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インターネット字書きマンの落書き帳

   
惑う死と迷わぬ生(ハデスのザグレウスとタナトスの二次創作だよ)
ハデスの二次創作を書きました。(挨拶)

まだ完全にクリアした訳じゃないんですけどね。
遊んでれば遊ぶほど「次はこうやってプレイしてみよう」「もう一度遊べるドーン!」みたいな感じでだらだら遊び続けてしまってもう、止めようがないよ!

などと思いつつ、毎日! たのしく! わくわく! 遊んでます。
FF14とELDEN RINGとハデスで遊んでる!
人生、娯楽を楽しむには時間が短いな!

作品は、ザグレウスが生まれてから心境変化がものすごくあった自分に戸惑うタナトスの話です。
ザグレウスはわりと「小さい頃の話」をしてるからバブちゃんの時期あったんだな~。なんて思ってたら楽しい気持ちになりました。

バブレウス! それは楽しいきもち!

自分は弟キャラなんだ!
という謎の自尊心があるヒュプノス概念とかも……でるよ!




『きみが生まれてからの世界』

 ヒュプノスは何か放っておけない所があるよな。
 手のかかる弟みたいな感じがする。

 ザグレウスの言葉に、タナトスは珍しく笑って見せた。

「そう言うが、ヒュプノスは俺と双子の弟だ。人間の価値観でいうとおまえの方が『弟』なんだぞ、ザグレウス」

 人間たちにとって畏怖の対象でしかない死の化身であるタナトスが人間の価値観について語るのは珍しかった。
 冥府の神々で最も頻繁に外の世界と冥府とを行き来しているが、タナトスにとって外の世界は雑音が酷いだけの世界であり憧れの対象ではない。興味がないと思っていたからだ。

「なんだ、タナトスも人間の価値観なんて知ってるんだな……」

 ザグレウスは驚きつつタナトスの空になった器に葡萄酒を注ぐ。
 酒場に貯蓄された葡萄酒は冥府に暮らす魂たちにとって数少ない娯楽であり、その娯楽を何ら対価なく楽しめるのが神々の特権でもあった。

「死に際に立ち会うだけとはいえ、その最中で人間たちの諍いなどを見る事も少なくない。血や家族というのに重きを置くものは多いからな……とはいえ」

 と、そこまで言いタナトスは口を閉じる。
 より人間に対して興味や関心を抱いたのはザグレウスが生まれてからであり、冥府で生まれたというのに人間のように成長し人間のような価値観をもち人間のように血を流す。そんな彼に興味を抱いたからなのだが、それを口にするのは「悪いこと」のような気がしたからだ。
 沈黙も不自然だろうと思い、タナトスは慌てて話題を変えた。

「おまえが生まれる、という話が出た時、ヒュプノスは随分慌てたんだぞ。『自分が弟なのに、もっと下の弟が出来ちゃったら自分の立場がない』なんてな」

 ヒュプノスは冥府にいながらもその性格は陽気だ。やや暢気すぎるところもあるが、砕けた口調やひょうひょうとした態度などは誰もが規律に従順な格式張った冥府には珍しいといえる。
 それはヒュプノスが眠りの神であり眠りを通じて人間たちに近づいているから。つまりヒュプノスは冥府の神々で最も人間に近しい存在だからというのはあるのだろう。
 当然、人間がもつ「家族」や「兄弟」といった関係については冥府の誰よりも理解している。
 タナトスとは双子の「弟」であり、母であるニュクスからも手のかかる末っ子のように扱われてるヒュプノスがその立場を奪われると思ったら驚き、うろたえる姿はザグレウスでも容易に想像が出来た。

『そんな、いままでボクがいちばんの弟だったんだよ!? それなのに、二番の弟になっちゃう』

 なんて、ニュクスに泣きついていた姿を想像し、ザグレウスはかすかに微笑んだ。

「ヒュプノスは大事なことを気にしない癖に、些細な事を変に気にする時があるからなぁ。それは随分と気を揉ませただろう」
「そうだな、だがおまえが生まれてまだ小さかった頃は誰よりもヒュプノスがおまえをかまっていたんだぞ。可愛い可愛いって、率先して世話を名乗り出たくらいだ」
「うーん、覚えていないが……ヒュプノスの性格ならそうだな。きっと楽しく世話をしてくれてたんじゃないか」
「おまえは小さかったからな。それに俺たちは長く存在しすぎてる。あまり古い事はよほど意味がない限りは覚えていないものだ」

