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インターネット字書きマンの落書き帳

   
クリスマス後の黒ガスの話(BL)
クリスマスに書いた黒ガスのおまけ文章を書いたのでぶんなげます!
ハッピークリスマスしやがれ!
終わらないクリスマスしやがれ!

オラァッ!
投げたぜ! じゃあな!



「おなじにおいに包まれて」

 温かな部屋で、温かなガウンを着て、温かな飲み物が差し出される。
 山田は湯気がのぼるホットミルクを、ぼんやりと眺めていた。
 ただ、会えればよかった。
 クリスマスだから顔を見て、ただおめでとうの一言を告げられればそれだけで満足だった。
 だから、クリスマス・パーティで残った料理をつめ、黒沢の家まで出かけたのだ。
 黒沢が安っぽい料理なんて好きではないのは知っていた。冷めたチキンやピザなどを持っていっても喜ばないだろう。
 それでも、会いに行ける口実にはなる。
 そう思って箱をもち、ただひたすらに待って、目的通り「メリークリスマス」と告げる事ができた。
 だからそのまま帰るつもりだったのだが……。
「ど、どうしよう……こういう時、どうしたらいいのさ。もう……」
 山田は自分の頭を掻く。触れた髪は、黒沢が丁寧にドライヤーで乾かしてくれたから滑らかな手触りになっていた。
 濡れた髪のままだと体が冷えるといけないからと、わざわざドライヤーを出してくれたのだ。
 子供じゃないのに、と思ったが、黒沢を前にすると文句や軽口は叩けない。
 黒沢に嫌われたくないという思いもあるのだが、彼が善意でそうしてくれるのが分かるからだ。
 山田は、やわらかなガウンの裾を握ると、ホットミルクを見つめる。
 冷めてきたのか、表面にはうっすらと膜ができていた。
『すっかり冷えてるじゃないか。温まっていけ』
 黒沢にそう言われ、肩をしっかり抱かれたものだから断れなかった。
 温かな湯に、ラベンダーの香りがする入浴剤まで入れてもらい浴室に追いやられたら、風呂に入らないという選択はなかっただろう。
『しっかり頭も洗っておけ、毛先が濡れて寒そうだからな』
 あまり浴室を汚したくないのに、そう釘を刺されたものだから素直に髪を洗い、体も洗う。
 全身から、普段の黒沢と同じにおいがするのがとにかく気恥ずかしかった。
 慌てて湯をかけ泡を流して浴室を出れば、自分の服がないかわりに柔らかく温かそうなガウンが置かれている。
『黒沢さんっ! あ、あの。あれ! 僕の着替え、ないんだけど……』
 慌ててドア越しに声をかければ、黒沢はノンビリとした口調でこたえた。
『あぁ、汚れていたから洗濯に出しておいた。濡れていたみたいだしな……。心配するな、ちゃんと乾燥機にかける。明日までには乾いているさ。かわりに、それを着てくれ』
 簡単に言うが、黒沢サイズのガウンは山田にはやや大きく見える。
 それ以前に、自分のようなちんちくりんが黒沢の着る豪奢なガウンを着て似合うのだろうか。
 下着も身につけてないのにガウンだけ羽織るというのも抵抗がある。
 だが、バスタオルを巻いたまま部屋に行く方がよほどおかしいだろう。
 仕方なくガウンを羽織れば、黒沢は満足げに笑うと。
『似合ってるじゃないか。しかし、髪が濡れたままなのは感心しないな。ちゃんと乾かしておけ。風邪をひくといけないからな』
 そういって山田を座らせ、髪に何だか知らないクリームを塗り、丁重にドライヤーで乾かしたのだ。
 その後、ホットミルクを差し出した後。
『俺も風呂に入ってくる。お前は好きにくつろいでいてくれ』
 そんなことを言われて、今は一人でソファーに座っている。
 だが……。
(この状態でくつろげるわけないって……)
 山田はさめたホットミルクを一気に飲み干し、ガウンの袖で口を拭う。
 乾燥機で服を乾かすといっていたが、すぐに終わるものではないだろう。
 服が乾くまで待てというのは、泊まって行けということだ。
(まさか、ベッドで一緒に寝ろとかいわないよね……)
 山田は、隣で黒沢が眠る姿を想像し、すぐに首を振る。
(いやいやいや、無理。無理だって! 黒沢サンが隣で寝てて、寝られる訳ないし。それに、僕だってこの下、裸だし……)
 黒沢の部屋なのだから、客である山田が黒沢のベッドに寝る訳にはいかないと、そう思っている。
 だが黒沢なら「体を冷やすな」とか言って、無理矢理にでもベッドにつれていくだろう。
 一緒に寝る、という事にならずとも、黒沢が普段使っているベッドに入るだけで緊張して眠れない。
(そうだ……!)
 山田は、ソファーに寝転ぶと目を閉じる。
 黒沢が風呂から出る前に、ソファーで寝たふりをすればいいのだ。
 そうすれば、黒沢だって諦めてソファーで寝かせておくだろう。
 ガウンがやや大きく、足元や胸元が開いてしまうのは少し気になるが、仕方ない。
 裾を抑えて横になれば、程なくして黒沢が部屋に戻ってくる。
「ん……山田、寝てるのか?」
 黒沢は確かめるよう、山田の頬に触れる。
 風呂上がりの指先は温かく、触れられれば鼓動が高鳴り、音が聞こえないか心配になる。
 だが黒沢は何も気付かないよう冷蔵庫に向かうと、水を取り出しコップに注ぐ。
 静かな部屋に、グラスを傾ける音だけが聞こえていた。
 どうかこのまま、山田の事を気にせず寝室に向かってくれればいい。
 そう思っていたのだが。
「……寝ているなら、仕方ないからな」
 気付いた時、黒沢は山田のそばにたっていた。
 そして当然のように山田の体を抱きかかえると、そのままベッドまで運ぶ。
(ちょっと、何してんの黒沢サン! 僕のことなんてどうだっていいから……! もう……)
 山田の思いとは裏腹にベッドの上に転がされ、はだけたガウンを丁重になおし、温かな布団をかけられる。
 こんなに大事にされる必要はない。自分のせいで、黒沢が風邪でもひいたら大変だ。
 いっそ起きているのだといって、ちゃんとベッドで寝てくれと頼もうか。
 様々な思いが頭の中でぐるぐる回る最中、黒沢の微笑む吐息が山田の耳にかかる。
「……いつもありがとうな。いい夢を」
 それは優しく、温かく、何よりも求めていた言葉だったから、山田はぐっと目を閉じる。
 ありがとうは、こっちのことばなのに。
 黒沢もそう思っていてくれた。それだけが、ただ嬉しくて……。
(おきたら、僕も……そう、言おう。黒沢さんに、ありがとうって……いっぱい、いっぱい言おう)
 ベッドの中で丸くなり、何度も何度もそう誓う。
 肌も、髪も、毛布の中も、全て黒沢の香りに包まれたその夜、山田は夢も見ないほど深く心地よい眠りにつくのだった。

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インターネット駄文書き
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紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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