インターネット字書きマンの落書き帳
クリスマスに肉を~ (黒ガス・BL)
クリスマスが今年も終わってるー♪
いや、でも、ユリウス暦ではまだ正教会は1月7日だし……?(挨拶)
ま、ま、せっかくですのでね。
クリスマスに両片思いみたいになってる黒沢×山ガスを書きました。
俺は! 黒沢に対して従順かつ献身的な山ガスという概念が! だいすき!
なので、黒沢のことだいだいだ~いすきな山ガスを書きました。
Happy Christmas♥
いや、でも、ユリウス暦ではまだ正教会は1月7日だし……?(挨拶)
ま、ま、せっかくですのでね。
クリスマスに両片思いみたいになってる黒沢×山ガスを書きました。
俺は! 黒沢に対して従順かつ献身的な山ガスという概念が! だいすき!
なので、黒沢のことだいだいだ~いすきな山ガスを書きました。
Happy Christmas♥
【会いたい時の理由付け】
パーティが終わり、会場から外に出た時、すでに日付が変わっていた。
まったく、クリスマス・パーティの予定があるならもっと早くから言ってくれればいいものを。
父はいつだって急に予定をねじ込んでくる。
息子である自分なら断らないと思っているのだろうか。
黒沢は内心そう呟き、愛用の時計を眺めた。
それでも、父の誘いを断る事ができないのは仕方ないだろう。
というのも、父の言う「パーティ」はお偉方との顔合わせを意味するからだ。
警察官僚である父には、議員や代議士といった知り合いも多い。
父の後を付けて将来のため、今のうちから顔を売りコネをつくることがどれだけ大事かというのは、黒沢もよく心得ていた。
『動画で稼いでいるのは知っている。だが、そんな流行り廃りに左右される商売はお前には向かん。いずれ役に立つはずだ。しっかり人脈を育てておくんだな』
父の言葉が反響する。
5Sのことを遊びとは思っていないが、こうして父の言葉に習って行動をするのは、罪悪感を抱いていた。
今回は、5Sのメンバーとともにクリスマス・パーティの約束をしていたのだからなおさらだ。
クリスマス・パーティをしようと言い出したのは、眉崎だったか。それとも谷原だろうか。
気付いた時にはメンバー全員で、イヴに集まる事になっていた。
黒沢は5Sメンバーのためケーキとオードブルを予約する。
アルコール、ドリンクは眉崎が担当し、飾り付けは清水と谷原が張り切ってやってくれた。
クリスマス用のチキンは、当日に山田が買いだしに行く予定だ。
黒沢が呼ばれたパーティと比べれば、随分と安っぽいパーティだろう。
それがわかっていても、黒沢は5Sのメンバーと祝いたかったのだ。
味が濃いだけのベタベタするチキンも、缶に入った甘ったるいカクテルも、いつものメンツで集まれば何より美味いごちそうだ。
ほろ酔いのまま各々が好きに喋り、流行りの音楽を流し、他の配信者の動画を見る。
食べ散らかした料理にビール瓶や空き缶を片付ける時も、皆がそこにいた熱を肌に感じて心地よいものだ。
仲間たちがそばにいて、自分の理想に共感してくれる。
黒沢にとってそれが何より心地よかった。
それに……。
『えっ? 黒沢サン、来られなくなったの? なんで、どうして!』
前日になり急に予定を入れられた事をメンバーに伝えた時、山田のしょげた顔を思い出す。
あきらかに萎れており、見るからに元気がなくなっていた。
『うん、大丈夫。黒沢サンがいなくても、みんなのチキンちゃんと買ってくるし。心配しなくても、盛り上げるからさ』
悪いと思って謝れば、山田は無理をして笑う。
寂しさを少しでも見せれば、黒沢が心配すると思ったのだろう。
山田はいつも黒沢に対して従順だった。
黒沢が「そうだ」と言えばその通りにするし、「違う」と言えば決してそれはしない。
黒沢を規範とし、一つの理想として付き従っているのは明白だ。
5Sになる前、山田はかなり苦労をしていたというのを、谷原から聞いている。
