インターネット字書きマンの落書き帳
愛される資格など必要ないということ(どう゛ぁえら)
好きなネタを好きに描く、私の好きな言葉です。(擦るな)
最近は久しぶりに「エランドゥルさんってカワイイんだよな」欲が湧き上がっているので、エランドゥルさんに対して激重感情を抱いているドヴァーキンを書こうとおもい……ます!
今回の話は、ドヴァーキンがなんとなく「この人を助けてあげたい、救ってあげたい、愛するという意味を知って欲しい、でも自分がそんな風に思うのは烏滸がましいのではないだろうか」みたいなくでぇ感情を抱く話しです。
くでぇ感情を抱いてるドヴァーキンですが、この時点でエランドゥルさん自身もドヴァーキンに対して「愛されたいと思っているクソデカ感情を押し殺している」という両片思いの状態だという事をご説明しておきます!
最近は久しぶりに「エランドゥルさんってカワイイんだよな」欲が湧き上がっているので、エランドゥルさんに対して激重感情を抱いているドヴァーキンを書こうとおもい……ます!
今回の話は、ドヴァーキンがなんとなく「この人を助けてあげたい、救ってあげたい、愛するという意味を知って欲しい、でも自分がそんな風に思うのは烏滸がましいのではないだろうか」みたいなくでぇ感情を抱く話しです。
くでぇ感情を抱いてるドヴァーキンですが、この時点でエランドゥルさん自身もドヴァーキンに対して「愛されたいと思っているクソデカ感情を押し殺している」という両片思いの状態だという事をご説明しておきます!
「贖罪という名の拒絶」
ドヴァーキンはカジートから譲り受けた煙草を刻むとそれを紙に巻きながらエランドゥルを見た。 食事を終えても彼は静かに祈りを捧げている。
「エランドゥル、あんたはどうして司祭になったんだ?」
煙草を巻き終えるとドヴァーキンは傍らにあるランプで火をつけた。随分と街から離れた場所まで来てしまったから今日は野宿をする覚悟ではあったがこの周辺なら危険な獣も出ないし辺りを確認した限り野党の類いもいないからそこまで危険はないだろう。
そんな事を考えながらドヴァーキンは煙草を吸う。カジートたちから融通された煙草はスクゥーマのような危険性こそないもののひどい常習性がありドヴァーキンは高い金を払いながら時々この嗜好品を譲り受けていた。
「どうして、か……そうだな……」
エランドゥルは祈りを終えると髭に触れながら考える。思い出すのも億劫になるほどの遠い記憶を呼び出しているのだろうか、目を閉じて長考するエランドゥルの横顔をドヴァーキンはぼんやりと眺めていた。
ドヴァーキンがそんな質問をしたの事に深い意味はない。ただ、一度ヴァーミルナの信徒を経験しそこで恐怖と裏切りの罪業を背負った男が何故また自分を超越した力を信じようと思ったのか興味をもった程度の小さな好奇心からだった。 ヴァーミルナはデイドラとはいえ定命のものたちより遙かに強い力をもつ。マーラはデイドラほど身近ではないがエイドラであり定命のものと密接に関わりがないがそれでも大きな加護をもたらす存在だ。一度巨大な力に打ちのめされた経験があるというのに、再び大きな力を信仰しようという心境はドヴァーキンには理解が及ばない領域だったのだ。
あるいはドヴァーキンがノルドでありダンマーであるエランドゥルよりは短い一生しかもたず、また己の力を誇示し猛々しく生きるのを良しとするドヴァーキンにもエランドゥルを少しでも理解したいという気持ちがあったからかもしれないが。
「そうだな……一つは私を救ってくれたのがマーラ司祭だったというのがあるだろう」
「あぁ、ヴァーミルナから逃れた時に助けられたんだっけ」
ドヴァーキンはエランドゥルに向かわぬよう煙を吐きながら相づちを打つ。紫煙は夜の闇へ溶けて消えていった。
「ミアズマを恐れ逃げ出しはしたが、私は自暴自棄になっていてな。生き残ってしまったが、あのままヴァーミルナが私を諦め許す事などないといった恐怖や仲間を裏切った罪悪感で押しつぶされそうになり、このまま雪原で誰にも知らず凍えて果てればいいとさえ思っていた」
焚き火を眺めながらエランドゥルは目を細める。記憶にある雪原の歩みを思い出しているのだろうか。灰色の空といつ終わるかわからぬ雪中の歩みの最中でも痛みすら感じぬ絶望を抱き彷徨うエランドゥルの姿を想像すれば我が身のように辛い。ドヴァーキンは加えた煙草を指に持ち替え一瞬だけ目を閉じ嘆息した。
「無理に語らなくてもいいぞ、エランドゥル。思い出すのが辛いほどの記憶なら俺だってそれを暴こうとはしない」
軽い気持ちで聞いていいような話ではない。そう思い話しを留めようとするドヴァーキンを前に、エランドゥルは普段よりいっそう優しい笑顔を浮かべていた。どんな罪業でも全て許されてると感じさせるエランドゥルの笑みは彼にとって司祭こそが天職であるのだろうと思わせるのに充分だったろう。
「いや、大丈夫だ。それに君には聞く権利がある……ほとんど何も持たぬ私にあれだけ尽力してくれたのだからね」
エランドゥルは静かに首を振り、相変わらず穏やかな口調で語る。声色に恐怖やおびえの色は見られない。過去の全てを割切っているという訳ではないが、自分なりにもう折り合いがついているのかもしれない。とはいえ、進んで語りたくない話ではなかろう。 エランドゥルの言葉通り、ドヴァーキンが聞いたから答えてくれているのだ。
