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インターネット字書きマンの落書き帳

   
野村が生きていた世界線の野村と山ガス概念(BLっぽい気がする)
いきなりネタバレの発言するんですけど、天誅事件で死んだのが野村じゃなくて松田だった世界線で、出会ってしまう野村と山ガスって面白そうだな……。

という出発点から書いてみたんですが。

とんだホラーだよ!
ができあがったので、コッソと置いておきますネー……。

BLかホラーか!
キミの目でたしかみてみろ!(誤植)

ジャンルは怖い野村です。



「記録」

 カシャッ。
 激しい閃光で目がくらむ中、遅れ気味にシャッター音が響く。

 ジィ……とフィルムを巻き戻す音を、山田はベッドの上でぼんやりと聞いていた。

「もう、フィルム切れか……残念だな。変えはもうないや」

 野村はどこか残念そうに旧式のカメラを眺めると、慣れた様子でフィルムをケースに入れた。
 休日になったら暗室に籠もり、自分で写真の現像をするのだろう。

 野村の持ち物で唯一、松田が気に入り褒めてくれたのが古いカメラだったという。
 昭和50年代後半に出回った、フィルムを手で巻くタイプの古い一眼レフ。
 こまめに手入れをしているのか、年代物にしては傷は少ない。

「松田さんはねぇ……」

 手元でカメラをいじりながら、野村は口を開く。

「僕がカメラをもっていると、いつも声をかけてくれたんだよ。相変わらず、カメラのセンスだけはいい。写真撮ったなら見せてくれって。写真の評価は散々だったけど、松田さんが話してくれるのはすごく嬉しかったから、いろいろなものを撮ったんだ」

 松田が好きだといった景色のため、大きなリュックを背負って登山に挑戦した。
 学生時代、卒業旅行の話を小耳に挟み、松田のスケジュール通りに動いて彼の足取りを追った事もある。
 褒められない写真でも、「懐かしいなァ、ここ行った事あるわ」と松田が笑いながら思い出を語る様子を眺めているのが好きだった。

「別に……好きになってもらおうとか、そんなおこがましい事は考えてなかったよ」

 手にしたカメラに目を落とす。

「だけど、笑っててほしかった。普段から仏頂面ばかりしてるから、滅多に笑う事なんてなかったけど。それでも、生きていて――幸せになってほしかった」

 松田とは――。
 天誅事件で、山田たちが誤って殺害してしまった相手だ。
 ニュースを見るまで名前も知らなかったのだが。

「ごめ……ごめ、ん。ごめんなさい、野村さん、僕……」

 殺してしまった。
 それなのに、逃げていた。

 罪悪感はあったが、殺人犯として裁かれないまま生きてきた7年の間、松田という人間を知ろうともしなかった。

 罪と向き合うのが怖かった。
 テレビの中で、被害者という記号として見るのが精一杯だった。
 松田が一人の人間で、家族がいて、仕事をして、趣味があって……そういうことを知れば、今よりもっと苦しくなる。

 恐怖からひたすら、向き合うことから逃げてきたというのに――。

「ごめん、で松田さんが返ってくるのかな?」

 カメラを置くと、野村は椅子を軋ませベッドに転がる山田を見る。
 山田は手足を縛られ、ほとんど裸のような格好で無防備に転がされていた。

 野村は、激しく声を荒げる事はない。  恫喝し殴りつけるというような事もしない。
 ただ静かに山田の傍らへ寄り添うと、両手の高速具につけられたハンドルをゆっくり回すのだ。

「痛い! 痛い、痛い……痛い、やめっ……やめて! やめてくださっ……」

 骨がギシギシと軋む音がする。
 ハンドルを回すと、拘束された両腕が万力のように締め付けられるのだ。
 折れるか、折れないかギリギリのところで止め、痛みに耐えながらもだえる山田を愉快そうに見つめている。

 ――拷問だ。
 縛られているから動けないというのもあるが、両足はすでにこの器具のせいで折れていて、歩くこともままならない。

「あは……痛い? でもね、松田さんはもう痛がったり、泣き叫んだりもできないんだよ。キミたちが殺しちゃったから」

 山田の体に指を這わせ、野村は優しく笑う。

 なんで、どうして。
 僕だけじゃない。あの時、松田って人を殺したの、誰だかわかってないんだ。
 助けなかったのは確かにそう、悪かったと思っている。
 だけど――。

「どうして、僕だけ……」

 泣きながら、つい本音が漏れる。

 野村はかすかに口元を緩めると、山田の頭を踏みつけた。

「うーん……GRの時、ゴタゴタがあった中で、キミだけを運良く僕が確保できたってのはもちろん、大きいんだけどね」

 踏みつける力が、徐々に強くなる。

「松田さん、キミの名前だけは覚えてたんだよ。しょっちゅう騒ぎを起こしていた5Sで、リーダーでもないキミのことだけ……」

 ふっ、とため息をつくと、野村はゆっくり足をどける。
 かわりに山田の手につけた拘束具に触れた。

「僕だって名前なんて呼ばれた事ないのに。キミの名前は全部覚えてた。キミは、松田さんの本名なんて知らないだろ? それなのに、松田さんに覚えられてた……松田さんを殺したくせに、名前まで覚えられてたんだよ? ね、許せると思う? ねぇ、ねぇ……」

 キュルキュルとハンドルが回る音がする。
 痛みから声は叫びに変わる。

「もう、やだ! やだ、やだ……殺して。殺して……殺してよ、もう……」

 泣き叫ぶ山田を前に、野村はわずかにハンドルを緩めた。

「殺さないよ」

 優しく、慈悲深いような笑み。

「殺したら、松田さんのところに行けちゃうかもしれない。可能性がゼロではない限り、絶対にそんなこと許さないからね。キミは、ここで……償うことも、許されることもなく、ずっと、ずっと……僕の写真モデルになるんだよ」

 いいね、わかったね。
 山田の髪を掴み、何度も何度も言い含める。

 背後の壁には、体中に傷と痣とが浮かぶ山田の写真が、びっしりと張られていた。

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