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インターネット字書きマンの落書き帳

   
ヤバい薬に手を出してアカン幻覚を見る山ガス概念(松ガス)
罪悪感共鳴二次創作!(挨拶)

山田ガスマスクは罪悪感でズタボロになってほしいな。
心の底からズタボロの山田ガスマスクが見たい。
そう思っているので、書きました。

脱法ドラッグに手を出して、Batに入る幻覚を見て罪悪感を燻らせる。
絶対に救われない人間の話を浴びていってください。

ほら、救われない人間だよ。
楽しいね。



『命にそんな価値はない』


 罪を償えとか、罪と向き合えとか、そんなのは綺麗事だ。
 実際のところ犯した罪は刻印のように焼き付いて、消す方法などない。

 ましてや「人殺し」は一生、人殺しだ。
 許されようとは思っていないし、認められようとも思っていない。

 人殺しの分際で、何をのうのうと生きているんだ。
 そういわれたら、返す言葉なんて一つもない。まったくその通りだと思う。今さら、弁解するつもりもない。

 生きていて恥ずかしいと思わないのか?
 もし誰かがそう問いかけたのなら、僕は真っ直ぐに言い切れる。

 恥ずかしいに決まっている。

 意図してなかったとはいえ、ちっぽけな承認欲求と自己顕示欲を満たすため、人の命を奪ったのだ。
 浅はかで、軽率で、短絡的な選択をした自分に反吐が出る。

 だから、僕はもう、何者にもなれないから、何でも出来る。
 他人の命を踏みにじった僕は、踏みにじられて生きるしかないのだから。

「……脱法ドラッグ?」

 打ち合わせをしたいと打診され出かけたのは、路地裏の個室居酒屋だった。
 相手は小瓶を刺しだし、ニヤリと笑う。

「そ、これ。最新の脱法ドラッグ。山田クン、今はアングラ系の記事で稼いでるんでしょ? ムショ返りのクソヤバライターが手がける、最先端脱法ドラッグレビュー。最高にキャッチーだと思うから。吸ってトんで、そのネタで書いてよ。できるよねェ」

 提示された金額は、命を貼るにしては安い。だけど、今の僕からすると破格の待遇だ。

「できるよ。最高に不謹慎なネタ、書いてあげるね」

 僕は迷わず瓶を取る。
 他人の命を玩具にした僕は、他人から玩具にされても当然だ。

 脱法ドラッグなら、持っていても今のところ犯罪ではない。
 でも、他人の家で試したらその人の迷惑になる。

 僕は今の塒に戻り、瓶をテーブルに置く。
 説明書きは、便宜上アロマになっている。
 具体的な使い方は書いてないが、どうやら中の液体を炙って部屋の中ににおいを充満させるらしい。

「へぇ、一応、アロマっぽい使い方なんだ」

 100円ショップで買ったアロマポットに瓶詰めエキスを全部垂らす。

「どのくらいが適量なのか聞いてなかったけど、全部使えばとりあえず効くでしょ」

 それからしっかり窓を閉じ、念のため窓ガラスは目張りをする。
 一応、まだ合法ではあるけど、外ににおいが漏れたら大事件になるといけないし。面倒ごとは嫌だからね。
 でも、目張りなんてしてると、いよいよこれから死ぬ奴みたいで何とはなしに笑えてくる。

「……ま、もう充分生きたし。別にいいんだけど」

 目張りを済ますと、アロマポットに火をつける。
 僅かな煙が立ち上り、ツンと染みるような刺激臭がした。

 アロマって書いてあるんだから、甘ったるい匂いを期待してたのに、ひどいニオイだ。匂いじゃなくて臭い。
 立ち上る煙は鼻だけじゃなく喉も刺激し、ピリピリと痺れるような痛みすらある。

 こんなひどいニオイで、本当にトリップなんて出来るの?
 疑問を憶えつつ、ソファーにこしかけ無理矢理呼吸を整える。

 少しずつ、身体は浮遊感を覚えて、脳のスイッチが徐々に落ちていく気がした。

「んー……効いてきたのかな……」

 身体がフワフワする。眠くなる前の感覚に似てるけど、やけに目は冴えている。
 でも、何だろう。この感覚。
 自分が何者にでもなれるような気がする。
 だけど、何者でもないような気も……。

「もう、何にもなれないに決まっているだろう?」

 ……誰か、いる?
 部屋には誰も入れてないのに……。

「私が誰かわかりますか?」

 わかんないよ。顔なんてハッキリ見てなかったんだ。
 だから、キミの顔を知ったのは一晩たった後。そう……テレビのニュースの中で。

「どうして、私を殺したんですか? あの時、救急車を呼んでくれれば、助かったかもしれないのに……」

 野村さん。
 あなた、野村さんっていうんだね。

 ごめんね。
 でも、違うんだよ。

 僕は……僕は、僕は悪くないんだ。

 僕はさ……5Sが、好きだった。
 いや、今でも好きなんだよ。

 黒沢サンが、僕を見て「一緒に動画作らないか」って声をかけてくれた時、驚いたけど嬉しかった。
 今まで僕のことなんて誰も見てないと思っていたから、自分の居場所が出来た気がした。