ドヴァーキンは少し俯くとまた煙草を吸う。今は過去を語るエランドゥルよりそれを聞く自分のほうが幾分か落ち着かない気持ちになっているような気がしたのは、改めて自分がエランドゥルにとって特別な存在であるのを聞かされくすぐったい気持ちになっているからだろう。
「あの時助けられたのは奇跡のようなものだったが、救われた癖に死にきれなかった自分の意気地が無いのを随分と恨んだものだ。だが、助けられたばかりでまたすぐ死にに行くのはあまりにも不義理だろうと思ったし、私を助けた司祭もまたすぐに死ぬのではないかと随分気を揉んでくれてね……多少なりとも恩返しをしようと、そうしてしばらく司祭を手伝うことにした。司祭はマーラの教えを熱心に私へと説いて、私はそれに影響され気付いた時には彼の志を継いでいた……簡単にいえばそんなものさ」
なるべく感情を排除し出来事だけを告げるエランドゥルの言葉はわかりやすくもあり筋も通っている気がしたが、ドヴァーキンは淡々と語る言葉に漠然とした不安を抱いていた。
彼の言葉通りであれば、エランドゥルはもう己の使命をすべて果たしたと言えよう。ヴァーミルナとの決着をつけ過去に一区切りをつけた今のエランドゥルには生きている理由などないのではないか。今は協力者である自分を慮り傍にいてくれるが、その役目を終えたら煙のように消えてしまうのではないか。そんな漠然とした不安にかられる。
また、救ってくれたというマーラ司祭というのも気になった。エランドゥルはあまり多く語らないが、実はお互い深い絆を抱いていたのではないか。内心でその司祭を慕っているのではないか。忘れらず、いずれその人物のもとへ帰ろう等と考えてはいるのではないだろうか。そんな事ばかり気にしてしまうのだ。
ドヴァーキンは不安を吐き出すよう煙草を吹かす。紫煙はさっきと同じように闇色へ消えていった。
「そう、か。いや、マーラは愛の神だからな。誰でも愛し受け入れる……エランドゥルが巡り会うのならぴったりだな」
マーラの教えを解くだけありエランドゥル自身も寛容で人々多くを受け入れ許すような優しさをもっている。そういう意味で告げたつもりだったが、エランドゥルはその言葉を違う意味で捉えたのだろう。どこか寂しげに笑うと燻る火をじっと見据えた。
「私はもう、誰かに愛されようとも愛そうとも思ってないしその資格もない、最もマーラの加護に遠い所にあるものさ。だが、だからこそ……だからこそ、私を愛さなくても良いから世界にある多くの人々に愛を知ってほしい。愛され、祝福された命であることを伝えたい。それを願っているんだ」
きっとそれは本心なのだろう。 マーラの司祭でありながらマーラの愛を受け入れず、かわりにその愛を他のものへと与える。それがエランドゥルの生き方であり彼の贖罪なのだ。
ヴァーミルナを背いて欺いたカシミールは名をかえても生き方までは変えられず、今度はマーラを背き欺いて代わりに愛を与えようとしているのだ。
エランドゥルはきっとずっとそのように生きてきたし、そのようにしか自分の思いを伝えられない男なのだろう。
「そうか。そう……なんだな」
煙草はほとんど灰になり焼き切れ落ちそうになったからドヴァーキンはそれを焚き火に投げ込む。乾いた煙草の葉からするにおいが焚き火から一瞬だけ漂ったがすぐに消えていった。
「さて、そろそろ寝るといい。今日は野営だ、先に私が番をしよう」
「いや、俺が番をする。まだ疲れてもいないしな」
「そういうが君は先に番をさせると私を気遣って朝まで寝かせていてくれるだろう? その気持ちは嬉しいが、いつも申し訳ないからな。今日は先に番をさせてくれ。生憎私は君のように優しくもなければ強くもないから、途中で君を起こしてしまうだろうがね」
エランドゥルはそう言い、半ば強引にドヴァーキンをベッドロールへ押し込む。
「エランドゥル……」
彼は愛されなくても良いといった。その資格も無いだろうと。 だがドヴァーキンは彼こそ本当に愛されるべきなのではないかと、強い思いを抱いていた。もしこのままマーラの愛から彼がこぼれたままであるのならあまりに理不尽ではないか。本当は誰より孤独で臆病な彼の一生に光が当たらないのだとしたら……。
「あぁ、そうか。それなら……」
もしもエランドゥルがマーラの愛を望んでいないのなら、自分が愛してやれるのかもしれない。ドヴァーキンはふと、そんな風に思っていた。だがこの思いが同情なのかたんなる気まぐれなのか、まだドヴァーキン自身にも判別つかない。同情で手を差し伸べればかえってエランドゥルは傷つくだろう。気まぐれや遊びで翻弄していい相手でもない。
だから今は言葉を飲み込む。自分自身の気持ちが曖昧のままエランドゥルを翻弄したくなかったからだ。
「どうした……眠らないのか?」
「いや、何も。おやすみ、エランドゥル」
「あぁ……」
ドヴァーキンは微かに笑うと、毛布にくるまり目を閉じる。
今は言えない。言える程自分の思いが確かなのかわからなかったし、本気で思っていなければエランドゥルに失礼だろうと思ったからだ。だがこの心が定まったら、この手を彼の前へ差し出そうと思う。
そして願おう。マーラの愛を拒むのなら、自分の愛を受け入れて欲しいと。
そうして差し出した手をエランドゥルが困ったような顔をして、それでもおっかなびっくりととってくれれば幸福だ。
そんなことを思いながら。
PR
COMMENT