そんな山田にとって、黒沢の掲げる理想や正義がエゴだということくらい、わかっているだろう。
山田は聡い男であり、慎重な人間なのだから。
それなのに、山田は考え納得した上で、黒沢と。5Sと行動を共にする事を決めた。
黒沢の正義が歪であったとしても、山田はこちら側にいるのを選んだのだ。
付き合いの長い眉崎や清水が難色を示す時でも、山田は常にベストをつくし、出来ないものを出来るよう必死で考えてくれる。
今の山田は黒沢にとって誰より信頼できる参謀役といってもいいだろう。
――いや、本当は、わかっている。
山田の献身は、黒沢の正義を受け入れただけではない。
羨望と恋慕が入り交じった気持ちを抱え、ただそれをまっすぐにぶつけているというだけだ。
冷笑家で皮肉屋で、常に他人を見下すような素振りをする癖に、黒沢への好意を隠すことができない。
その不器用さを、黒沢は好いていた。
(眉崎や清水はともかくとして……山田には何か埋め合わせをしてやらないとな。二人で、食事でも……)
そんな事を考えながら、自宅マンションへ向かう。その入り口で見知った影に気付いた。
細身で、ひどい猫背の俯きがちな姿は間違いない。山田だ。
黒沢は自然と走り出していた。
「山田!」
声をかければ、山田は顔をあげる。
冬の寒さのせいか、鼻の頭がすっかり赤くなっていた。
「あ、黒沢サン。おかえり……」
「おかえり、じゃないだろ。おまえ、どうしてこんな所に。というか、いつからいる? パーティはどうした?」
「んー……パーティは、日付変わる前にはだいたい終わったかなー。清水さんは、明日は友達と集まるからって早めに帰って、眉崎さんと谷原サンは結構お酒飲んだみたいで、二人とも撃沈。今頃、ソファーで寝てると思うよ」
「そ、そうか……それで、どうしてここに?」
「えーっとねー……はい、これ」
山田は大事そうに抱えていた箱を、黒沢に差し出す。
「オードブルとか、ケーキとか、チキンとか。残り……なはは、黒沢サンからしてみると、安っぽくて冷めたジャンクフードばっかりだけど。パーティの雰囲気、少しでも味わってほしいな、って」
そのために、待っていたのか。
箱を受け取った時に触れた指は氷のように冷たいのに、目の前にいる山田は屈託ない笑顔を向ける。
「なは……おかえりなさい、黒沢サン。それと……メリークリスマス。実はこれ言いたいからここまで来たんだよね」
笑顔の唇から、白い息が立ちのぼる。
本当に、ただその言葉を告げるため、黒沢を待っていたのだろう。
「ん……それだけだから。じゃ、行くね。ばいばーい」
山田はオーバーサイズのダウンジャケットから少し指先を出し、手をパタパタと振る。
黒沢はたまらなくなり、その手を掴む。
そしてそのまま、山田の体を抱き寄せた。
やはり、冷たい。
指先も、抱きしめた体も、凍えるように冷えていた。
「むぐっ……ちょ、っと……何するの、黒沢サン。苦しいから……」
おまえこそ、何をするんだ。こんな時間まで無茶をして。もっと自分のことを考えろ。
色々と言いたい事はあったが、そんなことは後でいい。
「……行くぞ」
「え? ……どこに?」
「俺の部屋だ。そんな体を冷やしたお前を、このまま帰す訳にもいかないだろう。もう終電もないしな」
「えぇ!? いやいや、ぼく、大丈夫だから。全然、家まで歩いて帰れるし……」
「お前が大丈夫でも、俺が心配だ」
つい、強い口調になり、しまったと思い山田を見る。
怯えたりしてないだろうか。そう思っていたが、山田は微かに頬を緩めた。
「……ふふ。うれし。他の誰に言われるより、黒沢さんに言われるの、やっぱ一番うれしい」
山田の言葉はいつも心地よく、だが少しくすぐったい。
「……行くか?」
「……うん、ありがと黒沢サン」
黒沢はいつも、山田に対して鈍感なふりをして接していた。
メンバーなのだからお互いの思いにあまり深く立ち入るのは、良くないと思っていたからだ。