 悪い事すればするほど、アンチがいっぱい出た。
 非常識だとか、不謹慎なんてどれだけ言われたかわからない。
 でも、沢山見てくれる人がいたのは、何より心強かったし。

「アンチに負けるな」
「応援してるぞ!」

 そういうコメントがあると、次はもっとすごいことしようって……そう、思って……。
 もし、ヤバい動画になっちゃったら、こっそりお蔵入りにすればいいだけだし。
 お蔵入りになるほどヤバい案件に手をつけちゃった時。

「今のはほんと、ヤバかったな」

 黒沢サンがそういって苦笑いをするのを見て、あぁ、一緒だな。
 ここにいるみんなは、仲間なんだって……そういう繋がりが。意識があるのが……本当に、心地よくて……。

「それが、私を殺した理由なんですか」

 ……そうだよ、野村さん。
 あなたは、僕のちっぽけな欲望で、呆気なく死んだんだ。

 バカみたいでしょ?
 あなたは、僕より愛されてた。心からあなたを心配して寄り添う家族がいて、職場があって、ちゃんとした居場所がある人だったのに、僕は……。

「それで、あなたは、ほしいものを得られたのですか?」

 ……何もない。
 何もないよ。

 居場所は、簡単に壊れた。
 ずっと一緒にいられるなんて、それでこそ幻覚だ。今見ている、アナタと同じ。
 永遠なんてどこにもなく、残ったのはアナタを殺したという明確な罪だけ。

 刑務所に入って、刑期を終えても、僕は5Sのメンバーで、GRを引き起こした大罪人。
 無茶な仕事を振られるのも、その中で僕が命を使い果たすのを待っている人がいるからなんだ。

「それは、昔からそうだったんじゃないです?」

 そう、そうだよ。ずっとそう。
 わかってるんだ、応援してるとか、アンチに負けるななんて励ましてる連中も、僕らの人生を娯楽としてしか見ていない。
 いつか破滅する5Sを期待して見ていたんだ。わかってるさ。

「だから、もうおしまいにしたいんですか?」

 そうだね、そうかも。
 これ、一気に使う奴じゃないっての、僕だってわかってる。でも、一気に全部使ったのは、もう終わりにしたかったから。
 わざわざ一気にトぶように、目張りまでして濃度を上げて……。

 ……野村さん。
 わかってるなら、終わりにして。

 僕はもう……疲れちゃった。

 バシン。
 強い刺激が、頬に走る。

「……私の命を使い潰して、疲れた?」

 野村さん……。

「それで許されると思っているんですか?」

 許されようとは思ってないよ  だけど……。

「……まだ生きていてください。あなたの命で償えるほど、あなたの罪は軽くない」

 ……そう。
 やっぱり……。

「許されないし、許さない」

 ……そうだよね。そう、だから。
 僕は……。

 ※※※

 ばしん、ばしん。
 脳を揺さぶるほど強く叩かれ、僕はようやく正気に戻る。

 まだ頭がフワフワしてるし、指先がジンジン痺れて身体も上手くうごかないけど、目の前にはブチキレて怒鳴りそうな顔をしている松田さんの姿があった。

「山田! お前、死ぬ気か!」

 あはは、怒鳴られた。
 めちゃくちゃ怒ってる。

 そうだよ。
 でも、死に損なっちゃった。

「なに笑ろてるんやお前、ホンマ……」

 見れば窓が開いていて、涼しい風が入ってくる。
 あれから何時間経ったんだろ。頬がジンジン痛い。松田さん、僕のこと本気で殴ったんだ。

「ひどい、松田サン。僕のことキズモノにした?」
「アホなこというとる場合か! これ、アカン薬ちゃうか? お前が無茶で無謀なことするのは今さらやけど、自分の事はもっと大事にせい!」

 大事にされるほど、僕には価値がないよ。
 そう思うけど……。

「……あはッ」
「だから笑ってる場合ちゃうやろが……」
「あのね、松田サン。僕……死ぬ価値もないんだって」

 僕が見ていた野村さんは、幻覚。その言葉も全部、幻聴だ。わかってる。
 だけど、死ぬ価値もないほど無様なの、ほんと、笑える。
 僕は……いつ死ねばいいんだろう。

「アホか! 当たり前や。お前みたいな身勝手なクソガキ、地獄に行っても閻魔様からお断りが出るわ」

 ひどいね。でも、そうだよね。

「どうせ死ぬなら、お前が死んだ時、泣いて喚いて取り乱すほどの相手を一人くらい作ってみぃ。野村は……そういう奴やった」

 ……そうだよね。
 松田さんは野村さんのこと知ってるから、今の僕じゃ駄目だってわかってるんだろうね。

「……松田さん、僕が死んだらそういう風にしてくれないの?」

 まだフワフワが抜けない頭で、そう聞いてみる。
 松田さんは僕の額を思いっ切り指で弾くと。

「そう思わせたいなら、もう少し自分を大事にせい。そしたら……考えてやらんこともないわ」

 そう告げ、ふいとそっぽむく。

 あーあ、死に損なっちゃった。
 だけどもし、僕はまだ、死ぬほどの価値がないのなら……死ぬ価値が出るまで、もう少し足掻いてみるよ。

 それでいいんでしょ、野村さん。
 きっとアナタも、松田さんのことを少しだけ気に掛けていたと思うから。

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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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