インターネット字書きマンの落書き帳
山ガスとフリー編集者の海野さん(特にBLではない)
今度の冬コミで出す新刊、アッシュ・グレイの肖像に出るオリジナルキャラの海野虫太郎がどんな人間で、山田とどんな距離感なのかを説明するために短文を書こう!
そう思ったのに、「どえらいBL文脈の作品」が出来てしまったので、ここに供養します。
美貌の年上男に惑わされるようで一切惑わされない山ガスをお楽しみください。
※アッシュ・グレイの肖像はBLではありません。
※距離感はこういう二人ですが、こういう風に仲良いシーンはほとんどありません。
参考にならないサンプルを……書いちゃったってこと!
そう思ったのに、「どえらいBL文脈の作品」が出来てしまったので、ここに供養します。
美貌の年上男に惑わされるようで一切惑わされない山ガスをお楽しみください。
※アッシュ・グレイの肖像はBLではありません。
※距離感はこういう二人ですが、こういう風に仲良いシーンはほとんどありません。
参考にならないサンプルを……書いちゃったってこと!
「匂わせ」
助手席のシートに体を預け、山田はスマホを凝視する。
カメラロールには、取材の合間に自撮りした写真がいくつも並んでいた。
せっかく、雑誌の記事を書くのだ。少しでも雑誌が売れてくれたら嬉しいし、これで次の仕事に繋がったら僥倖だ。
心霊スポットの突撃ルポ、というのが今回のテーマだから、廃墟で撮った写真がやはりウケがいいだろう。
そう思い、SNS用の写真を吟味しているのだ。
「今度、オカルト雑誌の記事をかきまーす。
雑誌の記事なんて滅多にやらないから、ちょっと緊張してたり。
この廃墟、どこだかわかるかな?」
投稿用の下書きは終わっている。
あとは写真をそえてSNSにUPするだけだが、さて、どの写真がいいだろう。
全くヒントのない写真ばかりだと、推理ごっこを楽しんでもらえない。
かといって、すぐにわかるヒントを出して簡単に当てられてしまってもつまらない。
窓から外が見えるが、一見してどこだかわからないような場所。
なおかつ、廃墟廻りや心霊スポットが好きな人間なら、ひょっとしたらと思える写真がいいのだが……。
どれにしようか悩んでいる山田の前に、青白く細い指が触れる。
「なーに難しい顔をしているんですか、山田さん。はい、怒らない怒らない」
ひんやりと冷たい指は、眉間に皺が寄る山田のその皺を撫でた。
そうしてクスクス笑うのは、今回の依頼人である海野虫太郎だ。
心霊、怪異、都市伝説……いわゆる「ソッチ系」専門の編集者なのだという。
「べ、別に怒ってないし……僕、もともとこういう顔なんだって」
山田は慌てて離れると、自分の額に触れる。
その様子を、海野はどこか楽しげに眺めていた。
この海野という男は、人当たりもよく丁寧な人間なのだが、どうにも腹の底が読めない相手だった。
今も笑っているが、果たして本心から笑っているかは疑わしい。
だが仕事が早く、山田のことも下請けのライターとしてではなく対等な人間として接してくれている点でやりやすい相手だ。
あまり仕事熱心でマトモすぎる相手は息が詰まるし、ガラガラと怒鳴りつける相手は面倒だ。
クライアントだからってライターを明らかに見下す相手を前に卑屈に振る舞うのはまっぴらだ。
その点、海野はやりやすい。
ガスマスクを被って自撮りする山田を見て
「そのガスマスク、ちゃんとフィルターも入っているんですか?」
なんて聞いてくるが、ガスマスクを付けている事はさして気にしないのだから。
ちなみに、ガスマスクにはにフィルターは入れていない。かわりに内臓ファンを取り付けている。レンズの曇り止め目的だが、実物のフィルターを入れると首が折れる程に重いからだ。当初はフィルターもつけていたのだが、重さのせいですっかり姿勢が悪くなったのだ。
いや、姿勢は元々悪かった。
「そうですか? すごい顔でスマホを睨んでましたよ」
海野はそう言い、ハンドルを握る。
長らく続いていた山道からようやく人家の見える場所まで降りていた。
「うーん、そうかも。僕って考え事するとなんか、眉間に皺よっちゃうみたいなんだよねー」
「そうなんですね。何か考え事をしてたんですか?」
「まぁね。ほら、今回の取材、SNSで写真をUPしようと思ってたんだけど、どれがいいかなーって」
「あはは、それなら……」
交差点に入る直前で信号が赤に変わる。
それを見た海野は車をとめるとハンドルから手をはなし、右手につけていたた指輪を外した。
何をしているのだろうと首を傾げれば、海野はやさしく山田の手をとる。
「ちょ、何すんのさ海野さ……」
あわてる山田を前にニコニコ微笑みながら、海野は山田の薬指に指輪をはめた。
「ふふ……ほら、こうして薬指に指輪をつけた写真を投稿すれば、きっとすごく話題になりますよ。匂わせ、ってやつです」
「えぇ……ちょっと、何いってんのさ。僕がにおわせなんかしても、喜ぶ人なんていないって」
「そうでしょうか? 山田さんは自分を過小評価しすぎですよ。私は、あなたのことを魅力的な人だと思ってますから」
「ちょ……魅力的って……」
お世辞だろうが、それでも面と向かって言われれば気恥ずかしい。
海野は顔立ちが整っているからなおさらだ。