 舐めるように葡萄酒を飲むザグレウスを前に、タナトスは目を閉じる。

 燃える足をもつザグレウスをあやすのは神とはいえ大変だったが、ヒュプノスは誰よりもザグレウスの面倒を見たがった。
 最初こそは『ぼくより弟が出来るなんて嫌だ』などと言っていたが、小さなザグレウスに誰よりも『お兄ちゃん』として接していたのがヒュプノスだったのだ。
 だがヒュプノスは眠りの神であり、眠くなると場所など問わずに居眠りを初めてしまう性分だ。 小さなザグレウスに本を読んだり歌ったり。人間がするようにあやしているうちに眠くなってしまうのか気付いたらザグレウスと並んで寝ているヒュプノスがいるのがお約束となっていた。
 寝息をたてるザグレウスに自分のゆりかごに似たマントをかけて隣で寝ているヒュプノスの姿を見た時は最初こそあきれたものだが、次第にその姿を見ると安心するようになったのをタナトスは覚えている。
 あれがきっと『可愛い』という感情なのだろう。

 ザグレウスが生まれ、彼がする仕草は話す言葉などを聞いているうちにタナトスは様々な感情らしいものを抱くようになっていた。
 可愛いや愛らしい、楽しい、嬉しい。そのほとんどはヒュプノスからの受け売りか死に際の人間たちを観察するうちに「おそらくこれが近い感情だろう」と自ずと気付いたものだが、それでも今まで無かったものが自分に芽生えるとは思わなかった困惑はあった。
 それを周囲に相談もせず黙っていたのは自分が「おかくなった」と思っているのもあるが、それ以上に今のこの気持ちを少なからず楽しんでいたからだろう。

 ザグレウスの傍にいるのは楽しい。表情がコロコロと変わるのはヒュプノスも同じだが、ヒュプノスの感情はやや作られた側面が多い。 それに対してザグレウスの表情は楽しいだけではなく苦悩や痛み、悲しみ、尊敬。その他沢山の顔を見せる事があり、それは冥府で粛々と己が職務を果たしている摂理としての存在である自分とは大きな違いに見えた。
 冥府にとってザグレウスという神は異質であり歪な存在だったろう。
 だがその不確定要素があまりにも多いザグレウスという存在にタナトスは今までに感じた事のない思いを抱くようになっていた。

 好奇心、探究心、興味、信頼、執着、好意。
 あらゆる感情を壺に入れ煮詰めて混ぜたような複雑な思いは、それまで粛々と死を与え続けていた神が初めて抱くものにしてはあまりに複雑で大きい。
 そしてその思いの大きさと同じくらいザグレウスという存在そのものも、タナトスにとって段々と大きくなっていた。

「……ここを出るというのは本当か」

 ザグレウスがそれを聞かれるのを好まないとわかっていても、つい聞きたくなる。
 冥府から出たら二度とここに戻るつもりはないのだろうか。父であるハデスともっと対話をすべきではないか。外の世界が決して楽園ではない事をタナトスは知っていた。冥府から出ようとすれば亡者たちがこぞって襲いかかってくるだろうし、その時ザグレウスは大いに苦痛を味わうだろうとも。
 彼にはそんな目にあってほしくない。裏切りや欺きを常とする人間たちの存在に近づいて欲しくないと思っていたし、ザグレウスがそのように変わっていくのが恐ろしいような悲しいような気持ちにもなる。

「まだその話か? 止めないでくれ。とにかく一度、ここじゃない世界を見てみたいんだ。俺は知りたい事があるからな」

 ザグレウスは唇をとがらせながらそう告げる。
 その言葉は怒りより、散々と色々な神から言われてうんざりしているといった様子が大きかった。
 事実、ザグレウスの脱出に背中を押しているのはアキレウスだけ。応援するという程でもないが前向きに捉えているのはヒュプノスだけだ。やめておけなんて言葉はとうに聞き飽きているのだろう。

「そうだな。わかってる、わかってるんだ……」

 理解している、だが納得はしきれていない。
 納得はしていないが、頑固な性格のザグレウスは決して己を曲げる事はないのはわかっていた。 だから止めれば止めるほど彼は早くに冥府(ここ)を出ていこうと思うだろう。
 そもそも、彼が知りたいと願う気持ちも今のタナトスなら少しだけわかる。自分が何者でもないという立場をザグレウスは嫌っていないが、その出自に秘密があるのなら知りたいと思うのは至って自然なことだろう。それが出生にまつわる事ならなおさらだ。

「それじゃ、そろそろ行くよ。付き合わせて悪かったな、タナトス」
「あぁ……俺はもう少しだけ飲んでいく。まだ葡萄酒が残っているからな」
「わかった。じゃぁな」

 ザグレウスは片手を上げて酒場から去る。
 その背中を見送って、タナトスは残った葡萄酒を飲み下す。さきほどまでは甘く思えた葡萄酒が、今はひどく渋くて苦い味に変わっていた。

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インターネット駄文書き
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