だが、山田はいつだってこんなにも愛おしい。
ただ純粋に、そして直向きに、全てを捧げ尽くしてくれる。
人生において、自分のために全てを賭してくれる人間と出会える事は奇跡のようなものだろう。
「……メリークリスマス」
耳元で囁けば、山田はくすぐったそうに笑う。
その笑顔は今でも、黒沢の脳裏に焼き付いていた。
パーティが終わり、会場から外に出た時、すでに日付が変わっていた。
まったく、クリスマス・パーティの予定があるならもっと早くから言ってくれればいいものを。
父はいつだって急に予定をねじ込んでくる。
息子である自分なら断らないと思っているのだろうか。
黒沢は内心そう呟き、愛用の時計を眺めた。
それでも、父の誘いを断る事ができないのは仕方ないだろう。
というのも、父の言う「パーティ」はお偉方との顔合わせを意味するからだ。
警察官僚である父には、議員や代議士といった知り合いも多い。
父の後を付けて将来のため、今のうちから顔を売りコネをつくることがどれだけ大事かというのは、黒沢もよく心得ていた。
『動画で稼いでいるのは知っている。だが、そんな流行り廃りに左右される商売はお前には向かん。いずれ役に立つはずだ。しっかり人脈を育てておくんだな』
父の言葉が反響する。
5Sのことを遊びとは思っていないが、こうして父の言葉に習って行動をするのは、罪悪感を抱いていた。
今回は、5Sのメンバーとともにクリスマス・パーティの約束をしていたのだからなおさらだ。
クリスマス・パーティをしようと言い出したのは、眉崎だったか。それとも谷原だろうか。
気付いた時にはメンバー全員で、イヴに集まる事になっていた。
黒沢は5Sメンバーのためケーキとオードブルを予約する。
アルコール、ドリンクは眉崎が担当し、飾り付けは清水と谷原が張り切ってやってくれた。
クリスマス用のチキンは、当日に山田が買いだしに行く予定だ。
黒沢が呼ばれたパーティと比べれば、随分と安っぽいパーティだろう。
それがわかっていても、黒沢は5Sのメンバーと祝いたかったのだ。
味が濃いだけのベタベタするチキンも、缶に入った甘ったるいカクテルも、いつものメンツで集まれば何より美味いごちそうだ。
ほろ酔いのまま各々が好きに喋り、流行りの音楽を流し、他の配信者の動画を見る。
食べ散らかした料理にビール瓶や空き缶を片付ける時も、皆がそこにいた熱を肌に感じて心地よいものだ。
仲間たちがそばにいて、自分の理想に共感してくれる。
黒沢にとってそれが何より心地よかった。
それに……。
『えっ? 黒沢サン、来られなくなったの? なんで、どうして!』
前日になり急に予定を入れられた事をメンバーに伝えた時、山田のしょげた顔を思い出す。
あきらかに萎れており、見るからに元気がなくなっていた。
『うん、大丈夫。黒沢サンがいなくても、みんなのチキンちゃんと買ってくるし。心配しなくても、盛り上げるからさ』
悪いと思って謝れば、山田は無理をして笑う。
寂しさを少しでも見せれば、黒沢が心配すると思ったのだろう。
山田はいつも黒沢に対して従順だった。
黒沢が「そうだ」と言えばその通りにするし、「違う」と言えば決してそれはしない。
黒沢を規範とし、一つの理想として付き従っているのは明白だ。
5Sになる前、山田はかなり苦労をしていたというのを、谷原から聞いている。
そんな山田にとって、黒沢の掲げる理想や正義がエゴだということくらい、わかっているだろう。
山田は聡い男であり、慎重な人間なのだから。
それなのに、山田は考え納得した上で、黒沢と。5Sと行動を共にする事を決めた。
黒沢の正義が歪であったとしても、山田はこちら側にいるのを選んだのだ。
付き合いの長い眉崎や清水が難色を示す時でも、山田は常にベストをつくし、出来ないものを出来るよう必死で考えてくれる。