こんな匂わせ投稿でRPされても、別に嬉しくない。
それに、オカルト記事のCMにもならないだろう。
指輪を外して返そうとするが、青信号になり車が走り出す。
運転中に指輪を押し付けて、変に事故をおこしてもいけない。指輪を外し、無くしたら大変だ。
「もう、ほんと。そういうとこだよ海野サン」
山田は聞こえるように嫌味を言うと、頬杖をつき窓を見る。
薬指にはめた指輪は少し大きく、鈍い色に輝いていた。
助手席のシートに体を預け、山田はスマホを凝視する。
カメラロールには、取材の合間に自撮りした写真がいくつも並んでいた。
せっかく、雑誌の記事を書くのだ。少しでも雑誌が売れてくれたら嬉しいし、これで次の仕事に繋がったら僥倖だ。
心霊スポットの突撃ルポ、というのが今回のテーマだから、廃墟で撮った写真がやはりウケがいいだろう。
そう思い、SNS用の写真を吟味しているのだ。
「今度、オカルト雑誌の記事をかきまーす。
雑誌の記事なんて滅多にやらないから、ちょっと緊張してたり。
この廃墟、どこだかわかるかな?」
投稿用の下書きは終わっている。
あとは写真をそえてSNSにUPするだけだが、さて、どの写真がいいだろう。
全くヒントのない写真ばかりだと、推理ごっこを楽しんでもらえない。
かといって、すぐにわかるヒントを出して簡単に当てられてしまってもつまらない。
窓から外が見えるが、一見してどこだかわからないような場所。
なおかつ、廃墟廻りや心霊スポットが好きな人間なら、ひょっとしたらと思える写真がいいのだが……。
どれにしようか悩んでいる山田の前に、青白く細い指が触れる。
「なーに難しい顔をしているんですか、山田さん。はい、怒らない怒らない」
ひんやりと冷たい指は、眉間に皺が寄る山田のその皺を撫でた。
そうしてクスクス笑うのは、今回の依頼人である海野虫太郎だ。
心霊、怪異、都市伝説……いわゆる「ソッチ系」専門の編集者なのだという。
「べ、別に怒ってないし……僕、もともとこういう顔なんだって」
山田は慌てて離れると、自分の額に触れる。
その様子を、海野はどこか楽しげに眺めていた。
この海野という男は、人当たりもよく丁寧な人間なのだが、どうにも腹の底が読めない相手だった。
今も笑っているが、果たして本心から笑っているかは疑わしい。
だが仕事が早く、山田のことも下請けのライターとしてではなく対等な人間として接してくれている点でやりやすい相手だ。
あまり仕事熱心でマトモすぎる相手は息が詰まるし、ガラガラと怒鳴りつける相手は面倒だ。
クライアントだからってライターを明らかに見下す相手を前に卑屈に振る舞うのはまっぴらだ。
その点、海野はやりやすい。
ガスマスクを被って自撮りする山田を見て
「そのガスマスク、ちゃんとフィルターも入っているんですか?」
なんて聞いてくるが、ガスマスクを付けている事はさして気にしないのだから。
ちなみに、ガスマスクにはにフィルターは入れていない。かわりに内臓ファンを取り付けている。レンズの曇り止め目的だが、実物のフィルターを入れると首が折れる程に重いからだ。当初はフィルターもつけていたのだが、重さのせいですっかり姿勢が悪くなったのだ。
いや、姿勢は元々悪かった。
「そうですか? すごい顔でスマホを睨んでましたよ」
海野はそう言い、ハンドルを握る。
長らく続いていた山道からようやく人家の見える場所まで降りていた。
「うーん、そうかも。僕って考え事するとなんか、眉間に皺よっちゃうみたいなんだよねー」
「そうなんですね。何か考え事をしてたんですか?」
「まぁね。ほら、今回の取材、SNSで写真をUPしようと思ってたんだけど、どれがいいかなーって」
「あはは、それなら……」
交差点に入る直前で信号が赤に変わる。
それを見た海野は車をとめるとハンドルから手をはなし、右手につけていたた指輪を外した。
何をしているのだろうと首を傾げれば、海野はやさしく山田の手をとる。
「ちょ、何すんのさ海野さ……」
あわてる山田を前にニコニコ微笑みながら、海野は山田の薬指に指輪をはめた。
「ふふ……ほら、こうして薬指に指輪をつけた写真を投稿すれば、きっとすごく話題になりますよ。匂わせ、ってやつです」
「えぇ……ちょっと、何いってんのさ。僕がにおわせなんかしても、喜ぶ人なんていないって」
「そうでしょうか? 山田さんは自分を過小評価しすぎですよ。私は、あなたのことを魅力的な人だと思ってますから」
「ちょ……魅力的って……」
お世辞だろうが、それでも面と向かって言われれば気恥ずかしい。
海野は顔立ちが整っているからなおさらだ。
こんな匂わせ投稿でRPされても、別に嬉しくない。
それに、オカルト記事のCMにもならないだろう。
指輪を外して返そうとするが、青信号になり車が走り出す。
運転中に指輪を押し付けて、変に事故をおこしてもいけない。指輪を外し、無くしたら大変だ。
「もう、ほんと。そういうとこだよ海野サン」
山田は聞こえるように嫌味を言うと、頬杖をつき窓を見る。
薬指にはめた指輪は少し大きく、鈍い色に輝いていた。
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