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インターネット字書きマンの落書き帳

   
りひたとえりおとベイクドモチョモチョ(りひえり・BL)
平和な世界線で付き合っている利飛太と襟尾、という幻覚です。(元気な挨拶)

Twitterに放流しておいた話を加筆したものですけれどもね。
仕事が終わったあと利飛太の部屋にお泊まりデートしにきた襟尾が利飛太からサッと薔薇の花束を渡されてめちゃくちゃ照れた後、お土産にベイクドモチョモチョを手渡すだけの話ですよ。

何でもない日常。
そういうものを書いてみるのも……へへっ、存外に悪くねぇのかもなッ……。


『ベイクドモチョモチョ』

 扉を開けた襟尾に真っ赤な薔薇の花を向けると利飛太は微かに笑って見せた。

「おかえり、エリオ」

 花束を向けられた襟尾はこちらが見ていて恥ずかしくなるほど顔を赤くすると戸惑いながら花束を受け取り、しどろもどろになって話し始めた。

「え、えぇ、何だよこれ。ありがとうな、リヒタ。嬉しいけど、今日、何かあったっけ? オレの誕生日とかじゃないし、おまえの誕生日でもない。記念日とかじゃないし……思い当たること、何もないんだけどさ」

 襟尾はどうやら花束などを送るのは特別な日だけと思っているらしく、今日が何か大切な日だったか思い出せない自分に焦りを抱いているらしい。
 利飛太は両手を広げるとやれやれと大げさな身振りをしてから再び穏やかな笑みを浮かべていた。

「別に特別な日でなくても、僕が君にプレゼントしたいと思ったから渡しただけさ、エリオ。キミが傍にいるだけで感謝に値するからね……薔薇の花は嫌いだったかい?」
「えっ。いや、嫌いじゃないけど。でも、いいのか?」
「あぁ、忙しい本庁の刑事さんが休みの合間に会いに来てくれるんだ。感謝の気持ちだと思って、受け取ってくれ」

 襟尾は花束をかかえると、嬉しそうに微笑み返す。
 年の割にはまだどこか幼く見える顔立ちがいっそうあどけなく見えた。

「わぁ……嬉しいな。でも、どうしよ。オレの家は花瓶とかないし、今日はおまえの家に泊まるつもりだったから……ひとまずここに飾っておいてもいいかな?」
「君がそれでいいのなら」

 利飛太は襟尾から花束を受け取りすぐに花瓶の準備をする。
 薔薇など渡すなんて少し気障すぎるかと思ったが喜んでもらえたようで何よりだ。
 実のところ、この薔薇は最初から自分の部屋に飾る予定だった。襟尾の家に花瓶が置いてあるとは思えなかったし、彼が今日は泊まるつもりで来くというのも織り込み済みだ。
 自分の部屋に飾る事になるのだからどんな花を買ってもいいだろうと思ったから、それなら襟尾が抱えていて美しく見える花がいい。そんな事を思って薔薇を差し出したのだから全てが計画通りと言えるだろう。
 唯一計画が違っている所があるとすれば、襟尾が存外に喜んでくれたことと、喜ぶ彼の笑顔が想像していたよりずっと魅力的だった事くらいだ。
 もし襟尾が薔薇の花束を持ち帰りたいといったのなら、また丁重に包み直せるようにしないと。そんな事を考えながら花を活ける利飛太を眺め、襟尾はどこか幸せそうな顔を向けた。

「本当、ずるいよなぁリヒタ。おまえ、ただでも格好いいのに薔薇なんか差し出してさ……しかも自然に! それがすっごい似合うっていうんだから、もう反則だろ。オレの心臓爆発するかと思ったよ」

 襟尾はソファーへこしかけると顔を赤くしため息をつくと思い出したようにもっていた箱を差し出した。

「あー、もう、おまえがあんな格好いい事するからこれ出すの気が引けるんだけどさ。おみやげもってきた! 食べてくれるよな」
「うん、何だいそれは」
「大判焼き、通りがかりの店で焼いてて美味しそうだったから。つぶあんと、しろあんだぜ」

 屈託のない笑顔を向けると、襟尾は箱を開いて差し出す。丸い形の焼き菓子は、和菓子屋などが店先で焼いているものだった。

「おまえと違ってかっこ悪いかもしれないけど……」

 襟尾は照れたように言い、自分の頬を掻く。
 忙しい最中でも自分のところへ来るのは手ぶらだと悪いと思ったのだろうか、それともただ自分が食べたかったからかわからないが、やはり襟尾は特別だ。 その気遣いで利飛太を喜ばせてくれるのだから。

「いいじゃないか、かっこ悪いなんて思わないさ。僕にとって、君はそこにいるだけで特別なんだからね」

 薔薇の花で飾ってみたが、やはりそうだ。そんな事をしなくても、襟尾はいつでも愛おしい。
 改めて自分の思いを噛みしめ、利飛太は焼き菓子を手にとった。

「ところでキミはいま、これを大判焼きと言ったね。これは今川焼きじゃないか?」
「えぇっ!? 大判焼きだろ! あれ、でもあの店では甘太郎、って書いてあった気がするな……」
「うーん、複数の名をもつ焼き菓子か。興味深いね、地域的にはもっと沢山の名前もあるかもしれないな」

 そして、二人で他愛もない話をする。
 ありきたりの日常でも、二人でいればいつも特別に思える。その時間が、今はただ幸せだった。

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