今の山田は黒沢にとって誰より信頼できる参謀役といってもいいだろう。
――いや、本当は、わかっている。
山田の献身は、黒沢の正義を受け入れただけではない。
羨望と恋慕が入り交じった気持ちを抱え、ただそれをまっすぐにぶつけているというだけだ。
冷笑家で皮肉屋で、常に他人を見下すような素振りをする癖に、黒沢への好意を隠すことができない。
その不器用さを、黒沢は好いていた。
(眉崎や清水はともかくとして……山田には何か埋め合わせをしてやらないとな。二人で、食事でも……)
そんな事を考えながら、自宅マンションへ向かう。その入り口で見知った影に気付いた。
細身で、ひどい猫背の俯きがちな姿は間違いない。山田だ。
黒沢は自然と走り出していた。
「山田!」
声をかければ、山田は顔をあげる。
冬の寒さのせいか、鼻の頭がすっかり赤くなっていた。
「あ、黒沢サン。おかえり……」
「おかえり、じゃないだろ。おまえ、どうしてこんな所に。というか、いつからいる? パーティはどうした?」
「んー……パーティは、日付変わる前にはだいたい終わったかなー。清水さんは、明日は友達と集まるからって早めに帰って、眉崎さんと谷原サンは結構お酒飲んだみたいで、二人とも撃沈。今頃、ソファーで寝てると思うよ」
「そ、そうか……それで、どうしてここに?」
「えーっとねー……はい、これ」
山田は大事そうに抱えていた箱を、黒沢に差し出す。
「オードブルとか、ケーキとか、チキンとか。残り……なはは、黒沢サンからしてみると、安っぽくて冷めたジャンクフードばっかりだけど。パーティの雰囲気、少しでも味わってほしいな、って」
そのために、待っていたのか。
箱を受け取った時に触れた指は氷のように冷たいのに、目の前にいる山田は屈託ない笑顔を向ける。
「なは……おかえりなさい、黒沢サン。それと……メリークリスマス。実はこれ言いたいからここまで来たんだよね」
笑顔の唇から、白い息が立ちのぼる。
本当に、ただその言葉を告げるため、黒沢を待っていたのだろう。
「ん……それだけだから。じゃ、行くね。ばいばーい」
山田はオーバーサイズのダウンジャケットから少し指先を出し、手をパタパタと振る。
黒沢はたまらなくなり、その手を掴む。
そしてそのまま、山田の体を抱き寄せた。
やはり、冷たい。
指先も、抱きしめた体も、凍えるように冷えていた。
「むぐっ……ちょ、っと……何するの、黒沢サン。苦しいから……」
おまえこそ、何をするんだ。こんな時間まで無茶をして。もっと自分のことを考えろ。
色々と言いたい事はあったが、そんなことは後でいい。
「……行くぞ」
「え? ……どこに?」
「俺の部屋だ。そんな体を冷やしたお前を、このまま帰す訳にもいかないだろう。もう終電もないしな」
「えぇ!? いやいや、ぼく、大丈夫だから。全然、家まで歩いて帰れるし……」
「お前が大丈夫でも、俺が心配だ」
つい、強い口調になり、しまったと思い山田を見る。
怯えたりしてないだろうか。そう思っていたが、山田は微かに頬を緩めた。
「……ふふ。うれし。他の誰に言われるより、黒沢さんに言われるの、やっぱ一番うれしい」
山田の言葉はいつも心地よく、だが少しくすぐったい。
「……行くか?」
「……うん、ありがと黒沢サン」
黒沢はいつも、山田に対して鈍感なふりをして接していた。
メンバーなのだからお互いの思いにあまり深く立ち入るのは、良くないと思っていたからだ。
だが、山田はいつだってこんなにも愛おしい。
ただ純粋に、そして直向きに、全てを捧げ尽くしてくれる。
人生において、自分のために全てを賭してくれる人間と出会える事は奇跡のようなものだろう。
「……メリークリスマス」
耳元で囁けば、山田はくすぐったそうに笑う。
その笑顔は今でも、黒沢の脳裏に焼き付いていた。
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