかわからないなら、俺も一緒に考えてやるからさ。一緒に楽しいこと、探しにいこうぜ」
そういいながら手を握り少し強引にこちらへ引き寄せた時、トオルははっとしたように顔をあげた。 そして照れたように笑い、顔を赤くしながら俺を見たのだ。
「ありがとう、隆幸兄さん。ありがとう……」
俺は未だにその時のトオルほど可愛い顔を見た事はない。
あの頃からすでに十年ほどは経っているのだろうか。 俺は大学生となり、トオルも高校に通っている。まだまだモラトリアム期間で青春を謳歌しててもいいだろうが、トオルは最近とくに口数が少なくなり陰鬱な表情が増えていた。
家にいると奇妙な音が聞こえる・うめくような声が聞こえる。
トオルからそれを聞かされた時、一人で郊外にある大きすぎるくらいのがらんどうな家に住ん
でるから気が滅入ってしまっただけではと思っていた。
だが実際にあの家には確かに何かがいる。確かに存在する。
気のせいだと思い訪れた夜の家で、俺もまた誰かの吐息を。足音を。話し声を聞いた。だが何処を探しても誰も、何もいなかったのだ。
あの家は危険だ。本能的にそう感じる。
「もし不安なら、今日は家に泊まっていくか? それとも俺がおまえの家に行ってやろうか?」
行き場のない不安を募らせうつむくばかりのトオルに、小さい頃クリスマスで浮かない顔をしていた姿が重なる。
だから俺はあの時と同じようにトオルへ手を差し伸べた。
その手を見てトオルはあの時と同じよう、はっとした様子で顔をあげる。そして一瞬だけ嬉しそうに笑って見せたが、すぐに何もなかったようないつもの陰鬱な表情へと戻った。
「大丈夫だよ、兄さん。そこまで心配しなくてもあの時と違って俺だってもう子供じゃないからさ」
そして慌てて荷物をつかむと、逃げるように去って行った。
小さい頃は喜んで手を握りついてきたトオルだったが、もう今は俺などいなくても大丈夫なくらい大人になったという事だろうか。
それとも、あの館が潜む闇を知っているからこそ俺を巻き込みたいと思っているのだろうか。
トオルが一瞬顔をあげ、嬉しそうに笑った顔が浮かぶ。
それは子供の頃と変わらない愛らしい笑顔だったから。
「トオル、どうして俺を頼ってくれないんだ。俺は……おまえの事を、守ってやりたいのに……」
ほとんど無意識にそう呟いている自分に気づく。
俺の気持ちはあの頃からずっと変わっていない。トオルには笑っていて欲しいし、その笑顔は俺だけが知っていればいい。
だがトオルは俺の手から離れて一人、どこかに行こうとしているのだろうか。
「トオル……」
トオルは強情だ。こうと決めたら決して自分を曲げない所がある。無理に言い聞かせようとしたらかえって意固地になるだろう。
きっと今はただ見守る事しかできない。もどかしいけど、それしか方法がないのだ。
開け放たれたドアを眺め、俺は一人思う。
あるいはトオルともっと近い友人だったら留める事ができたのだろうか。従兄弟ではなく実の兄だったら恐怖や苦しみをもっと共有する事ができたのだろうか。あるいはそう、恋人であればもっと……。
いや、そんな事を思っても詮無きことだ。
きっとトオルにとって俺はただ近くに住んでいる年の近い親戚というだけ。それ以上の関係になれない以上はトオルの生き方に踏み込む事はできないのだろう。
もどかしい思いをかかえながら、空虚なドアを見つめる。
脳裏には一瞬笑って見せたトオルの顔がやけに強く焼き付いていた。
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