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インターネット字書きマンの落書き帳

   
貴方にあげたいプレゼント(ヤマアル)
これは俺が前から思っていた事なんだけどさァ。
ヤマムラさんは、アルフレートくんと付き合ってると思うんだよ。
(幻覚の説明を兼ねた挨拶)

という訳で、俺の世界ではそれが真実なのでそう!
そうやって言い聞かせな、今日もニコニコ二次創作を世に放っていきたいとおもいま~す。

今回はクリスマス前なので、プレゼントの話。
ヤマムラさんにプレゼントをしたいけど、何がいいかわからないから直接聞いてみたら 「君の使っている香水がいいな」 と言われてしまう話です。

プレゼントはお互いの気持ちが通じ合っているものをあげる is 最高ね!




『Perfume』

 クリスマスを前に、ヤーナムの街も普段より賑わっていた。
 この街にクリスマスを祝う風習は存在しないのだが、よそから来た商人たちが商売っ気を沸き立たせあれこれとヤーナム市民に吹き込んだのだろう。 医療協会に対する信仰や敬意とは別に一種のお祭り騒ぎとしてささやかに祝う家も徐々に増え始めていた。
 最も、この街では常に医療協会が目を光らせている。他国の祭。それも救世主などという胡乱なもの(と、少なくとも医療協会は思っているのだろう)を大々的に祝えば何をされるかわからない。 それ故にクリスマスという言葉自体はヤーナムではほとんど定着していなかった。

 代わりに年の瀬が迫ると家庭があるものは家族で過ごし普段より豪華な食事をとるなどをし、恋人がいるものは二人で寄り添いお互いへの愛をささやいたりするのだ。
 狩人たちもその日ばかりは休む者が多く、よっぽど実入りの良い狩りでない限りはめったに出動せず仲間たちといつもより少し高い酒を飲んで騒ぐ。
 粛々と狩りを続けているのは医療協会の狩人くらいだろう。

 アルフレートもまたその日は狩りにでるのも血族を探すのも辞めて、ヤマムラと過ごそうと思っていた。ヤマムラは狩人が出る人数が少ない時は普段より稼ぎどきだからと仕事をするつもりだったようだが、せっかくなのだからと留めたのだ。
 最初は渋っていたヤマムラだったが、その日が恋人同士で過ごすものだと告げると照れながらも了承した顔がやけに可愛かったのだがそれは今は良いとしよう。

 問題は、ヤマムラに何をプレゼントするか。だ。
 元々ヤマムラはあまり物欲がある方でもなく、着物も荷物も最小限だ。狩人という仕事柄、明日も生きている保証はない。だから余計なものを求める事はないのだろう。
 それ故にヤマムラには何をプレゼントしたら喜ばれるのかわからなかった。

 普段から文字を学ぶために本を読んでいるから本なら喜ばれるだろうが、ヤーナムにある本はほとんどが啓蒙を高めるためのもの。 医療協会の賛辞に満ちた胡乱なものだからとても勧められたものではない。
 故郷での装束をそのまま狩装束にしているヤマムラにヤーナム風の洋服などをとも思ったが、着慣れない服をもらってもヤマムラも困るだろうし着る機会もなさそうだ。
 かといってこの街でヤマムラが普段着ているような着物を探すのはもっと難しい。
 カンテラやナイフといった日用品なら困らないだろうが、消耗品扱いなのは寂しいし、だからといって意匠に凝ったナイフなどをプレゼントしたら飾られても意味はない。

 あれやこれやと考えても結局妙案は浮かばなかったので、アルフレートは思い切ってヤマムラに聞いてみる事にした。

「えっ、プレゼント? そんな事を考えていたのか……そうだなぁ……」

 欲のないヤマムラにそんな事を聞いても悩ませてしまうだけかもしれない。そう考えていたアルフレートだったが、ヤマムラは最初から決めていたように口を開いた。

「それだったら、香水をくれないか? 普段君がつけているものがいいんだけれども」

 思いも寄らない提案に少し驚きはしたが、プレゼントとしてそれほど悪いものではない。
 ヤーナムは風呂に入るような文化がない上に狩人たちはいつも血を浴びる。体を拭いたりと気を遣っても血の臭いは染みつくもの。そしてあまりに血に染まりすぎると少しずつ人間性が薄らいでしまうものだ。
 だからアルフレートはよく香水を使っていた。
 獣狩りをする時は仕方ないがせめて日常を過ごすくらいは人間らしい体でいたかったからだ。
 ヤマムラもそう思ったのだろう。値段もそれほど高くないし、香水の瓶は意匠も細かく施されてプレゼントに最適とも言えただろう。

「い、嫌ですよ。ダメです、私の香水なんて……」

 だがアルフレートの口はよく考えぬうちからそれを拒む。

「別にヤマムラさん、臭い訳じゃないでしょう。ほかの狩人よりずっと綺麗に体を拭いてますし、獣のにおいも血のにおいも他の狩人よりずっと薄いですよ。それに、私はヤマムラさんの匂いが好きなので……それが、無くなってしまったら、その……困ります」

 アルフレートの言葉を聞いて、ヤマムラは少し驚いたように口を開ける。だがすぐにいつもと同じ優しい笑顔になると、照れたように鼻の頭を掻いて見せた。

「俺みたいなおじさんの匂いまで好いてくれるというのは少し気恥ずかしいが、実のことを言うと俺も自分で使うために香水が欲しいって訳ではないんだ」
「えっ、そうなんですか? だったら、どうして……」
「君と、同じ理由だよ」

 そしてヤマムラは普段から自分が首元に巻いている襟巻きに触れた。

「獣狩りをしていると、一日中帰れないなんて事もあるだろう? 血を浴びている時なんて正気を失いそうになる。そんな時でも君の匂いが傍にあれば、俺はかろうじて人間に留まっていられるんじゃないか。そう思ってから、君の香水が欲しいんだ」

 穏やかな言葉はアルフレートの胸に棘のように突き刺さり、強いアルコールを煽ったときのように顔を一気に赤くする。

「そ、そういう理由なら……わかりました。でも、あれですよ! 匂いが傍にあるからって……ちゃんと、帰ってこないとダメですよ!」
「はは、それはわかってるよ。匂いがあってもそこに君の温もりは無いからね」

 ヤマムラは笑いながらアルフレートを抱き寄せ、その匂いを確かめながらささやいた。

「それで、君は何が欲しいんだい? ……俺ばかりがもらっては悪いからね」
「私は、貴方と一緒にいられればそれで充分なんですが……」
「それだったら俺もそうだよ。あいにくさして金持ちでもないから良いものは贈れないだろうけど、君が望むもので俺に手に入るものなら何だって手に入れてみせる」
「だったら……少し考えておきますね」

 アルフレートはくすぐったそうに笑う。
 いったいヤマムラから何をもらおうか。それをねだった時、ヤマムラはどんな顔をするのだろうか。
 そんな事を考えながら。

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